働き方改革が推進されるなかで、労働時間に関する制度の見直しがおこなわれています。見直しにあたって残業時間の上限規制や、有給休暇の取得義務化などが導入され、勤怠管理はますます重要な業務になりました。
人事担当者は、従業員の勤務時間を正確に把握し、働きすぎていないか厳しくチェックすることが求められているでしょう。
とはいえ、勤怠管理に手間がかかって困っている、従業員に打刻を徹底させるのが難しいなどと感じている人事担当者も多いかもしれません。従業員に勤怠打刻を徹底してもらうためには、勤怠管理とはどのような業務であるか知ってもらうことも重要です。
そこで本記事では、勤怠管理でチェックする項目や注意点、勤怠管理を効率化するポイントなどをまとめました。
働き方改革が始まり、法改正によって労働時間の客観的な管理や年次有給休暇の管理など、勤怠管理により正確さが求められることとなりました。
しかし、働き方改革とひとことで言っても「何から進めていけばいいのかわからない…」「そもそも、法改正にきちんと対応できているか心配…」とお悩みの人事担当者様も多いのではないでしょうか。
そのような方に向け、働き方改革の内容とその対応方法をまとめた資料を無料で配布しておりますので、法律にあった勤怠管理ができているか確認したい方は、以下のボタンから「中小企業必見!働き方改革に対応した勤怠管理対策」のダウンロードページをご覧ください。
目次
1. 勤怠管理とは?
勤怠管理とは、従業員ごとの出勤時刻や退勤時刻、遅刻・早退の有無、有給休暇の取得状況などを把握して管理することです。時間外労働や休日出勤が発生した場合に割増賃金を支給したり、遅刻・早退が発生した場合に賃金を控除したりする必要があるため、従業員ごとの勤怠状況はしっかりと管理しなければなりません。
1-1. 勤怠管理の対象となる企業
勤怠管理の対象となるのは、労働基準法のなかの労働時間に関する規定が適用されるすべての企業です。基本的にはほとんどの企業が対象となるため、従業員ごとの勤怠状況を正確に把握するようにしましょう。
ただし、労働基準法の第41条で規定されている通り、農業や水産業については天候の影響を受けやすいため、勤怠管理の適用外とされています。
1-2. 勤怠管理の対象となる従業員
勤怠管理の対象となるのは、労働基準法の第41条に定める従業員と、みなし労働時間制が適用される従業員を除く、すべての従業員です。
労働基準法の第41条に定める従業員とは、管理監督者に該当する人を指します。また、みなし労働時間制には、事業場外労働のみなし労働時間制・専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制が含まれます。
上記の従業員は勤怠管理の対象外となりますが、労働安全衛生法では、従業員の労働時間を把握することが企業に義務付けられているため注意が必要です。従業員の健康を守るために労働時間を把握する必要があるため、例外と考えずに勤怠管理を徹底しておくとよいでしょう。
参照:厚生労働省|労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン
2. 勤怠管理でチェックする項目
勤怠管理においてチェックすべき項目としては、労働時間、休憩時間、休日・休暇、欠勤・遅刻・早退などが挙げられます。それぞれの管理ポイントや注意点について、詳しく確認しておきましょう。
2-1. 労働時間
労働時間は、本来働くべき労働時間と、何らかの理由があって追加で働いた分の労働時間に分かれています。後者は「残業」「休日出勤」といわれます。労働時間の種類は以下の通りです。
【労働時間の種類】
- 法定時間内労働時間
- 法定時間外労働時間
- 深夜労働時間
- 法定外休日労働時間
- 法定外休日深夜労働時間
- 法定休日労働時間
- 法定休日深夜労働時間
上記のように種類が細かく分かれているため、人事担当者は従業員の労働時間がどの種類に該当するかを区別し、記録しなければいけません。
従業員へ支給する賃金は、労働基準法で定められた法定内労働時間(1日8時間・週40時間)を超えると割増されます。
法定内労働時間を基準に、「どの時間帯・曜日に、何時間多く働いたか」によって以下のように割増率が変わります。
労働時間と賃金割増率※1ヵ月60時間以下の時間外労働の場合 |
||
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
法定時間内労働時間 | 1日8時間・週40時間以内で労働したとき | 割増不要 |
