65歳以上の社会保険料の変更手続きをわかりやすく解説 |HR NOTE

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65歳以上の社会保険料の変更手続きをわかりやすく解説

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  • 給与計算

65歳以上の社会保険料の変更手続きについて詳しく解説

社会保険料において、65歳という年齢は大きな節目となります。従業員が65歳になると、社会保険に関してさまざまな手続きを進めなければなりません。手続きを忘れると、労使間のトラブルにつながるため注意が必要です。

人事担当者として滞りなく変更手続きを進めるために、必要な知識を身につけましょう。

関連記事:社会保険料とは?|計算方法や注意点、法改正の内容などを徹底解説

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1. 65歳以上の社会保険料の変更手続き

書類の提出

ここでは、65歳以上の従業員を雇用している場合に必要となる社会保険料の変更手続きについて紹介します。

1-1. 社会保険料のおさらい

社会保険には、厚生年金保険と国民年金・健康保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つの種類があります。このうち、厚生年金保険と国民年金・健康保険・介護保険については、従業員が65歳以上になった際に変更手続きが必要となるため、ここでおさらいしましょう。

厚生年金保険 企業に勤務するサラリーマンなどが加入する公的年金のことで、老齢年金・障害年金、遺族年金などがある
国民年金 満20~60歳までの人すべてが加入する年金制度のことで、最低10年分を納付すれば受給資格を得られる
健康保険 業務以外の病気やケガなどによる通院や入院、出産費用、長期休業時の生活などを保障するもの
介護保険 介護が必要となった人が少ない負担で介護サービスを受けられるように費用を給付するためのもの

65歳以上の従業員がいる企業の人事担当者は、上記4つの保険の扱いや変更手続きについて事前に確認し、適切な変更手続きをおこなう必要があります。

1-2. 厚生年金保険の変更手続き

厚生年金保険は原則70歳まで引き続き加入でき、保険料は毎月の給与から天引きされます。人事担当者が特別な手続きをおこなう必要はありませんが、給付面での変更が生じるケースがあります。

  • 65歳より前に老齢厚生年金を受け取っていた場合、65歳以降に受け取るのは老齢基礎年金と老齢厚生年金になる
  • 在職老齢年金の計算は、65歳以前は1カ月の年金と給与の合計が28万円を上回る場合に年金が減額の対象となったが、65歳以降は47万円以上となる

いずれも会社側での手続きは必要ありませんが、従業員からの問い合わせがあった場合に備えて覚えておきましょう。

1-3. 国民年金の変更手続き

国民年金には、第1号被保険者第2号被保険者第3号被保険者3種類があります。

種類

第1号被保険者

第2号被保険者

第3号被保険者

対象

  • 自営業
  • フリーランス
  • 学生
  • 無職の人

など

  • 会社員
  • 公務員

など

第2号被保険者の配偶者

年齢

20歳以上60歳未満

原則70歳未満

20歳以上60歳未満

加入年金制度

国民年金

国民年金と厚生年金

国民年金

保険料

国民年金保険料

(全額自己負担)

厚生年金保険料

(労使折半)

自己負担なし

65歳未満の従業員は第2号被保険者に該当し、国民年金と厚生年金の保険料を毎月の給与から徴収していました。
しかし、65歳以上になった従業員は年金受給資格を得るため、被保険者ではなくなります。ただし、65歳以上でも老齢基礎年金の受給資格に必要な10年以上の納付を満たしていない場合は、最長で70歳まで第2号被保険者でいることが可能です。

1-4. 健康保険の変更手続き

健康保険については65歳になったかどうかに関係なく、今までと同じように継続されます。75歳までが対象となるので、配偶者本人が従業員より先に75歳以上にならない限りは、配偶者の健康保険は継続されます。

なお、従業員が配偶者本人より先に75歳になった場合、配偶者は健康保険の被扶養者でいられなくなるので、国民健康保険やパート・アルバイト先などの健康保険に加入しなければなりません。

一方、配偶者本人が従業員よりも先に75歳になる場合、配偶者は後期高齢者医療制度に加入しなければならないので、会社の健康保険の喪失手続きが必要になります。

1-5. 介護保険の変更手続き

介護保険の被保険者には2つの種類があります。

  • 第2号被保険者:40歳から65歳までの保険加入者
  • 第1号被保険者:65歳以上の保険加入者

第2号被保険者の場合、保険料は給与から天引きされていました。しかし、65歳以上の従業員の場合は支給される年金から天引きされます。
年金からの天引き体制が整うまでは、従業員本人が市区町村から送られてくる納付書または口座振替で納付することになります。

