従業員を雇用している事業者は、毎年1度、社会保険料の更新を行わなければなりません。
一定期間内に手続きを行うことを定時決定といいます。定時決定のためには算定基礎届を作成する必要があり、健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料の見直しのために必要です。
社会保険の定時決定、算定基礎の考え方、算定基礎届の作成方法、算定基礎届作成時の注意点を解説します。
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社会保険の更新・改定マニュアル完全解説版
年度更新や定時決定、随時改定と、労務担当者は給与の改定と並行して、年間業務として保険料の更新に関わる業務を行う必要があります。
一方でこのような手続きは、実際に従業員の給与から控除する社会保険料の金額にダイレクトに紐づくため、書類の記入内容や提出はミスなく確実に処理しなければなりません。しかし、書類の記入欄は項目が多く複雑で、さらに申請書や届出にはそれぞれ期限があり、提出が遅れた場合にはペナルティが課せられるケースもあります。
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1. 社会保険の定時決定(算定基礎)とは?
算定基礎届は従業員や事業者が納付している健康保険、介護保険、厚生年金保険が実際の標準報酬月額と見合う金額かを計算し、適切な金額に修正するために必要です。
標準報酬月額を見直すことを定時決定といいます。定時決定は毎年4月から6月にかけての3か月の報酬をもとに計算します。
1年間の中で大幅に報酬が変動しない限りはその後1年間の社会保険料は定額のままですが、報酬金額に大幅な変動がある場合は定時決定ではなく随時決定の手続きが必要です。
1-1. 定時決定の対象者
定時決定の対象者は7月1日で健康保険、厚生年金保険を納付しているすべての従業員です。休暇を取得している期間であっても被保険者であればすべて算定基礎届を提出しなければなりません。
厚生年金保険は70歳、健康保険は75歳で資格が喪失されますが、在職老齢年金の計算が必要なため上記以上の年齢であっても定時決定の対象者に含まれます。
6月1日以降に被保険者になった場合、6月30日以降に退職した場合、さらに7月に月額変更届を提出した従業員は定時決定の対象者には含まれません。
1-2. 定時決定のタイミング
定時決定は7月上旬に行われるのが一般的です。
4月から6月までの3か月の報酬から平均額を割り出し、標準報酬月額として算定基礎届に記載します。6月中に日本年金機構から届出に必要な書類が届くので、書類の内容にしたがって項目を埋めていきます。被保険者の氏名や生年月日の他、標準報酬月額は元から記載されています。
算定基礎届は7月10日までに提出する必要があり、提出先は事務センター、または年金事務所です。さらに健康保険加入事業所であれば健康保険組合にも書類を提出しなければなりません。この場合、健康保険組合によって提出の期限は違うので各自で確認が必要です。
定められた期間に算定基礎届を提出しなかった場合は6が月以下の懲役、または50万円以下の罰金を課せられる可能性があるので注意してください。
1-3. 標準報酬月額の決定方法
標準報酬月額は社会保険料を計算する際に必要な、従業員の賃金の区分です。
報酬月額によって等級が変わります。標準報酬月額は4月から6月の3か月間の報酬を平均した金額です。時間外労働手当、休日労働手当も賃金に含んで計算します。
また、通勤手当、家族手当、住宅手当など各種手当も含めた金額で計算しなければなりません。
何が賃金に含まれるのか、含まれないのかを正しく理解しておく必要があります。
1-4. 算定基礎届とは
社会保険料を計算する際に用いる標準報酬月額を決定するために必要なのが算定基礎届です。算定基礎届は日本年金機構から毎年送付されます。5月中旬までに加入した従業員の氏名、生年月日、標準報酬月額があらかじめ記入されています。
算定基礎届は事務センターか年金事務所、健康保険組合に提出しなければなりません。
このとき一緒に提出する書類は、被保険者報酬月額算定基礎届と被保険者報酬月額変更届です。被保険者報酬月額算定基礎届は厚生年金保険の資格が失効する70歳以上の従業員であっても提出義務があります。
被保険者報酬月額変更届は7月の標準報酬月額を変更しなければならない場合のみ提出します。
2. 算定基礎届の作成手順
算定基礎届の作成手順を解説します。算定基礎届はミスなく作成しなければならず、初心者には難しい点も多いです。
