「福利厚生として退職金制度を自社に導入するべきかどうか悩んでいる」
「退職金制度を導入するメリットやデメリットを比較したい」
上記のような悩みを抱えている担当者も多いのではないでしょうか。
福利厚生における退職金制度は、従業員の勤続意思や業務に対するモチベーションに直結します。一方で、企業にとっては経営の負担にもなり得るため、導入するかどうかは慎重に決めなければいけません。
本記事では、福利厚生の退職金制度の種類や導入するメリット・デメリット、導入方法を解説します。退職金制度を自社に取り入れたいと検討中の場合は、ぜひ最後まで読んでみてください。
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1. 福利厚生の退職金制度とは
福利厚生の退職金制度とは、退職する従業員に対し、勤続年数や業績などに応じた金額を企業が支給する制度のことです。企業から従業員へ支給するケースが一般的ですが、場合によっては別の機関から従業員へ支給することもあります。
退職金制度は企業の義務ではないため、明確なルールは存在しません。企業独自の制度であり、退職金制度の設定や従業員へ支給する金額も自由です。
なお、厚生労働省の令和5年度の調査では、退職金制度のある企業の割合は「74.9%」となっています。
退職金制度を取り入れると、企業の将来的な債務として残るため慎重に決定しなければいけません。また、一度取り入れると容易に廃止できないため注意が必要です。
1-1. 導入前に退職金制度の目的を考えることが重要
退職金制度を導入する前に、目的を明確にしておくことが重要です。退職金制度を導入することには、離職率の低下や企業のイメージアップなどのメリットがあります。ただし、制度の運用に大きなコストが発生するため、注意なければなりません。
目的によっては、退職金以外の福利厚生を充実させるべきケースもあるでしょう。たとえば、住宅補助や昼食補助などの福利厚生でも、従業員の満足度を向上させることは可能です。従業員のニーズや予算も含めて検討したうえで、最適な福利厚生を導入しましょう。
1-2. 退職金と休職手当の違い
退職金と似た存在として休職手当がありますが、両者は異なるものです。退職金は、従業員の退職後の生活をサポートするものですが、導入する義務はありません。
一方の休職手当は、従業員の休業中の生活を支えるためのものです。育児休業給付金などの休業手当は、支給することが法律で義務付けられているため注意しましょう。
1-3. 退職金制度の対象者
退職金制度に関する法律上の規定はないため、支給対象者は企業が自由に決定できます。有期雇用契約の従業員も含めて支給対象としている企業もありますが、正社員に対してのみ支給する企業が多いでしょう。
また、退職金という名称ではなく、満期慰労金などの名称が使われているケースもあります。
1-4. 退職金なしは違法?
繰り返しになりますが、退職金に関する法律上の規定はなく、「退職金なし」としても問題ありません。退職金は、法定外福利厚生のひとつとして位置付けられます。
退職金制度を導入するかどうかは企業が自由に判断できるため、予算やニーズに合わせて決定しましょう。導入する場合は就業規則に記載し、支給金額の算出方法や支給範囲を明確にしておくことが大切です。
2. 福利厚生の退職金制度の4つの種類
退職金制度の種類は、大きく以下の4種類に分けられます。
- 退職一時金制度
- 確定給付企業年金制度(BD)
- 企業型確定拠出年金制度(DC)
- 中小企業退職金共済
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
2-1. 退職一時金制度
退職一時金制度は、従業員が退職した際に退職金を一括で支払う制度です。支給額は、企業の就業規則で定められており、一般的に勤続年数の長さや役職などによって金額が変動するケースが多いでしょう。
企業ごとに自由に設定でき、社内手続きのみで実施可能です。ただし、一度制度を決定すると、企業側の都合で金額の減額や制度の廃止はできません。
退職一時金制度のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット |
デメリット |
・勤続年数や業績などをもとに、退職金の支給額を自由に決められる ・企業のアピールポイントになる |
・支給する退職金は、将来的な債務として企業が貯めなければいけない ・現金で積立をおこなうため課税対象となる |
2-2. 確定給付企業年金制度(BD)
確定給付企業年金制度は、年金のように一定期間に退職金を支給する制度のことです。生命保険会社や金融機関などの外部の運用会社に掛金を拠出し、資金を管理・運用します。
従業員が退職した際は、積み立てた資産から支払いをおこなうシステムです。退職金を受け取る従業員の希望で、「一括」か「年金形式」か選択できます。
確定給付企業年金制度のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット |
デメリット |
・掛金を損金扱いにできるため税制面で有利 ・従業員が支給方法を選択できる |
・積立金が不足した場合、企業側が補填する ・従業員が少ないと引き取り先を見つけにくい |
2-3. 企業型確定拠出年金制度(DC)
企業型確定拠出年金制度は、企業が毎月掛金を拠出し、従業員が自分で運用する制度です。企業側はいくつかの商品を用意し、従業員に選んでもらう必要があります。
運用結果の資産額が、従業員の退職金の支払額となるため、企業側の追加負担が発生しません。ただし、運用成績によって従業員が受け取れる退職金の金額が変動するため、企業側は従業員への情報提供や教育が義務付けられています。
企業型確定拠出年金制度のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット |
デメリット |
・決まった金額の退職金の支払い責任を負わなくてよい ・結果的に退職金が不足しても企業側が補填する義務がない |
・従業員によって支給額に差が生まれやすい ・従業員に反発される可能性がある |
2-4. 中小企業退職金共済
中小企業型退職金共済は、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営している国の退職金制度です。企業が共済機構に掛金を支払い、退職金の積立をおこないます。
