出勤簿は従業員の労務管理をおこなううえで必要な書類であり、従業員が在籍して働いている間は、破棄を考える必要は基本的にありません。しかし、従業員が辞めてしまうと出勤簿に記載することはなくなるため、すぐに破棄してよいのか、しばらく保管しておかなければならないのかは、気になるところです。
また、保管する必要があるとしても、どのような形で保管しておくべきかがわからなければ、誤った形で保管してしまうかもしれません。本記事では、出勤簿の保存期間や出勤簿の正しい保管方法について説明します。
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法定三帳簿とは、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の帳簿のことです。
いずれも、雇用形態に限らず、従業員を雇用する際には必要となるうえ、労働基準法で保存期間や記載事項などが決められているため、適切に調製しなければなりません。
当サイトでは、『法定三帳簿の作成ガイドブック』を無料で配布しており、作成から保管の方法まで法定三帳簿の基本について詳しく紹介していますので、「法律に則って適切に帳簿を管理したい」「法定三帳簿の基本を確認しておきたい」という担当者の方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 出勤簿とは?法定三帳簿のうちの一つ

出勤簿とは、従業員の出勤・退勤時刻、労働日数などを記録し、労働時間を正しく把握するために作成する書類です。正社員はもちろん、パートやアルバイト、契約社員についても出勤簿の対象となるため、忘れずに作成しましょう。出勤簿の主な記載項目は以下の通りです。
- 従業員の氏名
- 出勤日
- 出勤日数
- 始業・終業時刻
- 休憩時間
- 時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数
また、出勤簿は「賃金台帳」「従業員名簿」と並び法定三帳簿に該当します。出勤簿は労務管理をおこなうために重要な書類なので、従業員が退職するなどして出勤簿への記入がおこなわれなくなってからも、決められた期間は保存しておかなければなりません。
関連記事:出勤簿とは?手書きでの作り方や保存期間・罰則内容をあわせて解説!
2. 出勤簿の保存期間は7年?5年?

出勤簿の保存期間は下記の通り5年です。ただし当分の間は3年とされています。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
決められた保存期間が守られていない場合は、労働基準法違反により30万円以下の罰金が科される可能性があるので、必ず保存期間を守りましょう。
関連記事:労働基準法第109条の重要な書類の保存期間は何年?法改正や経過措置、違反した場合の罰則を解説!
2-1. 出勤簿の保存期間に関する労働基準法の改正内容
出勤簿を保存する期間は従来までは「3年間」でしたが、2020年4月に労働基準法が改正されたことにより、「5年間」へと延長されました。
経過措置として当面の間は3年間の保管で問題ないとされていますが、いずれは5年間となるため、すぐに対応できるよう準備しておきましょう。
2-2. 出勤簿の保存期間の起算日
出勤簿の保存期間の起算日は、最後に記入した日です。ただし、給与の支払日が最後の記入日よりも後になる場合は、給与の支払日が起算日となります。
たとえば、2025年3月1日〜3月31日の勤怠情報を記録し、4月20日に給与を支払った場合、4月20日が保存期間の起算日となります。4月20日から5年間保管する必要があるため注意しましょう。
2-3. 保存期間が7年になる帳簿
保存期間が7年となるのは、法定三帳簿のうちの一つ「賃金台帳」を源泉徴収簿と兼用して管理する場合です。出勤簿はあくまで、従業員の労働時間や労働日数などを記載するものであり、源泉徴収簿とは兼用できないため、保存期間は5年間でよいとされています。
ここまで解説した通り、出勤簿を含む法定三帳簿は適切に調製して保管しておく必要があるので、作成に不安のある方は、当サイトで無料配布している「法定三帳簿の作成ガイドブック」もご確認ください。資料では、法定三帳簿の記入項目とその書き方を解説しているほか、それぞれのフォーマットもご確認いただけるため、適切に法定三帳簿を調製したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
3. 出勤簿の正しい保管方法とは

