【グッドキャリア企業アワード2024レポート】厚生労働省が「幅広い⽀援で従業員の成⻑を実現する」企業15社を表彰|HR NOTE

【グッドキャリア企業アワード2024レポート】厚生労働省が「幅広い⽀援で従業員の成⻑を実現する」企業15社を表彰|HR NOTE

【グッドキャリア企業アワード2024レポート】厚生労働省が「幅広い⽀援で従業員の成⻑を実現する」企業15社を表彰

  • 組織
  • キャリア開発

※本記事は、主催企業や登壇者/登壇企業に内容を確認のうえ、掲載しております。

2024年11月27日、厚生労働省が「グッドキャリア企業アワード2024」のシンポジウムを開催しました。

グッドキャリア企業アワードとは、従業員の自律的なキャリア形成に取り組む企業を表彰する、厚生労働省主催のアワードです。表彰やシンポジウムを通して、受賞企業の理念や取組内容を紹介し、キャリア形成支援の重要性を社会に広め、定着を図ることを目的に実施されています。

今回のグッドキャリア企業アワード2024では、全国94社の応募の中から、「大賞(厚生労働大臣表彰)」に5社、「イノベーション賞(厚生労働省人材開発統括官表彰)」に10社が選定されています。

本記事では、受賞企業の具体的な取組事例や審査総評、シンポジウム当日の基調講演の内容などについて、イベントレポートにまとめてお届けします。

目次

1. 「グッドキャリア企業アワード2024」シンポジウム開会

まずはじめに、グッドキャリア企業アワード2024シンポジウム開催の挨拶として、厚生労働省厚生労働審議官の田中氏からお話をいただきました。

(※福岡資麿(ふくおか たかまろ)厚生労働大臣の挨拶を代読)

田中 誠二 氏|厚生労働省 厚生労働審議官

この度受賞された各企業の皆様には、心からお慶びを申し上げます。これまで従業員のキャリア形成支援に積極的に取り組み、他の模範となる成果を上げてこられましたことに深く敬意を表します。

我が国は、人口減少に伴う深刻な労働力不足やDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速化等、企業や労働者を取り巻く環境の急速かつ広範な変化に直面しています。こうした問題に対応しながら将来にわたり発展していくためには、人への投資を推し進め、働く方一人ひとりが能力を存分に発揮できる環境整備を進めていくことが不可欠です。

グッドキャリア企業アワードのテーマである従業員の職業能力の開発・向上は、その企業や組織にとって持続的成長の礎となります。変化の激しい経済社会の中で、経営上の課題に速やかに対応し成長を遂げていくためには、従業員の継続的なキャリア形成やリ・スキリングを積極的に支援し、「人を育て、人が育つ」組織づくりを進めることが極めて重要であり、そのような企業こそが日本経済の発展を牽引する存在になり得るものと考えております。

今回の受賞内容を拝見しますと、経営理念や人材育成方針についての理解の浸透、キャリアコンサルティングを受けられる環境の整備、従業員自身のキャリアビジョンに合った研修や、多様な業務を経験し挑戦できる機会の提供等、一人ひとりが自分のキャリアについて考えながら、能力を高め、生かして活躍できるよう、様々な取組がなされています。

受賞された各企業の皆様には、今後とも更なる取組を進めていただくことをご期待申し上げます。加えて、本日お集まりの皆様には、本シンポジウムを通じて、こうした好事例を知っていただき、働く方々のキャリア形成やその支援の重要性への理解を深めていただくとともに、実際の取組に役立てていただけますと幸いでございます。

2. 表彰|グッドキャリア企業アワード2024受賞企業15社とは

次に、グッドキャリア企業アワード2024の受賞企業15社(大賞5社、イノベーション賞10社)が表彰されました。受賞企業は、次に記載の通りです。

2-1. 受賞企業一覧(※五十音順、敬称略で表記)

