社会保険の滞納により発生する問題や対策を詳しく解説 |HR NOTE

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社会保険の滞納により発生する問題や対策を詳しく解説

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延滞金の督促

社会保険料の滞納が続くと、会社の社会的信用低下につながるだけでなく、財産調査や差し押さえなどのペナルティが課されます。そうならないためにも、納付が困難なときは、事前に分割申請をするなどして滞納状態とならないよう、対策を取ることが大切です。
本記事では、社会保険料を滞納する問題点と、罰則やペナルティ、滞納処分を受けないための対策を解説します。

関連記事:社会保険とは?代表的な4つの保険と今さら聞けない基礎知識 

1. 社会保険の滞納により発生する問題

問題点を確認する男性

社会保険料の滞納が続くと、社会的信用の低下につながるなど、多くの問題が発生します。ここでは特に、厚生年金保険料を滞納した際の問題点を解説します。

1-1. 督促が頻繁に行われる

厚生年金保険料は滞納から1カ月を経過すると、督促状の送付や電話連絡など、複数の方法で督促が行われます。督促状には、納付期日が記載されているため、期日までに納付しないと遅延金も課されます。なお、ペナルティや罰則については、後ほど詳しく解説します。

1-2. 従業員の離職につながる

督促が頻繁に行われたり、納付指導が続いたりすれば、会社に対する不信感から従業員の離職に発展する恐れもあります。
なお、滞納以前に、本来社会保険の加入が必要な事業所であるにもかかわらず未加入であれば、ハローワークで求人が出せないため注意しましょう。

1-3. 融資や取引が困難になる

社会保険料の滞納が続いた場合、日本年金機構は取引先金融機関や得意先に財産状況の調査を行います。そうなれば、当然関係各所に社会保険料の滞納が知られるため、資金繰りの悪化を疑われるでしょう。新規融資が困難になったり、取引規模を縮小・廃止されたりする恐れもあります。

1-4. 社会的信用の低下

社会保険料の滞納が従業員や取引先の知るところとなれば、社会的信用が低下するのは時間の問題です。従業員の口コミや、取引先から他社への情報提供など、悪い噂は瞬時に広がります。企業としての信用が低下すれば、新規取引や人材確保なども困難となり、事業の継続が困難な状況になってしまいます。

1-5. 倒産の恐れも

社会保険料の滞納を続けていると、最終的には財産の差し押さえが行われます。差し押さえまで事態が発展していると、一括納付以外認められないため、現金を調達する猶予も残されていません。
差し押さえを行っても、保険料の納付が困難なら法人の破産しか選択肢が残っていない可能性もあります。

2. 社会保険の滞納による罰則・ペナルティ

ペナルティ

社会保険料を滞納すると、督促状が届くだけでなく、ペナルティも課されます。それぞれ、どのような罰則があるか解説します。

2-1. 遅延金の支払い

督促状に書かれた納付期日までに保険料を支払わないと、その翌日から納付日の前日まで、日数に応じた遅延金を課されます。なお、遅延金の割合は遅延をしていた期間により異なり、さらに遅延が3カ月を経過すると割合も重くなります。

例えば、令和4年1月1日から令和4年12月31日までの遅延金の割合は以下のとおりです。
延滞税特例基準割合詳しい料率は以下もご確認ください。

参考: 延滞金について|日本年金機構

2-2. 納付処分

督促状を無視して滞納を続けた場合、以下の流れで納付処分に発展します。

  • 納付指導
  • 財産調査
  • 差押え
  • 換金
  • 滞納整理(国税庁へ委任)

