毎月の給与支給時に渡す給与明細には、必要な項目が定められています。支給額や控除額に加えて、税金の記載も必要です。
記載漏れや計算ミスがあると、あとで問題になる恐れがあります。
本記事では、給与明細の所得税計算方法や注意点をわかりやすく解説します。給与計算に必須な部分ですので、基本から理解しておきましょう。
毎月給料日近くになるとやってくる給与計算業務。
その中でも給与明細の発行と封入作業は、従業員の数が増えれば増えるだけ工数がかかり、根気が必要な業務になります。
また、給与明細の発行・交付が法律で決まっているにもかかわらず、従業員が持ち帰り忘れたり、出社しないため会社に残ったまま、というようなこともあるでしょう。
そこで本資料では、給与明細の複雑な作成ステップやその一連のフローをシステムの導入により、どのように効率化できるかなどを、実際の管理画面をお見せしながら解説しております。
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1. 給与明細に所得税は記載すべき?
給与明細には基本給や各種手当、天引きする保険料や税金などを記載します。いずれも重要な項目で、法律によって定められています。
所得税はこの記載項目の中に含まれるのかどうか理解しておきましょう。
関連記事:所得税はいくらからかかる?年収ごとの所得税率・考え方をわかりやすく解説
1-1. 給与明細に所得税の記載は必要
給与明細に記載が必要な項目は、以下の3つです。
- 勤怠項目
- 支給項目
- 控除項目
このうちの控除項目は、社会保険料や厚生年金保険料、税金など、賃金から差し引かれるものが含まれます。
所得税もこの控除項目に含まれるため、必ず記載しなくてはいけません。
1-2. 所得税の記載は法律で定められている
給与明細の記載項目は、労働基準法や所得税法、健康保険法など複数の法律によって義務付けられています。
明確に「給与明細に記載しなくてはいけない」とされていなくても、従業員に控除額を通知する義務があります。
そのため、自然と給与明細への記載が必要となります。
仮に必要な通知をしていない場合や、誤った金額を記載している場合は、問題となる恐れがあります。
給与明細を発行する際は、必ず正しい所得税額を求めて通知することが大切です。
このように、給与明細を発行する際にはいくつかの記載すべき項目があります。給与明細は発行・交付することが義務づけられている書類のため、正しく記載して交付しなければなりません。
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2. 給与明細に記載する所得税の計算方法・手順
正しい所得税額を給与明細に記載するには、計算手順と計算式を知っておく必要があります。順番に確認していきましょう。
2-1. 課税対象の給与支給額を計算する
所得税の課税対象になるのは、個人が得る課税対象の所得分です。
まずは給与明細の課税対象とされる支給額を確認し、合計しましょう。
非課税とされているものには所得税が発生しません。誤って計算することのないよう、お気を付けください。
非課税となる所得は、以下のように定められています。
- 通勤手当のうち、一定金額以下のもの
- 転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
- 宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの
通勤手当の一部や、転勤や出張にともなう旅費が該当します。ほかにも見舞金や災害補償金など、非課税となる支給があります。
給与明細の支給項目が、課税対象と非課税対象にわかれていれば、そのまま課税対象のみを合計するだけで問題ありません。
一方でわかれておらず、判断が難しい場合は担当者に確認します。
2-2. 各種保険料を差し引く
課税対象の支給額が確認できた後は、その額から各種保険料を差し引きます。保険料は給与から天引きされるためです。
- 厚生年金保険料
- 健康保険料
- 雇用保険料
- 介護保険料(40歳~64歳)
保険料はこの4種類があります。
いずれも給与明細への記載が必要な項目なため、所得税を計算する前に漏れなく記載しておきましょう。
2-3. 扶養控除を確認する
所得税はすべての人に一律でかかるものではなく、給与額や扶養配偶者・親族の数などによって変動します。
扶養している家族が多いほど所得税が低くなるため、正確に把握しましょう。
扶養配偶者・親族の人数は以下の条件を元に計算します。
- 自分の給与が1,095万円以下で、配偶者の給与が150万円以下である場合
