企画業務型裁量労働制とは?導入要件やメリット・デメリットを解説! |HR NOTE

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企画業務型裁量労働制とは?導入要件やメリット・デメリットを解説!

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企画業務型裁量労働制は、業務の遂行方法や労働の時間配分を労働者の裁量に委ね、成果を重視し評価をおこなう制度です。今回は、企画業務型裁量労働制の定義のほか、企画業務型裁量労働制の対象業務や職種、メリット・デメリット、導入の際の注意点について紹介します。

企画業務型裁量労働制とは?

企画業務型裁量労働制とは、企業内の各部署で働く労働者に対し、仕事のやり方や時間配分などを労働者の裁量に委ねたうえで、業務の効率化をはかろうとする制度です。

企画業務型裁量労働制では、あらかじめ企業内の労使委員会で決められた労働時間数働いたとみなされるため、労使間で定める時間内であれば、使用者は残業代の支払いが不要となります。

また、労働者側では業務遂行方法や時間についても決定できるので、時間に縛られず生産性高く働くことができるというメリットがあります。

企画業務型裁量労働制は、主に企画や立案・調査・分析などをおこなう職種に適用され、本社や本店、事業の運営に大きく関わる業務で多く導入されています。

企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制との違い

裁量労働制とは2種類の制度の総称であり「企画業務型裁量労働制」と「専門業務型裁量労働制」があります。専門業務型裁量労働制は、企画業務型裁量労働制と対象となる業務、事業場、導入条件が異なります。

専門業務型裁量労働制の該当業務としては、業務の性質上、業務の遂行方法が特異であり、労働者の裁量にゆだねられているものとなります。具体的には、以下の業務が挙げられます。

1. 新商品、新技術の研究開発の業務

2. 情報処理システムの分析・設計の業務

3. 記事の取材・編集の業務

4. デザイナーの業務

5. 放送番組、映画等のプロデューサー、ディレクターの業務

6. コピーライターの業務

7. システムコンサルタントの業務

8. インテリアコーディネーターの業務

9. ゲーム用ソフトウエアの創作の業務

10. 証券アナリストの業務

11. 金融商品の開発の業務

12. 公認会計士の業務

13. 弁護士の業務

14. 建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)の業務

15. 不動産鑑定士の業務

16. 弁理士の業務

17. 税理士の業務

18. 中小企業診断士の業務

19. 大学での教授研究の業務――のいずれかの業務

引用:専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の対比(参考)|厚生労働省 栃木労働局

また企画業務型裁量労働制とは異なり、労使委員会の設置・決議や、定期報告が不要である点も大きな違いとして挙げられます。

専門業務型裁量労働制についてより詳しく確認したい方は、以下の記事をご活用ください。

企画業務型裁量労働制が導入可能な事業場とは

企画業務型裁量労働制の導入が可能な事業場は、あくまでも対象業務が実施される事業場となります。

該当する事業場には次の3つが挙げられます。

  1. 本社・本店に該当する事業場
  2. 当該事業場の属する企業等に関係する事業の運営に影響を及ぼす決定をおこなう事業場
  3. 本社・本店に該当する事業場の具体的な指示を受けず、独自で事業の運営に影響を及ぼす事業計画・営業計画おこなう支社・支店等に該当する事業場

企画業務型裁量労働制を導入できる事業場は、事業場内で「事業運営に影響を及ぼす重要な決定をおこなう」ことがポイントとなります。

企画業務型裁量労働制の対象業務・職種とは?

企画業務型裁量労働制の対象者は、対象業務に従事する知識経験を有し、常態的に対象業務に従事している労働者のみとなります。対象労働者の範囲を定めることで、企業による制度悪用を防止する効果があります。

企画業務型裁量労働制に該当する業務には、労働基準法で次の4つにあたる業務を定めています。

事業の運営に関係する事項(事業場の属する企業や対象事業場にかかわる事業の運営に影響を及ぼすもの)についての業務

企画・立案・調査・分析の業務

業務の性質上、業務遂行方法を労働者の裁量に委ねる必要のある業務

業務遂行の手段や時間配分について、使用者が具体的な指示をしない業務

具体的には、厚生労働省の指針において、次のような業務が企画業務型裁量労働制の例とされています。

1. 経営企画を担当する部署の業務で、経営状態・経営環境等における調査及び分析を行い,経営に関する計画を策定する業務

2. 経営企画を担当する部署における業務で、現行の社内組織の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな社内組織を編成する業務

