従業員を雇用した際、企業側は社会保険の資格取得届の提出をしなければなりません。会社の経営者や事業主、人事担当者などは、社会保険の資格取得届の概要や手続き方法などをしっかりと理解しておきましょう。
また、社会保険の資格取得届は従業員が将来受け取る年金にも関係しますので、概略を知っておくことが必要不可欠です。
今回は、社会保険の資格取得届の必要性や書き方について紹介します。
「社会保険の手続きガイドを無料配布中!」
社会保険料は従業員の給与から控除するため、ミスなく対応しなければなりません。
しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「最新の法改正に対応した社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。
ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「最新の法改正に対応した社会保険の手続きを確認しておきたい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 社会保険の資格取得届とは?
社会保険の資格取得届は、新たに社会保険へ加入する必要が生じたときに提出する書類です。正式には「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」「雇用保険被保険者資格取得届」などと呼ばれます。
たとえば、社会保険の適用事業所である会社が新しく従業員を雇用する場合や、勤務形態の変更により社会保険を取得する義務が発生した場合などに、社会保険の資格取得届を提出することが必要です。
関連記事:社会保険とは?代表的な4つの保険と今さら聞けない基礎知識
1-1. 社会保険の資格取得届が必要な事業所
社会保険の資格取得届が必要な事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所、一括適用事業所があります。適用除外についても確認しておきましょう。
強制適用事業所
次の3つの条件に該当する場合は、強制適用事業所となります。強制適用事業所の場合は、必ず社会保険に加入しなければなりません。
- 適用業種である個人事業をおこない、常に5人以上の従業員を使用する場合(適用除外規定で被保険者にならない従業員でも、常時使用されているときは5人に数えられる)
- 常に1人以上の従業員を使用する国や地方公共団体の場合
- 常に1人以上の従業員を使用する法人の場合
任意適用事業所
強制適用事業所に該当しない事業所の場合、事業主は厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所とすることができます。
認可を受けるためには、事業所で働いている被保険者の2分の1以上から同意を得ることが必要です。同意が得られれば、申請により認可手続きを進められます。
一括適用事業所
事業主が1人で複数の適用事業所を運営している場合は、厚生労働大臣の事前の承認を得たうえで、複数の事業所を1つの適用事業所にまとめることが可能です。
このような事業所を一括適用事業所と呼び、本来はそれぞれの事業所単位でおこなう社会保険の諸手続きを一括して処理できます。
適用除外
適用事業所であっても、社会保険の被保険者手続きができない場合もあります。また、所在地が一定しない事業所の雇用者は、どれだけ長期間雇用されても被保険者扱いになりませんので注意しましょう。
社会保険の被保険者手続きができないケースは以下の通りです。
【被保険者手続ができないケース】
・共済組合の組合員や私立学校教職員共済制度の加入者の場合
・日雇い労働者の場合 1カ月を超えて継続的に雇用される場合には、1カ月を超えた日から被保険者扱いになります。
・2カ月以内の期間で雇われる労働者 所定の期間よりも長く雇用される場合は、所定の期間を超えた日から被保険者扱いとなります。
・4カ月以内の期間で雇われる労働者で、季節労働に従事する者の場合 雇用初日から4カ月を超えて継続雇用される場合は、雇用初日から被保険者扱いになります。
・臨時的事業で雇われる労働者の場合 雇用初日から6カ月を超えて継続雇用される場合は、雇用初日から被保険者扱いになります。
1-2. 社会保険の資格取得届の対象になる従業員
社会保険の資格取得届が必要な従業員は、下記のタイミングで要件に該当する当日から被保険者としての資格取得届が必要です。
被保険者に扶養者がいる場合は、健康保険被扶養者届を提出して扶養者の範囲を明らかにします。
【社会保険の資格取得届が必要なタイミング】