一つひとつの手順を確認しながら丁寧に書類を完成させましょう。
2-1. 4月から6月の報酬を確認
まずは4月から6月の標準報酬月額に含まれる報酬を確認します。
先述のとおり、固定賃金の他に時間外労働や休日労働の割増賃金、通勤手当などの各種手当も報酬月額に含めて計算しなければなりません。
一時金や宿泊費、見舞い金、交際費、賞与など、臨時に支給される報酬は標準報酬月額には含みません。
2-2. 支払い基礎日数を出す
支払い基礎日数を算出します。支払い基礎日数は、その月の労働日数のことです。
算定基礎届を作成する場合は支払い基礎日数が17日以上あることが必須です。
支払い基礎日数は実際の出勤日ではなく、給与計算をおこなう労働日数のことを指します。
2-3. 報酬の平均額を出す
支払い基礎日数を算出したら4月から6月の報酬の平均額を出します。
3か月間の各月の支払い基礎日数がすべて17日以上の場合は4月から6月に支払われた報酬の合計の平均が標準報酬月額です。
支払い基礎日数が17日以下の月がある場合はその月を除いて平均額を決定します。
2-4. 保険料金額の等級を確認する
標準報酬月額をベースに保険料額表で等級を確認します。
保険料額表は全国保険協会のホームページからでも確認できます。
標準報酬月額が2等級以上上下する場合は定時決定ではなく随時決定の手続きを行わなければなりません。
2-5. 届け出書類の項目を記載する
標準報酬月額、等級を確認したら、書類に必要事項を記載していきます。
すべての項目の記入が完了したら算定基礎届を提出して、一連の手続きは完了です。
このように、人事労務の担当者はいくつかの手順を踏んで社会保険にかかわる届出を作成・提出しなければなりません。漏れがあると従業員の社会保険に影響が出るだけでなく、違法になり企業が罰則を科される可能性があるため、必要な手続きが網羅できているか確認しましょう。
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3. 算定基礎届を作成するときの3つの注意点
算定基礎届を作成する際に意識したい3つの注意点を解説します。
3-1. 4月から6月が繁忙期にあたる場合
4月から6月が繁忙期にあたる場合は時間外労働や休日労働などの割増賃金が発生し、標準報酬月額が高くなってしまいます。
その場合は4月から6月までの標準報酬月額をもとにするだけでなく、年間の平均の標準報酬月額を選ぶことも可能です。
年間の平均額を選ぶ場合は追加の書類作成が必要なので注意してください。
3-2. 休業手当を支給した場合
4月から6月の間に従業員が休業した、休業手当を支給した場合は状況に応じて対応が違います。
7月1日で休業が終わっている場合は休業手当を含まない月で計算します。4月から6月のあいだすべてで休業手当が支給されている場合は標準報酬月額から定時決定を行います。7月1日の段階でまだ休業が終わっていない場合は、休業手当を支給した月と通常の月の給与から平均の金額を算出します。
3-3. 給与の支払いが月をまたぐ場合
支払い基礎日数は、報酬の計算基礎の日数を記入します。そのため給与が良く別払いの場合は間違えやすいです。
3月の給与を4月に支払う場合、4月の基礎日数は30日ですが3月の基礎日数である31日で計算しなければなりません。
4. 社会保険の定時決定はミスのないように気を付けよう
本記事では社会保険の定時決定について解説しました。
定時決定は複雑なルールが多く、初心者はとくに間違いが発生しやすい部分ですが、書類に記載する数字を間違えたり漏れがあったり、定められた期間に提出しなかった場合は罰則を受ける可能性もあります。
定時決定の書類を作成する際は余裕を持って取り組み、問題なく提出できるよう慎重に作成業務を進めましょう。
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年度更新や定時決定、随時改定と、労務担当者は給与の改定と並行して、年間業務として保険料の更新に関わる業務を行う必要があります。
一方でこのような手続きは、実際に従業員の給与から控除する社会保険料の金額にダイレクトに紐づくため、書類の記入内容や提出はミスなく確実に処理しなければなりません。しかし、書類の記入欄は項目が多く複雑で、さらに申請書や届出にはそれぞれ期限があり、提出が遅れた場合にはペナルティが課せられるケースもあります。
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