給与明細の電子化は、国税庁で定めた電子化方法で給与明細を発行することを指します。印刷の必要もなければ配布も容易になるなどのメリットから、導入する企業の数は増加中です。もちろんメリットがあればデメリットもあります。この記事では、導入方法からメリット・デメリットまで徹底解説します。
毎月給料日近くになるとやってくる給与計算業務。
その中でも給与明細の発行と封入作業は、従業員の数が増えれば増えるだけ工数がかかり、根気が必要な業務になります。
また、給与明細の発行・交付が法律で決まっているにもかかわらず、従業員が持ち帰り忘れたり、出社しないため会社に残ったまま、というようなこともあるでしょう。
そこで本資料では、給与明細の複雑な作成ステップやその一連のフローをシステムの導入により、どのように効率化できるかなどを、実際の管理画面をお見せしながら解説しております。
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1. 給与明細の電子化とは
給与明細の電子化とは「給与明細を電子ファイル化して交付すること」を指します。
コロナ過におけるリモートワークなど働き方の多様化にともない、給与明細を手渡しするのは難しくなっています。郵送などのコスト面で非現実的なこともあり、働き方や職場環境の変化に応じた給与明細の渡し方が求められました。
直接でなくても給与明細を渡せ、コスト削減も可能としたのが電子化です。国税庁により、給与明細の電子化の方法は以下の3つに定められています。[注1]
電子メールを利用する方法
社内LAN・WANやインターネットなどを利用して閲覧に供する方法
フロッピーディスク、MO、CD-ROM等の磁気媒体等に記録して交付する方法
手法の扱いやすさから、通常は電子メールかクラウド上で閲覧する方法が一般的です。給与明細の電子化の際には、定められた形で交付できるよう環境を整えることが前提です。
[注1]1.基本的な事項(問3)|国税庁
1-1. 給与明細を電子化する方法
給与明細の電子化には必ず行わなければならない手順があります。以下にまとめたので確認して的確に行っていきましょう。
1-2. すでに導入しているシステムとの互換性の検討
まずは電子化する書類の範囲を検討します。給与明細だけでなく源泉徴収票にも対応するのであれば、そのためのシステムも必要だからです。
また、勤怠管理や給与の計算システムなど管理システムも導入している場合には、連携可能な電子化システムのほうが効果が高くなります。管理システムの内容や相性次第では、電子化システムにあわせて総入れ替えを視野に入れるのも良いでしょう。
1-3. 従業員の同意の取り付け
所得税法第231条第1項において、企業には従業員に対して給与明細の交付が義務付けられています。同じく第2項においては、従業員の承諾を得ることで電子化することが可能になるとしているのです。[注2]
つまり、給与明細の電子化の導入には従業員の同意が必要といえます。同意を得られなかった場合には紙で給与明細を交付するしかないのです。また、たとえ電子化に同意していても、請求があった場合には紙での給与明細交付が必要となる点は理解して準備しておきましょう。[注3]
では、従業員の同意を得やすくするにはどうすれば良いでしょうか。
まずは全従業員の給与明細へのアクセス環境を把握しておく必要があります。パソコンやスマートフォンなどの所有状況を把握し、最も適した電子化システムを選択するのです。
そして従業員にシステムの内容や制度を説明し、理解を深めてもらうことが大切といえます。従業員にとってもメリットがあることを納得してもらえるかが成功のカギです。
このように、給与明細を電子化する際にはいくつかの確認しておくべき事項があります。まず、給与明細に必要な要件がそろっているか、電子化するための要件がそろっているかを確認しておきましょう。 当サイトでは、給与明細の作成をする上で確認しておくべき項目をまとめて解説した資料を無料でお配りしています。 法律に則った給与明細を作成できているのか確認したい方はこちらから「給与明細作成まるわかりBOOK」をダウンロードしてご活用ください。
[注2]所得税法|e-Gov法令検索
[注3]1.基本的な事項、2.事前承諾|国税庁
1-4. 給与明細の電子化システムの導入
従業員の同意が得られたら電子化システムを導入します。同意を得られなかった従業員や、金融機関のローンなどの審査用に紙での給与明細の発行ができる体制を残しておくことも重要です。
このほかにも、システムをより安全に運用するためのセキュリティの確保も必要です。入力ミスやメールの誤配信などの人為的ミスを減らすチェック体制のマニュアル化なども欠かせません。
従業員に対してもなりすましによるデータの抜き取り防止のため、定期的にパスワードを変更するなどセキュリティ対策への参加を啓発することも重要です。
1-5. 給与明細の電子化システムで可能なこと
まずは電子化した給与明細をメールやwebで配信できるようになります。給与明細が届くまでの時間を大幅に短縮できるだけでなく、誤配送や紛失といったトラブルのリスク低下や、担当者の業務コスト削減にもつながります。
さらに給与計算システムと連携させることで、データを自動で取り込ませて発行も配信も行えるようになるのです。CSVよりも効率的にデータの抽出・取り込みができるため、業務コストも削減できます。
そして多くのシステムで明細書の作成に使われるフォーマットは、従来のものを採用しています。そのため新たに覚え直す必要もなく、簡単に給与明細を作成できるようになっているのです。複数の形式に対応したシステムを導入すれば、雇用形態によって発行する明細書を変更することもできます。