中小企業退職金共済は、社外積立型となるため非課税です。退職金は共済機構から従業員へ直接支払われます。
中小企業退職金共済のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット |
デメリット |
・掛金が非課税になる ・掛金の一部を国が助成する制度がある ・ほかの福利厚生のサービスを従業員に提供できる |
・従業員の同意がなければ掛金の減額ができない ・運用利率が変動する場合がある ・経営者や役員は加入できない |
3. 福利厚生の退職金制度を導入する4つのメリット
福利厚生の退職金制度を取り入れる主なメリットは、以下の通りです。
- 離職率の低下につながる
- 企業のアピールポイントになる
- 人件費の負担を軽減できる
- 雇用調整に役立つ
各メリットについて詳しく見ていきましょう。
3-1. 離職率の低下につながる
退職金制度が整っていると、従業員の離職率を低下させる効果を期待できます。従業員が抱える「将来の経済的な不安」が軽減されることが理由です。
「会社に長く勤めることでメリットを享受できる」と感じ、会社への貢献度が高まるでしょう。従業員の勤続年数の長さは、組織の持続性や知識を継承するうえでも役に立ちます。
また、退職金の金額を役職に応じて変動する制度を導入すれば、昇進したいという従業員のモチベーションを高める効果も期待できます。
3-2. 企業のアピールポイントになる
退職金制度が充実していると、企業のアピールポイントになります。退職金制度は従業員への配慮や、企業の社会的責任を示す要素の一つです。
また、経営が安定している企業であることをアピールする機会にもなるでしょう。将来の安定性や、リタイア後のプランに重きを置く求職者にとって、退職金の有無は重要な要素となるはずです。
退職金制度が万全であれば、企業の魅力が高まり、優秀な人材を引きつける効果も期待できます。
3-3. 人件費の負担を軽減できる
退職金制度を取り入れることで、人件費の負担を軽減できます。退職金には、税制上の優遇措置があるため社会保険がかかりません。
仮に、退職金として支払う金額を賞与や給与として支払う場合、その分の社会保険がかかります。従業員の社会保険は企業側も負担するため、人件費がかかることになるのです。
企業年金制度や退職金共済制度など、導入する退職金制度の種類によっては節税効果も得られます。
関連記事:福利厚生と給与の違いは?どちらか判断する基準を紹介!
3-4. 雇用調整に役立つ
退職金制度を整備しておけば、早期退職などの雇用調整に役立ちます。従業員と交渉をしやすくなり、退職の際のトラブルが発生しにくくなるでしょう。
経営不振や社会情勢など、不測の事態はいつでも起こり得るものです。実際に、コロナウイルスが蔓延したときは、大手企業でも早期退職を募集する企業が多く見受けられました。
万が一に備えておくことはとても重要です。
関連記事:福利厚生のメリットとは?種類・目的・デメリット・導入方法を詳しく解説!
4. 福利厚生の退職金制度を導入するデメリット
福利厚生の退職金制度を取り入れるデメリットは以下の通りです。
- 導入後の廃止が困難である
- 退職金制度の運用にコストがかかる
それぞれのデメリットについて確認しておきましょう。
4-1. 導入後の廃止が困難である
退職金制度を一度取り入れると、廃止することは困難です。さまざまな手続きや承認が必要なだけではなく、従業員から大きな反感を買うことになるでしょう。
従業員との信頼関係が破綻することで、離職者が続出し経営難となる事態も考えられます。経営プランをしっかり立て、自社に合った退職金制度を取り入れることが大切です。
4-2. 退職金制度の運用にコストがかかる
退職金制度を取り入れると、一定のコストがかかります。仮に経営状況が悪化しても、社内の規定で定めている場合は、決定した全額の退職金を支払わなければいけません。
企業の経営状況や規模に見合わない制度を導入すると、経営を圧迫しかねないため注意が必要です。
5. 福利厚生として退職金制度を導入する方法
福利厚生の退職金制度の導入方法を次のパターンごとに解説します。
- 新たに退職金制度を導入する場合
- すでにある退職金制度を変更する場合
パターンごとの詳細は以下の通りです。
5-1. 新たに退職金制度を導入する場合
新たに退職金制度を取り入れる場合、まず就業規則に「退職金規定」を作成しましょう。具体的には、以下の項目を決定・実施します。
- 退職金制度を導入する目的の整理
- 退職金制度の制約や条件の整理
- 退職金制度の選択
- 退職金の支給額と計算式の決定
- 従業員に対する説明会の実施
- 行政への届出
新たに退職金制度を取り入れる場合は、すでにある制度を変更する場合と比較して自由度が高くなります。しかし、退職金制度は一度導入すると廃止することが難しい制度です。
後悔しないためにも、決定する前に内容をしっかり整理しておきましょう。
5-2. すでにある退職金制度を変更する場合
既存の退職金制度を変更したい場合は、労働組合もしくは労働者の代表者の合意を得なければいけません。退職金制度は、いわば従業員と企業間の「約束」であるため、変更には従業員の合意が必要です。
労働条件は、相応の理由がなければ下げられません。退職金を支払うことで会社の存続危機に陥るような状況ではない限り、退職金の金額を引き下げたり廃止したりすることはできないことを覚えておきましょう。
退職金制度は導入時に、先のことも見据えて検討しなければいけません。導入する際は慎重な選択をおこなってください。
6. 福利厚生としての退職金制度を整えよう!
今回は、福利厚生としての退職金制度について解説しました。退職金制度を導入すれば、従業員のモチベーション向上や離職率の低下、企業のイメージアップにつながります。ただし、一度制度を導入すると廃止するのが難しく、運用に大きなコストがかかることには注意しましょう。
また、退職金制度に関する法律上の規定はないため、無理に導入しなくても問題ありません。場合によっては他の福利厚生を充実させたほうがよいケースもあるでしょう。経営状況や社会状況も含めて総合的に判断し、自社に適した福利厚生を導入することが大切です。
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