賃金台帳は、法律によって作成と保存が義務付けられている重要書類のひとつです。記載事項が細かく決められているだけではなく、保存期間や管理方法についてもルールがあるため、しっかりと理解しておきましょう。
この記事では、賃金台帳の保存期間や違反した場合の罰則、管理上の注意点についてわかりやすく解説します。労働基準監督署から指摘されたり、罰金が科せられたりしないよう、チェックしておきましょう。
関連記事:賃金台帳とは?記載事項や具体的な書き方、保管期間を詳しく解説!
「賃金台帳の作成方法や保管期間などがあっているか不安」
「賃金台帳を作成していない場合のリスクを知りたい」
など賃金台帳の取り扱いに関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは、『賃金台帳の作成ガイドブック』を無料で配布しております。記載する際に必要な項目や具体的な記入例をまじえながら、作成手順を詳細に解説しています。
適切な保管期間や賃金台帳の基礎ついても詳しく紹介していますので、「法律に則って適切に帳簿を管理したい」「賃金台帳の基本を確認しておきたい」という担当者の方は、大変参考になる内容となっています。
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目次
1. 賃金台帳の保管期間は5年!起算日にも要注意
賃金台帳の保管期間は、労働基準法第109条によって5年間と定められています。[注1]
以前は3年間でしたが、2020年4月の法改正によって3年から5年へと延長されました。
ただし、当面の間の保管期間は3年間に据え置かれています。とはいえ、3年間というのはあくまでも経過措置であるため、将来的には5年間の保管が必要になるということは覚えておくべきでしょう。
また、賃金台帳のみの場合は保存期間は5年と設定されていますが、賃金台帳を源泉徴収簿と兼用している場合には、保存期間は7年となるため注意が必要です。
源泉徴収簿とは、月々の給与や賞与、社会保険料・雇用保険料などの源泉徴収額等を記載するものです。法律による作成義務はありませんが、所得税の算出に使用することが一般的です。
1-1. 保管期間の起算日は最後に賃金台帳に記載した日
賃金台帳の保存については、起算日に注意しなければなりません。保存期間の起算日は、賃金台帳に最後に記入した日です。ただし、給与の支払日が最後に記入した日よりも後である場合は、給与の支払日が起算日となります。
従業員ごとに賃金台帳を作成している場合は、従業員が退職した際に支払った給与を記載した日から換算しますが、従業員ごとではなく、例えば全従業員分の賃金を一つの賃金台帳にまとめて年度単位で締めて管理している場合には、年度末が「従業員の賃金を最後に記入した日」となります。賃金台帳を作成した日などとは異なるため注意しましょう。
また、保管期間の起算日は、書類によっても異なります。たとえば労働者名簿の場合、保存期間の起算日は、労働者の死亡や退職・解雇の日です。
災害補償に関する書類の場合は、災害補償を終えた日が起算日となります。書類ごとに保存期間の起算日は異なるため、混同しないように注意しなければなりません。
2. 賃金台帳の保管期間に違反した際の罰則
賃金台帳の保存期間が過ぎる前に破棄したり紛失したりすると、罰則を受ける可能性があります。賃金台帳に記載すべき項目が抜けている場合や、更新を怠っている場合も同様です。状況によっては30万円以下の罰金が科せられるケースもあるため注意しましょう。
2-1. 賃金台帳を保存していないと労働基準監督署から是正勧告を受ける
賃金台帳は、定期的に提出するような書類ではありません。ただし、労働基準監督署による臨検監督などでは提出する必要があるため、しっかりと作成したうえで適正に保存しておくことが大切です。
臨検監督とは、労働環境や賃金の支払い状況に関する抜き打ち検査のことです。賃金台帳などの重要書類が正しく作成されているかもチェックされます。記載事項が抜けている、保存期間の違反がある、といった場合は前述のとおり罰則の対象となるため注意しましょう。
とはいえ、かなり悪質な場合を除き、いきなり罰則が科せられることはありません。是正勧告を受けるケースが一般的で、労働環境の改善や賃金台帳の修正などを求められます。賃金台帳の記載事項や保存方法について指摘を受けた場合は、すみやかに改善して是正完了の報告をしましょう。是正勧告を無視すると、実際に罰則を科せられてしまいます。
このような罰則を受けないためには、事前に法律に則った賃金台帳の保存方法を理解しておく必要があります。当サイトでは、賃金台帳の作成・保存方法を解説したガイドブックを無料で配布しています。賃金台帳に関する知識をこれ一冊で理解できるため、適切に賃金台帳を作成・保管したい方は、こちらからダウンロードしてご活用ください。
3. 賃金台帳の保管方法に関する5つのポイント
賃金台帳を正しく保管するうえでは、更新日を記載しておく、事業所ごとに保存する、といったポイントに注意しましょう。以下、それぞれの注意点について詳しく解説します。
① 賃金台帳に更新日を記載しておく
保存期間を間違えて破棄しないよう、賃金台帳に更新した日付を書いておくとよいでしょう。保存期間の起算日は最後に記入した日であるため、更新日を書いておくことで管理を効率化しつつ、間違いを防止することができます。
② 賃金台帳はデータとして保存することも認められている
賃金台帳は、無理に紙ベースで作成して保存する必要はありません。パソコンで作成して、データとして保存することも認められています。[注3]
ただし、以下のような条件を満たしたうえで保存しなければなりません。
(1) 労働基準法で定められた記載事項を網羅していること
(2) 必要に応じてパソコン上に表示したり印刷したりできること
(3) 誤って消去されないよう保護されていること
(4) 長期間にわたって保存できること