大賞(厚生労働大臣表彰)5社

  • 株式会社関西鳶
  • キヤノンマーケティングジャパン株式会社
  • 住友生命保険相互会社
  • 西日本電信電話株式会社
  • ネクスキャット株式会社

イノベーション賞(厚生労働省人材開発統括官表彰)10社

  • 株式会社岡崎土質試験所
  • キャレオス株式会社
  • 株式会社サカイエステック
  • 株式会社就労センター
  • 株式会社セーフティ&ベル
  • 株式会社ダイナム
  • 株式会社デンソー
  • 株式会社日本エー・エム・シー
  • 株式会社ビジョン・コンサルティング
  • 株式会社Massive Act
受賞企業の具体的な取組事例は、グッドキャリア企業アワード公式サイトよりご確認ください。

2-2. 審査総評「いかに社員を一人にせず、フォローしていく体制を作れているか」

受賞企業に表彰状授与が行われた後、審査総評として今回のアワードの審査委員長を務めた独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長の藤村氏よりお話をいただきました。

藤村 博之 氏|独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長

キャリア開発では、「売れる能力」あるいは「必要とされる能力」を高める必要があります。しかし、これはとても難しいものです。

今売れている能力はわかります。しかし、5年・10年先にどのような能力が必要とされるかは誰にもわかりません。そのため「この分野では恐らくこういった能力が必要とされるであろう」と従業員一人ひとりが考えながら動き、これを企業がしっかりと支えていく必要があります。

「キャリアを考えてください」「会社としてこういう仕組みを用意しました」と従業員に投げかけるだけでは、なかなかついてこれないと思います。「実際にどうやったらいいかわからない」あるいは「挑戦して上手くいかなかったらどうするんだろう」といった不安や恐れを抱える方は非常に多いです。

今回の受賞企業は、この点をしっかりフォローし、挑戦することに躊躇してしまう従業員を支え、背中を押す施策を実践されています。特に大賞に選ばれた企業は、取組に全社的な広がりがあり、その成果がある程度見えてきている企業です。そのため、他の企業の参考になる取組をされていると考えています。

また、イノベーション賞では、まだ他の企業が真似することは難しくありますが、面白いユニークな取組をされている企業を選びました。この受賞をきっかけに、さらに取組を全社的なものに進めていっていただきたいと思います。

今回のアワードでは、従業員の自己啓発を積極的に支援する企業もたくさん見られました。各社員の一番近くにいる管理職がある程度の余裕を持ち、部下一人ひとりの面倒を見ていく。管理職が管理職としての役割を果たせる仕組みを作っていくことができるかが、今問われています。

また、人事評価制度は社長からのメッセージを具体化したものです。ボーナスや昇進といった部分に目が行きがちですが、従業員の育成という観点も大事にして設計してほしいです。

今回のグッドキャリア企業アワードで取組が終わるわけではありませんので、もう一度その点を認識いただき、さらに従業員がイキイキと働く会社にしていただきたいと思います。

3. ⾃社ブランドは『優秀な社員』を⽬指して|基調講演

シンポジウムの基調講演では、2022年度の同アワードにて大賞を受賞したえびの電⼦⼯業株式会社の代表取締役社長である津曲氏より、同社で実践されているキャリア形成支援の仕組みに関するお話をいただきました。

津曲 慎哉 ⽒|えびの電⼦⼯業株式会社 代表取締役社⻑

弊社は、宮崎県の西側を中心に、6つの生産拠点を持つメーカーです。主に、電子部品や自動車部品の製造、工場向け省力化マシン、ソフトウェアの開発などをおこなっています。1975年に私の父が創業し、来年で50年の節目の年となります。

深刻な人手不足から「グッドキャリア」への取組をスタート

弊社の2017年当時の状況を振り返ると、高卒採用や新卒採用を新たに開始したものの、就職説明会のブースには学生が全く来ないような状況でした。

また、組織内では「最近の若者は出世意欲がない」といったベテラン社員の嘆きの声が聞こえ、反対に若手からは「先輩たちのようにバリバリは働けない」といった声が多く聞こえてくるような状態でした。

