退職者が出たとき、総務担当者としてどのような手続きをすればい良いのでしょうか。退職にはさまざまな手続きが必要になるため、正しく理解して漏れなく手続きすることが大切です。
本記事では、総務担当者が行うべき退職手続きの流れについて詳しく解説しています。手続きにおいて従業員から返却してもらうものや注意点なども紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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1. 総務担当者が行うべき退職手続き
従業員が退職する際に、総務担当者が行う手続きは多岐にわたります。以下は、退職日までにするべきことや、その後に行う手続きのおおまかなスケジュールです。
日程の目安 | 手続きの内容 |
退職の1か月前くらい~ |
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退職の2週間前くらい~ |
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退職日当日~期限まで |
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退職から5日後くらいまで |
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退職から10日後~1か月くらいまで |
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今回は、従業員から退職の申し出が場合の対応や、その後の手続きについて紹介します。
1-1. 退職日までに行う手続きや対応
退職の申し出があった後は、従業員に「退職届(退職願)」を提出してもらいます。退職届は、従業員に退職の意思があることを証明する書類であり、離職証明書をハローワークへ提出する際にも添付が必要なものです。
会社によっては「退職時の誓約書」を取り交わす場合もあるでしょう。退職時の誓約書は作成義務はありませんが、退職後も業務で知り得た秘密を保持してもらうための守秘義務契約書です。
その後は、退職手続きに関することについて説明を行います。例えば、退職時に従業員から提出してもらうものや返却してもらうもの、会社側から渡すものなどを説明しましょう。退職後に渡す書類もあるため、郵送先の住所も確認しておく必要があります。
他にも離職票や退職証明書の準備や、退職金がある場合は「退職所得の需給に関する申告書」を本人に記入してもらうなど、退職の手続きは多岐にわたります。
1-2. 社会保険の手続き
従業員の退職後に行う手続きとしてまず挙げられるのが、社会保険の手続きです。従業員が健康保険や厚生年金保険に加入していた場合、喪失手続きを行う必要があります。
社会保険の喪失手続きは、資格喪失した日から5日以内に所轄の年金事務所に喪失届を提出しなければなりません。
健康保険の喪失手続きでは、本人の保険証を返却するので、退職日までに回収しましょう。もし、何かしらの理由で回収できない場合は、回収不能届を添付します。
1-3. 雇用保険の手続き
従業員が雇用保険に加入していた場合、同じように喪失手続きを行わなければなりません。雇用保険喪失手続きは、資格喪失届を退職日の翌々日から10日以内に、所轄のハローワークに提出します。
このとき同時に、離職証明書を提出しましょう。離職証明書は、離職票を発行するときに必要な書類です。離職票は、退職者が失業保険の手続きをする際に必要となる重要なものなので、交付が遅れることのないよう注意しなければなりません。
離職証明書を提出するときは、賃金支払状況を確認するため、賃金台帳や労働者名簿の添付が必要になります。また、退職届も必要なのでまとめて準備しておきましょう。
1-4. 住民税の手続き
会社勤めの場合は通常、特別徴収と呼ばれる方法で給与から住民税が天引きされます。そのため、退職するときは自分で支払う普通徴収に切り替えることが一般的です。
しかし、転職先がすでに決まっている場合は、そのまま特別徴収が継続できます。継続するためには、給与所得者異動届出書に必要事項を記入して、本人に転職先の会社へ提出してもらいましょう。
普通徴収に切り替える場合は、以下の通り退職の時期によって対応が異なるため注意が必要です。
- 1月1日~4月30日に退職した場合は、給与から一括徴収
- 5月1日~5月31日に退職した場合は、通常通り給与から特別徴収
- 6月1日~12月31日に退職した場合は、普通徴収
住民税の一括徴収は額が大きくなることが多いため、最終給与から支払えない場合は、普通徴収への変更も可能です。
1-5. 退職者へ送付するもの
健康保険の資格喪失届を年金事務所へ提出した後は、「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」が発行されます。他にも、離職証明書をハローワークへ提出した後は、「離職票」が発行されるので、どちらも速やかに退職者へ送付しなければなりません。
退職証明書は、本人が交付を希望する場合、発行しなければならないものです。転職先から提出を求められることもあるため、退職時に交付を依頼される可能性もあるでしょう。
退職証明書は決められた用紙がないため、会社が独自に作成できるものです。退職者から請求された場合、拒否することはできませんので、あらかじめフォーマットを準備しておくと良いでしょう。
また、従業員の退職から1か月以内に源泉徴収票を作成する必要があります。転職先に提出し、年末調整で使う重要なものなので、忘れずに送付しましょう。
2. 退職手続きにおいて従業員から返してもらうもの
退職手続きを行うために、従業員から返却してもらわなければならないものがあります。具体的な返却物は以下の通りです。
◇健康保険証
先ほど説明した通り、健康保険の喪失手続きの際に、本人の保険証が必要になりますので、退職日までに返却してもらいましょう。扶養者がいる場合は全員分の返却が必要な点に注意してください。
◇貸与物
