変形労働時間制の採用には、届出の提出が必要となります。届出を提出するには、必要書類やあらかじめ就業規則や労使協定で定める項目が存在します。変形労働時間制の届出不備により無効とならないよう、届出の書き方や必要な書類・手続きのフローについてわかりやすく解説します。
変形労働時間制は通常の労働形態と異なる部分が多く、労働時間・残業の考え方やシフト管理の方法など、複雑で理解が難しいとお悩みではありませんか?
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目次
1.変形労働時間制届出の内容
変形労働時間制を導入する際には、変形労働時間制の協定届を提出しなければなりません。この届出には記載すべき項目がいくつもあります。代表的な内容について3つ見ていきましょう。
1-1.対象期間中の1週間の所定労働時間数
変形労働時間制を採用した場合、対象期間中の1週間単位の所定労働時間数が必要となります。
法定労働時間は1週間に40時間ですが、変形労働時間制を採用すると一時的にこの法定労働時間を超えることがあり得ます。閑散期もしくは繁忙期の1週間の所定労働時間数を記載する必要があります。
1-2.対象労働者数
変形労働時間制の届出には、対象となる労働者の数を記載する必要があります。
すべての従業員が対象になるのであればその旨を、特定の業務に携わる従業員が変形労働時間制の対象になる場合にはそのように記載しなければなりません。
1-3.対象期間の総労働日数
変形労働時間制は、閑散期と繁忙期を考慮して労働時間を設定する制度なので、対象期間の設定が必要となります。
閑散期と繁忙期は具体的にいつからいつまでなのかを把握して記載しなければなりません。
2.変形労働時間制において必要なもの
変形労働時間制を導入する際、届出以外にも必要なものがあります。
法令に従って変形労働時間制を採用するために、どんなものが必要なのか知っておくとよいでしょう。
では、変形労働時間制を採用する際に必要な3つの書類についてご紹介します。
2-1.労使協定と協定届
変形労働時間制は、経営者の判断で勝手に導入できるものではありません。労働組合と協議し、労働者側に納得してもらったのちに導入が可能となります。
労使協定についても、労使間で納得がいくまで協議をおこない、その後協定届を作成して労働基準監督署に提出しなければなりません。ただし、1ヶ月単位の変形時間労働時間制について就業規則で定めた場合は、すでに労働基準監督署に提出していますので、届出は不要です。
2-2.就業規則
就業規則に変形労働時間制についての記載があるものはそれほど多くないでしょう。
したがって、変形労働時間制を導入する際には、就業規則に変更を加えなければなりません。
就業規則に変更を加えた場合には必ず労働基準監督署への届出が必要となります。
さらに、就業規則の変更に伴い、労働者代表の意見書を添付する必要もあります。
2-3.勤務カレンダー
変形労働時間制の届出のためには、勤務カレンダーも必要です。
勤務カレンダーには、閑散期と繁忙期における労働日や労働時間が明記されていなければなりません。
実際に変形労働時間制の影響を受ける従業員が、一日の所定労働時間数1年のうちの労働日を知ることができるようにするためです。
さらに、労働日や労働時間を明記することで、1年間の法定労働時間や1週間の平均労働時間を算出するのが容易になり、法律に従っていることを示せます。
3.変形労働時間制届出を提出する手続き・流れについて
変形労働時間制届出を提出するためには、しっかりとした準備が必要です。あいまいなまま届出だけを提出して運用を始めると、大きなトラブルの原因となります。
では、変形労働時間制届出を提出する流れについて見ていきましょう。
3-1.現在の労働状況の調査
まず、会社での労働状況を正確に調べなければなりません。
いつの時期に残業代が多く発生しているのか、繁忙期はいつなのか、変形労働時間制を導入して状況は改善するのか、対象期間中の所定労働時間数はどのくらいがよいのかといった情報を調査します。
3-2.対象者の決定
調査が完了したら、今度は変形労働時間制を適用する対象者を決定します。
繁忙期に残業が多くなりがちな従業員は誰かを見極め、どのように変形労働時間制を適用すればよいかを検討すべきでしょう。
3-3.就業規則
就業規則に変形労働時間制に対応したものは多くありません。
変形労働時間制を導入する際には、就業規則の変更が必要になることがほとんどです。
