働き方改革が推進される中で、労働時間に関する制度の見直しがおこなわれています。
見直しにあたって残業時間の上限規制や、有給休暇の取得の義務付けなどが決定され、勤怠管理はますます重要な業務になりました。
人事担当者は、従業員の勤務時間を正確に把握し、働きすぎていないか厳しくチェックすることが求められているでしょう。
人事担当者の中には、従業員に勤怠打刻を徹底してほしいと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
従業員に勤怠打刻を徹底してもらうために、勤怠管理とはどういった業務であるか知ってもらうことも方法のひとつです。
そこで本記事では、勤怠管理でチェックする項目や注意点をまとめました。
働き方改革が始まり、法改正によって労働時間の客観的な管理や年次有給休暇の管理など、勤怠管理により正確さが求められることとなりました。
しかし、働き方改革とひとことで言っても「何から進めていけばいいのかわからない…」「そもそも、法改正にきちんと対応できているか心配…」とお悩みの人事担当者様も多いのではないでしょうか。
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1|勤怠管理でチェックする項目
勤怠管理は、従業員の出勤状況を「勤怠情報」として管理する業務です。
勤怠管理について、労働基準法によると「経営者は、従業員の労働時間を正確に把握し、管理すること」が義務付けられています。
【参考文献】労働基準法 第四章「労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇」
人事担当者が管理しなければいけない勤怠情報は大きく分けて「労働時間」「休日・休暇」の2つです。
1-1|労働時間
労働時間は、本来働くべき労働時間と、何らかの理由があって追加で働いた分の労働時間に分かれています。後者は「残業」「休日出勤」といわれます。
【労働時間の種類】
- 法定時間内労働時間
- 法定時間外労働時間
- 深夜労働時間
- 法定外休日労働時間
- 法定外休日深夜労働時間
- 法定休日労働時間
- 法定休日深夜労働時間
上記のように、種類が細かく分かれており、人事担当者は従業員の労働時間がどの種類にあたるかを区別し、記録しなければいけません。
労働時間で決まる賃金は、労働基準法で定められた法定内労働時間(1日8時間・週40時間)を超えると割増されます。
法定内労働時間を基準に、「どの時間帯・曜日に、何時間多く働いたか」で割増率が変わります。
労働時間と賃金割増率※1ヵ月60時間以下の時間外労働の場合 |
||
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
法定時間内労働時間 | 1日8時間・週40時間以内で労働したとき | 割増不要 |
法定時間外労働時間 | 1日8時間・週40時間を超えて労働したとき | 25%以上 |
深夜労働時間 | 22時から5時までの間に労働したとき | 50%以上 |
法定休日労働時間 | 週40時間を超えたうえで、法定休日(必ず休むべき日)に労働した場合 | 35%以上 |
法定休日深夜労働時間 | 週40時間を超えたうえで、法定休日(必ず休むべき日)の22時から5時までの間に労働したとき | 60%以上 |
法定外休日労働時間 | 企業が決めた所定休日に労働したとき | 25%以上 |
法定外休日深夜労働時間 | 企業が決めた所定休日の22時から5時までの間で労働したとき | 50%以上 |
このように、労働した時間帯だけでなく、休日の種類によっても割増率が変わるため、人事担当者は従業員の労働時間を細かく管理する必要があります。
常に割増賃金が発生する特殊な例として夜勤があげられます。深夜労働時間が適用される夜勤の勤怠管理の方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事がおすすすめです。
複雑な夜勤の勤怠管理の考え方|0時をまたいだ時の勤務日数の数え方
1-2|休日・休暇
