こんにちは、HR NOTE編集部 働き方改革プロデューサーの井上です。
今回は、働き方改革において見逃せない「ITインフラ」ついてご紹介。
働き方改革では、フリーアドレス、リモートワーク、RPAなどといった手法や仕組みを良く耳にしますが、それらを円滑に推進していくために忘れてはいけないのが「ITインフラの環境をどう整えていくか」です。
本記事では、コクヨの伊藤さんに「ITインフラ」の重要性や必要な考え方についてお伺いし、まとめています。
【人物紹介】伊藤 毅 |コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部 スペースソリューション事業部 ワークスタイルコンサルタント
目次
働き方改革で重要なのは「自社のグランドコンセプト」を描くこと
働き方改革の「特徴的な2つの実例」と「計測方法」
働き方改革で「オフィス空間づくり」は重要なのか
「意味のあるフリーアドレス」にするために必要な考え方
健康経営による4つのメリットと、その取組み方法とは
「テレワーク導入」は社員の働き方にどんな影響をもたらすのか?
働き方改革に欠かせない「ICTツール活用」を考える
コクヨ流ICTツール活用とプロセス管理ツール『KAKIAGE』をご紹介
働き方改革における「ITインフラ」の重要性
-まずは、働き方改革におけるITインフラの重要性についてお聞かせください。
伊藤氏:まず、働き方改革の施策を考える際は、施策を遂行するうえでの基盤となる「ITインフラの整備」についても考えていただきたいと思っています。なぜなら、ITインフラの環境が整っているかどうかで、働き方改革のスピードは大きく変わってくるからです。
ビジネスにおいては、電話、LAN、複合機、チャット、ビデオ会議、グループウェアなど、さまざまなITを活用しており、仕事の効率化には欠かせません。
また現在、オフィスに留まらず、家、コワーキングスペース、サテライトオフィスやカフェなどさまざまな場所で仕事ができるのは、ITの力が非常に大きく、より働きやすい環境を実現するために、ITインフラの整備が重要です。
ITインフラを支える「IT・情報システム部門」の悩み
-しかし、働き方改革のためにITインフラの環境を整えるといっても、いくつもハードルがありそうですね。
伊藤氏:そうですね。やはり一筋縄ではいかないと思います。
新しいITツールの導入をためらうケースは多々ありますが、その理由として多いのが、「トラブル発生への懸念」です。
今や、ネットワークがつながって当たり前の時代。たとえ短時間であっても、「ネットワークにつながらない、お客様にメールが出せない、テレビ会議ができない」といったトラブルがあれば、担当部署に問い合わせやクレームが殺到してしまいます。
ですので、情報システム部などの担当部署にとって、確実性や安定性の担保はとてもシビアな問題です。
担当部署の立場で考えると、「未知なものは導入したくない」という心情は理解できますし、既存の安定したものを使いたくなるでしょう。
また、担当部署の心情的なハードルをクリアしたとしても、「コストダウンにつながる」「業務効率化が期待できる」といった、明らかな効果が見込めない限り、導入に至るケースは多くはありません。
-導入後の効果を測ることは簡単ではありませんよね。
伊藤氏:そうですね。苦労してITインフラの環境を整えても、導入担当の方から「効果が感じられない」「やる意味があるのか?」といった疑問の声をいただくこともあります。
効果が実感できるまでには多少時間がかかりますが、アンケートやさまざまなデータを定期的に取ることで効果を可視化することができますので、「今ある仕事をどれだけ効率化できたか」、効果測定することをお勧めしています。
データが取りやすく、成果が見えやすいものとしては、「コミュニケーション促進効果(意思疎通がスムーズになる)」「移動時間の削減効果(場所に縛られずweb上で集まれる)」「資料の作成時間短縮と質向上効果(web上でデータが共有できる)」などがあります。
また、効率化により生まれた時間で、よりクリエイティブで生産性の高い仕事をすることができ、組織や企業の成長にもつながります。
お客様には、目先の効果だけを求めるのではなく「IT活用がどのくらい働き方改革にインパクトをもたらすのか」、その重要性・必要性を伝え、やる意味や意義を説明させていただいています。
働き方改革では、「ITによるコミュニケーション改革」が必要
伊藤氏:働き方改革の施策を検討するにあたり「コミュニケーションのあり方を変える」という視点はとても重要で、ITは欠かすことのできないツールです。
下記は、コミュニケーションをレベル1~6にわけて、どのようなITツールが必要になるかを整理したものです。