・適用事業所に雇用されたとき
・勤務する事業所が社会保険の適用事業所になったとき
・社会保険の適用除外要件に該当しなくなったとき
その他に所定労働時間や日数が正規従業員の4分の3以上のパートやアルバイト、適用事業所に雇用される外国人、試用期間中の人などについても社会保険の資格取得届が必要です。
関連記事:社会保険被保険者資格取得届とは?手続きの流れや注意点を解説
2. 社会保険の資格取得届の提出および手続きの手順
健康保険・厚生年金保険については、事業所単位で適用事業所となるかが決まり、その事業所に常時使用される人(事業主のみの場合を含む)は、国籍や性別、賃金の額などに関係なく、すべて被保険者となります。(原則として、70歳以上の人は健康保険のみの加入となります。)
雇用保険については、事業主や労働者の希望に関わらず、「1週間の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」という条件に該当する場合、加入義務が発生します。ただし、昼間学生は雇用保険に加入できません。
所定労働時間や日数が、正規従業員の4分の3未満のパートやアルバイトなどの短時間労働者は、原則として社会保険加入の適用除外となります。
2-1. 手続きの時期
健康保険・厚生年金保険の資格取得届は、雇用開始から5日以内に提出します。
雇用保険の資格取得届は、雇用開始日の翌月10日までに提出します。
2-2. 提出先
健康保険・厚生年金保険資格取得届の提出先は、事務センターもしくは年金事務所、または健康保険組合、厚生年金基金などです。
雇用保険資格取得届の提出先は、ハローワークになります。
2-3. 提出方法
提出方法としては、電子申請や郵送、窓口持参があります。紙の用紙のほか、電子媒体での提出も可能です。
2-4. 申請・届出様式のダウンロード方法
申請・届出様式は、日本年金機構やハローワークのホームページからダウンロード可能です。健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届や、雇用保険被保険者資格取得届を入手して記入しましょう。
※書類は下記リンクから入手してください。
- 健康保険・厚生年金保険:従業員を採用したとき|日本年金機構
- 雇用保険:雇用保険被保険者資格取得届|ハローワークインターネットサービス
2-5. 添付書類
添付書類は原則として必要ありませんが、以下の場合は添付書類が必要になります。
- 資格取得年月日に記載された日付が、届書の受付年月日から60日以上遡る場合 被保険者が法人の役員以外の場合、賃金台帳の写しおよび出勤簿の写しが必要です。被保険者が役員の場合は、株主総会の議事録または役員変更登記の記載がある登記簿謄本の写しが必要です。
- 60歳以上の方が、退職後1日の間もなく再雇用された場合 就業規則、退職日の確認ができる退職辞令の写し、再雇用の継続が分かる雇用契約書の写し、退職日および再雇用された日に関する事業主印のある証明書などが必要です。
- 国民健康保険組合に引き続き加入し、一定の要件に該当する場合 健康保険被保険者適用除外承認申請書の添付が必要です。
2-6. 資格取得時の本人確認
資格取得時には、不正取得を防止するために本人確認が必要です。新たな採用の場合は、事業主が氏名や生年月日、性別や住所、基礎年金番号などを確認して資格取得届に記入して届け出ます。
3. 社会保険の資格取得届の記入例
ここでは、健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届の書き方を紹介します。
3-1. 事業所整理番号・事業所番号
事業所整理番号・事業所番号の欄には、新規適用時または名称変更時に付与された記号・番号を記入しましょう。
3-2. 事業所所在地・事業所名称・事業主氏名
事業所の所在地や名称、事業主の氏名を記入します。電話番号も忘れずに記載しましょう。
3-3. 氏名・生年月日・種別・取得区分
被保険者の氏名や生年月日を記入しましょう。種別と取得区分の欄は、該当する番号を◯で囲んでください。
3-4. 個人番号
個人番号を記入する際は、必ず本人確認をおこなわなければなりません。個人番号の代わりに基礎年金番号を記入する場合は、10桁の番号を左詰めで記入します。
3-5. 取得年月日
取得年月日の欄には、適用事業所に雇用された日、70歳以上被用者に該当した日、事業所が適用事業所となった日などを記入しましょう。
3-6. 被扶養者
被扶養者がいない場合は「0」、被扶養者がいる場合は「1」を◯で囲みましょう。
3-7. 報酬月額
