パルスサーベイという言葉を聞いたことはありますか。
「パルスサーベイは聞いたことがあるが、従業員満足度調査との違いが分からない」という方も多いのではないでしょうか。
そのような方のために、本記事ではパルスサーベイの定義や質問項目、実施するメリットなどについて解説します。
関連記事:エンゲージメントサーベイは無駄?|実施するメリットや事例について解説!
目次
1. パルスサーベイとは
まず、パルスサーベイの定義について説明します。
1-1.パルスサーベイの定義
パルスサーベイとは従業員の満足度に関する意識調査の一種です。特徴としては簡易的な質問を高頻度でおこなうことが挙げられます。「パルス(pulse)」とは日本語で脈拍を指します。数分で回答できる、10問前後の問題を高頻度でおこなうのが短期反復型のサーベイです。
1-2. パルスサーベイの目的
パルスサーベイの最大の目的は、従業員エンゲージメントの向上です。従業員エンゲージメントが高いことで以下のようなことが可能になります。
- 課題・改善点の早期把握
- 改善・対応の迅速化
- コミュニケーションの活性化など
このように、従業員エンゲージメントが向上して組織としてのパフォーマンスが上がることは、生産性・業績アップに直結します。そのため、多くの企業がパルスサーベイを取り入れ、従業員エンゲージメントを向上させようと試みているのです。
パルスサーベイは、企業の成長に不可欠な重要な情報源と言えるでしょう。
1-3. パルスサーベイとセンサスとの違い
高頻度でおこなわれるパルスサーベイと対をなすのはセンサスです。センサスは年に1,2度の頻度で50~150問を時間をかけておこないます。センサスは、詳細な調査が可能という利点があります。しかし、分析まで時間がかかる、頻度が少ないというデメリットがあるため、目的に即したサーベイを利用することが重要です。
1-4. パルスサーベイの活用シーン
従業員のストレスチェックパルスサーベイは高頻度でおこなうため、従業員の日々の変化に気づきやすくなります。
先週と比べ幸福度や満足度の項目が下がっている場合、人間関係で何かあったのか、環境の変化に対応できなかったのかなど、多角的に要因を探ることができます。ストレスは仕事の出来に大きな影響を及ぼすため、パルスサーベイによる速やかにフォローが効果的です。
また、新入社員の早期退職は人事担当者の大きな悩みの一つとなっています。そこでも役に立つのがパルスサーベイです。新規人材が新しい環境になじめたか、仕事内容が自分に合っているかなどリアルタイムに調査しフォローをおこなうことによって、早期退職を防ぐことが可能になります。
2. パルスサーベイのメリットとは
ここでは、パルスサーベイのメリットについて説明します。
2-1. エンゲージメントの向上
先ほども解説した通り、パルスサーベイにより社内の問題をリアルタイムで知ることができます。なぜなら、少ない設問を高頻度でおこなうためです。
不満にいち早く気づいて迅速に対応することで、従業員の仕事への満足度を上げることができます。対応が適切で素早いことは従業員の会社への信頼につながり、会社への愛着心を芽生えさせます。会社への愛着は従業員の離職の防止や定着率の向上にも寄与します。
さらに、従業員のエンゲージメントが高いと生産性が向上するという研究結果もあるため、各企業においてパルスサーベイの導入が加速しているのです。
2-2. 一般のサーベイと比べ、コストを抑えることができる
ほかのサーベイは量が膨大なため、外部に委託するケースがほとんどです。そうすると、1回当たり数十万から数百万程の費用がかかります。
しかし、パルスサーベイは設問が簡単で問題数も少ないので、自社で簡単に作成・分析することができます。また現代ではIT化が進んでいるので、作成した質問事項をメールやチャットで回答してもらうことも可能です。パルスサーベイは、他のサーベイに比べコストを抑えられる点もメリットであり、比較的取り掛かりやすいサーベイと言えるでしょう。
2-3. 回答をきっかけに内省を行う機会が増える
