今、多くの企業が取り入れ始めている「スクラム採用」という言葉。みなさんはもうご存知でしょうか?「スクラム採用」とは、「社員主導型の採用活動」のことを意味しており、いわゆる全社員が一丸となり取り組む採用方式のことです。
では、なぜさまざまな採用媒体や採用方法がある中で「スクラム採用」が注目されているのでしょうか。本記事では、スクラム採用とは何かを、そのメリットや懸念点などと共に解説していきます。
1|スクラム採用とは?
スクラム採用とは、株式会社HERPが提唱する概念で、「共通のゴール(=採用活動の目標)」に向けて、全社員が一丸となり取り組む採用方式のことです。
以下では、「スクラム採用」をもう少し噛み砕いて説明していきます。
「スクラム」という言葉の意味
「スクラム」というと、ラグビーで試合再開時に肩と肩を組み合わせている姿を想像する方もいるかも多いのではないでしょうか。
実は今、この姿から転じて「全員が一丸となること」「一致団結すること」という、まさに冒頭で説明した内容のような意味として使われることが多くなってきています。
「スクラム採用」とは?
さて、スクラム採用の細かな定義についてご紹介したいと思います。スクラム採用には以下の3つの条件が必要不可欠であるといわれています。
①権限委譲
採用活動のワークフローを分解し、その各フローの権限を最適な社員に委譲するというもの。各職種ごとの最適な採用方法に関して、現場主導でPDCAを回すことも意味します。
②成果の可視化
採用活動を通して得られた成果を社内の全社員にフィードバックすることで、採用担当者を中心に定期的な振り返りができている状況のことです。
③採用担当のプロジェクトマネージャー化
採用担当者が、採用活動という「施策のオーナー」ではなく、採用活動全体の「プロジェクトマネージャー」や「ドメインプロフェッショナル」として機能している状況のことです。採用関連の知識を現場に落とし込む役割を担っています。
また最近では、ソフトウェアの開発手法においても「スクラム」という言葉が使われるようになっているほどです。ソフトウェア開発における「スクラム」とは、優先順位が高く、期間内で完了できる単位のものをサイクルごとにリリースしていくという考え方を指します。
開発完了までの綿密な計画を作成し、その計画通りに開発を進めて計画通りのものを完成させてリリースするという従来の開発スタイルと対比されます。
2|スクラム採用のメリット
あまり耳にする機会の少ないスクラム採用ですが、これを導入することにどのようなメリットが考えられるのでしょうか?以下では、考えられる大きなメリットを3つご紹介します。
①採用力の向上
スクラム採用により、多岐にわたるチャネルからの採用(社員紹介/SNS経由/副業経由など)に対応する機会が増えることで、現在の採用トレンドに合致した効率的な採用活動が可能になります。また、採用担当者の負荷軽減にもつながり、採用活動の質向上に能動的に取り組む余裕も生まれます。
②自社にマッチした優秀な人材との出会い
さまざまなチャネルを通して、全社的に採用に取り組むことになることで「採用担当者だけではリーチすることができなかった層」にアプローチすることができるようになります。
また、現場社員自ら「誰と一緒に働くのか」を意識して採用活動にコミットするので、自社にマッチした人材を採用できるようになるでしょう。
③エンゲージメント向上
エンゲージメントとは、社員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」を意味します。
採用活動を進めていく過程で、自社について語る機会は必ず訪れるといってよいでしょう。求人票の作成、説明会でのPRなどをおこなっていれば、おのずと社員のエンゲージメントは向上します。
これにより、自社の魅力理解が進み採用広報の効率も上がるので、更なる採用力の向上が見込めます。
3|スクラム採用実施に伴う懸念点
しかし、これらをただ実践するだけでは「あまり効果が見込めない」ということが多いようです。では、スクラム採用を導入し成功している企業の共通点は何なのでしょうか?
- 経営陣の採用へのコミットおよび社員の巻き込み
- 採用情報の一元管理
- 現場社員が採用活動に参画しやすい環境づくり
成功企業は少なくとも以上の3つの条件を満たしているようです。
4|スクラム採用の事例
事例① 株式会社ヘイ
人事と現場の役割を明確化し、現場への権限委譲を徹底
同社では、採用を基本的に「各チームの責任」ととらえています。そのため、「どのような人材がほしいか」「どの人材を採用するか」を決めるのは、実際に共に働く各チームの社員であるべき、というスタンスをとっています。
また、一次面接を設定した後は採用管理などのサポートをおこなうようですが、「候補者の惹きつけ」「マッチするか否か判断」はすべて各チームに権限を委譲しています。
事例② PR Table
全社PRパーソンという思想に基づき、採用活動に対して全社で取り組む
同社では、「面接のフィードバックや選考プロセスなどのすべての情報(オファー時の給与を除く)」を全社員に公開しています。具体的に言うと、※HERP上のすべてのコミュニケーションを全社員に公開し、誰でも閲覧できる環境を作っているようです。
また、情報が更新されると関係者へメンション付きで※Slackに通知されるので、見逃すことなく社内のやり取りも円滑におこなえる仕組みがあります。
※Slack→社内チャットアプリケーション
事例③ Fringe81株式会社
全社的な取り組みをプロジェクト化し、人事がPMの役割を担う
同社では、現場主導の採用や組織改革をおこなうため、人事担当者が社内の「工数調整」「スケジュール管理」をして、現場社員が活動しやすいような環境を構築しています。
また、潤滑油的な役割もPM(プロジェクトマネージャー)の仕事ととらえています。例えば、主業務の仕事とサイドプロジェクト(この場合は採用活動)のバランスを、PMが間に入って調整することもあります。
こうした活動は任意です。しかし、同社は社内評価の軸に、「事業部の成果」だけでなく、「組織貢献」も取り入れているため、こうした活動も社内評価につながります。そのため、全社員が採用活動を目標として追いやすい体制が成立しています。
もちろん、上長と社員との面談の中でも、主業務だけでなく、「組織貢献」に対する目標も設定されます。
5|さいごに
いかがでしたでしょうか。今後は徐々に、「人事や採用担当者だけが採用をおこなう時代」から「全社的に採用に取り組んでいく時代」にシフトしていくとも考えられます。
これらは一朝一夕に実践できる取り組みではないかもしれませんが、今後の採用難の時代をかんがみると、現時点からスクラム採用を考慮した組織改革をスタートさせてみると良い結果につながるかもしれませんね。