率直に「二代目社長としてやっていけるのか」と不安が募る中で、現パナソニック創業者である松下幸之助さんの教えに感銘を受け、今いる社員を大切にするキャリア支援の取組を始めようと決めました。

松下幸之助の教え
「松下電器は何を作るところか?」と尋ねられたなら、「人を作るところでございます。あわせて、電気製品も作っております」と答える。

しかし、これまでの固定概念や偏見を組織から取り除くことはとても難しく、多くの社員の方から「どこにそんなことに取り組むお金があるのか?」「今できるのであれば、とっくにやっているよ」といった言葉もたくさんいただきました。

しかし、幸いにも元ホテルマンだったため、こうした言葉を社員からのSOSだと捉えて受け止めることができ、現場の悩みを率直に聞いて全部解決していくための行動を取ることができました。

こういった中で生まれたキャッチコピーが『地元で家族と自分らしく』です。たとえ従業員本人が元気でも、家族が病気や怪我をしたら休まざるを得ない時があります。こうした状況に置かれても働けるような柔軟な制度を用意し、働きながら頑張る社員を会社として応援するためのキャリア支援を形作っていきました。

えびの電⼦⼯業ならではの「グッドキャリア」への取組

具体的な取組①|加点式の育成型人事評価制度「成長チェック」

具体的な取組の1つが、加点式の育成型人事評価制度で、全社共通の成長チェックと責任者(管理職)向けの成長チェックに分けてスタートしました。

ポイントは、両方とも本人の自己採点があり、自己評価と上司評価を合致させなければならない点です。

また、残業が月平均30時間以下、有給は年10日以上取得していなければ、今の仕事の負担が大きいため昇進・昇給ができないという縛りを設けています。つまり、しっかり休みながら成果を出した人を高く評価するようにしています。

そして、このような取組を進めた結果、女性管理職が13.9%から30.6%へと大幅に増えています。評価が見える化され、本人が客観的に自分のできていることを確認できる体制になったことで、これまで謙遜して身を引くことの多かった優秀な女性社員が管理職になることに対して納得・安心できるようになったのだと思います。

具体的な取組②|育成型のコミュニケーション「コーチング」

2つ目としては、「どうやって教えていいかわからない」という社員が多くいたこともあり、外部の専門家を呼んで「教え方(コーチング)」を学ぶ機会を作ったことです。

管理職が優秀であればあるほど、部下がミスをする前に仕事を奪ってしまったり、結果を優先した指示や行動を行ってしまったりします。すると、部下が育たないだけでなく、管理職はずっと休むことができない状況に陥ってしまいます。

そして、多くの管理職はそのような状況の中で「自分が犠牲になっても構わない」と頑張りすぎてしまう傾向も見られます。そのため、部下から「あんな風にはなりたくない」と思われてしまうのです。

こうした状況について、会社全体で「管理職も休みが必要」「ずっと働き続けることは現実的ではない」といった内容を学ぶことで、社員全体での意識改革を無理なく進めることができたと思います。

具体的な取組③|自分らしい働き方「多様性あるキャリア支援」

3つ目としては、スライドのような多様な応援制度や支援を充実させることです。

もともと弊社では、状況に合わせてパートと社員の身分変更が自由でした。これに加えて、新しくパートの退職金制度を始めています。

こうした制度への取組は、結果としてダイバーシティ&インクルージョンに繋がり、求人応募や社員転向の増加、障害者雇用、技能実習生の受け入れなどにも繋がっています。

ゴールは「自分の仕事に誇りを持って話せる社員」が一人でも増えること

最後に、グッドキャリアアワード2022受賞後の影響と変化、取組と成果について紹介します。大賞をいただいた後もグッドキャリアに関する取組は継続して続けており、実際の数値もかなり改善できています。

不景気の影響もあり、生産性は2019~2020年で少し下がりましたが、今では当時を超える生産性アップを実現しています。お客様にも身内にも恥ずかしくない自分たちのおかげで成し遂げた自慢の成果です。

