こんにちは。HR NOTE編集部 藤本です。
採用における売り手市場の難局に立ち、改めて社員の定着率に着目する企業も増えてきています。
しかし、個々の社員が「安心して働ける」「やりがい・成長実感をもって働ける」職場をつくるために、何をすれば良いのか悩まれている方もいらっしゃるかと思います。
そんな中、 株式会社ウエディングパークは、2018年度の「働きがいのある会社」ランキングにノミネートされ、7年前から受け入れている新入社員定着率はなんと93.7%*。
それらを実現できている背景は、会社独自の“カルチャー”にあるとのこと。ウエディングパークのカルチャーはどのようにしてつくりだされていったのでしょうか?
今回は、特徴的な社内制度の成り立ちや組織づくりについて、執行役員・経営本部長の保田 誠一郎様にお話いただきました。
*:2018年4月時点での定着率(3年)の平均
保田 誠一郎 | 株式会社ウエディングパーク 執行役員 経営本部長
1977年、千葉県生まれ。中央大学商学部卒業後、旅行会社や証券会社を経て、2015年4月、(株)ウエディングパークに入社。管理部門・人事部門を統括する経営本部長を務め、2018年4月、執行役員に就任。
式場探しの決め手が見つかるクチコミサイト「ウエディングパーク」をはじめ、フォトウェディング情報サイト「Photrait(フォトレイト)」、婚約・結婚指輪のクチコミサイト「Ringraph(リングラフ)」など5つのウエディングメディアを運営。ビジョンを「21世紀を代表するブライダル会社を創る」、経営理念に「結婚を、もっと幸せにしよう。」を掲げている。
目次
入社半年の新入社員が社内制度を提案!制度立案コンテスト「せどつく」で当事者意識を向上
ーーウエディングパークさんには、新卒の定着率アップにつながった制度があると伺いました!
保田氏:
当社にはさまざまなチャレンジの機会がありますが、新入社員向けの制度のひとつとして、入社半年の新入社員が新しい社内制度を提案する「せどつく」があります。「せどつく」は「制度をつくる」から名づけています。
毎年秋にコンテスト形式で開催するのですが、その年の新入社員が複数のチームにわかれて、先輩社員へヒアリングしたり調査したりしながら、より高い成果を出すための会社の新制度に関するアイディアをまとめ、経営陣へプレゼンします。
ーープレゼン大会を経て制度導入まで、実際にはどんなフローなのですか?
保田氏:
まずは、「せどつくを今年もやります!」というアナウンスを人事から発信します。
3~5名程度のチームに分かれて3案ずつ提案してもらうので、まずは新入社員だけでブレストを重ねていきます。その過程でアンケートをとるなどのニーズ調査をしたり、先輩にアドバイスをもらったりしながらブラッシュアップをしていくんですね。
プレゼン大会当日には、実際に経営陣の前でプレゼンします。
この「せどつく」の面白いところは、その場で導入案が決まること。プレゼン大会の最後に、制度導入の役員決裁がでるんです。
なので、経営陣も真剣がゆえに、質疑応答もシビアになります。「これやる意味あるの?」とか、予算や実施頻度など細かい運用もポイントになりますね。
プレゼン当日の会場には先輩社員が入りきれないくらい応援に来てくれて、毎年盛り上がりも増しています。
その後、決裁がおりた新制度案は、翌年の4月以降に実際に導入します。
ーー「せどつく」はいつから始められたのですか?
保田氏:
新卒採用を始めた2012年から導入しています。新卒1期生から継続していて、これまでに5つの制度が生まれ、実際に導入されています。
「自ら会社をつくる」という当事者意識を高めることを目的としており、経営参加への最初の一歩として取り組んでもらっています。
また、「せどつく」は新入社員と先輩社員とのコミュニケーションの活性化も目的にしています。
制度立案のための調査で、部署の先輩以外と話す機会もできますし、新卒だけのチームですが、営業・エンジニア・ディレクターなどの職種がうまく混在するようチームを組んでいますので、多方向の交流が生まれ、組織の活性化にもつながっていると思います。
ネーミングにもこだわり社内浸透と活性化を促す、「せどつく」から生まれた社内制度
ーー「せどつく」から生まれた社内制度には、どんなものがあるのですか?
