2019年に「人手不足を感じる」と回答した企業は、53%にのぼることをご存知でしょうか。
帝国データバンクが回答を得た9,856社中、実に半分以上の企業が人材不足を実感しています。このような状況で、近年注目が集まっているのが「外国人採用」です。
しかし、外国人採用を耳にしたことはあっても「自分たちとは縁が遠い」「外国人採用はいろいろとコストがかかりそう…」と感じる採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ハローワークにも話を伺いながら、外国人を採用する際にご活用いただきたい助成金についてまとめました。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
外国人雇用と助成金|11のポイントと受給できる企業の条件
こちらでは、助成金を申請する前におさえておきたい11のポイントと、助成金が利用できる企業/できない企業の条件をそれぞれご紹介します。
1-1.助成金でおさえておきたい11のポイント
1.日本人と外国人の区別はない
一部技能実習生や留学生が対象外の助成金はありますが、このような特筆がない限り基本的には従業員の国籍によって支給されないなどの区別はありません。
2.返済不要
融資とは異なるため、不正受給などの理由がない限り受け取った助成金を返済する必要はありません。
3.助成金は厚生労働省、補助金は経済産業省の管轄
「雇用の増加、人材育成」を目的とする助成金に対して、補助金は「事業を通した公益の創出」を目的とするものです。
4.財源は雇用保険
厚生労働省が管轄している助成金は、企業で働く皆さんが納める雇用保険を財源としています。つまり、助成金を活用しないのは「払うだけで受け取らない」というもったいないことです。
5.大別すると「雇用関係」と「研究開発関係」の2種類
2つのうち、雇用関係の助成金の方が利用する企業の数が多く、研究開発関係の助成金の方は利用する企業の数が非常に限られています。
6.雇用関係の助成金は大きく分けると19種類
さらに細かく分けていくと、助成金によっては1つに複数のコースが用意されているため、62種類にものぼります。
7.条件を満たせば受給できる
申請が通過する難易度でいうと、受給金額が大きく、かつ受給者が選定される補助金に比べて、条件を満たせば受け取ることができる助成金の方が難易度がやや低いということができます。
8.原則通年で申請ができる
申請期間がそれぞれで決まっている補助金に対して、助成金は通年で申請をおこなうことができます。
9.受け取るまでに時間がかかる
ほとんどの助成金の支給が1年~1年半後であるため、緊急で助成金が必要な事業所にはおすすめしません。
10.中小企業は支給額で優遇される
以下の中小企業の定義にあてはまる企業は、支給額で優遇を受けることができます。
産業分類 | 資本または出資額 | 常用雇用する労働者数 | |
小売業 (飲食業を含む) |
5,000万円以下 | または | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | |
その他業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
11.助成金の活用は企業への信用にもつながる
労働関係の法令に違反があると、助成金は受け取ることができません。つまり、助成金を受け取ることができる=法令違反がない会社、というアピールにもなります。
1-2.助成金が受給できる事業主
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 支給のために必要な審査に協力すること
①支給/不支給を決定するために必要な書類などを整備・保管している
②必要な書類の提出を求められたときに応じる
③労働局などによる実施調査を受け入れる
- 申請期間内に申請すること
1-3.助成金が受給できない事業主
- 不正受給から3年以内の支給申請の場合
- 申請日後から決定日までの間に不正受給をした場合
- 支給申請日の年度の前年度より前に保険年度の労働保険料を納入していない場合
- 支給申請日の前日から1年前までの間に労働関係法令違反があった場合
- 性風俗関連、接待を伴う飲食店営業、これらの営業を一部委託する営業をおこなう場合
- 暴力団関係事業の場合
- 支給の申請日もしくは決定日の時点で倒産している場合
- 不正受給が発覚した場合の事業主名などの公表について同意していない場合
おすすめの助成金と申請方法
外国人を採用するときに活用したい助成金についてご紹介します。
ポイントでもご紹介したように、基本的に助成金は日本人社員、外国人社員の分け隔てなく利用することができます。
また非常に種類が多いため、今回は以下4つの条件をもとに選定した助成金をご紹介します。
- 「新卒/中途の若手外国人を新しく正社員採用するときに使える」
- 「対象業種が限定的ではない」
- 「新卒/中途の若手外国人を新しく正社員採用するときに使える」
- 「身体/精神面での条件がない」
2-1.人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)
働き方改革に取り組むために、新たに労働者を雇用した中小企業が一定の雇用管理改善を実現した場合に支給されます。