社員が「えびの電子工業で働いているのはいいね」と言われた時に、「私が頑張って働いてるからね」と自慢したりする。そんな社員が多くいる会社を目指して。まだまだ道半ばですので、これからも頑張っていきたいです。

4. 受賞企業取組プレゼンテーション

パネルディスカッションでは、法政大学キャリアデザイン学部教授の坂爪氏をコーディネーターに、大賞を受賞された株式会社関⻄鳶の⻄井氏、住友⽣命保険相互会社の⼭⽥氏、⻄⽇本電信電話株式会社の⿃井氏から、各企業における具体的な取組事例をご紹介いただきました。

4-1. 未来永劫発展し続ける会社へのチャレンジ|株式会社関⻄鳶

⻄井 弘之 ⽒|株式会社関⻄鳶 取締役

私たちは、十数年前の個人事業主時代に、組織が全く機能せず、離職率が高くなり、作業効率の悪化や利益率の低下を招いてしまったことをきっかけに、社員1人ひとりが高い志を持つ必要性を感じ、企業理念のもとに全社員が働きやすい環境を整えることで離職率をゼロにする挑戦を決意しました。

1つ目の挑戦は、少数精鋭だからできる「未来会議」の実施です。

この会議では、若手社員がどんどん意見を出してくれます。若手社員から意見をもらうことは非常に重視している点で、一人ひとりが経営者としての意識や責任感を持てるような場にしたいと考えています。

また、私たちは班に分かれて現場に行きますが、自分たちの作業をできる限り早く終わらせて、忙しいところに応援しにいく(助け合う)文化があります。こうした助け合いが自然と生まれていった結果、生産性が10~20%もアップしています。

2つ目は、社員の未来を見据えたキャリア形成のサポートです。

各部署の目標だけでなく各個人でも目標を決め、PDCAを回すことを進めています。決めた目標も半年で振り返り修正しながら、目標の実現に向けて取り組んでいます。

こうした結果、「〇〇部長のようになりたい」と意欲を持った若手社員が増え、彼ら自身が自らの成長に向けて頑張り始めています。

3つ目が、個々の強みを適正評価し、年齢や国籍の壁を越えた組織にしていくことです。

現在、弊社では4名の障害を持っている方が働いていますが、障害を持っていることには一切触れていません。また、社員もそういう扱いを一切しません。

覚えるのが早い人もいれば、遅い人もいます。覚えるのが遅い人には、繰り返し伝える。根気強く伝え続けることで、覚えられるよう努力してもらう働きかけをしています。

また、新入社員は、今日学んだことを毎日日記に記載し、上司や先輩がそれにコメントを返すという取組を行っています。目的は自分自身での振り返りだけでなく、自分が先輩になった際には後輩へ教えてあげる材料を作ることです。

今では、初年度に入社してくれた実習生が日本語も上手になり、若手社員の育成に協力してくれています。私生活でも実習生のお手伝いや説明も一生懸命してくれて、本当に頑張ってくれています。

このように、若者の建設業離れが進む中でも、私たちが建設業の魅力や楽しさを発信していくことで、少しでも今の若者に建設業の楽しさを伝えていくことができればと思います。

4-2. 社員と対話しながら進めるアジャイル型でアプローチ|住友⽣命保険相互会社

⼭⽥ 哲之 ⽒|住友⽣命保険相互会社 エグゼクティブ・フェロー兼 ⼈財共育本部 事務局⻑

我々の人財共育に関する取組は、ウェルビーイングに貢献する『なくてはならない保険会社グループ』というVision2030を新たに設定して、これを実現するための経営戦略を作成する中で作り上げていきました。

これまでの上位下達な組織文化から、1人ひとりの主体性を尊重する文化に変えていく。そして、会社と職員が対等な関係で共に育ち、選び選ばれる関係を作っていくことを目指し、エンゲージメント、eNPSといった数値を上げることで、生産性向上を実現していくことを目的に考えています。

そして、人財共育の目指す姿を実現するために、まずは経営戦略をコンピテンシー(人財要件)に書き換えることから始めました。コンピテンシー(人財要件)を軸にすることで、一人一人の職員が「自分はこういった能力を上げていくことで、こんな仕事ができるようになる」と思えるような仕組みを作っています。