パルスサーベイを実施することで、今までおこなってきた業務内容や仕事の状況を振り返ることができます。パルスサーベイは高い頻度で実施するため、継続的に内省する習慣が身に付き、従業員の成長にもつながるでしょう。
3. パルスサーベイの活用シーン例
パルスサーベイはさまざまなシーンで役立てられています。とくに、簡易的なストレスチェックの手法としてパルスサーベイを活用する企業も多数存在します。
パルスサーベイに従業員の健康状態に関する質問を含めれば、従業員のメンタル不調をチェックできます。また、継続的に実施することによって、従業員の慢性的な不調が明らかになるケースもあります。
また、新入社員や異動したばかりの社員へのオンボーディングとしてパルスサーベイをおこなうこともあります。こういったケースでは、チームになじんでいるか、フォローが必要かといった点を確認すると効果的です。
ほかに、人事評価や社内体制変更の意見調査、従業員幸福度のチェックなど、パルスサーベイを活用できるシーンは数多くあります。
4. パルスサーベイをおこなう際の注意点
ここではパルスサーベイを実施する際に起こりうる注意点について説明します。
4-1.従業員がサーベイ慣れしてしまう
パルスサーベイは実施頻度が高いので、マンネリ化してしまう恐れがあります。マンネリ化すると、従業員が適当に質問に答えてしまい、正確な情報を得にくくなるかもしれません。
マンネリ化を防ぐために、実施する目的やサーベイのフィードバックを公表するなどして、事実に即した的確な回答を得るよう努めましょう。。
4-2.サーベイが従業員の負担につながる
パルスサーベイは高頻度でおこなえることがメリットですが、項目の質問数や頻度が多すぎると従業員の負担になってしまいます。従業員のほかの仕事に影響がない程度に、適切な頻度と質問量を設定して実施することが重要です。
5. パルスサーベイ実施の流れ
ここではパルスサーベイを実施する際の流れについて説明します。
5-1. 実施目的を明確にし、共有する
まず、なぜパルスサーベイを行う必要があるか従業員に知ってもらう必要があります。目的が不明瞭なままでは実施すること自体が目的になってしまう恐れがあるので注意が必要です。
人事担当者は明確な目標を設定し、従業員に実施することを広く知ってもらうよう配慮しましょう。そのためには、適宜リマインドをおこない、周知徹底に努めてください。
5-2. パルスサーベイの設問や流れを設定する
パルスサーベイの設問を設定します。パルスサーベイをおこなう際には設問の項目数や内容、頻度を適切な回数に設定します。一般的には項目数は5~15問で数分間で終えられるように設定するのが好ましいとされています。また、頻度は数日から数週間に一度おこなうことを目安に実施してください。
この他にも、具体的な日程や回答期限、未回答者への対応などや回答までの時間なども具体的に決めておく必要があります。実際に実施してみて、これらの内容が自社に合っていなければ、定期的に見直して改善していくことが大切です。
5-3. パルスサーベイを実施する
調査票が完成したら調査票を従業員に配ります。その際は、メールやビジネスチャットなどのネット上で配ることができるものがお勧めです。
また、実施する時間帯も勤務開始前や休憩時間後など回答率が高そうな時間に開始しましょう。
5-4. 結果の分析
過去のデータを参考にするとよいです。数値を見て判断するのではなく、内容の分析を重視する必要があります。次のパルスサーベイが始まる前に解析を終わらせるため、回答後すぐに分析を開始することが必要です。
5-5. 分析をもとにしたフィードバックを行う
パルスサーベイは頻度が多いのが特徴です。人事側のフィードバックが間に合わないと、「せっかく回答したのに人事側から何もアクションがなかった」と不満を感じる従業員も出てくるかもしれません。
このような事態を防ぐため、分析からフィードバックまでの期間をできるだけ短くする必要があります。
5-6. パルスサーベイの再実施
実施したフィードバックに効果があるのかを検証するため、再びパルスサーベイを実施する必要があります。効果がなかった場合は、また新たにフィードバックをおこないます。
