年末が近づくと、年末調整として会社に提出する書類が多くなります。
その一つである「配偶者控除等申告書」は、扶養控除等(異動)申告書と内容が類似しているため、記載方法を誤りやすいです。
本記事では、配偶者控除等申告書の概要および作成方法、注意点についてわかりやすく解説しています。
記事を読んで、事前に理解しておくことで、年末調整をスムーズに進められるようになるでしょう。
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1. 配偶者控除等申告書とは?
配偶者控除等申告書は、「配偶者に関係する控除」を受けるために必要な書類で、年末調整のタイミングで提出します。
要件を満たした上で書類を提出することで、配偶者控除や配偶者特別控除などを受けることが可能となります。
上記の控除は、申告者の対象期間内(その年の1月1日から12月31日)の合計所得金額の見積額が1,000万円以下かつ、同一生計の配偶者の対象期間内の合計所得金額の見積額が133万円以下の場合にのみ控除の対象となります。
そのため、独身や共働きで配偶者控除の対象とならない場合や、専業主婦(夫)や控除の対象となる配偶者本人は、配偶者控除等申告書を提出する必要はありません。
とはいえ、会社としては従業員の控除適用の状況を把握しておきたいため、基本的には対象となる従業員は全員提出が求められるケースが多いです。
1-1. 2020年から用紙が変更された
配偶者控除等申告書は、2020年から提出用紙が変更となりました。
具体的には、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という用紙に統一されました。
この用紙の左側の一部分が「配偶者控除等申告書」に該当します。
配偶者控除等申告書含め、各記載項目の内容は、以前の様式と大きな変更点はありません。
「配偶者控除等申告書」の欄には、配偶者の氏名や個人番号(マイナンバー)、生年月日などの個人情報を記載します。
配偶者の合計所得金額の見積額および、申告者の合計所得金額の見積額から、配偶者控除や配偶者特別控除の金額を割り出します。
本記事の後半に、配偶者控除等申告書の書き方について詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
1-2. 配偶者控除等申告書と扶養控除等(異動)申告書との違い
配偶者控除等申告書と似た書類として「扶養控除等(異動)申告書」が存在します。
上記2つ書類はどちらとも、配偶者に関係する控除を受けるための書類となっており、同じような書類を書く意味について疑問に感じる方もいるのではないでしょうか?
結論から述べると、配偶者控除等申告書と扶養控除等(異動)申告書は、申告する役割が異なります。
配偶者控除等申告書の場合は、「その年の扶養控除に関する年末調整に必要な書類」なので、記載内容は配偶者に関する情報のみであり、子どもなどの扶養親族に関する情報を記載する必要はありません。
一方で、扶養控除等(異動)申告は、「毎月の給与から扶養に関する控除を受けるための書類」なので、配偶者の情報だけでなく扶養親族の情報も詳細に記載する必要があります。
上記2つの書類は、どちらも年末調整のタイミングで毎年提出する必要があります。
しかし、扶養控除等(異動)申告は例外として、下記の場合も再提出しなければいけません。
- 新しい職場へ就職または転職した場合
- 扶養控除等(異動)申告書の記載内容に変更がある場合
関連記事:扶養控除等(異動)申告書とは?書き方を項目別に紹介
また、扶養控除等(異動)申告は提出義務がありますが、配偶者控除等申告書は対象外である場合は提出する必要がないのも大きな違いでしょう。
このように、年末調整では書類ごとに企業が対応すべきことが異なります。年末調整は税金や給与にかかわる重要な業務であるため、正しく書類の手続きをおこなう必要があります。当サイトでは、複雑な年末調整の書類作成方法や企業が対応すべきことを時系列ごとにまとめたガイドブックを無料でお配りしています。年末調整業務を流れとともに理解したい方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードしてご活用ください。
2. 配偶者控除等申告書の作成方法
本章では、配偶者控除等申告書の作成方法について詳しく解説します。
配偶者控除等申告書の記入部分は下記5つです。
- 配偶者の氏名、個人番号など
- 配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算
- 判定及び区分II
- 控除額の計算
- 配偶者控除の額又は配偶者特別控除の額
