ファッション通販「SHOPLIST」を中心としたEC事業を運営をしているCROOZ株式会社。今回はCROOZが仕掛ける「新しい採用への取り組み」についてご紹介。
CROOZの採用の現状を伺うと、“とある変化”が見受けられました。それは、大手商社、外資金融・コンサル、メガベンチャーといった、今までバッティングしなかったような企業が、採用競合となってきたことです。これは、今までは出会えなかった層の学生と接触できるようになってきたことを意味します。
では、なぜCROOZがそのような学生から応募してもらえるようになったのか、そもそもなぜCROOZは“優秀”な学生を求めているのか。執行役員の諸戸さんにインタビューの機会をいただき、その背景に迫りました。
諸戸 友(モロト ユウ) | プライスレス本部 執行役員
1980年生まれ。2003年に新卒でリクルートの代理店に入社、2007年にベンチャー企業に特化した採用支援会社アイ・パッションに創業メンバーとして参画、1,000人以上の起業家との出会いを経て、2012年クルーズに入社。社長室担当執行役員として社長秘書、組織構築、広報、ブランディングなど幅広く担当。2015年より人事の執行役員として主に新卒採用を設計。
【目次】
- 現状では「見えない」高い目標の実現に向けて、採用を変える必要があった
- 超実践型新規事業立案インターン『XYZ』とは?
- 地域活性型ビジネスコンテスト『BIZCAMP』とは?
- 「採用競合が変わった」インターンを実施して起きた変化とは?
目次
現状では「見えない」高い目標の実現に向けて、採用を変える必要があった
突き抜けた『モンスター』を採用するための挑戦
―諸戸さんが新卒採用担当に関わるようになった当時のことをお伺いさせてください。
諸戸氏:私が新卒採用に関わるようになったのは2016年度の新卒採用からです。それまでは社長室の担当役員として、社長の小渕と一緒に動いていました。
それだけ社長と同じ時間を過ごしていると、会社の課題もいろいろ見えてくるようになります。その中で「会社のビジョン・目標達成に向けて人員が不足しており、今のままの組織では達成が難しい」といったことがありました。
私たちが掲げている経営目標は一見すると無理だと思うような非常に高い目標です。そのような中でいかにして目標を達成させるか。「今いるメンバーだけではおそらくこの目標は達成できない」、そのためには、会社を牽引してくれる『モンスター』をもっと採用する必要があると考えています。
たとえば、今メイン事業である『SHOPLIST』。これは張本(現取締役)という2007年度入社の新卒と彼の同期たちが中心になって立ち上げました。
そして、そこから3年~4年かけて200億円規模の事業にしています。もし、彼らと同じようなチームをつくれていれば、可能性としては単純計算で200億×10=2000億円が生み出されていたかもしれません。
ただ、現状ではそのような理想の組織構成ができていないので、どうしても新規事業を生み出すとなると、ある特定のメンバーに集中することになり、リソースが不足してしまいます。
「この状況はまずい」と感じ、イノベーションを起こすような、新卒を採用しないといけないと強く思いました。でないと、経営目標の達成が遠のくばかりです。
そこで、「新卒採用のやり方を変えましょう」と提案しました。
私は、新卒採用に関してはこれまでずっと携わってきた領域でしたし、社長室として常に小渕と行動を共にしていたことで、会社のこともよく理解できていましたし、小渕の代弁ができる自信もありました。ですので、「私にやらせてください」と手を上げて、人事にきました。
「起業家志向の学生と接点を持つ」ために何ができるかを模索
―人事にきて取り組まれたことを教えてください。
諸戸氏:私が人事に来たばかりの新卒採用は、いわゆる求人サイトに掲載してエントリーを多く集め、ふるいにかけ、その中から採用していくというやり方です。どちらかと言うと「待ちの採用」ですね。それでも、自社が求めている優秀な人材の採用はある程度できていました。
ただ、『モンスター』を採用するとなると今までのやり方では難しくなってきます。自分から仕事をガンガン取りに行って、自分から開拓していく。失敗を恐れずに挑戦していくような新卒を採用するためには新しいチャレンジが求められました。
そこで今までのやり方を見直し、CROOZが求めている『モンスター』が集まる場所を探し、その場所を見つけてきたら、どのように自社を認知してもらうのかを考えました。
そしてその場所は、若手起業家の周りにあることに気がつきました。
では、彼らは何を求めているのか。若手起業家の方々は、就職することが目的ではありません。彼らが求めていることは「事業を伸ばす方法」です。弊社は何度もメイン事業を変えながら大きく企業成長してきました。事業を伸ばすためのノウハウを数多く持っていることが強みとしてあります。
そこで、「自社のノウハウを提供していき、起業家志向の学生と接点を持とう」ということではじめたのが、『XYZ』というインターンです。
超実践型新規事業立案インターン『XYZ』とは?
