給与明細の電子化は法律で認められています。しかし、経営者や人事部の一存でいきなり電子化をしてしまうと問題になります。給与明細の電子化に必要な同意書について知っておきましょう。
本記事では同意書の必要性と、同意が取れない場合の対処方法を解説します。
毎月給料日近くになるとやってくる給与計算業務。
その中でも給与明細の発行と封入作業は、従業員の数が増えれば増えるだけ工数がかかり、根気が必要な業務になります。
また、給与明細の発行・交付が法律で決まっているにもかかわらず、従業員が持ち帰り忘れたり、出社しないため会社に残ったまま、というようなこともあるでしょう。
そこで本資料では、給与明細の複雑な作成ステップやその一連のフローをシステムの導入により、どのように効率化できるかなどを、実際の管理画面をお見せしながら解説しております。
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1. 給与明細の電子化には同意書が必要?
給与明細の電子化は、2007年1月1日から可能になりました。これによって、紙の給与明細や源泉徴収票などの交付に代えて、データ形式(電子メール・磁気媒体・ネットワークを使った閲覧など)での交付が認められています。
しかし、給与明細を電子化し、データ形式のみでの交付にする場合は、受給者の同意書が必要です。所得税法によって明確に定められているため、支払者の判断でいきなり給与明細を電子化することはできません。
そのため、一部の従業員が電子化に対する同意をしていない場合は、給与明細をデータ形式で交付する方法と、紙で交付する方法の双方を継続する必要があります。
なお、同意は口頭や挙手によるものではなく、証拠として残るものでなくてはいけません。紙の同意書か、PC上でチェックを入れてから給与明細を表示させる方法などが採用されています。
2. 給与明細の電子化の同意に関する法律
給与明細の電子化に受給者の同意が必要であるとされる根拠になる法律は、所得税法の第二百三十一条です。第二百三十一条の2では、以下のように定められています。
給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、同項の規定による給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の承諾を得て、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。
引用:所得税法|e-Gov法令検索
要約すると、給与や退職手当などの支払者は、受給者の承認があればデータ形式で交付できるという内容です。つまり、同意が取れない場合はデータ形式で交付してはいけないことになります。
紙媒体でもデータ形式でも、給与明細の内容は変わりません。書式を統一することも可能です。そのため、どちらでも同じだと判断して一方的に電子化してしまうと、問題になる恐れがあります。
ペーパーレス化によるメリットは大きいですが、従業員への説明と同意の確認や、電子化にともなうシステム整備など、事前に必要な準備を整えてから進めましょう。 このような、給与明細を作成する上で知っておくべきルールは電子化以外にもいくつかあります。当サイトでは、給与明細作成についてのルールや記載すべき事項をまとめて解説した資料を無料でお配りしています。 自社の給与明細作成方法に問題がないか確認したい方はこちらからダウンロードしてご活用ください。
3. 給与明細の電子化に同意してもらえないときの対応
給与明細の電子化は、特別な事情がない限りほとんどの従業員が同意します。しかし、年配者や電子化のメリットを理解していない人などは、同意をしないことがあります。そのような場合は、以下のような対応をしましょう。
関連記事:給与明細を電子化する方法は?3つの手順とメリット・デメリットを解説
3-1. 同意しない理由を聞く
まずは電子化に同意しない理由を本人に聞いてみましょう。個人情報の取り扱いに対する不安や、データ形式の給与明細の受け取り方がわからない、単純にやり方を変えることに抵抗があるなど、反対する理由はさまざまです。
年配者は電子化について行けないことに対する不安が、反対の要因になっていることが多いです。そのような場合は、後述する電子化のメリットや使い方の説明などを行うことで同意が取りやすくなります。
3-2. 違法ではないことを説明する
データ形式で給与明細を発行することに対し、法的な問題を懸念する人もいます。これまで給与明細や源泉徴収票などの重要書類は、紙媒体で交付するのが当たり前でした。そのため、形にならないデータ形式は問題があるのではないかと感じるようです。