条件 | 「雇用管理改善計画」を計画し、1年間実施した場合に「計画達成助成」が、計画実施から3年後に生産性向上や雇用の増加を実現した場合は「目標達成助成」が受けることができます。 |
支給額 |
※生産性要件を満たした場合 |
対象求人 | 外国人も対象で、特に規定はありません。 |
申請方法 |
①「雇用管理改善計画(計画期間は1年間)」の作成、計画開始月の初日から6カ月前~1カ月前の前日の間に提出する ▼「計画達成助成」の場合 ②計画終了日の翌日~2カ月以内に、必要書類を管轄の労働局へ提出する ▼「目標達成助成」の場合 ③計画終了日の翌日~2年経過後に生産性要件などを満たしている場合、計画開始日から3年経過する日の翌日~2カ月以内に必要書類を管轄の労働局へ提出する ※「必要な書類」は労務局への問い合わせが必要です |
詳細 |
2-2.中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)
中途採用者の雇用管理制度(労働時間、休日、雇用契約期間、評価制度、福利厚生など)を整備した上で、中途採用者の採用を拡大した場合に支給されます。
条件 |
「中途採用拡大助成金」「生産性向上助成金」の2つがあります。 ▼「中途採用拡大助成金」 雇用管理制度を整備した上で、中途採用を計画した1年間のうちに中途を2名以上雇用し、計画期間初日の前日から過去3年間と比較して、中途採用の数が20%増加した場合に支給されます。 ▼「生産性向上助成金」 中途採用拡大助成金を受けた事業主のうち、計画を開始する会計年度の前年度~3年度後までの間に、生産性が6%以上伸びている事業主に支給されます。 |
支給額 |
|
対象求人 | 雇用保険の一般被保険者であり、期間の定めのない労働者として中途採用された者。海外または日本での就労経験がある外国人も対象となります。 |
申請方法 |
▼「中途採用拡大助成金」の場合 ①「中途採用計画」と必要書類を、計画初日の前日~6カ月前の間に管轄の労働局へ提出する ②計画終了日から6カ月経つ日の翌日~2カ月以内の間に「支給申請書」と必要書類を管轄の労働局へ提出する ▼「生産性向上助成金」の場合 計画を開始する会計年度の前年度から3年度後の会計年度末日の翌日~2カ月以内に、必要な書類を管轄の労働局へ提出する。 ※上記どちらにおいても「必要な書類」は労務局への問い合わせが必要です |
詳細 |
2-3.トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
職業経験、技能、知識の不足などが理由で安定的に就労することが難しい求職者を、ハローワークまたは民間の人材紹介会社などの紹介で、一定期間試行雇用する場合に支給されます。
条件 |
対象労働者は、「トライアル雇用助成金を理解したうえで、トライアル雇用による雇い入れに同意している者」であることのほかにも、詳細な条件が決まっています。 そのため、以下の「詳細」をよく読み、該当する労働者であるかの確認が必要です。 |
支給額 |
厚労省が若者雇用促進法に基づき、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業に送る「ユースエール企業」に認定された事業主が35歳未満の人をトライアル雇用する場合は、以下の金額になります。
※支給対象期間中の各月の月額の合計額がまとめて1回で支給されます |
対象求人 |
外国人雇用の場合は、「離職している期間が1年を超えている者」に既卒の留学生が該当します。 ※2019年3月卒予定の者が同年1月までに内定がない状態の場合も対象となります |
申請方法 |
申請方法は 大きく分けて2つのフローがあります。 ①トライアル雇用の開始日から2週間以内に、「トライアル雇用実施計画書」「雇用契約書など労働条件が確認できる書類」「職業紹介証明書(民間の人材紹介会社などを利用した場合)」を提出する ※提出先は、人材紹介会社の場合はトライアル雇用をおこなう雇用保険適用事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワーク ②トライアル雇用の終了日の翌日から2カ月以内に、「トライアル雇用結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書」と、必要な書類を管轄の労働局へ提出する ※「必要な書類」は労務局への問い合わせが必要です |
詳細 |
- 人材開発支援助成金(特定訓練コース)
- 人材開発支援助成金(一般訓練コース)
外国人雇用のメリット
外国人を採用するメリットは数多くありますが、実際に外国人採用している企業からあげられることの多い3つをご紹介いたします。
3-1.若手を採用できる
年々日本国内では採用が難しくなっている新卒採用も、外国人採用をすることで若手人材を採用することができる可能性が広がります。
言語面で不安に感じる方も多くいらっしゃいますが、特に外国人採用ランキングのトップにいるアジア諸国から来る外国人たちは日本語が流ちょうな方も多くいらっしゃいます。
また、各種エンジニアリングなど専門知識をもった人材も数多くいるため、日本で出会えなかった人材に海外で出会うことも多くあります。
3-2.国内では採用が難しいトップ大学卒を採用できる
特に中国・韓国など、トップ大学出身の優秀な学生でありながらも、就職難が原因で国内での就職に苦戦している現状があります。