図のように、人財共育の理念が一番頭にあります。その下で、会社はその人財戦略に基づくコンピテンシー(人財要件)を作っていきます。

そして、職員はその人財要件を見ながら自らのキャリアを考えていきます。同時に、会社は人財ポートフォリオを検討し、会社と職員を繋ぐタレントマネジメントを揃えていく必要があります。

そして、それらを理解し浸透させるために、ありとあらゆる人財共育施策を打ち、これらをぐるっと回した時にどんな結果になるか振り返るような仕組みです。

ただ、この仕組みを一気に落としていった場合、おそらくハレーションが起こってしまうことが目に見えていたので、当社ではトップダウンでの推進を行わず、アジャイル型でアプローチをしていきました。

このアジャイル型は、建売住宅と注文住宅をイメージするとわかりやすいかもしれません。注文住宅を購入するときのように、各事業部門や経営陣と本当に何回も対話を重ねながら、皆で作り上げていくスタイルで進めていきました。

各部門や会議で定期的にディスカッションを行うことに加えて、エバンジェリストチームを組み、施策を打ってはそれについての感想を得ながらアップデートしていきました。また、社長の高田もエバンジェリストとしてメッセージを頻繁に発信しており、一番のエバンジェリストはやはり社長だと思っています。

また、人事部や勤労部といった制度を作る部署とタッグを組みながら、ありとあらゆる年齢層や職種に応じた支援策を打つことを心がけています。

具体的には、「ジョブフェア」や「キャリアプランガイドブック」「ジョブトライプログラム」など、数多くのキャリア形成サポートの取組を実践しています。自己啓発費用サポートとして、年間20万円まで好きな勉強ができる仕組みもあります。キャリアコンサルタントによる個別支援も積極的に行っています。

以上、網羅的な取組ですが、すべて対話の中で作り込んでいることが1つの特徴です。

まだまだ道半ばですので、引き続き会社全体でウェルビーイングを実現できる住友生命にしていきたいと思っています。

4-3. 社員の声を聞く「キャリア相談窓口」を設置|⻄⽇本電信電話株式会社

⿃井 真次 ⽒|⻄⽇本電信電話株式会社 キャリアデザイン推進室 室⻑

弊社は、2023年4月に、社員が高い専門性やスキルを発揮し、自律的キャリア形成を実現するための人事給与制度への見直しを行いました。

しかし、制度導入前の社内エンゲージメント調査において「キャリアを描けていない」「上長、会社によるキャリア開発支援機会が少ない」と感じている社員が多数いることが判明しました。

そのため、2023年4月に「キャリア相談窓口」を設け、同年7月には「キャリアデザイン推進室」を設置。社員のキャリアデザイン形成を継続的に支援していく体制を整えました。

キャリア相談窓口は、NTT西日本グループの社員なら誰でも利用可能で、相談時間は一回50分、完全リモートで実施をしています。

相談員全員が国家資格キャリアコンサルタントで、社内相談員と社外相談員の両方を配置しており、開設から15ヶ月で相談件数が860件、満足度が94%と高い評価を得ています。

特徴的な点は、社内の相談員を社内ダブルワーク制度(業務時間の最大2割までは、社内の別業務を経験できる制度)で募集していることです。相談員同士は毎月交流会も実施しており、ケーススタディや日頃の対応で感じたことなどを意見交換し、品質の維持・向上に努めています。

また、社内の相談員は、半年で総入れ替えしており、この取組に携わっていただく協力者が増えるサイクルを回しています。実際に歴代の相談員が繋がり始めており、社内におけるキャリアコンサルタントの輪も広がっていると思っています。

このほかにも、ポータルサイトのリニューアルや若手社員向けの研修プログラムの作成、ロールモデルガイドブック・動画の提供など、社員の声を基に自律的なキャリア開発支援の充実に向けて多様な取組を行っています。