よかった点はそのまま継続し、悪かった点は改善することを繰り返しおこなうことでパルスサーベイの精度が向上し、効果を得られるようになることを覚えておきましょう。
6. パルスサーベイの質問事項
ここでは、パルスサーベイの質問の具体例について説明します。
6-1. 社員の幸福度に対する質問
・家族や友人に自分の仕事を進められるか
・仕事を行う上でストレスを感じるか
・仕事を通じてやりがいを感じたか など
この項目は、従業員の簡易的なメンタルヘルスチェック項目です。仕事に対するモチベーションが低い社員や突然数値が変化した社員にはフォローをおこなう必要があると判断できます。
6-2. 業務についての質問
・現在与えられている仕事量や内容は適切か
・現在与えられている仕事の難易度は適切か
・仕事に関する不満があるか
・職場で自分の意見が尊重されているか など
この項目は、属している部署や仕事内容の満足度についての質問です。この数値が低いと会社へのエンゲージメントが低く、仕事の内容や職場の環境に不満がある環境であるといえます。
さらに、仕事の分配がうまくいっていないと仕事全体の生産性が低くなってしまう可能性もあります。数値が低い個人だけではなく、その個人が属しているチームや部署などと関連付けて調査結果を分析することが必要です。
6-3. 経営理念についての質問
・会社のMVVモデルを理解しているか
・経営陣の事業方針に共感できるか など
この項目は、従業員が企業に対してどのように思っているのかを調査することができます。会社との方針の違いは会社への不信感につながりかねません。
そのため、これらの調査から、人事側は会社の方針に誤解がないように従業員に浸透させたり、従業員の不満を経営陣側に伝えたりして、相互の理解を深めていく必要があります。
7. パルスサーベイの導入事例
ここでは、パルスサーベイの活用に成功している企業について説明します。
日清HD
パルスサーベイを導入することで、従業員のエンゲージメントを上げることに成功したのが日清HDです。仕事の満足度・人間関係・健康状態という項目に、追加で日清HDで独自におこなっている1on1ミーティングのアンケートも実施しています。
1on1ミーティングの結果で、仕事の満足度や上司との関係が変わったかなどのパルスサーベイに自社オリジナルの項目を入れています。また、事前に個人情報は秘匿されると告知されているので、従業員の正直な意見を引き出すことにも成功しています。
8. パルスサーベイで失敗する理由と活用すべきツール
パルスサーベイは、導入してすぐにスムーズな運営につながるとは限りません。パルスサーベイで失敗する主な理由は以下の3つです。
- 質問項目が不適切
- 回答率が低い
- 十分な分析がおこなれれない
まずは、パルスサーベイが必要な理由や実施内容を従業員に徹底して周知し、また、匿名での回答を許可することで回答率の上昇が期待できます。
さらに、質問の見直しや十分な分析をおこない、しっかりと活用できる十分な結果を得られるよう改善していきましょう。
このような失敗を未然に防ぐために活用したいのがパルスサーベイツールです。質問項目の設定や回答の回収、結果の分析などを効率的におこなってくれるため、自社の業務負担を軽減できます。
また、パルスサーベイツールを利用することで調査の透明性が確保され、従業員から高い信頼を得ることも可能です。
パルスサーベイを手間なく確実に実施するために、ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
9. 最適なパルスサーベイで社員のエンゲージメント向上につなげよう!
パルスサーベイの定義や質問項目、実施するメリットなどを解説しました。パルスサーベイの一番の目的は従業員のエンゲージメントの向上です。エンゲージメントの向上は仕事の生産性をあげるという調査結果があります。
エンゲージメントの向上は、現代の企業運営において最も大切な事項の一つであるといえるでしょう。従業員を守るためにもパルスサーベイの導入を検討してみてはいかがでしょうか。