3. 人事・労務を担当する部署における業務で、現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな人事制度を策定する業務

4. 人事・労務を担当する部署における業務で、業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務

5. 財務・経理を担当する部署における業務で、財務状態等について調査・分析を行い、財務に関する計画を策定する業務

6. 広報を担当する部署における業務で、効果的な広報手法等について調査及び分析を行い、広報を企画・立案する業務

7. 営業に関する企画を担当する部署における業務で、営業成績や営業活動上の問題点等について調査及び分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務

8. 生産に関する企画を担当する部署における業務で、生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査及び分析を行い、原材料等の調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務

引用:労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針|厚生労働省

2024年4月以降の企画業務型裁量労働制に関する変更点について

ここでは、2024年4月以降の企画業務型裁量労働制に関する変更点について詳しく紹介します。

参考:裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です|厚生労働省
参考:企画業務型裁量労働制について|厚生労働省

労働者本人による同意・撤回の手続きの追加

企画業務型裁量労働制では、労働者の同意に関する記録を保存する必要性について既に義務付けられています。しかし、同意の撤回の手続きや、同意の撤回に関する記録の保存についての定めはありません。2024年4月以降は、これらも労使委員会の決議によって定める必要があります。

労使委員会に賃金・評価制度の説明が必要

2024年4月以降は、企画業務型裁量労働制を適用する際、労使委員会の運営規程に「対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について使用者からの説明に関する事項」を定めなければなりません。また、労働者に適用する賃金・評価制度を変更する場合に労使委員会に対して変更内容の説明をおこなうことについて、労使委員会の決議で定める必要があります。

労使委員会の運営方法の変更

2024年4月以降は、労使委員会の運営規程での規定が必要な項目に下記が追加されます。

制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
開催頻度を6箇月以内ごとに1回とすること

引用:企画業務型裁量労働制について|厚生労働省

2024年4月からは、制度の実施状況の把握の頻度や方法などを、労使委員会の運営規程に定める必要があります。また、これまでは労使委員会の開催頻度について定めがありませんでしたが、2024年4月以降は6カ月に1回以上開催しなければなりません。

定期報告の頻度の変更

現行では、労働者の労働状況や、健康・福祉を確保するための措置の実施状況に関する定期報告の頻度について、下記のように定められています。

使用者は、決議が行われた日から起算して6か月以内ごとに1回、所定様式により所轄労働基準監督署長へ定期報告を行うことが必要です

引用:「企画業務型裁量労働制」|厚生労働省

しかし、2024年4月以降は、下記のように定期報告の頻度が変更されます。

使用者は、決議の有効期限の始期から起算して初回は6箇月以内に1回、その後1年以内ごとに1回、所定様式により所轄労働基準監督署へ定期報告を行わなければなりません。

引用:企画業務型裁量労働制について|厚生労働省

なお、労働者の同意およびその撤回の実施状況についても報告が必要になるので注意が必要です。

企画業務型裁量労働制のメリット・デメリットとは?

ここからは企画業務型裁量労働制のメリットとデメリットについて解説します。

企画業務型裁量労働制が自社に適切であるか、導入を検討する際の判断材料として把握しておきましょう。

メリット:労働生産性の向上が期待できる

企画業務型裁量労働制を導入すると、労働時間に関する柔軟性が高まるので、より効率的な業務の進め方・時間の使い方が可能になります。

そのため、従業員は自身の能力を最大限発揮できるほか、生産性の向上が期待できると考えられます。

デメリット:運用の難易度が高い

企画業務型裁量労働制のデメリットは、労働時間における裁量が従業員にゆだねられるので、労働管理や、従業員の健康管理の側面が懸念されることが挙げられます。

そのため、制度を導入した後もしばらくは、対象となる従業員の労働状況や、健康・福祉を確保するための措置の実施状況等を定期報告することが求められます。

従業員が心身の健康を崩すことのないよう、日頃から労働時間の把握・管理を徹底し、長時間労働が常態化している場合には、業務量の調節などの対策を講じる必要があります。

企画業務型裁量労働制を導入する際の流れ

企画業務型裁量労働制を導入するには、数多くの手順があります。導入手続きが適正におこなわれていない場合、制度を適用できないため、しっかりと把握しておきましょう。

労使委員会を設置する

企画業務型裁量労働制を導入するためには、事業場内に労使委員会の設置が必要となります。

なお、労使委員会は労働基準法第38条の下記の要件を満たす必要があります。

一 当該委員会の委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に厚生労働省令で定めるところにより任期を定めて指名されていること
二 当該委員会の議事について、厚生労働省令で定めるところにより、議事録が作成され、かつ、保存されるとともに、当該事業場の労働者に対する周知が図られていること
三 前二号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件