こうした取組の浸透は「自律的キャリア開発支援の4本柱」として社長から全社員向けにメッセージを発信したり、社長キャラバンと称して全30支店で対話会を行ったりと、双方向で意見交換をしながら進めています。

こうした取組の結果、社員の自律的キャリア形成に対する意識は高まっており、行動の変化も少しずつ見られるようになってきています。

変化の激しい時代の中において、価値創造の源泉は「人」です。

今後も社員の自律的なキャリア開発に向けた取組を推進し、社員のウェルビーイングの最大化を目指していきたいと思います。

5. パネルディスカッション「幅広い⽀援で従業員の成⻑を実現する」

Q. キャリア自律・キャリア形成支援の意義を社内の人にわかってもらうには?

弊社は力仕事なので、長く同じ仕事を続けることができません。そのため、従業員自身が学ぶことの大切さをとてもわかっていて、日々成長しないといけないと理解しています。

「何か能力を身につけないと、この先まずいかもしれない」という感覚を社員全員に持ってもらうことが大事だと思います。

キャリア支援の取組を伝播させる起点は管理職だと考えています。そのため、管理職に対する浸透について、社長も含めたエバンジェリストチームが日々向き合っています。

一方で、社員へ広げていく第一歩は、若手職員に焦点を当てて考えました。若手職員で実施した仕組みをうまく活用しながら、そのレールにミドル層やシニア層の社員を順番に乗せていくように設計しています。

弊社では、社内エンゲージメント調査結果をもとにキャリア支援に関する取組を始めたため、経営陣や社員に理解されやすい状態だったと思います。ただ、キャリアデザイン推進室を作るなど、「社員に本気度を見せる」ことは意識していました。

また、弊社も住友生命さんと同様に若手に対するキャリア支援から始めています。特に次の異動を意識する入社2年目の社員と、プライベートや仕事での変化を感じることが比較的多い30代手前の29歳の社員をターゲットにキャリア相談を行うなど、施策を展開していきました。

Q. キャリア自律・キャリア形成支援の効果をどのように捉えているか?

純粋に、新卒社員がまだ1人も辞めずに頑張ってくれていること。そして、彼らの頑張って書いてくれている日記が、会社としてすごい財産になっています。

個人の能力開発に際して、日記は本人が日々の業務を見返すことができるだけでなく、先輩からフィードバックをもらうことで目の前にわかりやすい目標が置かれるので、成長スピードが毎年速くなっている実感があります。

もちろん、成長スピードに個人差はあり、1年かけてできるようになる子もいれば、半年でできるようになる子もいます。ただ、どこまでできれば一人前なのかを本人が理解できるまで先輩がサポートする体制ですので、確実に成長スピードは速いですね。

また、日記は自分が後輩を持った時に教えるための材料にもなるので、組織としての育成力の大きな源泉になってくると思います。

施策全体の効果を測る指標としては、eNPSやウェルビーイング実感に関する数値を取得しています。また、エンゲージメントスコアも施策を打つと明らかに向上することが多く、確認しています。

定性面では、管理職の支援体制について、先ほど申し上げたエバンジェリストが現在の理解度を点数制にして評価しています。実際に、そのエバンジェリストが点数を高く付けている管理職の組織では、現場の職員が自分のキャリア開発に関して社内インフラ内で入力している(キャリアについて考えている)割合が高いです。

このように、定量的な面と定性的な面を組み合わせて、多面的に効果を見ています。

弊社では、最終的にエンゲージメントが上がってくることが最も良いと考えています。また、社内への浸透という観点で、相談件数や社内ダブルワークの応募件数が増えてきていることも成果だと感じています。

キャリア相談窓口への相談をきっかけにキャリアコンサルタントをめざす方もでてきており、少しずつではありますが、全社的に社員が新たな一歩を踏み出すことを後押しできるようになってきていると感じています。