CROOZ内での新規事業立案をそのままインターンに
―『XYZ』とはどのようなインターンなのでしょうか?
諸戸氏:『XYZ』は、実際にCROOZで新規事業を立案するときの流れを踏襲して実施する「超実践型新規事業立案インターン」です。
ただアイデアを出して終わりの企画インターンではなく、「どうやったらビジネスとして成り立つか」「事業のマネタイズはどうするか」「収支計画は考えられているか」など、実際にCROOZの新規事業立案時におこなわれているやり方をそのままインターンでおこないます。
そして、インターンの最後に当社役員陣にプレゼンをし、優秀な事業アイデアには実際に出資などをおこないます。とことん実践にこだわったインターンです。
―どのようなフローで実施されるのでしょうか?
諸戸氏:事前選考を突破して、選ばれた15~20人だけが本選に参加することができます。本選の内容は、個人戦の1dayとチーム戦の4dayを用意しています。
本選では、代表の小渕や取締役の張本をはじめ、当社役員陣が本気でフィードバックをおこないます。
―本気のフィードバックはどのような感じなのでしょうか?
諸戸氏:もう率直にいきます。思いっきりダメ出しをします。もうみなさんバッキバキに言ってますね(笑)。今まで多くの学生に参加していただいているのですが、あらゆる観点からダメ出しがきます。
ただ、そこまで本気でやることによって、かなりリアルなビジネスのつくり方、事業課題の改善の仕方といった経験ができます。どんな採用インターンに行くよりも、成長につながるインターンになっていると思います。みんな満足して帰っていってくれます。
地域活性型ビジネスコンテスト『BIZCAMP』とは?
採用活動とは全く関係のないインターン『BIZCAMP』
―一方で、御社では『BIZCAMP』というインターンも開催していると思いますが、こちらはどのような取り組みなのでしょうか?
諸戸氏:『BIZCAMP』のコンセプトは、「地域課題を持続可能なビジネスで解決していく」という地域活性型ビジネスコンテストになります。
地方にて、3泊4日の合宿形式でおこないます。フィールドワークを実施し、そこから事業のつくり方、PLのつくり方を学び、最終的にプレゼンをしてもらいます。そのプレゼンの結果GOサインが出ると、投資して本格的に事業がスタートするという内容です。
『BIZCAMP』は、一応インターンという位置づけではありますが、『XYZ』と違って採用活動は一切意識しておりません。あくまで、事業を生んで継続させて、地域活性につなげることを目的としています。
リアルなビジネスが学べる3泊4日の内容とは?
―実際に3泊4日で何をやるのか、詳細を教えてください。
諸戸氏:1日目は、「その街を知る」ために行政の方に町の特徴や課題などをご説明していただきます。その後、事前課題として「その街のことを調べてきてください」と伝えているので、事前課題を各学生にピッチしてもらいます。
そのピッチを聞いた内容によって、チーム分けをおこないます。チーム分けをした後、その日の夜は懇親会という感じで終了します。
2日目からは、工場や商店街など実際にいき、課題や現状をヒアリングしていく、いわゆるフィールドワークをやってもらいます。それをもとに課題をまとめて、その解決方法をその日の夜からいろいろ考えはじめていきます。
3日目の朝になると、おおよその事業方針が決まってきます。そしたら今度は私たちがPLのつくり方など、マネタイズするための考え方やビジネス論を中心に話をさせてもらい、自分たちが感じてきた課題や内容とPLを組み合わせていきます。
4日目は最終プレゼンをおこないます。市長や行政の方々、地元企業の経営者、ゲストで参加してもらった数社のベンチャー企業の方々もおり、その前で事業計画を発表してもらい、フィードバックをします。
もちろん、こちらのフィードバックもとことん本気でやらせてもらいます。本気でやるからこそ、学生も満足して帰ってくれます。ちなみに、実際にこの『BIZCAMP』から起業した学生もすでにいて、今も頑張って事業を運営しています。
「採用競合が変わった」インターンを実施して起きた変化とは?
クチコミで学生の認知が増し、採用ブランディングにつながる
―『XYZ』『BIZCAMP』2つのインターンを実施した結果、CROOZの本採用において何かしらの変化はありましたか?