各項目ごとに詳しく解説していますので、記事を参考にしっかりと理解しておきましょう。
2-1. 配偶者の氏名、個人番号など
配偶者の氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー)など、配偶者の個人情報を記入します。
配偶者が非住居者の場合は、「非住居者である配偶者」の欄に丸をつけ、「生計を一にする事実」の欄に送金金額等を記載しましょう。
2-2. 配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算
配偶者の本年中の合計所得金額の見積額を記載します。合計所得金額は、給与の収入金額がわかれば算出できます。
2-3. 判定及び区分II
「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算」で算出した、合計額と配偶者の生年月日をもとに「判定」の欄の該当箇所をチェックし、対応する記号を「区分II」の欄に記入します。
2-4. 控除額の計算
「控除額の計算」の表に区分Iの判定結果と、区分IIの判定結果を当てはめます。
上記から、配偶者控除額または配偶者特別控除額を求めましょう。
2-5. 配偶者控除の額又は配偶者特別控除の額
「控除額の計算」で控除額を求めたら、「配偶者控除の額」または「配偶者特別控除の額」の欄にその金額を記載して、配偶者控除等申告書の記入は完了します。
3. 配偶者控除等申告書を作成するときの注意点
前述したとおり、配偶者控除等申告書を提出すれば、誰でも配偶者に関する控除を受けられるわけではありません。
要件や記載内容が細かく定められているため、本記事を読み返して理解しておきましょう。
また、配偶者控除等申告書で記載に誤りがあると発覚した場合は、必ず提出した勤務先へ連絡しましょう。早い段階で気付けば修正したものを再提出できるかもしれません。
一方で、気付くのが遅かったり、勤務先によっては、自分で確定申告するように指示がある場合もあるので、配偶者控除等申告書を提出する前には入念な確認を怠らないようにしましょう。
3-1. 配偶者控除等申告書に誤りがあった場合の対応方法
従業員から提出された配偶者控除等申告書に誤りがあった場合、誤りが発覚した時期によって対応方法が異なります。
誤りが発覚した時期が年末調整が終了するまで(源泉徴収票を発行するまで)であれば、企業側が従業員から正確な情報を聞き取った上で年末調整の修正をおこないます。
一方、誤りが発覚した時期が年末調整が終了し、源泉徴収票を発行し終わったタイミングだった場合は企業側での年末調整の修正はできないため、2月16日から3月15日の間に従業員自身に確定申告をおこなってもらう必要があります。
誤りが発覚したタイミングが遅かった場合、従業員が確定申告しなければならないので、できるだけ早い段階でチェックすることが重要です。
3-2. 配偶者控除から外れる場合の対応方法
配偶者が就職した、年間収入が130万円を超えた、配偶者と離婚した、死別したなどの理由で配偶者控除から外れる場合に必要な対応は、扶養の削除手続きのみです。
そのため、配偶者控除等申告書には、その年の12月31日時点の情報を書けば問題ありません。ただし、年末調整の書類回収後から12月31日までの間に、従業員の配偶者の収入が急激に増えた場合、死亡・離婚したなどの場合は年末調整のやり直しが必要になる場合があります。
年の途中で死別をした場合は、その時点までの配偶者の収入金額に応じて控除できるかどうかを判断します。
年の途中で離婚した場合は、その年の配偶者控除は適用されなくなります。
なお、扶養削除の手続き方法に関しては以下の記事をご覧ください。
関連記事:社会保険の扶養範囲や扶養の手続き方法についてわかりやすく解説
4. 配偶者控除等申告書は控除対象などを確認の上、提出しよう
本記事では、配偶者控除等申告書の作成方法および注意点について解説しました。
配偶者控除等申告書は、「配偶者に関係する控除」を受けるために必要な書類で、年末調整のタイミングで提出します。
要件を満たした上で書類を提出すれば、配偶者控除や配偶者特別控除などを受けることが可能となります。
一方で、配偶者に関係する控除の対象ではない場合は、配偶者控除等申告書を提出する必要はありません。
控除の対象であるかは事前に確認しておくと良いでしょう。
配偶者控除等申告書を提出するタイミングは、忙しい年末であるため、本記事を参考に作成方法を理解し、スムーズに提出できるように準備をしておくことが大切です。
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