従業員が雇用保険の被保険者資格を失った場合、雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要となります。雇用保険は、労働者を保護するために重要な保険であるため、適切に手続きをおこなうことが大切です。
当記事では、雇用保険被保険者資格喪失届とは何か、雇用保険被保険者資格喪失届はどこでもらえるのかを解説します。また、雇用保険被保険者資格喪失届の提出方法についても紹介します。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。
ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の手続きに関していつでも確認できるガイドブックが欲しい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 雇用保険被保険者資格喪失届とは?
雇用保険被保険者資格喪失届とは、労働者が雇用保険の被保険者資格を失った場合に、会社が作成して提出すべき書類です。ここでは、雇用保険被保険者資格喪失届が必要になるケースや、雇用保険被保険者資格喪失届を提出しないことによるリスクについて詳しく紹介します。
1-1. 雇用保険被保険者資格喪失届が必要になるケース
従業員が退職した場合、雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要になります。しかし、次のように退職以外にも雇用保険被保険者資格喪失届を提出しなければならないケースがあります。
- 週の所定労働時間が、一時的な場合を除き20時間未満となった場合
- 被保険者が死亡した場合
- 被保険者が法人の役員になった場合
- 被保険者であった兼務役員が従業員としての身分を失った場合
- 被保険者が出向し、出向先との雇用関係が発生している場合
このようなケースが生じた場合、企業は雇用保険被保険者資格喪失届を作成して、速やかに提出しなければなりません。
関連記事:雇用保険被保険者資格喪失届の必要性や手続きの流れをまとめて解説
1-2. 雇用保険被保険者資格喪失届を提出しないと罰則がある
雇用保険法第7条により、労働者が雇用保険の被保険者に該当しなくなった場合、企業には雇用保険被保険者資格喪失届を提出する義務があります。雇用保険法第83条により、雇用保険被保険者資格喪失届を提出しなかった場合、事業主に対して6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金の罰則が科せられます。
このように、雇用保険被保険者資格喪失届を提出しないと、罰則を受ける可能性があります。また、退職者は失業保険の申請ができず、生活に支障をきたす恐れもあります。そのため、必要な場合は、雇用保険被保険者資格喪失届を忘れず提出するようにしましょう。
(被保険者に関する届出)
第七条 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する労働者に関し、当該事業主の行う適用事業に係る被保険者となつたこと、当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなつたことその他厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
第八十三条 事業主が次の各号のいずれかに該当するときは、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第七条の規定に違反して届出をせず、又は偽りの届出をした場合
2. 雇用保険被保険者資格喪失届はどこでもらう?
雇用保険被保険者資格喪失届がなければ、雇用保険の被保険者としての資格喪失手続きができません。まずは雇用保険被保険者資格喪失届はどこでもらうのかを理解しておきましょう。
ここでは、雇用保険被保険者資格喪失届の入手方法や、その注意点について詳しく紹介します。
2-1. 雇用保険被保険者資格喪失届の入手方法
雇用保険被保険者資格喪失届は、ハローワークのホームページより入手することができます。具体的な手順は次の通りです。
- 「ハローワークインターネットサービス」にアクセスする
- 「申請等をご利用の方へ」→「帳簿一覧」→「被保険者に関する手続き」の順で移動する
- 「雇用保険被保険者資格喪失届」のページにアクセスする
- 利用上の注意を確認してチェックを入れる
- 様式のダウンロード・印刷が可能になる
このように、雇用保険被保険者資格喪失届の入手は難しくありません。注意事項をよく読んだうえで利用するようにしましょう。
2-2. 雇用保険被保険者資格喪失届を印刷する際の注意点
雇用保険被保険者資格喪失届はで印刷して提出することもできます。しかし、下記のように注意点が数多くあります。
- 白色度(用紙の白さ)68%程度以上の用紙を使用する
- 第1面・第2面どちらも印刷する(両面印刷可能)
- A4用紙に倍率100%で印刷する
- 読み取り時の基準マーク「■」に「欠損」や「かすれ」がないことを確認する
- 文字や枠線に印刷不良がないことをチェックする など
雇用保険被保険者資格喪失届はOCR(光学式文字読取装置)で読み取られるため、3箇所にある基準マーク「■」が正しく印刷されていることを確認しましょう。また、テンプレートの文字や枠線に乱れがあると、受理してもらえないケースもあるので、印刷後はミスがないかよくチェックすることが大切です。