就業規則の変更はなかなか大変ですが、就業規則にない変形労働時間制を導入することはできません。
就業規則で追記すべき点としては、下記の項目が挙げられます。
- 対象期間
- 対象者
- 変形労働時間制の起算日
- 変形期間中の各週の労働時間
- 特定期間
- 毎日の始業・終業時刻
- 労使協定の有効期限
3-4.労使協
1年単位の変形労働時間制を導入する場合、労使協定の締結が必要となります。就業規則に書かれていることを書面にまとめれば内容は問題ありません。
労使協定の締結のみであっても変形労働時間制を導入することは可能ですが、就業規則の変更も対応しておいた方がよいでしょう。
加えて、労使協定には有効期間があり、有効期間が満了したら再度作り直す必要があります。
3-5.変形労働時間制に関する協定届の提出
労使協定の締結まで終わったなら、「変形労働時間制に関する協定届」に記入して提出します。変形労働時間制の届出を提出するのは、会社の住所地を管轄している労働基準監督署です。
労使協定の有効期限に注意し、必要であれば有効期限が満了する前に更新するようにしましょう。
添付書類として労使協定、勤務カレンダーなども提出しなければなりません。
加えて変形労働時間制の導入により、残業や休日出勤などが発生することが分かっているのであれば、36協定を併せて提出しましょう。
3-6.従業員に制度内容を周知
就業規則の更新・労使協定の締結をおこなったあとは、必ず従業員へ周知をおこないます。
周知方法としては、社用メールなどで伝達するほか社内SNS、目のつきやすい箇所へ掲示するなど、全従業員がいつでも規則が確認できるようにおこなうことが求められます。
4.変形労働時間制に関する協定届の書き方
変形労働時間制の届出は頻繁に書くものではないので、書き方を知らない方も多いことでしょう。
書式自体は厚生労働省のホームページからダウンロードできますが、具体的な書き方についてご紹介します。
4-1.会社の基本情報
最初に埋めるべきなのは、会社の基本情報です。
会社の名前、所在地、事業の種類、役員以外の労働者数(常時使用する労働者数)を記載します。
パートやアルバイトであっても、雇用契約を結んでいるのであれば労働者数に含めなければなりません。
4-2.旧協定についての記載
変形労働時間制を初めて導入するのではなく、すでに導入していた企業の場合、旧協定についての概要を記載します。旧協定の対象期間や総労働日数、最も労働時間が長い日・週の労働時間などです。こちらは前回届け出た協定の内容を記載すれば問題ありません。
3-4.労使協定の概要について記載
最後に今回締結した労使協定の内容について記載します。
変形労働時間制の対象者、対象期間、有効期間、労働時間数などの項目があります。
この部分を記入する際に、対象期間における1週間の平均労働時間が40時間以下になっているかを確認しておきましょう。また、1年単位の変形労働時間制を導入する場合、週52時間の最大労働時間数や1日10時間の上限内で労働時間を設定する必要があります。
4-4.変形労働時間制に関する協定書の記入例
協定書変形労働時間制に関する協定書の記入例に関しては、厚生労働省の公式サイトにて展開されています。
1ヶ月・1年単位の変形労働時間制の記入例がそれぞれ公開されているため、自社に導入する方のリンクからご確認ください。
参考:主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省
参考:1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届|厚生労働省
参考:1年単位の変形労働時間制に関する協定届|厚生労働省
5.変形労働時間制の手続きが不十分の場合は無効に
変形労働時間制に関する就業規則の作成、労使協定の締結、届出や協定書など、変形労働時間制を導入するためには、複数の手続きの工数が発生します。
ただこれらに不備が発見された場合・正しく運用がおこなえていない場合には、制度が無効化してしまう恐れがあります。
制度を採用しメリットを享受できるよう、手続きには細心の注意を払いましょう。
6.変形労働時間制には届出が必須!規則の見直しや労使協定の締結も忘れずに
変形労働時間制は労働時間を変則的にできる便利な方法であるものの、必ず届出が必要となります。
綿密な調査をおこない、必要書類を整えることで、スムーズに導入できるよう心がけましょう。
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