貸与物には、社員証、名刺、制服や作業着、パソコンやスマートフォンなどが挙げられます。これらは全て退職の際に返却してもらう必要があるものです。特に、入館証や鍵を貸与していた場合、セキュリティー上の問題があるため、必ず返してもらいましょう。
◇業務で使用していた資料
業務で使用していた資料やデータは、機密情報や個人情報が含まれている可能性があるため、返却してもわなければなりません。
3. 総務担当者が退職手続きを行うときの注意点
退職手続きでは多くの書類を準備しなければなりません。トラブルを発生させないためにも、総務担当者は退職手続きを行うときの注意点を把握しておきましょう。
3-1. 退職届は書面で提出してもらう
退職は口頭でも成立しますが、退職理由が自己都合であることを証明するためにも退職届を提出してもらいましょう。
離職証明書をハローワークに提出する際にも必要になるものなので、双方の合意によって雇用契約が解消されたことを書面として残しておくことが大切です。
3-2. 手続きの期限を把握しておく
繰り返しになりますが、総務担当者が行う手続きには期限付きのものがあります。以下は、主な手続きの期限です。
- 社会保険の喪失届の提出:退職後5日以内
- 雇用保険の喪失届・離職証明書の提出:退職日の翌々日から10日以内
- 住民税徴収方法の切り替え:退職日の翌月10日まで
このように、それぞれ異なるため期限を過ぎてしまわないよう注意が必要です。
3-3. 貸与物は早めに回収する
貸与物の中には、会社の入館証やパソコンなど、返してもらわないと会社側が困るものが多くあります。
「退職後に返却してもらおうと思っていたら、連絡が取れなくなってしまった」などのトラブルが起きる可能性も考えられますので、返却物はなるべく早く回収した方が良いでしょう。
3-4. 財形貯蓄や社内融資を利用している退職者への対処法
財形貯蓄制度を利用する従業員に対しては、本人の意思を確認します。なぜなら、財形貯蓄は転職先で継続することも可能だからです。
財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄は、一定期間を経過したのちに課税扱いとなります。そのため、退職後半年以内に財形貯蓄を取り扱う金融機関に「退職等の通知書」を提出しなければなりません。
新しい転職先で積立てを継続する場合は、退職後2年以内に転職継続の手続きをします。その際は、同一の財形貯蓄取扱金融機関を利用する場合は「勤務先異動申告書」を、違う財形貯蓄取扱金融機関を利用する場合は「転職等による財形貯蓄継続適用申告書」を転職先で手続きすることになります。
なお、新しい勤務先で財形貯蓄を扱っていない場合や、退職後2年以内に転職しない場合は、原則として財形貯蓄を解約することになるので覚えておきましょう。
また、もし社内融資を利用している従業員が退職する場合は、原則として退職と同じタイミングで一括返済する取り決めになっています。返済残高が残っている場合は、返済期間や返済残額を従業員本人と確認の上、一括返済の手続きをおこないましょう。
3-5. 退職した従業員の個人情報の取り扱いは慎重に
退職した従業員であっても、個人情報は厳正に管理しなくてはなりません。
従業員の書類は、個人情報保護の観点や退職後にトラブルが起きた場合の備えとして、退職後も一定期間保管するよう法律で定められています。
書類別の保管期間の一例は以下のとおりです。
保管期限 | 書類 |
2年 |
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3年 |
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4年 |
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5年 |
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7年 |
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退職者の情報を保管する方法にも工夫が必要です。紙による保管の場合は保管スペースを確保しなければならず、書類を探すのに手間もかかります。そのため、システム上で管理できる方法をおすすめします。
3-6. 退職手続きは退職者の不利益となる遅れやミスは許されない!
退職手続きが遅れると、会社・従業員の双方に不利益が生じる可能性があります。企業側としては、「納付が必要ない社会保険を納付しなければならない」などです。
一方、従業員側としては、「失業給付の受給開始が遅れる」「受給総額が減ってしまう」などです。
いずれも不利益やトラブルに発展する可能性があるため、退職手続きは遅れのないように済ませなくてはなりません。
退職手続きを効率よく進める方法としておすすめなのが、クラウドサービスです。
労務管理システムなどを導入すれば、従業員の入退社手続きや給与計算などの労務管理や諸手続きを効率化できます。具体的には、資格喪失届や離職証明書、源泉徴収票などの作成が簡単におこなえます。また、期日までにやるべきことが可視化されているため、遅れやミスも防ぐことができます。
退職手続きをスムーズかつ正確におこなうために、クラウドサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
4. 総務担当者は退職手続きの流れを理解してスムーズに進めよう
退職手続きは、従業員からの退職申し出から退職日までに行うことから、退職後の手続きまで数多くあります。
保険関係の手続きや住民税に関する手続きは、決められた期限を過ぎないよう、適切に行わなければなりません。そのためにも、総務担当者は退職手続きがスムーズに進められるよう、流れや注意点を事前に確認しておきましょう。
会社と退職者の間でトラブルが起きることを防ぐためにも、返却物は早めに回収し、退職後に渡さなければならないものは、速やかに送付することが大切です。
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