保田氏:
「せどつく」から生まれた社内制度は現在5つあります。
- 祝って♡22(ふうふ)
結婚記念日(1周年、10周年、25周年)でお祝い金を2人分付与する制度 - 家族へありが10(とう)
自分の家族へ感謝を伝える特別休暇(1日)が取得できる制度 - 8活(はちかつ)
朝の時間を有効活用することを奨励し、朝早く出社した社員に朝食を支給する制度 - カレーファミリー制度(カレファミ)
「親担当」「きょうだい担当」と部署横断で3人のオリジナル「家族」をつくり、カレーを食す会を開催する新入社員のためのメンター制度 - キャンプファイヤーデー
年に一度、社員全員が一堂に会し「会社の未来」について熱くディスカッションをおこなう制度
たとえばカレーファミリー制度。新入社員が入社したときの不安や悩みは、同じように先輩も経験していますよね。
こうした入社後半年くらいの不安な気持ちを取り除けるように、「親担当」「きょうだい担当」である先輩社員と新入社員の3人とで一緒にカレーを食べる会を半年に3回、開催します。
なぜカレーなのかというと、「家庭の食事といって思い浮かぶものはカレーだよね」というイメージと(笑)、カレーに含まれる「幸せ効果」が理由なんです。
カレーにはセロトニンという神経伝達物質が含まれるらしく、これが『幸せホルモン』とも呼ばれているそうです。
カレー屋さんに行くファミリーもいれば、誰かの家でカレーをつくって食べるファミリーもおり、それぞれのファミリーで楽しんでいるようです。
ーーネーミングもユニークでおもしろいですよね。
保田氏:
制度を実導入する際には、覚えやすく、社内で共通言語として語られるようなものにしたいと思っているので、ネーミングにはこだわっています。
社内で語られて、社員が利用したがる制度になるように、導入までのブラッシュアップにも力をいれています。「カレーファミリー制度」は、「カレファミ」と社内で呼ばれ、にぎわっています。
ーー「せどつく」やそこで生まれた制度導入を通して、社内でおきた変化などはありますか?
保田氏:
そうですね、新入社員においては経営理念に沿った社内制度を考え、そして実際に導入されることで、「自ら会社をつくる」といった当事者意識の向上や、会社理解にもつながっていると思います。
新入社員以外の社員も、“ウエディングパークらしい“社内制度ができ、実際に活用することで、カルチャーを実感する機会となっています。
ウエディングパークでは、「せどつく」のように新入社員も挑戦できる機会が多くあり、先輩との自然なコミュニケーションの場が増える「カレファミ」のような仕組みもたくさんあるので、「安心して挑戦できる」環境が整っており、切磋琢磨する文化もあります。
それが結果的に、「新入社員の定着率93.7%」につながっているのではないかと思います。
組織づくりで意識するのは、行動規範「TRUTH」
行動規範“TRUTH”の小冊子は、いつでも社員の近くに。
ーー導入している制度や取り組みは、形がい化してしまうことはないのですか?
保田氏:
ウエディングパークでは、「TRUTH」という行動規範があります。「TRUTH」とは誠実・真実と定義して、常にブライダル業界・事業にかかわる「当事者」として適格・適切に、想いをもって行動をしていこう、という信念をあらわし、9つの項目で構成されています。
ウエディングパークには当事者意識を強く持てる社員が多く、「会社のために考えられた制度なら」と積極的に利用したり、何事にも協調性高く取り組んでくれます。
また、事業や社員数の拡大などの変化に対応して、制度自体の運用も変更するなど、ブラッシュアップしていくことが大事だと思います。
ーーこの「TRUTH」は、どのような経緯で生まれ、浸透してきたのでしょうか。
保田氏:
2011年の3月に経営理念やビジョンを策定した際、同じタイミングで、「協調と競争をセットにした切磋琢磨の組織体制を大切にしたい」という想いとともにできたものです。
当時、経営陣だけではなくリーダー陣も含めて、全員で考えながらまとめています。
ワーディングに関しても、ウエディングパークらしく、ワクワクするように、また、覚えやすくて日常の共通言語になりやすいようなものを選んでつくられています。
こうして出来上がった行動規範“TRUTH”を、会社としてとても大切にしています。
現在は、新しく入社する社員には「TRUTH研修」を受けてもらい、そのなかで当時の策定経緯や想いなどを伝えるようにしています。
また、毎月末に、その月で1番“TRUTH”に沿った行動・成果をだした模範となる社員に対して「TRUTH賞」として表彰しています。
さらに、3か月ごとの個人目標設計時には、行動規範のなかの9つの項目のうち、自身が注力したい項目を選び、目標として掲げてもらいます。
このように、日々の仕事においても“TRUTH”の考え方が常に身近にあることを感じてもらい、意識を高めてもらえるような仕組みを取り入れていることが、ビジョンや理念、行動規範の浸透につながっているのではないでしょうか。
その結果として、経営陣の想いを共有することができ、当事者意識も醸成されているのだと思います。
今後の展望
ーー今後、どういう組織にしていきたいと思いますか?
保田氏:
事業拡大に合わせて、社員数も比例して増えてきています。
ビジョンと経営理念から逆算した“TRUTH”を軸にした現在のこの組織が、とても良い形だと思っていて、このカルチャーをもっと育てていきたいという想いが強いですね。
新しく手掛ける事業も、ジョインしてもらう人材も、カルチャーを大切にしながら、会社の幹としてどんどん太くしていきたいと思っています。