業務効率化やペーパーレス化を図るために、賃金台帳をデータとして保存している企業も多いでしょう。データで保存するときは、誤って消去したり、パソコンの故障によりデータが消えてしまったりするケースもあります。必要に応じてバックアップを取るなど、安全な方法で管理していきましょう。
③ 賃金台帳は事業所ごとに保管する必要がある
労働基準法108条の定めにより、賃金台帳は、支社や事業所ごとに保存しなければなりません。各事業所で、従業員の労働環境や賃金の支払い状況を確認する必要があるからです。本社でまとめて作成して保存しているという場合は、支社や事業所にも賃金台帳を置くようにしましょう。
賃金台帳をパソコンで作成し、データとして保存している場合も、支社や事業所へ配布しておく必要があります。クラウド上のサーバーなどに保存しておき、どこからでもアクセスして表示したり印刷したりできる方式も認められています。自社の規模や状況に応じて、最適な方法を選択しましょう。
④ 賃金台帳はいつでも閲覧・提出できるような状態にしておく
賃金台帳は、紙で保存する場合でもデータとして保存する場合でも、いつでも提出できるような状態にしておくことが大切です。単純に書式があるだけではなく、最新の状態に更新していく必要もあります。基本的には、給与の支払いごとに更新していきましょう。
賃金台帳は、労働基準監督署に提出を求められる場合もあります。焦ることがないよう、随時更新して、すぐに対応できるようにしておくことが重要です。便利な勤怠管理システムなどを導入すると、更新作業を効率化することができるでしょう。
関連記事:賃金台帳の写しが必要なケースとは?写しで対応できないケースや注意点を解説
⑤ 賃金台帳の管理担当者への教育をしっかりおこなう
賃金台帳の管理担当者への教育も大切です。賃金台帳の保存期間を間違えて破棄してしまったり、更新を忘れたりすることがないよう、担当者へしっかりとルールを共有しておきましょう。
賃金台帳の管理に関するマニュアルを作っておくのもよい方法です。管理担当者のミスを防止できるような環境を構築しておきましょう。担当者が変更となるときは情報伝達がおろそかになりがちなため、丁寧に引き継ぎをおこなうことが大切です。
5. 電子データで保存するときの注意点
賃金台帳を電子データで保存する際は、いくつか気をつけておくべきポイントがあります。
まず、賃金台帳を電子データで保存する場合は次の要件を満たす必要があります。
- 法令で定められた要件を満たした書類を画面上に表示し、印字できる
- 労働基準監督署による調査などの際、必要事項を速やかに明らかにでき、提出可能なシステムである
- 誤って消去されない環境下で保存する
- 長期にわたって保存が可能
また、セキュリティ面への配慮も重要です。保存義務のある情報を安全に管理するために、
- IDやパスワードを設定する
- アクセス権限を付与する
- イントラネットを活用する
といった対策を講じ、セキュリティ確保に努めましょう。
また、電子データで賃金台帳を保存する場合、うっかりデータを削除してしまったり、データが壊れてしまったりするリスクもあります。そのため、もしものときに備えてバックアップ体制を整えておくと安心です。
参考:労務関係の書類をパソコンで作成して保存したいのですが、可能でしょうか。|厚生労働省
6. 賃金台帳の保存期間に関連したよくある質問
ここからは、賃金台帳の保存期間に関してよくある疑問を紹介します。
タイムカードの保存期間や、日雇い社員の賃金台帳の保存期間について解説します。
6-1. タイムカードの保存期間は何年?
タイムカードは、従業員の出退勤時刻を記録するためのカードを指します。保存期間は、5年(当分の間は3年)となります。
なぜなら、タイムカードは労働基準法第109条で定められた「労働関係に関する重要な書類」に該当するためです。紙での保管は場所が取られるほか、すぐに取り出すことが難しい等のデメリットがあるため、勤怠管理システム等で電子化して管理すると便利です。
6-2. 日雇い社員も賃金台帳の保存は必要?
日雇い社員においても、賃金台帳の保存は必要であり、通常と同様に5年間の保管が義務化されています。
とはいえ、賃金台帳の必須記載項目は一部異なるため、詳細を確認したい場合には、下記記事をご活用ください。
7. 賃金台帳は5年間しっかりと保存しよう!
今回は、賃金台帳の保存期間や違反した場合の罰則、保存上の注意点などを解説しました。
賃金台帳を適切に保管することは、従業員を雇用するすべての事業者の義務です。労働基準法に違反した場合は、罰金が科せられることもあります。「従業員の賃金を最後に記入した日」から起算して5年間(当面の間は3年間)という保存期間をしっかり守るようにしましょう。労働基準監督署などの調査で賃金台帳の提出を求められる可能性もあるため、必要に応じてすぐに閲覧・提出できる状態で管理しておくことが大切です。保存にあたっては、セキュリティ面にも十分注意しなければなりません。また、誤って書類やデータを処分してしまうことのないよう、最終記入日を記録するほか、アクセス権限の付与やバックアップなどで管理システムを整えるといった対策を講じておくことがおすすめです。
賃金台帳に関する正しい知識を備えたうえで、適切な管理を心がけましょう。
「賃金台帳の作成方法や保管期間などがあっているか不安」
「賃金台帳を作成していない場合のリスクを知りたい」
など賃金台帳の取り扱いに関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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適切な保管期間や賃金台帳の基礎ついても詳しく紹介していますので、「法律に則って適切に帳簿を管理したい」「賃金台帳の基本を確認しておきたい」という担当者の方は、大変参考になる内容となっています。
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