しかし、給与明細の電子化は法的に認められているものです。政府はペーパーレス化を推進しており、電子帳簿保存法の設置や改正も行われています。
この点を説明し、電子化が当たり前になっていることを伝えれば、法的な懸念を持っている人は同意してくれるでしょう。同意書の添付書類として、所得税法や電子帳簿保存法についての記載をしておくのも有効です。
3-3. 電子化のメリット・デメリットを伝える
電子化にはコスト削減や管理のしやすさなど、多くのメリットがあります。メリットを十分に理解してもらえれば、同意を得やすくなるでしょう。同意してもらえないときは、会社目線ではなく、従業員目線のメリットを伝えることが大切です。
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紛失の心配がなくなる
これらは従業員側のメリットとして伝えられるものです。
反対にデメリットは見方に慣れる必要があることと、情報漏洩の恐れです。しかし、この2つのデメリットはデータ形式の給与明細の見方を説明し、セキュリティを高めることで解消できます。
デメリットへの対策もあわせて説明すれば、安心感が出て同意を取りやすくなるでしょう。
3-4. データ形式の給与明細の見方を説明する
PCやスマートフォンの扱いがあまり得意でない人は、データ形式になった給与明細を管理できるか不安を感じます。紙媒体なら受け取って確認するだけで良かったものが、端末を操作してログインしなくてはいけなくなるからです。
そのような不安を抱えている従業員に対しては、給与明細の見方を説明し、実際に操作してもらうことで解消しやすくなります。
また、PCだけでなくスマートフォンやタブレットからも見られることを伝えれば、PCを持っていない人からの抵抗も減るでしょう。
3-5. セキュリティ上の問題がないことを伝える
給与明細の電子化では、セキュリティを強化しないと個人情報の漏洩や、データ改ざんなどが行われる恐れがあります。
これは従業員側にも認識している人が多く、同意を取る際にセキュリティ面の説明がないと不安を持つ人が出やすいです。
電子化にともなってセキュリティを強化する場合は、その旨を通達しましょう。すでに盤石なセキュリティが備えられている場合も、そのことを伝えればセキュリティへの不安から反対する人はいなくなるでしょう。
3-6. わかりやすく見やすいシステムを準備する
電子化することにメリットが多いほど同意を取りやすくなります。すべての従業員が直感的に操作できるような、紙媒体の給与明細よりも見やすく、管理がしやすいシステムを準備しましょう。
使いやすいシステムだとわかれば、電子化に対する抵抗は大幅に減ります。最低でも月に1回、全部署の従業員が利用するシステムであることを踏まえて準備しましょう。
3-7. 紙媒体で交付する
説明をしても同意が取れない従業員がいる場合は、データ形式の給与明細のみを交付することはできません。これまでどおり紙の給与明細を作成し、交付します。
現行の制度では同意が取れない従業員に対して、データ形式の給与明細のみを発行することは違法になってしまいます。必ず全従業員の同意が取れるまで印刷する手段は残しておくようにしましょう。
4. 給与明細の電子化には同意書が必要
給与明細をデータ形式で交付することは、法律で認められています。しかし、紙の給与明細を廃止し、データ形式のみでの交付にする場合は、同意書が必要です。必ず同意書を用意し、確認が取れた従業員にのみ適用しましょう。
電子化に同意しない従業員に対しては、説明をすれば解決できることがあります。電子化によるメリットや新しい給与明細の見方などを説明する機会を設け、抵抗感をなくすことで同意を取りやすくなります。
慌てて進めるのではなく、十分な準備をしてから電子化を行いましょう。
毎月給料日近くになるとやってくる給与計算業務。
その中でも給与明細の発行と封入作業は、従業員の数が増えれば増えるだけ工数がかかり、根気が必要な業務になります。
また、給与明細の発行・交付が法律で決まっているにもかかわらず、従業員が持ち帰り忘れたり、出社しないため会社に残ったまま、というようなこともあるでしょう。
そこで本資料では、給与明細の複雑な作成ステップやその一連のフローをシステムの導入により、どのように効率化できるかなどを、実際の管理画面をお見せしながら解説しております。
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「いつでも従業員が給与明細を見れるようにしたい」
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