給与支払報告書と源泉徴収票は、いずれも会社が前年中に従業員に対して支払った給与額などをまとめた書類です。2つの違いをよく知らずに処理してしまい、思わぬミスにつながるケースもあります。
今回は給与支払報告書と源泉徴収票の違いについて解説しますので、違いを理解し適切に処理しましょう。
目次
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1. 給与支払報告書と源泉徴収票の違いは?
給与支払報告書は住民税を、源泉徴収票は所得税を明らかにするために必要な書類です。この2つはそもそもの目的が異なるため、さまざまな点で違いがあります。
関連記事:給与支払報告書とは?書き方や提出方法をわかりやすく紹介
関連記事:源泉徴収票の作成方法|年末調整や給与所得の計算方法を図解で説明
1-1. 提出先・電子申請サイト
給与支払報告書と源泉徴収票は、提出先や電子申請の方法が異なります。
目的 |
提出先 |
電子申請サイト |
|
給与支払報告書 |
住民税 |
市区町村 |
|
源泉徴収票 |
所得税 |
税務署 |
給与支払報告書は住民税の算出するためのデータなので市区町村へ提出します。一方、源泉徴収票は所得税を報告するので提出先は税務署です。
また、提出先の違いに伴い電子申請サイトも異なります。eLTAX(エルタックス)とe-Tax(イータックス)は名前が似ているため、利用の際には間違えないように注意しましょう。
1-2. 対象者
給与支払報告書は全従業員が提出の対象となりますが、源泉徴収票は以下の表の通り該当者の基準を設けています。
給与を受け取る人の区分 |
範囲 |
|
年末調整をしている |
法人の役員(取締役、執行役など) |
支払総額が150万円以上 |
弁護士、司法書士、税理士など(給与として支払っている場合) |
支払総額が250万円以上 |
|
上記に当てはまらない人 |
支払総額が500万円以上 |
|
年末調整をしていない |
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、退職した人など |
支払総額が250万円以上 (法人役員の場合は50万円以上) |
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、給与総額が2,000万円以上で年末調整をしなかった人 |
全て |
|
「給与所得者の扶養控除等申告書」が未提出の人 |
支払総額が50万円以上 |
1-3. 作成時期
給与支払報告書は年に一度、年末調整のタイミングでのみ作成します。
一方の源泉徴収票の作成は年末調整のタイミングでおこなうほか、従業員が退職した場合は随時作成する必要があります。退職者への源泉徴収票の交付は退職日から1か月以内におこなうのが一般的です。
1-4. 記載内容
給与支払報告書と源泉徴収票の記載内容はよく似ており、共通する項目においては同じ内容を記載して問題ありません。
しかし、給与支払報告書においては住民税の納付方法について記載する欄が設けられています。以下のいずれかの方法を選択して明記しましょう。
納付方法 |
概要 |
特別徴収 |
従業員に代わり、毎月の給与から天引きする方法 |
普通徴収 |
市町村から送付される納税通知書を使い、年4回に分けて納税者本人が豊富する方法 |
特別な事情がない限り特別徴収による納付が義務付けられています。ただし、普通徴収への切り替えも可能なので、必要な場合には提出先の市町村に確認しましょう。
2. 給与支払報告書と源泉徴収票の代用は可能か?
給与支払報告書と源泉徴収票は、項目が似ているため代用が可能か気になる方も多いでしょう。しかし、先述の通り目的や提出先、記載内容にも異なる部分はあるため、それぞれ別に作成することが求められます。ただし記載内容が同じ部分に関しては、同じ内容を転記して問題ありません。
3. 給与支払報告書の書き方・作成のポイント
給与支払報告書は「総括表」と「個人別明細」で構成されます。給与支払報告書を作成するときのポイントを紹介します。
関連記事:給与支払報告書の書き方とは?記入項目・枚数変更をあわせて解説!