従業員が65歳になったタイミングで忘れず対応するようにしましょう。

2. 配偶者の社会保険料の変更手続き

書類を書く女性

ここからは、65歳以上の従業員の被扶養配偶者に関する社会保険料の変更手続きについて解説します。なお、被扶養配偶者は会社に勤めていないので、厚生年金保険は対象外となります。

2-1. 国民年金の変更手続き

従業員が65歳になる前は、第2号被保険者の配偶者であるため保険料はかかりませんでした。
しかし、先述したように従業員が65歳以上になると国民年金の被保険者ではなくなります。そのため、配偶者が60歳未満の場合は第1号被保険者となり、自身で保険料を納めなくてはなりません。この変更手続きは、被扶養配偶者本人が役所に出向いておこなう必要があります。

関連記事:国民年金第3号被保険者関係届とは?電子申請の方法についてもあわせて解説

2-2. 健康保険の変更手続き

健康保険は従業員が65歳になっても継続され、75歳までが対象となります。配偶者本人が従業員よりも先に75歳にならない限り、従業員が65歳以上であっても配偶者の健康保険は継続されます。
ちなみに、配偶者の保険料は被保険者全体の保険料で賄われる仕組みです。

2-3. 介護保険の変更手続き

介護保険は健康保険と同じく、従業員が65歳を迎えても配偶者本人が先に65歳にならない限り維持できます。
ただし、配偶者本人が65歳を過ぎた場合は第1号被保険者となるため、自身で保険料を納める必要があります。

3. 65歳以上の従業員を雇用するときの社会保険手続き

電子で書類手続きをする男性

65歳以上の従業員を雇用する際の手続きについては、基本的に、すでに勤めている従業員が65歳を迎える際の手続きと同様です。

3-1. 厚生年金保険の変更手続き

厚生年金の加入年齢上限は、特例を除いて原則70歳です。

65歳の従業員においても納付は継続となるため、70歳を迎えるまで、保険料は毎月の給与から天引きして問題ありません。

3-2. 国民年金の変更手続き

国民年金の納付義務が課せられている年齢は、20歳以上60歳未満です。65歳の従業員は加入義務がないため、国民年金単体に対して会社がおこなうべき手続きはとくにありません。

ただし、60歳以上70歳未満で「10年の老齢年金の受給資格を満たしていない場合」は、任意加入は可能です。この場合も、本人の手続きにより加入する必要があるため、会社がおこなう手続きはありません。

3-3. 介護保険の変更手続き

介護保険は、該当の従業員が65歳を迎える月より、保険料の納付が不要となります。

介護保険は「満40歳に達したとき(誕生日の前日)」から徴収が始まり、「満65歳に達したとき(誕生日の前日)」に徴収が停止される制度です。

4月1日に65歳を迎える従業員の場合は、「満65歳に達したとき」は3月31日となり、3月から保険料の徴収は停止されます。1日生まれの従業員を雇用する場合は、その点に気をつけて手続きをおこないましょう。

4. 65歳以上の社会保険料はいくら?計算方法を解説

ここからは、65歳以上の社会保険料の計算方法について解説します。保険料額を間違えることのないよう、令和6年以降の最新の保険料率を確認のうえ、これから説明する計算方法にあてはめて算出していきましょう。

4-1. 健康保険料の計算方法

健康保険料は以下の計算式で求めます。

健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率

会社の健康保険の場合、保険料は折半になるため、実際に事業主および従業員が負担するのは上記で求めた健康保険料の1/2です。なお、標準報酬月額と健康保険料率は、加入している保険組合によって異なります。また、協会けんぽの場合、適用される健康保険料率は都道府県ごとに異なります。

ここでは一例として、協会けんぽに加入している東京都在住の従業員(65歳・月収30万円)の健康保険料を計算してみましょう。東京都の場合、月収30万円の標準報酬等級は22等級、標準報酬月額は30万円です。[注1]

