「リソースも才能も有限である中でどのように成果を出していくか」をコンセプトに、スタートアップ人事担当者の採用ノウハウを共有・ディスカッションする「Hacking HR!」というイベントが2018年7月に実施。
今回のテーマは「どの採用メディアをどのように使えば効果的なのか」。5名の企業人事が登壇され、さまざまな意見や考えが飛び交っていました。
今回は、本イベントに登壇された5名の採用ノウハウを記事にしてご紹介。ぜひ今後の採用メディアの選定や戦略を考える際の参考となれば幸いです。
【登壇者紹介】
Repro株式会社 畑中 五月氏
人事ERPパッケージのSE・導入コンサルに長らく従事。その後代表の平田と縁があり2017年5月よりReproにジョイン。Repro1人目の人事として、周りのメンバーにサポートしてもらいつつ奮闘中。
ディップ株式会社 小林 宥太氏
慶應義塾大学出身。在学中の2017年4月よりインターンとしてディップ株式会社/次世代事業準備室にジョイン。2018年4月より新卒入社。インターン時代からWantedlyの運用に注力し、これまでに2000強のエントリーを獲得。ブログ記事の総PVを23万PV(対前年比458%)に成長させる。現在はインターン採用や入社後定着率向上のためのコミュニケーション施策なども手がけつつ、同部署のプレスリリース作成などの広報業務も兼務。最近では、ディップ投資先や支援先の採用(広報)コンサルにも活動の幅を広げている。
株式会社Gunosy 猪飼 直史氏
2015年にgeechsにビジネス職として新卒入社し、ベンチャー企業の採用支援と、エンジニアのキャリアコンサルを一気通貫で担当。年間170名以上のエンジニアと面談し、130名以上の採用につなげる。2017年よりGunosyに参画。エンジニア採用人事として、新卒採用・中途採用全般に携わっています。
株式会社アトラエ 平井 雅史氏
2009年アトラエに新卒として入社し、現在10年目。Greenを使っていただいている企業様へのコンサルティングを主な業務として、1年間にサポートさせていただく企業様の数は、100社以上に上る。現場でのお客様の声から聞いた活きたノウハウを整理、駆使しながら、日本の採用に貢献すべく奮闘中。
ウォンテッドリー株式会社 佐藤 太亮氏
新卒で楽天に入社し、EC事業のコンサルタント業務、カンファレンス運営などに関わる。その後2016年にWantedly入社。営業メンバーが数名の状態から、新規営業をおこなうインサイドセールスチームの組織構築を行い、2017年11月よりカスタマーサクセスチームの立ち上げを担当。Wantedlyの運用サポートをするための仕組みづくりや、採用や組織づくりのナレッジを人事の方同士でシェアするためのコミュニティ運営などを行っている。
目次
【1】 自社に合った媒体でPDCAを回すことが重要|Repro 畑中氏
畑中さん:こんばんは、Reproの畑中です。
当時、人事未経験だった私は、「採用」と言っても何から手をつけたらいいのか全くわかりませんでした…
そのためお恥ずかしい話なのですが、「とりあえずたくさんのメディアに求人を出しておけば、なんとか採用できるだろう!」と考え、数を撃ちまくる戦略に出ました。
手当たり次第に目につく採用メディアを利用した結果、世に出している求人の数は200を優に超え、「求人のメンテナンスだけで1日が終わってしまう」という、何の改善もない地獄のような状況に陥りました。笑
この反省から「利用する採用メディアを絞ろう」という当たり前の発想に至った私は、3つの基準で採用メディアを選んで運用することにしました。その基準は以下になります。
2、高い費用を払わなくてもPDCAが回せるもの
3、そのメディアの人材プールと採用要件のマッチ度が高いもの
畑中さん:この基準を満たした採用メディアが「wantedly」でした。
当時は運用に課題感を感じていたものの、ありがたいことに100エントリーくらいはすでに獲得していたこと、運用コストは数万円、スタートアップに興味がある方も多い、求人のABテストは無制限!であるなど、wantedlyさん以外を選ぶ理由がありませんでした(笑)
本格的に運用を始めてからは、「インバウンド戦略」と「アウトバウンド戦略」の2つを意識して運用を進めています。
インバウンド戦略では「候補者に応募してもらうこと」→Reproの求人が候補者の目に留まることを最優先とし、「社内のメンバーに応援を依頼」したり「タイトルと写真を変えた求人を大量生産」するなど、いかに求人を上位表示させるかを考えて対応を行いました。
また、求人を見てもらってもエントリーしてもらわなければいけません。Reproの事業内容や働いている人に魅力を感じてもらうため、積極的に社員インタビューやイベントレポートをフィードで公開しています。1〜2週に1本の公開ですが、フィード閲覧数は152%アップし、フィードのいいね数は656%もアップしました!
