今回は、ストックミュージックサービス「Audiostock」や音楽コンテストサービス「CREOFUGA」を運営する株式会社クレオフーガが、組織活性のために実践する「社内ラジオ」についてご紹介。
クレオフーガは現在、東京・岡山の2拠点で活動していますが、課題として浮き彫りになってきたのが二拠点間のコミュニケーション不足でした。
その課題解決に向けてクレオフーガが取り組みはじめたのが「社内ラジオ」。あまり「社内ラジオ」という言葉は耳にしませんが、どのように活用しているのでしょうか。
本記事では「社内ラジオ」の運営方法やノウハウ、実際に社内コミュニケーションにどのような変化があったのかを、記事にまとめました。是非、ご覧ください。
【人物紹介】西尾 周一郎|株式会社クレオフーガ 代表取締役社長
目次
クレオフーガが社内ラジオをはじめるようになったきっかけ
-まず、社内ラジオをクレオフーガで実施するようになったきっかけを教えてください。
西尾さん:私が岡山出身ということもあり、クレオフーガは岡山で創業しました。最初の4年ぐらいは岡山で仕事をしていて、それから東京に進出し、今は二拠点で活動をしています。
主に岡山は開発メンバーが主体で、本社 兼 開発拠点となっており、東京は広報・営業・顧客サポートなどの機能が集約されています。私は今は東京を中心に行動しています。
しかし、岡山と東京という距離の離れた2拠点の間で、コミュニケーションの部分が課題となってきたんです。
普段はチャットワークやテレビ会議を活用していますが、それでも足りなくて、東京と岡山でどうしても情報量に差が出てきてしまいました。
よく岡山のメンバーから言われるのが、「社長の考えが分かりにくい」ということでした。
そこで、いろいろな施策を考えている中で、社員から「ラジオをやったらどうですか?」という話が上がってきたんです。そこから社内ラジオの構想がスタートした感じですね。
-なぜラジオという発想が出てきたのでしょうか?
西尾さん:どうやら、どこかで他社が社内でラジオをやっているという話を聞いたらしいんです。
それで、ちょうどたまたまですが、弊社でスタジオをつくって録音をできる環境ができたタイミングでもあったので、「ラジオやりましょう」って。
[2018年に社内スタジオを新設]
西尾さん:ただ実は、私はやる前そんなに乗り気じゃなくて「めんどくさいなー」って感じでした(笑)。正直、結構忙しかったですし、ラジオをつくるのにどれくらいかかるか工数も分からないし、効果も見えないし。
どちらにしろ、時間が取られるのは間違いないので、最初はちょっとネガティブな部分がありましたね。
それで、どうしようかなと思ったのですが、役員陣で議論をした結果、「とりあえず一か月やってみよう」となりました。
そうやってクレオフーガの社内ラジオはスタートしていきました。
「全社員を巻き込んでやる」クレオフーガ流、社内ラジオ運営方法
ー社内ラジオはいつ頃から開始されたのですか?
西尾さん:2018年の4月ですね。そこから収録は土日を抜いて平日は毎日しているので、月に20本くらいのコンテンツがあります。今では100本を超えてきています。
放送自体は5分から10分ぐらいの尺なのですが、あとは編集にどこまで時間をかけるかですね。
最初の頃は、私がメインで話をしてメンバーに編集をしてもらっていたのですが、編集に結構な時間をかけていました。BGMや効果音、エコーをかけてみたり、ムダに凝っていたので、編集だけで1、2時間かかっていましたね。
今ではそこまで凝ることもなくなってきてて、出張先のホテルでiPhoneでバーっと喋ってそのままアップして終わり、みたいな時もあります。結構その辺りは自由にやっていますね。
[西尾社長がラジオの録音をしている様子]
ーどのようなコンテンツが配信されているのですか?