2-3. 内容を入力して印刷も可能
雇用保険被保険者資格喪失届は、内容を入力して印刷することもできます。「雇用保険被保険者資格喪失届」のページの「内容を入力して印刷」をクリックすることで、必要情報を入力する画面に遷移することが可能です。
なお、個人番号は印刷後に記入しなければなりません。また、「半角」と表記されていない入力項目については「全角」で入力する必要があります。
内容を入力してから印刷することで、ミスをしても最初からやり直す必要がなくなるので、業務効率化が期待できます。
3. 雇用保険被保険者資格喪失届の提出方法
雇用保険被保険者資格喪失届の作成から提出までの手順を正しく理解することで、スムーズに手続きを進めることができます。ここでは、雇用保険被保険者資格喪失届の提出方法について詳しく紹介します。
3-1. 雇用保険被保険者資格喪失届の提出先や提出期限を確認する
雇用保険被保険者資格喪失届の提出先は、事業所の所在地を管轄するハローワークです。また、提出期限は、離職した日(退職日の翌日)もしくは被保険者でなくなった日の翌日から10日以内です。このように、あらかじめ雇用保険被保険者資格喪失届の提出先や提出期限を把握しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。
3-2. 雇用保険被保険者資格喪失届を作成する
雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークインターネットサービスからダウンロードしたうえで、適切に作成しましょう。厚生労働省のホームページでは「雇用保険被保険者資格喪失届の書き方・記入例」が公開されているので、参考にしてみてください。
関連記事:雇用保険被保険者資格喪失届の書き方を項目ごとに詳しく解説
3-3. 添付書類を準備する
雇用保険被保険者資格喪失届は、添付書類とともに提出する必要があります。必要となる添付書類は、次の表の通りです。
添付書類 |
書類の内容 |
備考 |
労働者名簿 |
労働者の情報が記載された書類 |
– |
賃金台帳 |
給与の支払状況が記載された書類 |
離職前2年間分必要 |
出勤簿 |
労働日数や労働時間を把握するための書類 |
タイムカードで代用可能 |
離職理由を客観的に確認できる書類 |
– |
退職届や雇用契約書、解雇通知書、就業規則など |
離職証明書 |
離職したことを証明する書類 |
3枚複写する |
資格取得確認通知書 |
資格取得が完了したことを確認する書類 |
昭和56年以前入社の人は必要 |
なお、離職票が不要な場合は、雇用保険被保険者資格喪失届と労働者名簿のみの提出で問題ありません。
3-4. 雇用保険被保険者資格喪失届を提出する
雇用保険被保険者資格喪失届は、下記の3つの方法で提出することができます。
- 窓口
- 郵送
- 電子申請
窓口提出の場合、管轄のハローワークの雇用保険窓口に出向いて、雇用保険被保険者資格喪失届と添付書類を提出することで、申請ができます。受理されたら「離職票」を受け取り、速やかに離職者に渡すようにしましょう。
郵送の場合、管轄のハローワーク宛てに、雇用保険被保険者資格喪失届と添付書類を郵送することで、申請が可能です。なお、重要書類なので、追跡可能な方法(簡易書留など)で郵送することが大切です。また、受理されたら郵送により「離職票」が届くことになるので、切手を貼った返信用封筒も添付しておくようにしましょう。
電子申請の場合、e-Govを使って申請書を作成し、添付書類を追加することで提出ができます。電子交付された「離職票」は素早く退職者に送付しましょう。
このように、雇用保険被保険者資格喪失届の提出方法は複数あります。電子申請であれば、窓口に出向く手間や郵送コストを抑えることが可能です。自社のニーズにあった方法で、正しく雇用保険被保険者資格喪失届を提出することが大切です。
4. 雇用保険被保険者資格喪失届の提出が10日過ぎたらどうなる?
雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限は、労働者が退職した日の翌々日から10日以内と定められています。手続きに時間や手間がかかり、雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限である10日を過ぎてしまうケースもあるかもしれません。
提出期限を過ぎても、提出内容や添付書類に問題がなければ、受理してもらえます。ただし、雇用保険被保険者資格喪失届の提出が遅れることで、退職者の失業給付の受け取りも遅れる可能性があります。また、新しく就職した会社での手続きが遅延する恐れもあります。
このように、退職者や他社に迷惑をかけないためにも、期限内に手続きをおこなうことが大切です。やむを得ず遅れる場合も、できる限り早めに手続きするようにしましょう。なお、雇用保険被保険者資格喪失届の提出をしない場合は、法律により懲役・罰金といった罰則が課される恐れもあるので注意が必要です。
5. 雇用保険被保険者資格喪失届は速やかな手続きを
雇用保険被保険者資格喪失届の提出は、労働者が雇用保険の基本手当を受給し、次の就職先を見つけるために重要な手続きです。雇用保険被保険者資格喪失届は、ハローワークインターネットサービスからダウンロードすることができます。雇用保険被保険者資格喪失届の提出には期限が定められているので、速やかに手続きをおこなうようにしましょう。