人的資本の情報開示義務化とは?目的や項目をわかりやすく解説 |HR NOTE

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人的資本の情報開示義務化とは?目的や項目をわかりやすく解説

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「なぜ人的資本の情報開示が義務化されたのか?」

「人的資本のどの項目を情報開示すればいいのか?」

「人的資本を情報開示する重要性がわからない」

人的資本の情報開示が義務化され、上記のような疑問や悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。

企業の競争力を支える要素として「人的資本」の重要性が高まっています。情報開示の義務化は把握したい内容です。

本記事では、人的資本の情報開示義務化についての概要や理由を解説しています。また、情報開示に必要な項目と分野、取り組む際のポイントを紹介しているため、情報開示を準備する参考にしてください。

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1. 人的資本の情報開示の義務化とは

人的資本の情報開示とは、企業が従業員のもつ経験や知識、スキルなどの能力をステークホルダーに公開することです。公開するうえで、従業員の能力をさまざまな指標やデータにまとめて有価証券報告書で報告することが義務付けられました。

情報開示による企業の人的資本への投資状況や人材戦略の可視化は、ステークホルダー間の相互理解を深めるために不可欠です。

具体的には以下の内容を記載することが義務化されました。

項目

記載内容

戦略

・人材育成方針

・社内環境整備方針

指標及び目標

・測定可能な指標(インプット/アウトカム)目標及び進捗状況

なお、女性活躍推進法や育児・介護休業法にもとづく情報を公開している企業は、以下の項目についても開示義務があります。

  • 女性管理職比率を
  • 男性育児休業取得率
  • 男女の賃金格差

なお、金融商品取引法に基づいて、約4,000社の上場企業が対象となりました。

参考:人的資本可視化指針|内閣官房 非財務情報可視化研究会

2. 人的資本の情報開示の義務化はいつから?

人的資本の情報開示の義務化は2023年3月期決算となる事業年度の有価証券報告書からです。つまり、2023年3月期決算の有価証券報告書が発表される2023年6月から開示されます。

同時期に有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、人的資本の情報が記載対象になりました。

参考:サステナビリティ情報の記載欄の新設等の改正について(解説資料)|金融庁

3. 人的資本の情報開示が義務化された4つの理由

人的資本の情報開示が義務化された主な理由は4つあります。

  1. ESG投資の普及
  2. 欧米での情報開示義務化
  3. 人的資本の企業価値の向上
  4. ISO30414の公表

それぞれの理由を見ていきましょう。

3-1. ESG投資の普及

環境・社会・企業投資に配慮した企業へ投資するESG(Environment Social Government)投資の普及は義務化の大きな要因です。

近年の投資判断として財務情報だけでなく、非財務情報を投資判断として重視する傾向がESG投資の普及につながっています。

ESG投資する投資家の判断材料として人的資本は「社会」の要素になり、透明性を確保した情報の開示が求められるでしょう。企業が持続可能な成長を遂げるために重要な要素です。

ESG投資を含めESGについての詳細は以下の記事をご覧ください。

【関連記事】:ESGとは?SDGsとの違いやESG投資の種類、企業取り組み事例をご紹介

3-2. 欧米での情報開示義務化

欧米では、すでに人的資本に関する情報開示が義務化されていたことも日本で情報開示が義務化された要因の一つと考えられます。欧米には日本より早くから人的資本の情報開始に関する法規制が存在していました。

欧米での情報開示義務化の具体的な内容は以下の表のとおりです。

時期

義務化の内容

欧州

2014年

欧州委員会から非財務情報開示指令による「社会・従業員」を含む情報開示を義務づけ

米国

2020年

米国証券取引委員会から上場企業に対する人的資本の情報開示を義務づけ

欧米での情報開示を義務化する動きは、日本を含む他国にも影響を与えたでしょう。

3-3. 人的資本の企業価値の向上

人的資本が企業の無形資産として重要視され、企業価値の向上につながっていることも情報開示の義務化につながる要因の一つです。企業価値の判断が有形資産から無形資産に移行している傾向にあります。

無形資産とされる従業員の能力やスキルなどの人的資本を中心とした情報開示は不可欠です。人的資本の情報開示が企業の競争力や持続可能性に直結するでしょう。

参考:Economic & Social Research No.37 2022年7月|内閣府 経済社会総合研究所

3-4. ISO30414の公表

2018年にISO30414が公表され、人的資本の情報開示に関する国際基準が設定されたことは情報開示の義務化につながりました。これにより、企業は統一された基準に基づいて情報を開示することが促進されました。

ISO30414の詳細については以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】:ISO30414とは?|言葉の定義や誕生した背景について紹介!