65歳は介護保険第2号被保険者に該当しないため、健康保険料率は9.98%(令和6年3月分~)です。

以上から、14,970円(= 30万円 × 9.98% ÷ 2)が健康保険料の折半額となります。

[注1]令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ

4-2. 厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料は以下の計算式で求めます。

厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率

健康保険同様、厚生年金保険料も労使間で折半となります。厚生年金保険料率は全国一律で18.30%です。[注2]

実際に、協会けんぽに加入している月収25万円の人の例で計算してみましょう。月収25万円の標準報酬等級は19等級、標準報酬月額は24万円です。

以上から、21,960円(= 24万円 × 18.30% ÷ 2)が厚生年金保険料の折半額となります。

[注2]厚生年金保険料額表|日本年金機構

4-3. 介護保険料の計算方法

介護保険料の支払い義務があるのは、40歳~64歳までの介護保険第2号被保険者のみです。65歳以上になると介護保険第2号被保険者には該当しないため、介護保険料の負担は発生しません。

ちなみに協会けんぽの場合、令和6年3月からの介護保険料率は1.60%です。[注3]

介護保険料率は健康保険料率に加算し、まとめて健康保険料として計算するため、65歳になって介護保険第2号被保険者ではなくなると、標準報酬月額が同じでも負担する健康保険料が少なくなります。

[注3]協会けんぽの介護保険料率について|協会けんぽ

5. 65歳以上の社会保険に関する注意点

ポイント

ここでは、65歳以上の社会保険に関する注意点を紹介します。

5-1. 誕生日が「1日」の人には要注意

社会保険では、誕生日当日を1日目として起算しなければなりません。つまり、65歳になる日は誕生日の前日と考えます。
厚生年金や健康保険などの社会保険料は月単位で徴収しますが、被保険者が負担する保険料を給料などから差し引けるのは、前月分の保険料に限られています。これには、被保険者の生計を保護する目的があります。そのため、誕生日が1日の人の場合は、誕生日の1日前と本当の誕生日で月が異なるため注意が必要です。
たとえば、6月1日に65歳の誕生日を迎える人の場合、社会保険上では前日の5月31日に65歳に到達したと考えます。すると、社会保険料は65歳に到達した5月分から控除できなくなるため、この従業員のケースでは5月に支給される給与分から保険料控除がなくなります。
しかし、6月2日が誕生日の人は6月1日に65歳に到達すると考えるため、保険料控除がなくなるのは6月分からです。
この考え方は給付にも共通しており、老齢年金は65歳に到達した日に受給権が発生し、その翌月から支給開始となります。そのため、誕生日が6月1日の人は、5月31日に受給権が発生して6月から年金給付が始まります。それに対し、6月2日生まれの人は、6月1日に受給権が発生して7月から年金支給開始となるため注意しましょう。

5-2. 65歳以上の従業員と配偶者の社会保険料変更手続きのおさらい

65歳以上の従業員と配偶者の社会保険料は複雑なため、最後にもう一度おさらいしましょう。

 

65歳以上の従業員の社会保険料の変更手続き
厚生年金保険 70歳まで継続して加入でき、保険料を給与天引きとなるための手続き不要
国民年金 年金受給資格を得るため、被保険者ではなくなり、保険料の納付は必要なくなる
介護保険 第1号被保険者となり、保険料は年金から天引きされる

 

配偶者の社会保険料の変更手続き
国民年金 配偶者が60歳未満の場合は第1号保険者となるため、自身で手続きを行って保険料を支払う
健康保険 配偶者本人が従業員よりも先に75歳にならない限り継続されるため、保険料の支払いは不要
介護保険 健康保険と同じ扱いだが、配偶者本人が65歳を過ぎた場合は第1号被保険者となり自身で保険料を納める

5-3. 従業員へのアナウンスは必須

社会保険料の取り扱いには複雑な部分もあります。仕組みについて理解している社員もいれば、理解していない社員もいるでしょう。

社員が深く理解をしていなかったとしても、会社が手続きをおこなえるのであれば大きな問題はありません。しかし、社員が手続きをおこなわなくてはいけないケースもあります。社員がそれを知らずに手続きをしていないという場合も考えられるため、会社としてアナウンスは必須といえます。

社会保険料に関する手続きもありますが、65歳というタイミングは会社との雇用関係において、さまざまな手続きが発生する場合もあります。各種手続きに追われて、社会保険料について疎かになってしまうかもしれません。