今後も候補者の方々だけでなくクライアントやAgentにも広くReproのことを知ってもらうため、この取り組みは続けていきたいと思っています。直近半年でエントリー数も41%アップしているので、一定の効果は出せているのではないかと…。
畑中さん:アウトバウンド戦略については、スカウト機能を駆使しました。まずは質の高いリストを作るために「ログイン日付やプロフィール」を全てチェックして興味を持ってくれそうかどうかを判断しました。
ちなみにFacebook連携機能も「こんな人なのかな」というイメージがしやすかったので役立ちました。
スカウトを実際に打つときは、「プレミアム感、あなたが特別なんです」ということを伝えるために社長やエース社員からスカウトを送ってもらうこともしています
他にも細かいところでいくと、経験値として19時~21時にスカウトを送ると返信率が平均的に高かったので、この時間にだけ送るようにもしています。
これらをやってみた結果として、返信率も少し上がってきているので、今後もさらに改善していけるように画策しています。
このように、当たり前のことを当たり前にやりきること、そして社員の協力を得ることが何よりも大事というのが、人事未経験者の私が得た最大の知見かなと思います。
【2】16ヶ月で2,142エントリー!新卒1年目でも出来たwantedly活用術|ディップ 小林氏
小林さん:ディップの小林と申します。僕は2017年の4月からディップにインターンとして入社して、そこからwantedlyの運用を続けてきています。
私がいる部署は当時はインターン4人だったのが今では40名くらいになっていまして、社員8名に対して5倍のインターンが活躍してくれています。基本的にwantedly経由で採用しています。
私が入社した当初はwantedlyのアカウントはほぼ放置されていたので、そこからでも本気で運用すれば効果が出ることを証明できたんじゃないかと思っています。実際にこれまで約1年4か月くらい運用して2,142エントリーを獲得していて、毎月平均すると134エントリー獲得出来ています。
ちなみに私は、他のスタートアップのwantedly運用を副業で手伝ったりもしているのですが、社長しかいない設立1年未満のスタートアップで10日間運用して50エントリーきたり、他のスタートアップでも1ヶ月で2名採用出来ています。ディップだから、大きい会社だから、成功したということではないんです。やれば出来ます!
じゃあ、どうやるかというと僕がやってることは結構シンプルで、wantedlyのブログ記事を書いて知り合いの若手社会人や学生にシェアしてもらってフォロワーを増やしていくということに尽きます。
そこから自社に興味を持ってフォローしてくれた人たちに対して、刺さりそうな募集要項を出して応募を獲得していくというシンプルな流れです。
この運用において意識したり工夫していることは以下の4つです。
2、応募ハードルの低い募集要項を準備する
3、日常生活のあらゆるものを記事コンテンツにする
4、なるべく効率化して運用する
小林さん:wantedlyの運用で重要なのはとにかく「定期的に更新する」ということです。
ただ、更新するのにもコツがあると思っていまして、そのコツが「応募ハードルを下げてまずはエントリーしてもらう」ということや「オフィスで日々起こった些細なことを記事にしてみる」ということを意識すると続けやすいのかなと感じています。
また以前は記事制作にかなり労力をかけていましたが、閲覧数に大きく影響を与えるのは「タイトルが目立つかどうか」「カバー写真が良い写真かどうか」の2つだと気づいてからは、かなり効率的に制作出来るようになりました。結局この2つがないと閲覧さえもしてもらえないということです。
他にも他社と協力する、例えば今日主催いただいているリプロさんに先日オフィス見学させてもらって訪問記事を書いて、お互いにシェアするみたいなこともやったりもしました。
後は、インタビュー記事は全て取材するのではなく、アンケートに記入してもらってそれをインタビューしたかのように編集して手間を減らして記事を量産したりしています。
【3】負けないためのメディア戦略|Gunosy 猪飼氏
猪飼さん:こんばんは。Gunosyの猪飼と申します。
今日は「負けないためのメディア戦略」というタイトルになっているのですが、その背景として、実際に採用で勝っている企業は「特別な何かをしているのではなく、施策をやりきっている」というケースがほとんどだと思っています。
なので、「勝つためにどうするか」を学んでも、実際にやり切れるかどうかは別の話になります。そのため、今回は「最小限の工数でどうやってメディアを活用するのか」という最初の一歩についてお話出来ればと思っています。