給与や各種手当の金額から報酬月額を計算のうえ、記入します。
3-8. 備考
70歳以上被用者該当、短時間労働者の取得など、該当する項目を◯で囲んでください。
3-9. 住所
住民票の住所を記入します。個人番号を記入した場合は、住所を記入する必要はありません。
4. 社会保険の資格取得届の手続きに関して注意すべきこと
社会保険の資格取得届に関する手続きにおいて、気を付けるべき点は以下の通りです。2024年10月から社会保険の適用範囲が拡大されるため、あわせてチェックしておきましょう。
4-1. 年金手帳を紛失していた場合
資格取得届には、被保険者の個人番号か基礎年金番号の記入が必要です。年金手帳を紛失して記入できない場合は、年金手帳再交付申請書を提出します。
4-2. 資格取得届が提出されていないことが判明した場合
資格取得届の提出が必要な場合に提出されていないことが後でわかった場合は、資格取得届を提出して2年前まで遡って保険料を支払うことができます。ただし、一括請求なので注意が必要です。
また、手続きが正当な理由なく滞っていた場合、健康保険・厚生年金保険では「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」(健康保険法第208条)、雇用保険では「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」(雇用保険法第84条)に処されることがあります。
万が一、資格取得届の提出が遅れてしまった場合は、遅延理由書、賃金台帳や出勤簿の写しなどの添付書類と共に、速やかに手続きをおこないましょう。
4-3. 再雇用の従業員の資格取得届
60歳以上の従業員が退職後1日の間もなく再雇用された場合には、資格取得届と一緒に、同日付の資格喪失届の提出が必要になります。
4-4. パートタイマー・アルバイトなどの雇用
パートタイマー・アルバイトなどが被保険者に該当するかどうかは、所定労働時間や所定労働日数が一般社員の4分の3以上であるかが基準になります。
また、所定労働時間および所定労働日数が一般社員の4分の3未満であっても、下記の5要件を全て満たす従業員は、被保険者になるため注意しましょう。
また、2024年10月より社会保険の適用範囲が拡大され、雇用期間の見込みが2カ月以上、特定適用事業所の規模が51人以上になるなどの変更があります。 詳しくは、以下の記事で確認してみてください。
当サイトでは、本記事で解説した入社・退社時の社会保険手続きの内容や法改正後の加入条件などをわかりやすく解説した資料を無料で配布しております。
法改正の内容など、社会保険手続きに関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「社会保険手続きの教科書」をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:パート・アルバイトに社会保険は適用される?|令和4年10月~の法改正に向けて徹底解説!
4-5. 外国籍の従業員の雇用
外国籍の従業員を雇用する場合、個人番号と基礎年金番号が紐付いていないときは、資格取得届と一緒に「ローマ字氏名届」を提出しなければなりません。
5. 社会保険の資格取得届を正しく作成して提出しよう!
今回は、社会保険の資格取得届の必要性や書き方を紹介しました。社会保険の加入期間は将来の年金の給付額に関係しますので、忘れずに手続きを進めておくことが重要です。社会保険に加入せずに保険料を支払う期間が短くなった場合は、年金の給付額が減額されることになります。
また、事業所が社会保険の適用要件に該当しているかどうか、従業員が社会保険の対象になっているかどうかも確認しておくことが大事です。社会保険の資格取得届が必要な従業員を雇用する場合、一定期間内に書類を作成して提出しなければならないため、迅速に手続きをおこないましょう。
「社会保険の手続きガイドを無料配布中!」
社会保険料は従業員の給与から控除するため、ミスなく対応しなければなりません。
しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「最新の法改正に対応した社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。
ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「最新の法改正に対応した社会保険の手続きを確認しておきたい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。