3-1. 総括表を作成するとき
総括表の作成で特に注意が必要な項目をまとめました。
項目 |
記載内容・注意点 |
給与の支払期間 |
報告人員に対して給与を支払った期間を記載 |
法人番号 |
付与されている法人番号を記載 |
受給者総人員 |
支払期間内に給与を受給したすべての人数 |
報告人員 |
市区町村へ報告する人数
|
提出区分 |
いずれかの区分に丸印をつける
|
3-2. 個人別明細を作成するとき
個人別明細の作成で特に注意が必要な項目をまとめました。
項目 |
記載する内容・注意点 |
住所欄 |
|
支払金額 |
|
給与所得控除後の金額 |
|
所得控除額の合計額 |
(社会保険料控除をはじめ、配偶者控除や扶養控除、基礎控除などを正しく算出して記載する)
|
源泉徴収税額 |
|
その他控除額 |
(寮や社宅費、組合費など) |
中途就職・退職者欄 |
(在籍している従業員の場合には記載不要) |
適用欄 |
(氏名の前に、1から始まる連番をカッコ書きで記載) |
3-3. 給与支払報告書を作成するときの注意点
給与支払報告書を作成するときの注意点を3つ紹介します。
① 給与支払報告書は「総括表」と「個人別明細」がセット
給与支払報告書は表紙となる「総括表」と「個人別明細」をセットにして提出します。様式は各市区町村ごとに異なるので適切なものを使用しましょう。
② 1,000枚以上の給与支払報告書を提出する際は「eLTAX」を利用
給与支払報告書が1,000枚を超える場合はeLTAXや光ディスクによる提出が義務付けられています。これらのシステムはすぐに利用できるとは限らず、市区町村によっては事前申請をおこない、市・区長の承認を受けなくてはならないケースもあるので注意が必要です。
また、紙ベースで提出する場合は各市区町村のホームページから給与支払報告書のフォーマットをダウンロードできます。
③ 在籍者全員の内容
給与支払報告書は在籍者全員分の記載が必要です。1月1日時点で在職していない人であっても前年に給与の支払いを受けた人も対象となります。記載漏れがないようチェック体制を強化しましょう。
4. 源泉徴収票を作成するときのポイント
源泉徴収票を作成するときのポイントを紹介します。
4-1. 記載する項目について
源泉徴収票の作成で特に注意が必要な項目をまとめました。
項目 | 記載内容・注意点 |
支払いを受ける者 |
従業員の住所、マイナンバー、氏名を記載 (従業員に交付する源泉徴収票にマイナンバー記載は不要) |
種別 | 給与・賞与という形で給与の種別を記載 |
支払金額 | 1月1日から12月末までに確定した給与等の支払総額を記載(源泉徴収票作成時に未払の金額がある場合は併せて記載) |
給与所得控除後の金額 | 支払金額から給与所得控除を差し引いたあとの金額を記載 年末調整をした従業員のみ記載 |
所得控除の額の合計 |
給与所得控除後の金額から、基礎控除や社会保険料控除、生命保険料控除などの合計額を差し引いた金額を記載 年末調整をした従業員のみ記載 |
源泉徴収額 | 年末調整をした従業員には年末調整後の源泉所得税と復興特別所得税の合計を記載 年末調整をしなかった従業員には源泉徴収するべき所得税と復興特別所得税の金額を記載 |
控除対象配偶者の有無 | 年末調整で配偶者控除の適用を受けている社員と、年末調整の適用を受けずに配偶者区分が「源泉控除配偶」となる社員は「有」に〇を付ける 課税区分が「乙欄」であり、配偶者区分が源泉控除配偶である社員は「従有」に〇を付ける 老人控除対象配偶者を持つ社員は「老人」に〇を付ける |
4-2. 源泉徴収票を作成するときの注意点
① 正確な金額を記載
当然のことながら、源泉徴収票には正確ない金額を記載します。源泉徴収票は収入や税額を証明する重要な書類なので、責任ある対応が求められます。
② マイナンバーの記載
税務署へ提出する源泉徴収票にはマイナンバーの記載が必要ですが、従業員に交付する源泉徴収票には記載する必要はありません。混同しないように注意しましょう。
③ 非課税の取り扱い
源泉徴収の対象となるのは給与や賞与などで、通勤手当は含まれません。通勤手当を含めることで支給金額に誤差が生じるケースもあるので気をつけましょう。
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5. 給与支払報告書と源泉徴収票に関してよくある質問
ここからは、給与支払報告書と源泉徴収票に関してよく生じる疑問について紹介します。
「源泉徴収票がなぜ2枚必要であるか」や「給与支払報告書と源泉徴収票はエクセルで作成できるのか」について解説していきます。
5-1. 源泉徴収票の枚数が2枚必要な理由は?
源泉徴収票は、先述の通り提出先が税務署と従業員の2つに分かれるため、2枚用意する必要があります。一方で給与支払報告書における必要枚数は、給与所得者1名につき1枚となります。(令和5年度から、2枚ではなく1枚へと変更されました。)
5-2. 給与支払報告書と源泉徴収票はエクセルで作成できる?
給与支払報告書や源泉徴収票は、エクセルでの作成が可能です。
web上には、無料テンプレートが多く展開されているため必要に応じて活用してもよいでしょう。ただし、必要項目が揃っているか確認してから使用するようご注意ください。
6. 給与支払報告書と源泉徴収票の違いを押さえてそれぞれ正確に作成しよう
給与支払報告書と源泉徴収票は一見するとよく似ていますが、それぞれに目的があり、対象者や提出方法が異なります。いずれも税金に関係する大事な書類なので、それぞれの違いを正しく理解した上でミスなく作成する必要があります。
毎年、給与支払報告書と源泉徴収票の作成業務に追われている場合は、大きなミスが起こる前に管理システムなどの導入を検討しましょう。処理のミスを防止できるだけでなく社員の負担を軽減でき、煩雑な年末業務をスムーズに遂行できます。
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