引用:労働基準法|e-Gov

また労使委員会は、労使双方1名ずつで設置することはできず、労使双方2名以上の複数名で構成されていることが必要です。

労使委員会の参加者が定まった後には、労使委員会の開催時期などを決定しましょう。

労使委員会での決議をおこなう

労使委員会では、以下の事項について、委員の5分の4以上の多数によって決議をおこないます。

① 対象業務

② 対象労働者の範囲

③ みなし労働時間: 1日あたりの時間数

④ 対象労働者の健康・福祉確保の措置:具体 的措置とその措置を実施する旨

⑤ 対象労働者の苦情処理の措置:具体的措置 とその措置を実施する旨

⑥ 労働者の同意を得なければならない旨及び その手続、 不同意労働者に不利益な取扱いをしてはならない旨

引用:「企画業務型裁量労働制」の適正な導入のために|東京労働局・労働基準監督署

そして決議を終えた後には、就業規則を更新し、改めて従業員への周知をおこないます。

また上記の決議の有効期限に関しては、3年以内に設定することが推奨されています。期限が満了した場合には、再度同事項に関して決議をおこなう必要があります。

労働基準監督署長へ決議内容の届出をし、従業員の同意を得る

労使委員会での決議内容は、所轄の労働基準監督署長へ届出をすみやかに提出します。

最後に、企画業務型裁量労働制の対象となる労働者の同意を得ることで適用開始となります。同意を得る際は、書面に適用となる期間、労働したとみなす時間や健康措置等について記載し、署名捺印をしてもらうとよいでしょう。この同意書は、決議の有効期間ごとに取り交わすのが望ましいです。

なお、労働者の同意が得られない場合には適用不可となるほか、同意しなかったことによって解雇するなど不利益な取り扱いをすることは禁止されているため注意しましょう。

「企画業務型裁量労働制に関する決議届」と、導入後定期的に実施される「企画業務型裁量労働制に関する報告」に関しては、厚生労働省の公式サイトからダウンロードが可能です。必要に応じてご活用ください。

参考:主要様式ダウンロードコーナー – 厚生労働省

企画業務型裁量労働制を導入する際の注意点

このように企画業務型裁量労働制の導入には複数の手続きが発生します。

加えて導入する際には、以下の4点に注意が必要となるため、あらかじめ把握しておきましょう。

対象業務や事業場、労働者を確認する

企画業務型裁量労働制の対象業務や事業場・労働者は、労働基準法などに規定されています。制度導入を検討する段階で、適用対象からはずれていないか、十分に確認しなければなりません。

労働時間を管理する

企業には、労働者の健康を管理する義務があるため、労働者の勤務状況について把握しておく必要があります。

労働時間を適切に管理し、労働基準監督署へ定期的な報告もおこなわなければなりません。

割増賃金の支払いを正しくおこなう

労使委員会で決議されたみなし労働時間以上の時間外労働があった場合や法定休日・深夜労働があった場合には、割増賃金の支払いを正しくおこなう必要があります。

法定休日には35%、深夜労働には25%の割増賃金が発生します。

なお、時間外労働や法定休日の労働をおこなわせる場合には、あらかじめ労使間で36協定の締結をしておかなければなりません。

長時間労働が常態化しないように配慮する

みなし労働時間で勤務する場合、労働時間の管理がおろそかになり、長時間労働が常態化しやすい傾向にあります。

労働者の健康リスクを避けるためにも、制度対象労働者の勤務状況を把握し、健康・福祉を確保する措置を講じていく必要があります。

企画業務型裁量労働制の特徴を理解し生産性アップを目指そう

裁量労働制の一つである企画業務型裁量労働制は、業務のやり方や時間配分などを労働者側で決定でき、時間よりも成果を重視した働き方が可能な制度です。主に企画や立案・調査・分析など、事業の運営に大きく関わる業務で導入されています。

自由度の高い働き方でもある企画業務型裁量労働制の特徴を理解し、導入時の注意点も意識しながら、労働者の生産性アップを目指しましょう。

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