- 配偶者が障害者で、その配偶者が受け取っている給与が103万円以下である場合
- 生計をともにしている16歳以上の親族の所得が48万円以下である場合
これらの条件に当てはまる場合は、扶養親族として1人ずつ追加できます。
加えて、受給者が以下の条件に当てはまる場合は、扶養親族が1人いるものとして計算できます。
- 障害者
- 扶養に該当する配偶者や親族が障害者
- ひとり親
- 寡婦
- 勤労学生
少し複雑な部分ですが、扶養親族の数は頻繁に変わるものではありません。しっかりと調査をし、最初に正しく把握しておきましょう。
2-4. 計算して源泉徴収税額表に当てはめる
そして、ここまでの内容を以下の計算式に当てはめて求めます。
課税対象の支給額 - 社会保険料 = 社会保険料等控除後の給与等の金額
源泉控除対象配偶者 + 控除対象扶養親族 = 扶養親族等の数
社会保険料等控除後の給与等の金額と扶養親族等の数が求められたら、国税庁が発表する源泉徴収税額表に当てはめて税額を求めることが可能です。
2-5. 12月には年末調整をおこなう
控除額の変動により、源泉徴収のほかに後から納める所得税が発生したり、過払い分の払い戻しが生じることがあります。
この変動した所得税を清算するために、12月には年末調整をおこないます。
そのため12月の給与明細では、所得税はマイナスになることもあります。
関連記事:年末調整の対象者は?対象となる条件をわかりやすく解説
3. 給与明細の所得税を計算するときの注意点
給与明細の所得税は求め方がわかれば難しいものではありません。給与計算ソフトを利用していれば、データを入れるだけで求められます。しかし、以下の点には注意しましょう。
3-1. 非課税対象となる支給は十分に確認する
非課税になるとされる項目に当てはまる支給額でも、一部が課税対象になることがあります。
誤って非課税で計算してしまうと、追加で納税しなくてはいけなくなります。
課税対象と非課税対象がわかれていない給与明細の場合は、ミスが非常に起きやすいです。十分に注意し、少しでも不明な点があれば確認するようにしましょう。
3-2. 所得税を天引き(源泉徴収)しないケースがある
給与明細に所得税を記載する必要があるのは、源泉徴収をしている場合に限ります。以下の条件に両方当てはまる場合は、源泉徴収が発生せず、所得税の天引きもおこなわないため、計算する必要がありません。
給与の受給者が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している
控除額を差し引いた金額が月額8万8,000円未満である
この2つの条件を満たしている従業員からは、所得税を天引きしてはいけません。誤って引いてしまわないように注意しましょう。
3-3. 扶養配偶者や扶養親族の数に注意
結婚した場合や子どもが生まれた場合、高齢の家族と同居を始めた場合など、ライフステージによって扶養配偶者や扶養親族の数は変化します。
扶養している人数に変化があれば、所得税額も変わるため、その都度データを入れ替えたり、計算しなおしたりしなくてはいけません。
毎年の調査結果を確認し、正しい所得税額を求めましょう。
3-4. 源泉徴収税額表は毎年確認する
国税庁が発表する源泉徴収税額表は固定されていません。毎年変化するものです。
給与計算ソフトを使っている場合は自動的に最新のデータで計算されますが、Excelやアナログな形で計算している場合は、手動で更新する必要があります。
必ず最新のデータで計算できるように、毎年チェックしましょう。
3-5. アルバイト・パートの給与明細の所得税について
アルバイトやパートの従業員の場合、扶養控除申告書を企業に提出しており、且つ給与が月額88,000円未満の場合は、所得税は発生しません。
ただし扶養控除申告書を受け取っていない場合は、最低給与の3.063%相当の所得税が天引きされます。その際には、給与明細にも漏れなく記載が必要です。
4. 給与明細の所得税は正しく計算しよう
給与明細には所得税の項目が必要です。
正しい税額を求めて、毎月の給与支給時に通知できるようにしましょう。
所得税額を求めるには、課税項目と非課税項目の分別や、扶養人数の確認など、複数の情報が必要です。
計算方法はシンプルですが、アナログな方法で計算しているとミスが発生しやすいです。変動するデータもあるため、十分に注意して計算しましょう。
ケアレスミスを防ぎ、効率的に計算するには給与計算ソフトの導入がおすすめです。従業員数が多いほど大幅な効率化が期待できるため、まだ導入していない場合はぜひ検討してみてください。
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