4. 人的資本の情報開示に必要な7分野19項目

2022年8月に人的資本の情報開示を求める7分野19項目が内閣官房による「人的資本可視化方針」より公表されました。具体的な内容は以下の表にまとめています。

分野

項目

人材育成

・リーダーシップ

・育成

・スキル/経験

エンゲージメント

・エンゲージメント

流動性

・採用

・維持

・サクセッション

ダイバーシティ

・ダイバーシティ

・非差別

・育児休業

健康・安全

・精神的健康

・身体的健康

・安全

労働慣行

・労働慣行

・児童労働/強制労働

・賃金の公平性

・福利厚生

・組合との関係

コンプライアンス

・コンプライアンス/倫理

7分野の概要について見ていきましょう。

参考:人的資本可視化指針|内閣官房 非財務情報可視化研究会

4-1. 人材育成

人材育成は情報開示に不可欠な分野で、有価証券報告書への記載が義務化されています。企業の競争力を高める重要な要素です。

開示例はスキル支援の内容や研修時間、研修費用、リーダーシップ育成の取り組みが挙げられます。

4-2. エンゲージメント

エンゲージメントは従業員が勤務先に対して、働きがいや満足感をどれだけもっているかを把握できる指標です。企業の生産性と従業員満足度の向上につながります。

情報開示にはストレスチェックや従業員満足度調査、顧客満足度調査などの実施結果を利用するとわかりやすいでしょう。

4-3. 流動性

流動性は人材の流出入に対しての情報であり、人材確保が安定的であることが重要です。優秀な人材を確保できる力や流出しないで長く働ける環境であることが示されます。

離職率や定着率、採用コストなどの情報開示は人材戦略について評価されるでしょう。

4-4. ダイバーシティ

ダイバーシティは多様な人材の受け入れや活用を示します。多様なバックグラウンドをもつ人材が集まることは企業の革新的な成長につながりやすいでしょう。

具体的には男女間の給与差や育児休業の取得率、契約形態による福利厚生の差などを開示します。

4-5. 健康・安全

従業員の健康と安全への配慮は、企業の持続可能な経営をしていくために不可欠です。従業員の健康管理や安全な職場は、従業員の生産性と満足度につながります。

具体的には労働災害の発生率や健康診断などの健康と安全に関する取り組みを開示することが有効です。

4-6. 労働慣行

労働慣行は企業と従業員が公正な関係を築いて維持しているかを示します。公正な労働慣行は従業員からの信頼につながるでしょう。

労働時間や休暇制度、福利厚生の充実などは労働環境に対する前向きな取り組みを示しています。

4-7. コンプライアンス/倫理

コンプライアンスは法令遵守を指し、倫理と含めて企業が社会的責任を果たすために不可欠な要素です。

内部通報制度の運用やハラスメントに対する調査、コンプライアンス研修などの内容や結果を開示します。

5. 人的資本の情報開示で企業が取り組むべき3つのポイント

人的資本の情報開示で企業が取り組むべき3つのポイントは以下のとおりです。

  1. ストーリー性のある情報の開示
  2. 独自性による差別化した情報の開示
  3. 適切に選んだ情報の開示

それぞれのポイントを解説します。

5-1. ストーリー性のある情報の開示

情報を開示する際にはストーリー性をもたせましょう。単純に数値やデータを羅列する記載では、企業価値を向上させたり、ステークホルダーにアピールしたりできません。

企業の経営ビジョンや経営戦略と関連づけたストーリー性のある情報の提供が効果的です。

5-2. 独自性による差別化した情報の開示

ほかの企業と同じような情報開示ではなく、独自の取り組みを盛り込んだ情報を開示しましょう。ステークホルダーへのアピールには情報を開示するにあたって、差別化を図ることも必要です。

ユニークな人材育成プログラムや専門性に特化したスキル支援など、企業独自の取り組みや強みを全面に出した情報の開示が有効でしょう。

5-3. 適切に選んだ情報の開示

人的資本の情報開示では、企業の価値向上やステークホルダーとの相互理解につながる情報を適切に選択することが重要です。すべての情報を開示することは求められていないため、情報を効果的に取捨選択しましょう。

7分野19項目を参考にして、自社の経営戦略やビジョンに沿った適切な情報を選択することが企業価値の向上につながります。

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