皆様、こんにちは。株式会社ニットの小澤美佳(こざわ みか)です。
株式会社ニットは、世界33か国から集まった約400名のフリーランスから構成されるリモートワーカー集団で、2015年よりオンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」を提供しています。
ところで、「この仕事はAさんしか分からないな」「自分しか分からない業務だから休みにくい」というようなお悩みをお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
こういった悩みを解決する施策の一つに「ワークシェアリング」があります。
株式会社ニットのオンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」では、管理職層も含めてこのワークシェアリング体制を取っており、業務を個人ではなく担当企業ごとにチーム制で請け負うことで、仕事やプライベートで何かあった場合でも、他のメンバーがすぐにフォローできる体制や仕組みを構築しています。
「HELP YOU」がこれまで培ってきた知見から、ワークシェアリングのメリット・デメリット、また導入に際して必要となる環境や業務外のエンゲージメント対策をご紹介します。
【執筆者】小澤 美佳|株式会社ニット 広報担当
2008年に株式会社リクルート入社。中途採用領域の代理店営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で、キャリア・就職支援の講演を実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。2018年 中米ベリーズへ移住し、現地で観光業の会社を起業。2019年にニットに入社し、カスタマーサクセス→営業を経て、現在、広報に従事する傍ら、オンラインでのセミナー講師やイベントのファシリテーターを実施。副業で嘉悦大学の大学講師。キャリアや就職などに関する授業を担当。
目次
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
1. ワークシェアリングのメリット
ワークシェアリングは、1970年代ごろから、不況下のヨーロッパで労働者の雇用機会の創出を目的として始まった施策と言われています。
しかし、現在では「一人で担当していた仕事を複数人で分けることで、一人あたりの負担を減らす」施策として、ワークライフバランスやクオリティオブライフの達成に大きな効果があると考えられています。
ワークシェアリングのメリットとして真っ先に挙げられるのは、一人にかかる負担を減らすことによる効率性と生産性の向上ですが、それ以外にも2つの大きなメリットがあります。
メリット1:チームによるフォロー体制で業務が滞らない
「ワークシェアリング」体制の最大の強みは、業務を個人が専任で行うのではなくチームで行うことです。
これによりメンバーの一人に何かあった場合でも他のメンバーでフォローができます。
また、業務内容をマニュアル等で可視化することにより、誰でも業務ができるように標準化するきっかけにもなります。
メリット2:心理的安全面を確保し、個々の力を発揮できる
ピースマインド株式会社が2021年2月下旬から3月上旬にかけて行ったコロナ禍における「はたらく人のウェルビーイング」調査を行いました。
リモートワークが広がったことで上司や同僚とのコミュニケーションが大幅に減ったことから、自分自身の生産性や仕事に対する評価に対する不安を抱えたり、職場における孤立感を持っている人が、特に20代において増えていることがわかっています。
孤独感を感じてしまいがちなテレワークですが、チーム体制をとることで他のメンバーがいるという安心感を得つつ、自分の能力を最大化して働く楽しさを実感することができます。
2. ワークシェアリングのデメリット
このように良いことが多いように思えるワークシェアリングですが、一方でデメリットもあります。主なデメリットは、次の2点です。
デメリット1:業務の可視化をしないと生産性低下を招く
ワークシェアリングにおけるデメリットとして挙げられるのは、「引継ぎが行われないと確認作業で時間が取られて生産性が低下する」という点です。
そのため、どの業務がどう行われているのかを誰にでもわかるように可視化することが非常に重要です。
マニュアル作成には手間がかかるものですが、内容を整理することで業務への理解が深まりますし、改善点が見つかる場合もあります。
高度な機密情報を取り扱っているため業務の分散が難しいというケースでも、システムを導入するなどその業務自体の効率化を図れないかと別の視点で考えることで、社員の負担を減らせるかもしれません。
デメリット2:業務のシェアのみ行うことで給与ダウンに繋がるリスクがある
よく聞かれるワークシェアリングの懸念点は、業務量が減ることによる給与ダウンのリスクへの不安です。
しかし、公益財団法⼈ ⽇本⽣産性本部が2022年1月に行った調査によると、「給与を減らしてでも、雇用を維持するべき」という意見は33.8%で、「給料を減らさず、雇用を維持するべき」の22.4%を越えていることから、近年の企業による社員の兼業・複業奨励やコロナ禍による働き方に対する考えが変わってきているとも言えるでしょう。
とはいえ、現在の業務量や給料が長時間の残業を前提としているのであれば、そもそもの業務内容を見直し、適正な給与制度を達成する施策としてワークシェアリングは実施することも効果的だと考えられます。
ワークシェアリングの導入は会社の経営状況や社員の勤務状況などを鑑み、無理のないよう段階的に導入することをおすすめします。
3. ワークシェアリングの導入に必要な環境整備5つ
ワークシェアリングの体制を導入する上でいくつか整えておくべき労務環境があります。
①情報を常に可視化・蓄積できるシステムの導入