法定時間外労働時間 | 1日8時間・週40時間を超えて労働したとき | 25%以上 |
深夜労働時間 | 22時から5時までの間に労働したとき | 25%以上 |
法定休日労働時間 | 法定休日(必ず休むべき日)に労働した場合 | 35%以上 |
法定休日深夜労働時間 | 法定休日(必ず休むべき日)の22時から5時までの間に労働したとき | 60%以上 |
法定外休日労働時間 | 週40時間を超えたうえで、企業が決めた所定休日に労働したとき | 25%以上 |
法定外休日深夜労働時間 | 週40時間を超えたうえで、企業が決めた所定休日の22時から5時までの間で労働したとき | 50%以上 |
このように、労働した時間帯だけでなく休日の種類によっても割増率が変わるため、人事担当者は従業員の労働時間を細かく管理する必要があります。
また、常に割増賃金が発生する特殊な例として夜勤が挙げられます。深夜労働時間が適用される夜勤の勤怠管理の方法について詳しく知りたい場合は、こちらの記事がおすすすめです。
複雑な夜勤の勤怠管理の考え方|0時をまたいだ時の勤務日数の数え方
2-2. 休憩時間
休憩時間は、勤怠管理において把握すべき項目のひとつです。労働時間が6時間を超えて8時間以内である場合は45分以上、労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を付与しなければなりません。
労働時間に応じて適切な休憩時間を付与しないと、労働基準法違反となってしまうため注意しましょう。
2-3. 休日・休暇
勤怠管理では、従業員がどれだけ「休日・休暇」を取得しているかを管理しなければなりません。休日と休暇は「労働しない日」という点では同じですが、「労働しない」の定義が異なります。
休日は、そもそも労働の義務がない日を指します。一方の休暇は、従業員が本来労働する義務がある日に、企業が労働義務を免除する日のことです。
有給休暇以外の休暇に賃金が支払われるかどうかは企業によって異なるため、就業規則を確認しましょう。人事担当者は、従業員が休みになった際、その日が休日なのか休暇なのか、有給なのか無休なのかを区別して記録する必要があります。
休日
休日は、法律で決められている「法定休日」と、企業が自由に定める「法定外休日」に分けられます。
法定休日とは、労働基準法により定められた原則「週に少なくとも1回の休日」です。曜日の特定はありませんが、日曜日を法定休日に設定する企業が多いでしょう。
所定休日は企業が自由に定めることができる休日で、年末年始やお盆休みなどが該当します。
休日の種類 |
|
法定休日 | 所定休日 |
1週間に1日(曜日の指定なし) | 完全週休2日制における土曜または日曜 |
国民の祝日 | |
年末年始 | |
お盆 |
休暇
休暇は、法律で決められている「法定休暇」と、企業が自由に定める「法定外休暇」に分けることができます。法定休暇には、有給休暇や育児休暇が含まれます。
法定外休暇は「特別休暇」とも呼ばれ、企業が従業員に与える福利厚生の一環です。具体的には夏季・冬季休暇や慶弔休暇などが挙げられ、企業が独自に定めることができます。代表的な例は以下の通りです。
休暇の種類 |
|
法定休暇 | 法定外休暇(特別休暇) |
有給休暇 | 夏季・冬季休暇 |
産前・産後休暇 | 慶弔休暇 |
生理休暇 | 結婚休暇 |
育児休暇 | リフレッシュ休暇 |
介護休暇 | 永年勤続休暇 |
振替休日・代休
休日の種類のなかには「振替休日」と「代休」もあります。
「振替休日」とは事前に休日と決められた日を労働日とし、その代わりに他の日を休日とすることです。「振替休日」の場合、休日を他の労働日と交換しているだけなので、休日労働扱いではなく、出勤した日がたとえ法定休日であっても、割増賃金を支払う必要はありません。
ただし、休日を翌週に振り替えた結果、週の総労働時間が法定労働時間(40時間)を超えてしまうこともあります。その場合には、超えた部分の労働時間について、時間外労働に対する割増賃金を支払う必要があります。
「代休」は、本来従業員の休日であった日に出勤した後に、その代償として他の労働日を休日にすることです。このとき、法定休日に労働した場合は、法定休日労働に対する割増賃金を支払う必要があります。
種類 | 働く日 | 休む日 | 賃金 |
振替休日 | 法定休日/ 所定休日 |
本来の労働日 | 週の労働時間が40時間を超えていなければ割増賃金不要 |