まず悲しいのですが現実として、負荷が高いタスクをこなしたから採用出来るというものではないのが実情です。
特に私はエンジニア採用をメインに担当していますが、そもそもエンジニアはどの企業も苦戦している状況なので、まずは負けないために何を最低限やるかということを決めました。
2、出会えた人に適切に承諾してもらえる体制づくりを進めた
3、採用メディアを更新しなくてもいいようにした
猪飼さん:この中でもメディアに関わるところでいうと、「求人メディアを更新しないことに決めた、更新しなくてもいいようにした」ということが大きいと考えています。
ちなみにGunosyでは、メディア戦略として“負けないの定義”を、「最小限の工数で一定の応募があり、他の施策に時間を使える状態」としていまして、主に以下の3つを意識しています。
- 募集要項から「時事性のある情報」をなくして更新頻度を少なくした
- 更新サイクルを長くする代わりに、オウンドメディア(※)へのリンクを求人に追加した
- wantedlyは「時事性のある情報」の含んだ募集を更新してもOK(ただしできるだけ人事ではなく配属先チームで書いてもらうようにしている)
例えば、「◯◯というサービスの◯◯担当」のような求人票を作成するとスタートアップではすぐに内容が変わることも少なくなく、複数の媒体を利用しているとその分求人票のメンテナンスにかかる工数が増えてしまいます。
なので、前述したような内容ではなく、技術などに関する普遍的な内容が詳細に伝わるようにエンジニアにしっかりと書いてもらうようにしてもらいました。
また普遍的な内容だけになってしまうと情報の鮮度が落ちてしまうので、オウンドメディアのリンクを貼って、新しい情報に触れることが出来る導線にしています。
ただしWantedlyだけはSNS要素が強く更新することが重要なサービスではあるので、できるだけ採用したい各チームが文章を考え更新をおこなうようにしてもらっています。
当社の場合は、実際に採用数や承諾率にレバレッジが効いていたのはメディアを上手く運用してどこまで母集団形成を稼ぐかということよりも、どうやって候補者に実際の面接で興味を持ってもらうかや採用メッセージが最適に届けられるように整えるというような基盤整備でした。
なのでタスクが山積みの人事にとって、いきなりメディアで勝つ状態を目指して工数を積むのでなく、負けないようにして、自社の採用課題でレバレッジが効きやすいところから勝てるようにしていくのが得策ではないかと考えています。
【4】売り手市場における「求職者の頭の中」にある3つの特徴|アトラエ 平井氏
平井さん:こんばんは、アトラエの平井です。今回のLTでは、ダイレクトリクルーティングにおいて戦略をどうするかを左右する「求職者の頭の中」についてお話することが出来ればと思います。
今は転職が当たり前になり、その理由や年代や個人によって何を目指しているのかも本当に多岐にわたります。ただ、その中でも今は以下の3つは大枠共通しているのかなと感じています。
2、オリジナルな情報の価値が高まってきている
3、ミレニアム世代を中心に高次な欲求を求めるようになってきている
平井さん:まずは「対等な立場」というキーワードですが、これは売り手市場化している人材マーケットにおいて、「上から目線」を少し意識して気にしていただくと改善できる企業様はまだ多いなという印象です。
例えば、求人票のメッセージで「この仕事をしてもらいます」、候補者との連絡で「日程をください」など無意識的に使っている言葉が求職者からすると企業の印象を左右されるところになります。
逆にへりくだり過ぎるのもよくなく、会ってもないのに「あなたのことを本当に良いと思っています」みたいなのは求職者から見れば「嘘っぽいな」と感じてしまうので注意が必要です。
次に「オリジナルで価値が高い情報」についてですが、これは意外と当たり前なのに忘れがちな要素で盲点です。現在は情報過多社会とも言えるくらいあらゆる情報が世の中に出回っている世界です。
例えば、検索すれば分かるような、仕事内容の情報に求職者は興味を示さなくなっています。常に他の会社と自社はどのようにちがうのか、自社オリジナルの情報を求人票やスカウトメールに入れ込むことがも重要です。
「ミレニアム世代が求める高次な欲求」について、若い世代は給与や役職というものの重要性が相対的に下がっていき、それだけで選ぶということは少なくなってきているということです。
今は、その会社のビジョンやミッションなどへの共感や自己成長欲求を求めている場合が増えています。いわゆるマズローの欲求階層で言うところのまさに高次な欲求ですね。