会社として手続きをしないのであれば、従業員に案内をおこなわなくてもとくに問題はありません。しかし、長年働いてくれた社員と今後も良好な関係性を維持するためにも、社会保険の手続きについて可能な限りサポートするのがよいでしょう。

5-4. 社会保険加入の条件や適用範囲の変更点に注意が必要

社会保険加入の条件や適用範囲は、制度の改正に伴って変更する可能性があります。

たとえば、2022年10月からは、「事業者の被保険者人数」と「雇用期間」について変更がおこなわれました。また、2024年10月には、「事業者の被保険者人数」の条件が変わり、社会保険の適用範囲がさらに拡大される予定です。

5-5. 繰り下げ受給の手続きを忘れないようにする

老齢基礎年金や老齢厚生年金は、65歳で受給資格を得ても、66歳以降に繰り下げることで、増額した年金を受け取ることができます。ただし、手続きをおこなった時点で繰り下げ増額率が決定するので、申請する時期には注意が必要です。

なお、繰り下げ受給の場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に手続きをおこなうことが可能です。たとえば、老齢基礎年金は繰り下げないで、老齢厚生年金は繰り下げるといった手続きができます。

このように、65歳以上になっても働き続ける場合、繰り下げ受給をおこなったほうが得策であるケースもあるため、制度をきちんと理解したうえで適切に手続きをしましょう。

ここまで解説したように、従業員の年齢だけでなく、社会保険の加入条件や適用範囲の変更点にも注意して適切に手続きをおこなうことが大切です。とくに社会保険料は給与から控除して支払うため、この法改正によって適用範囲が変更されることによって対象従業員の給与にも大きく関係します。確認ミスや漏れによるトラブルがないように対応しなければなりません。 そんな人事労務担当者の方の役に立つ「最新の法改正に対応した社会保険の加入条件ガイドブック」を無料配布しております。 加入条件をわかりやすく図解していますので、参考にしたい方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。

6. 65歳以上になると社会保険料は高くなる?

財務図グラフのアイコン

ここでは、従業員が65歳以上になったときの社会保険料の変化について解説します。

6-1. 介護保険料の従業員負担分が増える

前述の通り、従業員が40歳以上になると、会社と従業員で折半して介護保険料を納めなければなりません。さらに年齢が上がり65歳になると、介護保険の第2号被保険者から第1号被保険者に切り替わります。

このタイミングで介護保険料が給与から天引きされることはなくなり、全額を従業員が負担することになります。介護保険料は所得によって、また自治体によって異なりますが、従業員の負担分が増えるケースが多いでしょう。

6-2. 雇用保険から支給される金額が減る

64歳以下の従業員が会社を辞めたとき、次の仕事を探す意志があれば、雇用保険から基本手当が支給されます。基本手当とは、求職者の生活の安定を図り、求職活動をサポートする目的で支給される手当です。この基本手当は、65歳以上になると受給できないため注意しましょう。

65歳以上の場合、基本手当の代わりに、一定の要件を満たしていれば高年齢求職者給付金の支給を受けられます。ただし、基本手当よりは金額が少なくなるため、従業員に質問された場合は丁寧に説明しておきましょう。

6-3. 国民年金の任意加入ができなくなる

64歳以下の場合は、国民年金に任意加入して、老齢基礎年金を満額受け取るために保険料の納付を続けることができます。しかし、65歳以上になると国民年金に任意加入できなくなり、国民年金保険料を納めることができません。

ただし、65歳になった時点で、国民年金保険料を納めた期間が10年に満たない場合には、国民年金へ任意加入できます。年金を受給するためには最低10年、国民年金保険料を納める必要があるからです。

7. 65歳以上の社会保険料の変更手続きを正しく進めよう!

ポイントを指さす男性

社会保険において、65歳は大きな節目となる年齢です。社会保険にも複数の種類があるため、それぞれに対応が必要となり、配偶者の保険も考慮しなくてはなりません。
今後も65歳以上の従業員が増えることが予想される場合は、できるだけ早いタイミングで給与管理システムの導入を検討しましょう。変更手続きを正確におこなえるだけでなく、人事担当者の業務も大幅に軽減されることが期待できます。

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