代休 | 法定休日/ 所定休日 |
本来の労働日 |
法定休日であれば割増賃金は必要。所定(法定外)休日であれば、上記と同様の取扱い。 ※代休を取ったことにより40時間を超えなければ割増不要。 |
2-4. 欠勤・遅刻・早退
欠勤・遅刻・早退についてもしっかりと管理しましょう。欠勤・遅刻・早退が発生した場合、ノーワーク・ノーペイの原則に従って、その時間分の賃金を支払う必要はありません。
また、勤怠管理を徹底することで、正当な理由のない遅刻や早退が多い従業員に対して指導をおこなうことも可能です。従業員の問題を発見するためにも、欠勤・遅刻・早退を正確に把握しましょう。
3. 勤怠管理で注意が必要なケース
休日出勤には4つの労働時間の種類があり、それぞれで賃金の割増率が異なります。そのため、従業員が休日出勤をおこなった際の勤怠管理は注意が必要です。
ここでは、勤怠管理において注意が必要なケースについて詳しく解説します。
3-1. 土曜日と日曜日のどちらかに出勤したとき
曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
労働 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 18時 |
9時 ~ 22時 |
なし |
法定休日を日曜日に特定している企業で、土曜日に9時から22時まで労働したケースを考えてみましょう。
月〜金曜日の出勤で、週の労働時間がすでに40時間に達しているため、土曜日に働いた時間はすべて法定時間外労働となります。ただし、土曜日は法定休日ではないため、休日出勤に対する割増率は適用されません。
つまり、このケースでは、土曜日の労働時間に対して25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
3-2. 法定休日の前日から徹夜で仕事したとき
労働日 | 法定休日の前日 | 法定休日の当日 | |||
労働 時間 |
9時 ~ 18時 |
18時 ~ 22時 |
22時 ~ 0時 |
0時 ~ 5時 |
5時 ~ 7時 |
種類 | 所定労働 | 所定外 労働 |
所定外 深夜労働 |
法定休日 深夜労働 |
法定休日 労働 |
法定休日の前日から、日をまたいで朝まで労働したケースを考えてみましょう。
前日の9〜18時までの労働は時間外労働にはならないため、割増賃金はありません。18時から22時までは、通常の時間外労働として割増率が25%、22時からは深夜時間帯となり、さらに25%プラスして割増率が50%となります。
なおかつ、0時からは法定休日労働となるため、法定休日労働分35%に加えて深夜労働分の25%が上乗せされ、60%の割増率となります。
5時からは深夜時間帯が終わるため、7時までの割増賃金率は法定休日労働分の35%です。
このように、時間ごとに割増賃金率は細かく異なりますが、法定休日を特定することによって、きちんとした計算ができるようになります。
3-3. 多様な勤務形態を採用しているとき
多様な勤務形態を採用しているときは、勤怠管理のポイントが変わるため注意しましょう。たとえば、パートやアルバイト従業員などを雇用している場合は、一般的な正社員とは労働時間や出勤日数などが異なるケースもあります。
労働時間が短いために休憩時間が不要であったり、出勤日数が少ないために付与すべき有給休暇が異なったりすることもあるでしょう。
また、扶養控除内で働きたいという従業員がいる場合は、労働時間が長くなりすぎないように配慮しなければなりません。管理が複雑になるため、勤怠管理システムなどを活用して作業を効率化することが大切です。
4. 勤怠管理をおこなう必要性
勤怠管理は、企業にとっても従業員にとっても必要な業務です。勤怠管理が必要な理由は3つあります。
4-1. 従業員とのトラブルやコンプライアンス違反を防ぐために必要
勤怠管理が正しくおこなわれていないと、従業員の労働時間を正確に把握できません。正確に把握できないと、間違った労働時間で給与を計算するなど、適切な賃金を支払うことができなくなります。
その場合、企業と従業員との間にトラブルが生じるケースなどが考えられます。
とくに近年では、インターネットの普及によって企業の不祥事が拡散されやすくなり、日本ではコンプライアンスが重視されるようになりました。
勤怠管理においても、残業代未払いや長時間労働が問題となり、よりいっそう勤怠管理の重要性が高まっています。コンプライアンスを重視し、企業価値を損ねないためにも、勤怠管理は必要な業務です。