なので、このような情報も求人票に入れ込んでいくことで、よりオリジナルな情報が掲載された募集要項やスカウトを作成出来るようになるのかなと思います。
例えば、エンジニア採用ではあえてテック系というよりもビジネス系にも関心が強いエンジニアを求めていることを伝えたり、「ビジネス系エンジニアの活躍像」や「具体的な学ぶことが出来るスキル」とかをコンテンツに盛り込むことで共感や成長イメージを持ってもらえるようにしていますね。
【5】スカウト送付をオペレーション化し工数削減を実現した方法|ウォンテッドリー 佐藤氏
佐藤さん:wantedlyの佐藤と申します、本日はよろしくお願いします。
今日は私の想いとして「人事は、短期的な採用数を追うことにはできるだけ時間をかけず、より長期的な施策に時間をかける」ということが重要だと感じていまして、実際にwantedly自体も短期的な採用についてはオペレーション化して工数を削減するということを実施しています。
実はwantedlyは少し前まで人事部は1~2名で回していまして、「人事だけじゃ採用は無理」という状況に陥ってました。
幸いにも事業部のメンバーが採用に協力的だったこともあり、スカウトを送ってもらったりしていたのですが、人事の知らない領域でおこなわれていたり、スカウト送付後の管理が出来ていなかったりと効率的でなかったなという反省があります。
そこで、まずはスカウト送付をオペレーション化してソーシングすることで工数を減らそうと取り組みを始めました。このオペレーション化をするうえで大事だったのが以下の3つとなります。
2、ソーシングの数値管理
3、送信文をパターン化
佐藤さん:最初の要件定義・言語化の部分ですが、これはスプレッドシートを利用して、募集要項を明文化しました。
事業部が欲しいと思う人物像が明確になるように人事側で丁寧にヒアリングをおこなうようにし、必須スキルと想定されるターゲットが多そうな採用媒体をピックアップしていました。
なぜ、これを重要視したかというと明文化しないと属人的になってしまうという過去の経験があったことが大きいです。
数値管理については、これが肝かなと感じているのですが、例えばソーシングをお願いした方と人事部のメンバーの間で、候補者の評価や実際に求めている人材像とのズレをどこまで解消出来るかということを重点的に見ていました。
ソーシングをして工数を削減出来ても、ターゲットとズレがあったら効果が薄くなってしまうので、ここは特に気をつけていました。
最後にスカウト文面をパターン化した背景として、これまで個々に合わせて1からスカウト文面を作っていたことがあるのですが、そこまで返信率に差がありませんでした。そのため、もちろん個別のメッセージを候補者ごとに当て込むことは前提としつつ、メッセージ全体の大枠については何パターンか作ってみて、それをソーシングした方に送付してもらった結果からPDCAを回すということを繰り返しています。
今はRPAの活用も試験的に進めています。ちなみに浮いた工数を利用した長期的な取り組みとしては、よりペルソナに合わせた採用広報を戦略として掲げています。
例えば「大企業でモヤモヤしている人」というペルソナに対して、実際にメガバンクから転職してきたメンバーの広報記事を作成して、それを募集記事に紐付けるというようなことを進めています。
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【私見】自社の現状を踏まえて”何をやらないか”を決めることが重要
今回のイベントにおいて強く意識しなければいけないと感じたことは以下の2つです。
・使える自身のリソースは限られている
特にスタートアップやベンチャーの人事はメンバー数のわりにやらなければいけないタスクが山のように存在します。そのため、確かに短期の採用数を追いかけることも必要ですが、長期的な組織戦略の方が長い目で見れば重要であったりします。
もちろん巷で紹介されている新しい採用手法を試したり、細かいPDCAを回し続けることも大事ですが、組織の実情を鑑みれば「最小の工数でどのように最低限求められる成果を出すか」をまずは考える方が得策かもしれませんね。
【イベント概要】
- Hacking HR! #1 -Hack Recruiting Media!-
- 主催:Repro株式会社
- イベント詳細URL:https://hacking-hr.connpass.com/event/91791/
- 会場:Repro株式会社 イベントスペース (渋谷区代々木1-36-4 全理連ビル6F)
- 開催日時:2018/7/18(水)19:30〜22:00