Q. 新入社員をどのようなプロセスで育成しているのか?(株式会社関西鳶)

新入社員は、まず1ヶ月間は会社内で資格取得を含めた勉強をしてもらいます。ここは日々淡々と教え込むところですね。

その後、実際に現場に出て仕事をしますが、建設現場には安全ではない場所も多くあります。安全な場所から少しずつできるようにしていき、職長の判断で少しずつ幅を広げていきます。

人によって成長するスピードは異なるので、近くにいる職長が「ここまでだったらできそう」と見極め、成長を促しています。もちろん新しくやるときにはミスもありますが、職長含めて周囲がカバーし、なぜ悪かったのかをしっかり振り返る機会を作るようにしています。

Q. エバンジェリストチームはどのような方が務めているのか?(住友⽣命保険相互会社)

弊社は部長クラスが約60名、支社が全国に約90拠点あります。こういった合計約150名の人と対等な関係で対話できなければエバンジェリストは務まらないので、人事部にも協力をいただきながら一定の経験値がある方にお願いしています。

キャリア支援は業績にすぐ跳ね返るような即効性のある効果がなかなか見られません。そんな中でも現場の組織長と粘り強く対話し、信じてやり続けることを対等な関係で丁寧に語っていくことで、少しずつ理解してもらっています。

またエバンジェリストは、彼らとの対話だけでなく各支援策の企画にも全て入ってもらっているので、支援策の企画の中身も彼らが体現できるようにしています。

Q. キャリア相談窓口の体制はどうなっているのか?(⻄⽇本電信電話株式会社)

相談窓口は、社内コンサルタント6名、社外コンサルタント11名、計17名の相談員で対応しており、現在の相談件数を対応するには十分なメンバーにご協力いただいています。社内コンサルタントは、年齢や性別、役職などバラバラな相談員を配置することで、多様な相談内容に対応しています。

社外コンサルタントは、2023年10月にトライアル的に設置したところ反応が良かったため、2024年4月から常設しました。管理職からの相談も多く、社内相談員だと相談しづらい内容も相談できるため、多くの申込をいただいていると思っています。

 

6. グッドキャリア企業アワード2024|総括

最後に、今回のアワードおよびシンポジウムの総括として、法政大学キャリアデザイン学部教授の坂爪氏よりお話をいただきました。

坂爪 洋美 氏|法政大学キャリアデザイン学部教授

今回、最も印象に残ったことは、キャリア自律やキャリア形成支援を進めることが、組織にどのような意義をもたらすかを明確にすることが求められているということです。

受賞企業の取組からはキャリア自律に取り組む意義を社内に浸透させるためには、3つのポイントがありそうです。

1つ目は、従業員の成長と企業の成長がしっかり結びついており、かつ、それがわかりやすい言葉で表されていること。2つ目は、そもそも何のためにキャリア自律に取り組むのかを明確にすること。3つ目は、キャリア自律を果たした従業員が活躍できる場を社内に作ることです。

「キャリア自律」という言葉は抽象度が高く、自社でのキャリア自律が実現された状態とは何かが定まってない場合もあると思います。会社ごとに異なるであろう「キャリア自律を果たした従業員」のあるべき状態を見える化していく必要があります。

キャリア形成支援とは、働く人を変えていくことで、企業のパフォーマンスを上げていく施策です。そして、このサイクルが回っていく中で、企業や組織自体が変わっていくことになります。

その意味で単に従業員を支援することだけに囚われないキャリア形成支援の在り方が、恐らく次のアワードではご紹介いただけるのではないかといった思いを本日強くしました。

改めて、素晴らしい取組をご紹介いただいた3社の皆様にお礼を申し上げると同時に、この歩みを止めることなく、引き続き進めていただくと、皆様のご報告を聞いた皆様がさらに力をもらえるのではないかと思いました。

過去開催の記事はこちら

社員の意欲を引き出し、活躍につなげる企業のキャリア支援の取り組みとは?|グッドキャリア企業アワード#1

受賞企業に聞く!社員が“成長できる”企業のあり方とは?|グッドキャリア企業アワード#2

【グッドキャリア企業アワード2022レポート】従業員の「自律的なキャリア形成」に取り組む企業を厚生労働省が表彰

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