西尾さん:本当いろいろですね。最初は岡山と東京の情報の差を埋めるために東京オフィスの様子を伝えていました。
「東京オフィスでは近くの和菓子屋の大福が人気だよ」など、すごくどうでもいい話も結構しましたね。
また、社内からの意見として、「社長の脳内が知りたい」ということを結構言われていました。何を考えていて、どういう情報を持ってるのか、どこに進もうとしているのか、そういうことが知りたいと。ですので、そのあたりを意識して話していました。
たとえば、「新しい取り組みすることになった」ということは、もちろん別のかたちでも報告はするのですが、どういう経緯でそうなったのか、そのとき私が何を考えていたのか、お客様はどんな課題を持っているのかなど、背景を全部まとめるとなると、ものすごく大変じゃないですか。
そういったバックグラウンドのストーリーをラジオで語ることが一番多いと思います。別にラジオを聞かなくても仕事には支障が出ないのですが、聞けばより仕事が理解できる、みたいなイメージですね。
ー録音されたコンテンツはどのようにして聞くことができるのですか?
西尾さん:弊社は社内の情報共有でGoogleドライブを使っているのですが、そこにひたすらアップロードしています。
アップをしたら、「アップしたので聞いてください」とチャットワークで共有していきます。ですので過去のものも聞こうと思えば全部聞くことができます。
- 朝8時に経営陣でタリーズにいた話
- 西尾社長が香港出張にいったときの話
- 社員が突発的にやるラジオ
ー毎日やっていてもネタは尽きないんですか。
西尾さん:私が活動していることをネタにすれば、ネタは尽きないですね。たとえば「今日HR NOTEさんに取材をしてもらった」こともネタとして話すことができます。
あとは、最低限知っておいた方がいいような専門知識についてレクチャーをすることもあります。それは「音楽著作権講座」という内容で実施しています。
音楽業界やレコード会社の権利関係についてのレクチャーですね。クレオフーガは音楽の権利を扱う会社なのですが、人数も増えてくると専門性の高いメンバーとそうでないメンバーとで分かれてしまいがちになるので、そういった話もしています。
また、最近では私だけでなく、社員にもラジオでしゃべってもらうことが増えてきています。
たとえば営業のメンバーが、「僕も営業ラジオやりたいです」って急に言い出して、今では毎週木曜日は営業担当が営業ラジオをやっています。
ー営業ラジオとはどのようなものですか?
西尾さん:営業メンバーはお客様と打ち合わせすることが多く、そこで何を話したのか、実際の雰囲気や、感じたこととか、主観的なこととかも含めて、議事録にはないリアルな情報を話したりしています。
また、今後の戦略や、短期的、中長期的にやりたい野望など、そういう話も語っています。
さらに他にも、そこから派生して、エンジニアのメンバーが自分語りをするエンジニアラジオもはじまりました。
ーそれも面白そうですね。
西尾さん:エンジニアは、他の職種からするとちょっと理解されにくい一面があります。
「黙々と何かやってるけど、何やっているのかわからない」と。「じゃあ実際に何を考えて何をやっているのかそれを話そう」と、はじまりました。
“エンジニアの常識”を理解できていないと、何かお願いする時など気を使ってしまうこともあると思います。
ですので、前提としてエンジニアの業務内容を共有してもらいながら、「こういう顔してる時は話しかけないほうがいい」など、エンジニアあるあるを語っています。
エンジニアあるあるを共有してもらうとすごく面白いですし、普段の業務でもコミュニケーションしやすくなります。
また、最近はインタビューもやるようになりました。「ザ・インタビューシリーズ」といって安直なネーミングなのですが(笑)。
ーザ・インタビューシリーズはどんなことをするのですか?