そのような優秀な若者たちが活躍できる場を提供することで、日本国内ではなかなか出会えないような人材を採用することにもつながります。
「海外とのコネクションなく、そのような優秀学生とどのようにして出会えるかが分からない」という方は、現地との強いパイプを持ち、それぞれの企業に合った優秀人材を集客する力のある人材会社などを利用してみるのもいいかもしれません。
3-3.勤勉で真面目な求職者が多い
国や個人の単位でさまざまではありますが、「傾向」としていえるのは、アジア諸国から働きに来る人たちは勤勉である人が多いということです。
理由として、日本が長時間働く文化であることがよく知られている中で、それでもあえて日本を選んで働きに来るからには、それなりの理由を持っているためです。
日本の文化が純粋に好きな人もいれば、日本の得意とする分野でのスキルを身に着けたい人、母国の家族へ生活費を送るために必死に稼ぐ必要がある人、日本の治安や衛生が気に入っている人など、理由はさまざまです。
外国人雇用の注意点
外国人を採用する前に確認しておきたい、必要書類や就労可能な資格、労働基準法上の決まりなどをご紹介します。
4-1.採用/離職時には届け出が必要
外国人を雇用する事業主は、雇用時にハローワークへ該当社員の氏名、在留資格、在留期間などを書いた書類の提出義務があります。届出を忘れると、30万円以下の罰金が課されるため、注意が必要です。
提出する書類の種類は、雇用する予定の外国人労働者が雇用保険の被保険者である/ないによって異なります。
- 雇用保険の被保険者になる場合
①「雇用保険被保険者資格取得届」の提出をして、雇用保険を取得する
e-Govからの電子申請または雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワークでの申請(用紙ダウンロード)をします。
※離職時には「雇用保険被保険者資格喪失届」(用紙ダウンロード)が必要です
②「外国人雇用状況届出書<様式第3号>」の提出をする
ハローワークインターネットサービスからの電子申請または雇用する外国人労働者が勤務する事業所施設(店舗、工場など)の住所を管轄するハローワークで届け出をします(用紙ダウンロード)。
- 雇用保険の被保険者にならない場合
上記②のみをおこないます。
4-2.就労できる在留資格が必要
外国人採用をする際は、就労が許可されている在留資格の取得が必要です。
就労が許可されていない在留資格を持つ外国人や、有効期限の切れた在留資格を持つ外国人が就労していた場合、「不法就労助長罪」で3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が課せられることもあるため、ご注意ください。
このような事態を避けるには、以下の行政書士監修の記事などでしっかりと知識を身につけ、必要事項の確認や書類提出などをおこなうことが重要です。
▼外国人の新卒採用をされる企業様におすすめ▼
おすすめ記事PICKUP! 外国人労働者に必要な就労ビザを解説|基礎知識から申請フロー・必要書類まで 現役行政書士が監修。就労ビザの基礎知識をはじめ、外国人労働者の就労ビザを取得する手続きについてご紹介している記事です。 |
▼外国人留学生の採用をされる企業様におすすめ▼
おすすめ記事PICKUP! 外国人に日本で働いてもらう場合は、留学生であっても働くためのビザの取得が必要とされます。こちらは、パターン別に外国人留学生を採用するにあたって必要なフローについてご紹介している記事です。 |
▼外国人の中途採用をされる企業様におすすめ▼
おすすめ記事PICKUP! 現役行政書士が監修。外国人の転職者の中途採用をおこなう際に注意が必要となる就労ビザの更新手続きの方法などについてご紹介している記事です。 |
4-3.労働基準法は国籍関係なく適用される
「外国人労働者を採用する=人件費をおさえることができる」というイメージのお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、労働者の最低限の権利を定めた「労働基準法」で、給与をはじめ国籍を理由に差別があってはならないことが定められています。
労働基準法を違反した場合、罰則が課されるため注意が必要です。
(男女同一賃金の原則)
4-4.常に10名以上働くときは雇用労務責任者が必要
外国人労働者を常に10人以上雇用するときは、雇用管理の改善をするために、人事課長などから「雇用労務責任者」を決める必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
助成金は基本的に日本人と外国人の区別はありませんが、「外国人の雇用時に活用できる」助成金でいうと「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)」「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」の3つがおすすめです。
まだまだ人手不足を理由に外国人雇用されている企業も多いですが、実際に外国人を雇用しはじめた企業では、さまざまな国から来た労働者が活躍しています。
助成金をきっかけに、外国人採用についてご検討されてみてはいかがでしょうか。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。