こんにちは!「ジンジャ-」マーケティング担当の中村陽太郎です。
私はHRTechサービスを啓蒙活動をしていきたいという想いがあり、「人事データを活用するとはどういうことなのか?」「人事データを活用することで組織にどのような効果があるのか?」「またそれに際してHRTechサービスをどう活かすことができるのか?」といったことに関して、有識者の方々から勉強させていただいています。
今回は、サイバーエージェントで適材適所のためにさまざまな切り口で人事データを収集・分析をしている、人材科学センターの向坂さんにお話をお伺いしてきました。
向坂 真弓 | 株式会社サイバーエージェント 人材科学センター Analyst
新卒でサイバーエージェントに入社。広告代理店事業で8年ほど営業とマーケティング業務に従事。その後退職し、海外にてフリーランスでマーケティングの仕事をこなす。2016年1月、5年ぶりにサイバーエージェントに戻り、人材科学センターで人事データの分析を主なミッションとしている。
目次
人材科学センターができた目的は、「社内の適材適所を円滑にする」ため
まず、人材科学センターの設立背景をお伺いしました。
人材科学センターは、もともとは人事データの収集・分析自体が目的ではなく、「適材適所を社内で円滑におこなう」ために設立されています。
はじめは社員の適材適所に向けて、個人のコンディションと志向などのデータをリアルタイムに回収できる仕組みをつくっていきました。それが「GEPPO(ゲッポー)」といわれるシステムです。
GEPPOは、「個人の考えやコンディションは山の天気のようにコロコロ変わるものである」という考えのもと、個人のコンディションデータを収集するために活用しています。
【GEPPOで収集している項目】
- 個人の成果、パフォーマンスを、晴れ・曇・雨などの5段階の天気で聞くこと
- フリーコメント
- 毎月変わる設問(新しい人事制度についてどう思いますか。成長を実感していますか。仕事に使えそうな特技を教えてください。など)
【GEPPO画面イメージ】
GEPPOは基本的には、本人の主観の声を集めたデータになります。
そうした中、数多くのデータの蓄積ができるようになり、「このデータをもとに、もっと複合的に見ていていくことで、組織活性に役立てよう」と、データ分析の専門チームが後から立ち上がったとのことです。
あくまで社員の適材適所をしていくための必要な情報を可視化していこうという目的があり、そのためにデータ収集をしています。
ですので、向坂さんは、
- 分析をするために社員の情報を人事が回収するという発想ではない
- 社員のメリットにつながるための情報取得しかおこなわない
ということをしきりにおっしゃっており、社員の強みを明確にし、それを伸ばしてあげるための施策、成果がなかなか上がらない要因を見つけ出して、それを排除してあげる施策など、何かしらの人事施策とセットでできることを考えて、データを収集しているとのことでした。
チームと個人のコンディションにギャップがある場合は要注意
具体的にどんなデータを取得して、どの部分を見ているのか?
基本的には、GEPPOで取得したデータが中心で、そこからさまざまな切り口で分析をしていきます。さらに、GEPPOに付随をして勤怠データや入社前の採用時のデータなどを付け加えて複合的に見ているとのことです。
たとえば、「本人の声」と「実際の働き方」を照らし合わせて見ています。
業務が多すぎて、GEPPOを通して「ちょっともう苦しいです」という声を発している社員がいた際に、実際の勤怠データと突き合わせて、「実態はどうなんだろう」という分析をしています。
そういったさまざまな切り口でみたときに、以下のような傾向がある際は、とくに注視してケアをする必要があるとおっしゃっています。
- 天気がずっと雨の社員 成果がずっと出せていないと言っている社員にそのような傾向が見られるそう。その際は、面談やヒアリングをしてコンディションを確認しているとのことでした。またずっと晴れ続きであった社員が急に雨になった際なども注意深く見るようにしており、その前後で何があったのかを確認するようにしています。
- チームのコンディションと個人のコンディションなどでギャップがある際 ここが非常におもしろいところなのですが、今までは個人の天気だけ聞いていたところ、最近はチームのコンディションやチームに対する評価も5段階の天気で聞くようにしたとのことです。そうすると、下記のような切り口で分析ができ、さまざまな傾向が見えてくるとのことです。
「個人とチーム」間でのコンディションを切り口に分析
個人・チームの天気、どちらも「同じ社員の主観」で天気をつけますが、個人が晴れでチームのコンディションが雨、または逆のパターンが見られるとのこと。そういうギャップを見ていくことで、組織とのマッチ度合いなどを確認できるようになってきているとおっしゃっていました。
たとえば、「組織が晴れで個人が雨」だったら、組織とのギャップを感じているか、もしくはとてもストイックで自分に厳しい社員である可能性があります。
逆もしかりで、「個人は晴れマークだが、組織が雨」のパターン。こちらは、組織と個人の目標設定に乖離が無いかを見るようにしています。
個人単位、組織単位でコンディションのギャップを見ることでここまで傾向をみることができるとは、非常に興味深いです。
「マネージャーとメンバー」間でのコンディションを切り口に分析
また、チームに対する天気の評価を「マネージャーとメンバー」という切り口で分析することでも、いろいろ見えてくるとのことです。
たとえば、マネージャーもメンバーも全員が晴れをつけているのは、とてもコンディションの良いチーム。逆に、チームメンバー内で天気にギャップがある場合は、マネジメントにおける課題を抱えている可能性があります。
チームのマネジメントがうまくいっているか否かを確認する方法としては非常にわかりやすいと思いました。
さらに、新卒育成においては、新卒と新卒のトレーナーの天気も収集して分析しています。
「新卒は自分の天気」を、「トレーナーは自分の天気と、育成している新卒の天気」をGEPPOに記入してもらっており、そこのギャップを見ていきます。
新卒が自身のコンディションを晴れと言っているにも関わらず、トレーナーが雨をつけていると、やはり何かしらのギャップがあるため、注意深くケアしてもらう、ということをずっと定点で1年間見てくる中で、新卒のコンディションの変化を発見できるようになってきたとのことです。
おこなっていることは、天気で答えてもらうという単純なものですが、それをいろんな切り口で分析をしていくというだけで、コンディションの変化を可視化することができています。
データ収集・分析というと難しいイメージですが、やり方次第では効果的な施策につなげることができるのではないでしょうか。
AIに頼る前に実施すべき3つのこと
サイバーエージェントでは、あれこれ先に考えて、「その結果これをやります」というと、「スピードが遅い」と言われるような、スピード感が求められる環境とのことでした。PDCAを高速で回してくという文化があり、そういった背景を加味しながら人事データを活用しています。
人材科学センターでは、AIを用いた予測、マッチングなどは現状おこなっていません。
- まずはとにかくやってみる
- その状態を見える化しておく
- そして、なんらかの問題が起こったらすぐに対処する
この流れをスムーズにおこなうために、GEPPOなどを用いて、データの収集・分析をおこなっています。あくまでも自社文化ファーストで、それに合ったデータの活用をしている印象でした。