西尾さん:私がパーソナリティーとなり、各社員を一人ずつゲストとして呼んで質問していく形式です。事前に社内からも「質問したい人は、このGoogleフォームに投稿してね」って、質問を集めたりもしています。
これをやりはじめた理由は、私以外にも自発的に社内ラジオをやってくれるメンバーが増えてきたのですが、自分からやりたいと言わないメンバーも当然います。そういったメンバーを引き出すとより面白くなると思ったんです。
[ザ・インタビューシリーズ]
西尾さん:このインタビュー企画で、社内のメンバーの人柄や個性が引き出せたらいいですね。そんな想いでやっています。
お互いのことがより理解できてコミュニケーションの促進になる、という声もあるので、今のところ続けていこうと思っています。
社内ラジオを盛り上げるために意識していることは?
ーよくあるのが、「施策が続かずにいつの間にか形骸化している」ということですが、社内ラジオの運営で意識していることはありますか?
西尾さん:まだ社員数が少なく、全員の顔が見える規模ですし、そもそも社員からやりたいとニーズがあがってきて実施しているので、特に形骸化しないために意識していることはありません。
ただ、私自身としては、単に「社長がしゃべってるから、しょうがなく聞いてあげよう」みたいな空気には絶対したくないなと考えています。
私は、講演で話していて寝ている人間がいると、「ちょっと面白い話をして起こしてやろう」と思うくらい負けず嫌いなので、社内ラジオでも同様に「興味があるから聞きたい」と思わせたいですね。
ですので、みんなのモチベーションが上がったり、社内のことをより知れたり、将来のビジョン、会社の進む方向に関してワクワクしてもらえるようなことを伝えていきたいと思っています。
ー社内ラジオで、リスナーを惹きつけるコツみたいなものはあるのですか?
西尾さん:ひとつは、実際の空気感を伝える、ということですかね。ラジオの良い点は音声で熱量が伝えられることだと思っています。
テキストだと文才がないと、熱量や気持ちの高さまで伝えきれませんが、音声であればテンションをそのまま伝えることができます。
たとえば、株主総会を控えていたり取締役会控えてるときは、ちょっと緊張感出てたりとか。逆に、香港出張行った時は出張感を出したり。
そういうリアルな空気感が大事だと思っています。そこを伝えられるのが音声のよさでそこは大事にしたいなっていう。
ですので、特に原稿もつくらずに、その場の臨場感や感じた事を素直に話しています。編集もほぼしていません。ライブ感みたいなのものは大事だと思いますね。
また、ふたつ目としてあげるとすれば、定期的に社内メンバーに「どんなことを聞きたいか」をヒアリングをしていることですかね。
たえとば先ほど、「まずは一ヶ月はやろうと、役員で決めた」とお伝えしましたが、社内ラジオを一か月やってみたタイミングの全体ミーティングで、「実際どうだった?」ってみんなに聞いたんですよ。
そしたら、「ぜひ続けて欲しい」という声が多くて、全然感想くれなかった社員も、「毎日欠かさず聞いてます」って言っていて。
強制せずとも、自発的に聞いてくれていることがわかったので、「やる価値があるな」と感じましたね。
ー西尾さん的には一か月やられてみていかがでしたか?
西尾さん:楽しくなっちゃいましたね(笑)。最初「めんどくさい」という感情が正直あったのですが、やりはじめてみると意外と楽しんでる自分がいました。
最初は、はじめの一週間ぐらい結構悩んだんです。「何これ?どういうテンションで臨めばいいの」みたいな。
なんか、「西尾でーす」とかいって、「何あいつめっちゃテンション高いけど、、、」みたいな、引かれたらどうしようとか、いろいろ考えていたんです(笑)。
結局、今落ち着いたのは、別に無理にテンションあげても大変ですし、普通に私が普段の全体ミーティングで話してるぐらいのテンションでいこうと。無理にテンションあげたりはしていません。普通に自然体が一番かなと思うので。
社内ラジオが紡ぐ、新たな社内コミュニケーション
ー実際に社内ラジオをやってみて、社内コミュニケーションに変化はありましたか?