特に、財産調査では預金残高や売掛金の確認、所有する不動産の有無など、財産全般が調査され、必要に応じ差し押さえられた後換金されます。

参考: 日本年金機構の取り組み(保険料徴収)|日本年金機構

2-3. 社会保険に未加入の場合はさらに厳しい罰則がある

なお、強制適用度行書が社会保険にそもそも加入しておらず滞納となっており、悪質と判断された場合は、以下のようにさらに厳しい罰則が設けられています。

  • 過去2年まで遡って社会保険料を請求される
  • 刑事罰を課される恐れがある

なお、遡って保険料を納付する際は一括払いとなる点に注意しましょう。さらに、従業員負担分も会社が支払わなければいけません。

社会保険に関する刑事罰は以下の2つとなっています。

【健康保険・厚生年金保険】
6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金

【雇用保険】

6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

なお、これらの罰則はあくまでも滞納を続けたときや、未加入のときなど、悪質な場合に限られます。万が一社会保険を滞納しても、督促状に記載された期日までに速やかに支払いを行えば遅延金も加算されません。

3. 社会保険の滞納を防止する対策

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社会保険料の支払い期日は、納付対象月の翌月末日です。末日が休日のときは、翌日以降の最初の営業日が期日となります。納付期日や納付方法を今一度確認するとともに、資金繰りの悪化などにより納付が困難な場合の対処法を確認します。

3-1. 支払い方法を変更する

社会保険料の納め方には、以下の3つの方法があります。

  • 金融機関の窓口納付
  • 口座振替
  • 電子納付

特に、窓口納付や電子納付では、毎月20日頃に送付される「保険料納入告知書」が必要となります。郵便の事情によっては送付の遅延もあり、結果として滞納につながる恐れもあります。また、書類をなくすなどのミスも考えられます。
支払い方法を口座振替に変更するだけでも、人的ミスによる支払い遅延防止に役立ちます。

参考: 厚生年金保険料等の納付|日本年金機構

3-2. 猶予申請を行う

資金繰りの悪化などにより一時的に社会保険料の納付が困難な場合は、猶予申請を行いましょう。納期限から6月以内であれば分割納付などに変更することが可能です。猶予期間中は遅延金が一部免除される他、分割分を納付していれば滞納処分の対象ともなりません。
なお、申請に必要な書類は猶予を受ける保険料額が100万円を超えるか否かにより異なります。詳しい手続き方法は、所管の年金事務所の徴収担当課にも確認しましょう。

参考: 厚生年金保険料等の換価の猶予|日本年金機構

3-3. 労働時間を正しく把握する

アルバイトからフルタイム勤務に変更する従業員がいるときなどは、社会保険の加入漏れが原因で滞納が発生する恐れもあります。短時間労働者を雇用する際は社会保険への加入条件を確認し、適用漏れのないようにしましょう。
そのためにも、労働時間や賃金を正しく把握する仕組みの導入が必要です。エクセルなどで勤怠管理しているなら、勤怠管理システムも活用してみましょう。より適切な労働時間の把握につながります。

関連記事:アルバイトも社会保険の加入が必要?! 社会保険加入条件と手続き方法 

3-4. 業務の効率化

社会保険料が高額なために支払いの遅延が発生しているなら、業務効率の見直しも必要です。特に、従業員一人一人の残業時間が長ければ、保険料の算定基礎となる標準報酬月額が上がってしまいます。結果として、当初想定していた以上の社会保険料の支払いが必要となっている可能性も否めません。
残業は許可制にする、業務効率化に役立つシステムを導入するなどして、残業時間の削減にも努めましょう。

関連記事:標準報酬月額とは

4. 社会保険は正しく納付

お金の袋 二本の腕

社会保険料を滞納していると、最初は督促などが行われます。督促状に記載されている期日までに納付を行わないと、納付指導や財産調査、差し押さえなど処分方法も徐々に厳しいものとなってしまいます。
そのため、社会保険料の納付が困難なときは、事前に管轄の年金事務所などに相談し、分割納付の申請を行いましょう。また、社会保険料は従業員の給料により支払い額が異なります。残業が多ければ標準報酬月額も上がってしまうため、業務の効率化を進めることも大切です。

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