他のメンバーがすぐにフォローできるように、常に情報を一元管理できるシステムが重要です。
例えば、子どもが急に熱を出したり、家族の介護で急に病院に行かなければならない時などもマニュアルやお互いのタスクを可視化しておくことで、別のメンバーがすぐに対応することができます。
②コミュニケーションツールの整備
主に、テキストでの会話と会議の際には下記のツールを利用することをお勧めします。
当社では基本的にChatWorkを使用していますが、SlackやMicrosoft Teamsなど、環境やニーズに合わせて最適なツールを選択しましょう。
▼オンライン会議や面談用のビデオコミュニケーションツール
基本的にZoomを使っていますが、Microsoft Teams、Googlemeet、Skypeなども便利です。
テキストコミュニケーションのコツや発言が飛び交うオンライン会議の運営方法などについては、過去にHRNOTEさんで執筆していますので、ぜひご一読ください。
③リモートでの労働環境の整備
テレワークの場合、次のような安定して働ける環境を確保することが肝要です。
- 自宅で仕事が問題なくできるようにインターネット環境を整える
- 正しい姿勢で仕事ができるような机と椅子を用意する
リモートワークのためにパソコンを貸し出したり通信環境の整備、家具の用意にかかる費用を負担したりする企業も多くあります。
しかし、すべての費用を会社で負担する場合は大きなコストがかかるため、会社の負担範囲を事前に明確化するのが良いでしょう。
④セキュリティの確保と強化
業務の可視化は必要ですが、権限レベルを役割に応じて設定し、情報セキュリティ体制を強化する必要があります。
たとえば仕事では、カフェや公共の場のオープンWiFiは使わない、情報漏洩に気を付けるなどのITリテラシーに細心の注意を払う必要があります。
➄スケジュールの共有
テレワークの場合、「誰がいつ何をしているか」が見えづらくなるため、スケジュールをお互いに共有し、業務状況などをシェアしましょう。
この時に、「副業」や「仕事以外のプライベート」といった予定をシェアし、お互いに尊重できる関係性を築くことも重要です。
4. ワークシェアリング体制におけるエンゲージメント向上施策5つ
社員の一人ひとりが会社への愛着心や思い入れを持てば、より絆の強いチームを創ることができます。
ニットの事例ですが、以下のような施策を定期的に行うことで、メンバーのエンゲージメント向上を目指しています。
①フォローし合えるチーム体制づくり
互いのプライベートも含めた状況を尊重し、仕事内容を見える化しながら、フォローできる体制を構築しています。
当社はフルリモートで事業運営しているため、メンバーは日本各地に居住、さらに全メンバーの約23%が海外在住という割合です。
したがって、チームそれぞれの時差やプライベートな状況も考慮した上で、タスクの一覧化を行って、業務量過多になっていないかを確認したり、不測の事態が発生した際にも他の人が対応できるようにマニュアル作成や情報の一元管理を行っています。
②嬉しかったことの共有(チャット&オンライン)
チャットではリアルタイムに、オンライン事業会議の冒頭でも、その週の嬉しかったことを伝える場や時間を設けて、士気を高め合っています。
嬉しかったことを共有し合うことで、意外な一面が見られて親密性が高まったり、互いに温かい気持ちになって会議が建設的な議論になったりと副次的な効果もあります。
③雑談(チャット・オンライン)
マンガ・アニメ・ペット・キャンプなど様々な趣味のチャット部屋を作り、仕事とは全く関係ない雑談ができる場を作っています。
また、運営では週に1回雑談をする時間を設け、雑談からイノベーションを起こし、メンバー同士の何気ないコミュニケーションで信頼関係の構築を行っています。
④勉強会(オンライン)
テキストコミュニケーション講座などの様々な勉強会を定期的に設けたり、「こんな情報見つけました!」といったように情報のシェアを頻繁に行っています。
当社ではオンラインコミュニティが40個以上あり、その中でライティング全般・ライターとしてスキルアップしていくための情報を交換する部屋では構成案の作り方、インタビュー記事の作り方などの勉強会を実施しました。
参加者の多くがすぐに業務へ活かすことができました。
➄飲み会(オンライン)
ニットでは月に1回、オンライン飲み会を開いており、他にもお花見や忘年会など、全社で季節ごとに様々なイベントを開催しています。
オンライン忘年会は6時間で16コンテンツを実施するなど、フルリモートかつ人とのつながりや温かさを大事にしているニットだからこそ実施できたイベントです。
クライアント様をゲストとして呼んだり、公開のオンラインラジオ収録を実施したり、様々なコンテンツを企画しました。
在宅ワークで仕事をしていると孤独になりがちですし、仕事でも私事でもトラブルがあると、その傾向はより強くなります。
だからこそチームを組み、互いの進捗を報告し合い、相談し合える風土を作ることが重要なのです。
5. ワークシェアリングを活用して理想を叶えよう
ワークシェアリングの導入は、メリットとデメリットをあわせもつ施策です。
そのため、事前に「どのような会社・チームを作りたいのか」「従業員にどんなワークライフバランスを達成してほしいのか」をしっかり伝え、共通認識とすることが重要です。
ワークシェアリングを導入することで、自分の業務をシェアするだけでなく、新しい業務にもチャレンジしやすくなるかもしれません。
会社のビジョンを社員の共通認識として持てば、組織体系や判断基準などの軸が一定し、会社の一員であるという認識も強まります。
企業としても個人としても、理想を叶えるために、うまくワークシェアリングを活用していきましょう。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。