もちろん発行された給与明細はすぐに確認することが可能です。インターネットなどへのアップロード、もしくはPDFでの配信のどちらかだけというシステムもあれば、両方に対応したものもあるため、自社状況や従業員に応じて慎重に選択する必要があります。
2. 給与明細を電子化するメリット
給与明細の電子化は担当者の負担の軽減だけでなく、さまざまなメリットがあります。管理者側から見たメリット、従業員側から見たメリットをそれぞれまとめたので確認してみましょう。
2-1. 管理者側のメリット
まず挙げられることはコストの削減です。給与明細を紙で発行する場合、ベースとなる紙代のほかにも印刷代・郵送代などさまざまなコストがかかります。これらのコストは従業員数に比例して増えていくため、企業の規模が大きくなればなるほど負担が増すことは間違いありません。
さらに給与明細を紙で発行する際には人件費がかかるだけでなく、印刷や封入、郵送の際に人為的ミスが発生する可能性も高くなります。電子化はシステムによる機械処理です。そのため運用さえ間違えなければ人為的ミスの発生リスクを大きく削減できます。
また、電子化した給与明細はときと場所を選ばず交付できるのも大きなメリットです。過去のデータを参照したい場合でも検索しやすく、迅速に情報を取り出すこともできます。
2-2. 従業員側のメリット
まず給与明細の管理が楽になります。紙の給与明細は保管場所を必要とするだけでなく、紛失してしまえば過去のデータの確認はできません。見たいデータを探し出すのにも手間がかかります。重要な個人情報が記載されていることもあり、扱いにも細心の注意が必要です。
電子化されたデータならファイルやフォルダで分類して管理しやすく、見たいデータもすぐに探し出せます。保管場所も必要なくなるだけでなく、うっかり捨ててしまうなど紛失のリスクも気にせずにすむ点もメリットです。
とくに過去の給与明細のデータの保存期間は、労働基準法第百九条においては5年、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講じるべき処置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」においても3年とされています。[注4][注5]
法定以前の記録までさかのぼることは、企業側の保存体制にもよりますが容易ではないでしょう。電子化された給与明細なら従業員側でも保存しやすく、紛失のリスクを減らせるのも事実です。
[注4]労働基準法|e-Gov法令検索
[注5]労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
3. 給与明細を電子化するデメリット
電子化した給与明細はインターネットを介して交付されます。そのため常に情報が洩れるリスクにさらされることは避けられません。メールならばアドレスの登録ミスによる誤配信が起こり得ます。データを保存した記録媒体の紛失もリスクのひとつです。
さらに導入した電子化システムの障害などが原因で、データの消失や流出の例もあります。[注6]
少しでもリスクを回避するため、総務省の情報セキュリティ対策ガイドラインなどを参考に、システムの内容やセキュリティのチェックもしっかり行いましょう。[注7]
また、データは無期限で保存されるわけではないことも、従業員含めて念頭に置いておく必要があります。データの保存期間がどのくらいなのか、企業側も従業員側も周知しておくことが大切です。とくにシステムを入れ替える(リプレイスする)ときには、入れ替え以前のデータは引き継げない場合も珍しくありません。データ管理にかかわるデメリットについてはとくに従業員との事前の共有が不可欠です。
そして避けられないデメリットには、給与明細の導入にかかるコストがあります。初期費用がかかるだけでなく、システム利用料を払い続ける必要があるのです。
初期費用は導入以前から使っている管理システムとの互換性によっても変わります。給与明細電子化システムと互換性の悪い管理システムを使っている場合、総入れ替えも視野に入れる必要が出てくる場合があるためです。システム利用料はユーザー数、つまり交付人数によって増えていく課金型が主流のため、企業規模が大きくなるほど増加することになります。
給与明細の電子化によるコストメリットは大きいとはいえ、導入コストもシミュレーションしておくことが大切です。費用対効果も考慮に入れて、自社に最も適したシステムを選びましょう。
[注6]国民のためのサイバーセキュリティサイト(事故・被害の事例)|総務省
[注7]クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)|総務省
3-1. 給与明細の電子化を有効活用しよう
給与明細の電子化は、企業側にコストや人為的ミスの削減などさまざまなメリットをもたらします。一方で受け取る従業員側も同様です。出社などの手間が省け、管理も楽になり、いつでも確認できます。
導入には従業員の同意を得ることも重要ですが、自社の事情にあったシステムを選ぶことも大切です。セキュリティなどにも気を配り、最適なシステムを見つけ出しましょう。
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また、給与明細の発行・交付が法律で決まっているにもかかわらず、従業員が持ち帰り忘れたり、出社しないため会社に残ったまま、というようなこともあるでしょう。
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