出勤簿をどのように作成しているかは会社によってさまざまで、手書きで作成している会社もあれば、勤怠管理用のソフトやアプリケーションを利用している会社もあるでしょう。
そのため、保管方法も会社によって異なると思いますが、出勤日、出勤日数、日別の労働時間数、始業・終業時刻、休憩時間といった、労働時間を把握するうえで必要な項目がわかる形であれば、どのように保管しても問題ありません。
保管方法に制限がない以上、どのように保管するのも自由ですが、自社にとって最適だと思われる方法で保管することを心がけましょう。
ここからは、企業で用いられている一般的な保存方法を3つ紹介します。
3-1. 紙媒体で保存
紙の出勤簿を利用している会社の場合は、キャビネットなどに出勤簿をまとめる形で保管するのが一般的です。
また、紙の出勤簿を利用している場合でも、保存や管理のしやすさを踏まえて、紙に記載されたデータをエクセルなどに入力し、電子化してまとめて保管するケースもあります。
ただし、出勤簿の紙媒体での保存・管理は人為的ミスや改ざん、紛失などのリスクがあります。従業員が増加するとともに工数が増えるのはもちろん、保管面積の確保も一層必要となるため、電子化することがおすすめです。
3-2. エクセルで管理
エクセルによる管理のメリットは、自社にとって扱いやすい形式にカスタマイズできることです。とくに関数を組むことに慣れている従業員がいる場合は、集計を自動化でき、業務効率化を図れます。また、Web上に公開されているテンプレートを用いれば、無料で作成・管理することも可能です。
しかし、入力漏れやデータの消去などの人為的ミスが起こるリスクをはらんでいるため、マニュアルを作成するなど注意して保管しましょう。
3-3. 勤怠管理システムで電子保存
勤怠管理システムで出勤簿を管理する場合、従業員の打刻データが反映され、自動で出勤簿が作成されるため余計な工数は発生しません。
また、紛失するリスクが低いほか、書類の保管場所が必要ない、従業員が増えても効率よく管理できる、といったメリットがあります。勤怠管理を効率化したい場合は、便利なシステムを導入するのがおすすめです。
4. 出勤簿の保存が重要な理由
出勤簿の保存が重要な理由として、労働基準監督署の調査で提出を求められること、労使間のトラブルを防止できることが挙げられます。それぞれの理由について簡単に確認しておきましょう。
4-1. 労働基準監督署の調査で提出を求められる
労働基準監督署の調査では、労働時間の管理方法は適正か、従業員の労働環境に問題はないか、といったポイントをチェックされます。調査の際、企業側は問題ないことを証明する書類などを提出しなければなりません。
出勤簿は、労働時間やその管理方法を示す重要な書類であるため、提出を求められるのが一般的です。出勤簿を保存していないと、指導や是正勧告を受けたり、労働基準法による罰則が科せられたりするので注意しましょう。
4-2. 労使間のトラブルを防止できる
労使間のトラブルを防止するうえでも出勤簿の保管は重要です。仮に従業員から未払いの賃金を請求された場合、出勤簿を保存していなければ、客観的な証拠を示すことができません。
賃金請求権の消滅時効は原則として5年(当面の間は経過措置により退職金請求権を除き3年)です。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
過去の出勤簿だからといって安易に破棄してしまうと、裁判で適切に対応できなかったり、トラブルが大きくなったりするため注意が必要です。
5. 出勤簿の保存期間に関して理解しておくべきポイント

ここまでは出勤簿の保存期間や保存方法について解説しました。
ここからは、出勤簿の保存期間についてあらかじめ理解しておくべきポイントを解説します。
5-1. あらかじめ復元しやすい形で保存しておくことが重要
出勤簿を紛失したり、誤って破棄したり、さまざまなトラブルに備えて、あらかじめ復元しやすいよう電子ファイルで保管・管理しておくことが重要です。
とはいえ復元には工数がかかるため、勤怠管理システムを導入するなど、紛失が起きにくい管理方法に切り替えることをおすすめします。
5-2. 出勤簿の保存期間が終了した際の取り扱いについて
出勤簿には従業員の氏名などが記載されているので、個人情報保護法に基づいて処分する必要があります。そのため、保存期間が過ぎたからといって、ゴミ箱に適当に捨ててしまってはいけません。
文書管理規程にもとづいて廃棄処分する必要があるうえ、書類を処分・廃棄したということも、記録に残す必要があります。
5-3. 退職者の出勤簿も保存しておく
従業員が退職したからといって、出勤簿をすぐに破棄するのは避けましょう。在職している従業員と同様、退職者の出勤簿も5年間保管しておくことが重要です。
退職者であっても、未払いの賃金を請求することはできます。客観的な証拠に基づいて適切な対応をおこなうためにも、退職者の出勤簿を正しく保存しておきましょう。
5-4. パートやアルバイトの出勤簿も保存しておく
パートやアルバイト、契約社員の出勤簿の保存期間も5年間です。雇用形態にかかわらず、同じルールで管理する必要があるため注意しましょう。
なお、派遣社員については、派遣元企業と派遣先企業のどちらにおいても管理しなければなりません。
6. 出勤簿の保存期間は5年!適切な管理を心がけよう

出勤簿は従業員の労務管理をおこなうのに必要な書類ですが、従業員が辞めたからといってすぐに処分していいわけではありません。労働基準法によって5年間(当面の間は経過措置により3年間)の保存が義務付けられています。
誤って破棄してしまった場合や、紛失してしまった場合は、残ったデータなどを元に可能な限り復元しなければなりません。しかし、完全な形で過不足なく復元するのは現実的に難しいでしょう。
出勤簿をどのような形で保存するかは自由です。しかし、保存や管理のしやすさ、誤って破棄してしまった際の復元のしやすさを考えると、クラウドサービスなどを利用しながらデータの形で保存するのがおすすめです。
勤怠システムのなかには、出勤簿の出力が可能なタイプもあります。必要であれば、紙とデータ、双方を控えておいてもよいでしょう。
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法定三帳簿とは、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の帳簿のことです。
いずれも、雇用形態に限らず、従業員を雇用する際には必要となるうえ、労働基準法で保存期間や記載事項などが決められているため、適切に調製しなければなりません。
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