Face to Faceでのコミュニケーションは非常に重要です。
仕事をするうえでは、会議、打ち合わせ、軽い相談や情報共有など、さまざまな場面で多くの人とのコミュニケーションが欠かせませんが、そのためにはすべての参加者が決められた場所に集まる必要があります。
しかし、ITインフラが整っていれば、距離が離れた相手とのコミュニケーションにテレビ会議やweb会議が活用できますし、内容によっては、メールやチャット・SNSを活用することで、会議をせずとも仕事を円滑に進めていけると思っています。
また、クラウド上で資料を共同編集できるツール(KAKIAGE)を使うことで、「この資料、チェックしてください」、「この資料はここがダメです。修正してください」といった会話も作業もすべてWeb上で完結させることができます。
Face to Faceでお互いの顔をみながら進めることも大切ですが、仕事の内容やお互いの状況にあわせて、効率的・効果的なコミュニケーション方法を選んでいくべきでしょう。
ITインフラを整えるうえで考えたい「セキュリティの許容」
-ITインフラにおいて、セキュリティ面はどのように考えていくのでしょうか。
伊藤氏:セキュリティには、「物理セキュリティ」と「情報セキュリティ」の2つがあり、「パブリックエリア=誰でも入れる」や「執務エリア=社員のみ入れる」といった感じに、エリアごとに利用権限を分けるのは「物理セキュリティ」にあたります。
一方、ITの活用に関するセキュリティは「情報セキュリティ」ですが、この「情報セキュリティ」が導入の大きな課題であり、「どこまで許容するか」が非常に難しいところです。
IT導入の窓口となる情報システム系の部署の方は、立場上「どんなメリットがあるか」ということよりも「どんなリスクがあるか」を心配される傾向があるように思います。
そして、「あれもこれも」と、リスクに対する対応策を検討するうちに、インフラ整備の本来の目的を見失ってしまい、「あまりにもリスクが大きいから見送ろう」と、結局何も進められない、というケースがよくあるのではないでしょうか。
コクヨの場合は、社外でのインターネット利用に関して、「不正アクセスなどの危険性がゼロではないが、限りなくゼロに近づけるような適切なセキュリティ対策ができている」としたうえで、実施に踏み切っています。
-考えれば考えるほどきりがないと。
伊藤氏:きりがないです。「データが漏れたらどうする?」と言われても、完全に漏れるのを防ぐためには、インターネット自体をやめるしかありません。
ですので、新たなITインフラの導入にあたっては、セキュリティレベルを見直す必要もあるのです。
とはいえ、やはり不安・・・という企業様も多くいらっしゃいます。情報漏洩は倒産のリスクにもつながりかねませんから当然ですね。
あらたなITインフラの導入を決断するポイントは、「利便性の追求」と「リスクヘッジ」とのバランスだと思っています。
そのため、迷われているお客様に対しては、「何を実現したいのか」「そのためにITインフラは必須なのか」「現在のセキュリティ状況に対し何が不足しているのか」、といったことを丁寧にヒアリングしていきます。
そのうえで、「お客様のセキュリティの状況を鑑みると、〇〇の部分は大丈夫ですが、懸念点として△△があるので、強化が必要ですね。どうしますか?」という話をよくしています。
場合によっては、お客様側の情報セキュリティの資料やガイドラインを参考に、具体的な提案をさせていただくこともあります。
-セキュリティリスクにおいて、一番多いケースはどのようなものでしょうか。
伊藤氏:セキュリティリスクにおいて一番多いのは、実は「紙の紛失」です。
「社外秘の資料をお客様のところに置いてきてしまう」「契約書が見当たらない」など、紙の紛失は情報漏洩を引き起こす一番の要因です。
ただ、被害の拡大範囲という点ではデータの方が圧倒的に広く、社会的インパクトも大きいため、IT関連の情報セキュリティについてはどの企業様もとても慎重ですね。
-ありがとうございます。ここまでお話をお伺いして、あらためてITインフラを整えることは非常に重要なことであると認識いたしました。
伊藤氏:そうですね。たとえば働き方改革の施策として「フリーアドレスを導入したい」といっても、ITインフラが整っていなければ、実施は難しいでしょう。
ITインフラの整備・導入にあたっては、コストやセキュリティ面でハードルがありますし、効果の見える化という点でも課題はあります。
しかし、ITインフラは働き方を変える、さまざまな施策の基盤です。ですので、本気で働き方改革に取り組むのであれば、「利便性」と「リスク」のバランスをみながら、自社にあったインフラ環境を検討していただければと思います。