4-2. 従業員の健康状態を管理するために必要
勤怠管理は、給与の支払いのためだけではなく、従業員の健康のためにも必要です。長時間労働によって、従業員が体調を壊してしまったら、日々の業務にも支障が出ます。
人事担当者が従業員の勤怠情報を把握していれば、「今月、残業時間が増えいているな」「欠勤が多いな」といった異変に気づき、問題がないかを確認することができます。
従業員が常に健康な状態であれば、仕事で高いパフォーマンスを出すことができるでしょう。このように、従業員の勤怠情報から健康状態を管理し、体調不良から従業員を守るためにも勤怠管理は必要です。
4-3. 生産性向上や離職率低減のために必要
労働時間を記録することは、従業員の生産性の変化に気づく判断材料にもなります。規定の労働時間内で成果を出している従業員がいた場合、他の社員にノウハウを共有すれば、企業全体の生産性の向上につながるでしょう。
従業員のコンディションを可視化し、管理できる機能を持つコンディション管理システムを活用すれば、より正確な従業員のコンディションを把握することもできます。
勤怠管理によって得た情報から、従業員のコンディションや組織レベルの課題をキャッチできるためにも、必要な業務だといえるでしょう。
また、本章で解説した内容以外にも、そもそも法改正により客観的な記録による労働時間の把握が義務化されたため、正確な勤怠管理の必要性が増しています。もし法改正の内容や、それにあわせてどのような勤怠管理をすべきかわからないといった不安があるご担当者様は、当サイトでにて無料で配布している「働き方改革に対応した勤怠管理対策BOOK」をダウンロードしてご確認ください。
5. 勤怠管理を効率化するポイント
勤怠管理を効率化したい場合は、Excelやタイムカード、勤怠管理システムを活用するとよいでしょう。それぞれの特徴は以下の通りです。
5-1. Excelで管理する
Excelを使って出勤時刻や退勤時刻を記録するようにすれば、勤怠管理を効率化できます。関数を設定しておけば、労働時間や残業時間を自動計算することも可能です。無料で使える便利なフォーマットがインターネット上で公開されているため、有効活用するとよいでしょう。
ただし、Excelで勤怠管理をおこなう場合は、入力ミスや入力漏れ、データの改ざんなどに注意しなければなりません。ファイルの管理方法や入力方法に関するルールを徹底しておくことが大切です。
5-2. タイムカードを活用する
タイムカードを活用して勤怠管理を効率化することも可能です。出入口付近にタイムレコーダーを設置しておけば、従業員がタイムカードを差し込むだけで、出勤時刻や退勤時刻を簡単に記録できます。ICカードに対応したものなど、便利なタイムレコーダーも開発されています。
ただし、タイムカードを導入する際は、打刻漏れや代理打刻を防止する対策を講じなければなりません。不正な打刻が発生すると、事実確認や修正作業に手間がかかってしまいます。また、集計作業に時間がかかるため、従業員数が多い企業の場合は、担当者の負担が大きくなってしまうでしょう。
5-3. 勤怠管理システムを導入する
勤怠管理システムを導入すれば、労働時間や休日・休暇の管理を大幅に効率化できます。クラウド型のシステムであれば、スマートフォンや自宅のパソコンからでもアクセスできるため、リモートワークを採用している企業や外回りの営業職が多い企業などでも利用可能です。また、法律改正があった際には自動でアップデートされるため、手作業で設定を変更する必要はありません。
勤怠管理システムを導入するときは、自社の規模や予算に合っているものを選ぶことが重要です。操作画面の見やすさやサポート体制などもチェックしたうえで、最適なシステムを導入しましょう。
6. 勤怠管理を徹底して正しい賃金を支払おう!
今回は、勤怠管理の必要性やチェックすべき項目などを解説しました。勤怠管理は、従業員の労働時間を記録して正しい賃金を支給したり、過剰な長時間労働を防止したりするうえで重要な業務です。正しく賃金を支給していない場合や法定労働時間を超えて働かせた場合は、法律違反と見なされ罰則が科せられる可能性もあります。
勤怠管理は、企業と従業員の双方にとって重要な業務であり、担当者は責任を持って取り組まなければなりません。ただ、従業員数が多い企業では担当者の負担が大きくなるため、勤怠管理システムなどをうまく活用しながら効率よく進めていきましょう。また、従業員全体に勤怠管理の重要性を伝えることも大切です。