諸戸氏:直接採用に結びついたかで言えば、もとより『BIZCAMP』は採用目的ではないのですが、実は『XYZ』に参加した学生からも直接採用はできていません。
そもそも、「たとえ直接採用につながらなくても問題ない」という考えのもと、インターンを実施しているんです。
ただその代わり、『XYZ』も『BIZCAMP』も参加してくれた学生に対して、120%の満足度を提供することを意識しています。そうすることで、参加した学生たちがSNSにインターンの内容を投稿してくれ、友人・知人に「CROOZの事業を立ち上げるノウハウが本当にすごくて勉強になった」とクチコミで広めてくれるんですよ。
そうすると、参加した学生たちの周りで「今までCROOZのことは知らなかったけれど、ビジコンを全国でやっていて、数多くの事業を立ち上げては黒字化に成功していて、事業伸ばすのが得意な会社なんだ」というブランディングができはじめてきたんですね。
実際に「事業をつくりたい」という学生からの応募が増えました。「どこで弊社を知ったのですか?」と聞くと、「インターンの噂を聞きました」という返答が多くなりました。
今までは、大手商社や外資の金融・コンサル、メガベンチャーといったさまざまな人気企業の選考を受けていた学生が、同時にCROOZの選考も受けてくれるようになったのです。この直近で採用競合が変わってきた印象を受けます。
「すごそうな学生」にはファストパスを適用
―選考フローでは、何か工夫はされていますでしょうか?
諸戸氏:「ファストパス」という選考フローがあります。「この学生は弊社で絶対活躍できる」と感じた場合や、もしくは自己申告で「僕すごいですっ!」という学生に関しては、1次面接から私が直接面接します。そこで「採用したい」となれば、事業部の役員面接や、場合によっては社長面接につなげています。
―自己申告もできるのですね
諸戸氏:自己申告のケースは、Wantedlyでファストパス選考を募集しており、そこからの応募がある際ですね。
それを見つけて応募してくる時点でアンテナが高い証拠です。さらに、そのページには、「あなたは本当に優秀ですか?」といった記載をしているため、なかなかエントリーしにいくいと思います。エントリーの際に、優秀なポイントや意気込みを書いてもらっており、それに私が返信をさせていただき、面談をしています。
―今、採用において課題に感じていることはありますか?
諸戸氏:採用競合が変わってきたため、人気企業とバッティングした際に他社内定のため辞退となってしまう割合が増えてきています。
今まで出会えなかった学生たちと会うことができ、内定まで至るようになったのが今のフェーズです。ここからは、人気企業とバッティングした際に、「CROOZでなければならない理由」をどのように構成していくかが重要です。そこを模索しているところです。
日々変わるユーザーニーズを汲み取れる「クリエイティブ人事」を目指す
―諸戸さんが考える「強い人事組織」とはどのようなものでしょうか?
諸戸氏:「人事こそクリエイティブであれ」ということを常に言っています。時代の変化とユーザーニーズは日々変わっていきますが、人事だろうが事業部だろうが関係なく、それらを汲み取ったうえでより会社が伸びる方法を常に企画して挑戦していかねばならないと思います。
たとえば「人事のユーザーは誰?」となると、自社の従業員や学生、中途の転職希望者。こういった方々がユーザーになります。彼らが求めていること、彼らの現状や背景を考えてニーズを汲み取り、新しい挑戦をし、クリエイティブな人事、採用活動をしていかないと絶対に人事として伸びません。
また、クリエイティブな人事を実現するために、人事のメンバーには、ある程度の予算や裁量権も渡しています。仮に失敗したとしても、PDCAを回して「なぜダメだったのか、次はどうやったら成功するのか」、と今後の資産にしてもらうように意識してもらっています。
社員が最短で成長できる文化や制度をつくりたい
―最後に、今後やりたいことをお伺いさせてください。
諸戸氏:採用に関しては、インターンシップをはじめ、あらゆる業務に関して常にクリエイティブに「新しい採用」について考えていきたいですね。その場に合った、その時代に合った、その時のユーザーに合わせて柔軟に動ける組織にしていきたいですね。
また、社内の人事制度も強化していきたいと考えています。今後は入社してくれた『モンスター』の方々が活躍できる環境をどれだけつくれるかが重要だと思っています。そのための人事制度を全面的に見直して構築していきたいです。それぞれの個性を活かして最短で成長できる環境を用意できないと意味がありません。
そこから、CROOZの人事メンバーや社員が生み出した取り組みを多くの人々に知ってもらいたいですね。採用広報のように、CROOZの試みや取り組みを外部にアウトプットしていくことで、多くの人々に認知していただき、CROOZを一緒に盛り上げるために参画してもらえたら嬉しいですね。そんなプル型の採用を目指しています。