勤怠管理では、社員がどれだけ「休日・休暇」を取得しているかを管理します。休日と休暇は、「社員が労働しない日」という点では同じですが、「労働しない」の定義が異なります。
休日は、労働者が労働の義務を負わない日を指します。一方休暇は、従業員が本来労働する義務がある日に、企業が労働義務を免除する日を指します。
有給休暇以外の休暇に賃金が支払われるかどうかは、企業によって異なります。
人事担当者は、従業員が休みになった際、その日が休日なのか休暇なのか、有給なのか無休なのかを区別して記録する必要があります。
休日
休日は、法律で決められている「法定休日」と企業が自由に定める「法定外休日」に分けられます。
法定休日とは、労働基準法により定められた原則「週に少なくとも1回の休日」です。曜日の特定はありませんが、日曜日であることが多いです。
所定休日は、企業が自由に定めることができる休日で、年末年始やお盆休みが所定休日にあたります。
休日の種類 |
|
法定休日 | 所定休日 |
1週間に1日(曜日の指定なし) | 完全週休2日(土曜・日曜) |
国民の祝日 | |
年末年始 | |
お盆 |
休暇
休暇は、法律で決められている「法定休暇」と企業が自由に定める「法定外休暇」に分けることができます。所定休暇は、企業が従業員に与える福利厚生の一環です。
法定休暇には、有給休暇や育児休暇が含まれます。所定休暇は「特別休暇」とも呼ばれ、夏季・冬季休暇や慶弔休暇が含まれます。
所定休暇(特別休暇)については、企業が独自に定めることができます。本記事では、代表的な例を記載します。
休暇の種類 |
|
法定休暇 | 法定外休暇(特別休暇) |
有給休暇 | 夏季・冬季休暇 |
産前・産後休暇 | 慶弔休暇 |
生理休暇 | 結婚休暇 |
育児休暇 | リフレッシュ休暇 |
介護休暇 | 永年勤続休暇 |
振替休日・代休
また、休日の種類の中には「振替休日」と「代休」もあります。
「振替休日」とは事前に休日と決められた日を労働日とし、その代わりに他の日を休日とすることです。
「振替休日」の場合、休日を他の労働日と交換しているだけなので、休日労働扱いではなく、出勤した日がたとえ法定休日であっても、割増賃金を支払う必要はありません。
ただし、休日を翌週に振り替えた結果、週の総労働時間が法定労働時間(40時間)を超えてしまうこともあります。その場合には、超えた部分の労働時間について、時間外労働に対する割増賃金を支払う必要があります。
「代休」は、本来従業員の休日であった日に出勤した場合に、その代償として他の労働日を休日にすることです。このとき、法定休日に労働した場合は、法定休日労働に対する割増賃金を支払う必要があります。
種類 | 働く日 | 休む日 | 賃金 |
振替休日 | 法定休日/ 所定休日 |
本来の労働日 | 週の労働時間が40時間を超えていなければ割増賃金不要 |
代休 | 法定休日/ 所定休日 |
本来の労働日 |
法定休日であれば割増賃金は必要。所定(法定外)休日であれば、上記と同様の取扱い。 ※代休を取ったことにより40時間を超えなければ割増不要。 |
2|勤怠管理で注意が必要なケース
休日出勤には、4つの労働時間の種類があり、それぞれで賃金の割増率が異なります。そのため、従業員が休日出勤をおこなった際の勤怠管理は注意が必要です。
ここでは休日出勤によって勤怠管理に注意が必要になる2つのケースと、その対応方法をご紹介します。
2-1|土曜日と日曜日のどちらかに出勤したとき
曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
労働 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 22時 |
なし |
法定休日を日曜日に特定している企業で、土曜日に9時から22時まで労働したケースです。
すでに労働時間が週40時間に達しているため、土曜日に働いた時間はすべて法定時間外労働となります。割増率については、日曜日に休んでいるため、週1日の法定の休日を確保できていると考えられます。
つまり、このケースでは、土曜日に出勤した分は休日労働ではなく、週40時間を超える時間外労働として25%増しとなります。
2-2|法定休日の前日から徹夜で仕事したとき