西尾さん:だいぶよくなってきていると思います。もちろん完全解決というところまではなかなか難しいですが、東京の様子がわかったり、私が考えていることを伝える機会が増えたことはすごく良かったと感じています。
岡山からもツッコミや感想のコメントを頻繁にもらうようになって、チャットワークで「今日上げたよー」ってやると、「聞きましたよー、何かあそこちょっとおかしかったですね」とか、そんなやりとりも増えましたね。
あとは人数が増えてもラジオは別に労力が変わらないのは良いですね。そういう意味では良いツールだなと最近あらためて思っています。
私が昔読んだ記事で、「離職率とコミュニケーションの量は反比例する」というものがあったんですね。
ですので、コミュニケーションはすごく大事だと思います。ラジオを通して1対nでコミュニケーションできる部分もあるので、そこは一つの選択肢としてやって良かったですね。
ー動画の活用はしないのですか?
西尾さん:そうですね。私たちが音楽の会社なので、音声にこだわりをもっているという部分が一番大きいですね。
あとは、動画ってめんどくさいじゃないですか。撮影・編集する手間もそうですし、出るときは一応身なりに気をつけないといけないですし。データ容量の問題もあります。
ですので、社内ラジオは手軽さとのバランスもすごく良いと思っています。
聞く側も、何かをしながら聞くことができます。通勤中に聞いているというメンバーも結構多いみたいですね。岡山だと、車で通勤している人が多いので、車で聞いてくれている社員もいます。
ーたしかにそういった手軽さは魅力ですね。社内ラジオの今後の展望などはありますか?
西尾さん:社内ラジオは、本当に試行錯誤しながらやっていますが、今後も新しい取り組みを続けていきたいですね。
最近では、ついに岡山のメンバーが自発的に急にラジオをアップしてくれたんです。「東京の様子を伝えてくれているのに岡山の様子を伝えなきゃいけない」と思いましたって。
別に何も指示してないのに、そういうのが上がってきたことはすごく嬉しかったですね。
純粋に仕事のためにということも大事ですけど、楽しいのが続けることの秘訣だと思うので、単純に楽しいって感じてもらえる仕組みをつくっていきたいですね。
「音楽を生み出す人をハッピーにする」想いがある人と仕事がしたい
ー「社長の脳内を知りたい」と社員から声があがってくるって、当事者意識がすごいなと思ったのですが、組織づくりに関して意識されていることはありますか?
西尾さん:そうですね、たしかにそういう声があるのはすごいですね(笑)。
まだ社員とアルバイト含めても20人くらいで、人数が少ないこともあって、ビジョンの一致度は高いと思います。なぜかというと、ビジョンの一致度が高い方だけを採用するようにしているからです。
「音楽愛がある」「音楽業界盛り上げたい」という方を採用しているので、それぞれのビジョンが近しいメンバーが多いのがクレオフーガの特徴です。
私たちの理念は「音楽を生み出す人をハッピーにする」ということです。そこをどうやって実現していくのか、という話をすることが好きなメンバーばかりですね。
単純に私たちが実現したい未来に共感できる方のほうが、一緒に働いていて楽しいし、やりがいがあります。
ーたとえば、ものすごくスキルはあるのですが、そこまで音楽に興味ない方が応募されたらどうしますか?
西尾さん:基本的に採用しません。クレオフーガのビジョンに共感してくれる、音楽愛があるというところが最優先の採用基準としてあります。
ー今後、クレオフーガのビジョン実現に向けてどのような組織をつくり上げたいとお考えですか?
西尾さん:今、ビジョンへの共感度が高いメンバーが集まっているので、この状態をいかにキープできるかがポイントだと思っています。
世の中には多くの組織論がありますが、個人的にはあまり複雑なことはしたくない派なので、理屈で組織をマネジメントするというよりは、クレオフーガの理念に対していかにみんなが想いを持って進んでいけるかを大事にしたいですね。
ですので、割とフラットに近いかたちで組織運営はしていきたいと考えています。今は部署をつくらずに、開発担当、広報担当といったかたちにしているのですが、この状態をうまくキープしつつ拡大していきたいですね。