労働日 | 法定休日の前日 | 法定休日の当日 | |||
労働 時間 |
9時 ~ 18時 |
18時 ~ 22時 |
22時 ~ 0時 |
0時 ~ 5時 |
5時 ~ 7時 |
種類 | 所定労働 | 所定外 労働 |
所定外 深夜労働 |
法定休日 深夜労働 |
法定休日 労働 |
法定休日の前日に日をまたいで、朝まで労働したケースです。
前日の8時間労働は時間外労働にはならないため、割増賃金はありません。18時から22時までは、通常の時間外労働として割増率が25%、22時からは深夜時間帯となり、さらに25%プラスして割増率が50%となります。
なおかつ、0時からは法定休日労働となるため、法定休日労働分35%に加えて深夜労働分の25%が上乗せされ、60%の割増率となります。
5時からは深夜時間帯が終わるため、7時までの割増賃金率は法定休日労働分の35%となります。
このように、時間ごとに割増賃金率は細かく異なりますが、法定休日を特定することによって、きちんとした計算ができるようになります。
【参考文献】労基法違反にご注意! 「法定休日」の正しい設定・運用・周知のしかた
3|勤怠管理をおこなう必要性
勤怠管理は、企業にとっても従業員にとっても必要な業務です。勤怠管理が必要な理由は3つあります。
3-1|従業員とのトラブル/コンプライアンス違反を防ぐために必要
勤怠管理が正しくおこなわれていないと、従業員の労働時間を正確に把握できません。正確に把握できないと、間違った労働時間で給与を計算すると、適切な賃金を支払うことができなくなります。
その場合、企業と従業員との間にトラブルが生じるケースなどが考えられます。
特に近年では、インターネットの普及によって企業の不祥事が拡散されやすくなり、日本ではコンプライアンスが重視されるようになりました。
勤怠管理においても、残業代未払いや長時間労働が問題となり、よりいっそう勤怠管理の重要性が高まっています。
コンプライアンスを重視し、企業価値を損ねないためにも、勤怠管理は必要な業務です。
3-2|従業員の健康状態を管理するために必要
勤怠管理は、給与の支払いのためだけではなく、従業員の健康のためにも必要です。長時間労働によって、従業員が体調を壊してしまったら、日々の業務にも支障が出ます。
人事担当者が従業員の勤怠情報を把握していれば、「今月、残業時間が増えいているな」「欠勤が多いな」といった異変に気づき、問題がないかを確認することができます。
従業員が常に健康な状態であれば、仕事で高いパフォーマンスを出すことができるでしょう。
このように、従業員の勤怠情報から健康状態を管理し、体調不良から従業員を守るためにも、勤怠管理は必要です。
3-3|生産性を向上/離職率を低減させるために必要
労働時間を記録することは、従業員の生産性の変化に気づく判断材料にもなります。規定の労働時間内で成果を出している従業員がいた場合、他の社員にノウハウを共有すれば、企業全体の生産性の向上につながるでしょう。
従業員のコンディションを可視化し、管理できる機能を持つコンディション管理システムも活用すれば、より正確な従業員のコンディションを把握することもできます。
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勤怠管理によって得た情報から、従業員のコンディションや組織レベルの課題をキャッチできるためにも、必要な業務だといえます。
また、本章で解説した内容以外にも、そもそも法改正により客観的な記録による労働時間の把握が義務化されたため、正確な勤怠管理の必要性が増しています。
もし法改正の内容や、それにあわせてどのような勤怠管理をすべきかわからないといった不安があるご担当者様は、当サイトでにて無料で配布している「働き方改革に対応した勤怠管理対策BOOK」をダウンロードしてご確認ください。
4|さいごに
勤怠管理は、従業員の労働時間を記録し、労働時間だけで賃金を計算するだけの単純な業務ではありません。
企業と従業員の双方にとって重要な業務であり、人事担当者は責任を持っておこなっています。
人事担当者は改めて、従業員に勤怠管理の必要性や注意点を伝えてみてはいかがでしょうか。