直行直帰は、自宅から商談先などの現場に直接行き来することができるため、従業員は時間を有効活用することができます。しかし、労働時間や従業員の働きぶりを把握することが難しいというデメリットもあります。そのため、直行直帰の導入に踏み切れないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では直行直帰をおこなう際の労働時間管理やメリット、デメリット、直行直帰に関する「よくある疑問」について解説します。
関連記事:労働時間とは?労働基準法に基づいた上限時間や、休憩時間のルールを解説!
労働時間でよくある質問を徹底解説
この記事をご覧になっているということは、労働時間について何かしらの疑問があるのではないでしょうか。
ジンジャーは、日々に人事担当者様から多くの質問をいただき、弊社の社労士が回答させていただいております。その中でも多くいただいている質問を32ページにまとめました。
【資料にまとめられている質問】
・労働時間と勤務時間の違いは?
・年間の労働時間の計算方法は?
・労働時間に休憩時間は含むのか、含まないのか?
・労働時間を守らなかったら、どのような罰則があるのか?
目次
1. 直行直帰とは?
「直行直帰」とは、会社に行かずに直接目的地に出勤し、退勤の際も会社に立ち寄ることなく、直接自宅に帰ることを指します。
直行直帰が多い職種としては、営業職やホームヘルパー、ベビーシッターなどの介護職、家庭教師などが挙げられます。
2. 直行直帰における労働時間管理
ここでは、労働時間の定義について整理しつつ、直行直帰における労働時間管理について解説します。
関連記事:労働時間の管理は必須!上限時間や厚生労働省のガイドライン、効率化の方法を解説!
2-1. そもそも労働時間とは?
「労働時間」とは勤務時間から休憩時間を引いた時間のことを指します。なぜ、労働時間に休憩時間は含まれないのかというと、労働時間は「労働者が使用者の指揮命令下にある時間」を指し、「労働から完全に解放される時間」である休憩時間は、その時間に該当しないからです。
例)始業が9時、終業が18時で、1時間の休憩がある場合
労働時間は勤務時間(9時間)から休憩時間(1時間)を引くため、8時間となります。
2-2. 移動時間が労働時間に含まれる場合
直行直帰において、移動時間が労働時間に含まれるのは以下の場合です。
・移動時間が所定労働時間内である場合
・移動時間中に会社の指示に従う必要がある場合
労働時間は「労働者が使用者の指揮命令下にある時間」を指すため、会社や上司の指示を受けている時間はすべて労働時間であるとみなされます。
2-3. 移動時間が労働時間に含まれない場合
直行直帰において、移動時間が労働時間に含まれないのは以下の場合です。
・上司からの命令がない場合
労働時間は「労働者が使用者の指揮命令下にある時間」を指すため、会社や上司からの指示がない時間は移動時間であっても、労働時間ではありません。
ここまで、直行直帰における労働時間管理について解説しました。労働時間が「労働者が使用者の指揮命令下にある時間」を指すということを踏まえて、移動時間が労働時間にみなされるのかを判断しましょう。
3. 直行直帰を導入するメリット
ここでは、直行直帰を導入する2つのメリットについて解説します。
3-1. 【メリット①】従業員が主体的に働ける
1つ目のメリットは「従業員が主体的に働ける」ことです。
直行直帰を導入すると、従業員は会社に行って出退勤をする必要がなくなるので、裁量を持って自分のスケジュールを決めることができます。そのため、主体的な従業員であれば生産性高く業務に取り組むことができます。
3-2.【メリット②】時間を有効的に使うことができる
2つ目のメリットは「時間を有効的に使うことができる」ことです。
直行直帰を導入すると、今まで出退勤に充てていた時間を取引先に向かう時間や資料作成の時間など、他の業務に充てることができます。そのため、直行直帰を導入することで時間を有効的に活用することができます。
ここまで、直行直帰の導入によって、従業員が時間を有効的に使いつつ、主体的に働くことができると解説しました。ここからは、直行直帰を導入する事のデメリットについて解説します。
4. 直行直帰を導入するデメリット
ここでは、直行直帰を導入する2つのデメリットについて解説します。
4-1. 【デメリット①】労働時間を管理しづらい
1つ目のデメリットは「労働時間が管理しづらい」点です。
直行直帰を導入すると、従業員が出退勤の際に会社に立ち寄ることがないので、従業員の労働時間を管理することが難しくなります。
そのため、従業員の成果のみで仕事ぶりを判断することになってしまいます。
そのような場合、熱心に業務に取り組んでいたとしても、良い成果が上がらなければ、「不真面目な社員である」と判断されてしまうなど、従業員を適切に評価することも難しくなります。
関連記事:労働時間の適切な計算方法について|残業代計算についても詳しく解説!
4-2. 【デメリット②】各従業員に自己管理が求められる
2つ目のデメリットは「各従業員に自己管理が求められる」点です。
直行直帰を導入すると、各従業員は責任感をもって業務に取り組むことが求められます。しかし、従業員の働きぶりを確認することは難しいので、従業員によっては怠けてしまうなど、生産性が著しく落ちてしまう従業員もいるため、直行直帰の導入は慎重におこなう必要があります。
このように、直行直帰にはメリットとデメリットがあるため、導入は慎重におこないましょう。
ここからは、デメリットを最小限にしつつ、直行直帰を導入する方法について解説します。
5. 直行直帰でも適切に労働時間を計算する方法
ここでは、直行直帰でも適切に勤怠管理をおこなう方法を3つご紹介します。
5-1.直行直帰のルールを設定
1つ目は「直行直帰のルールを設定すること」です。
直行直帰において、以下のようなルールを設けると従業員の労働時間を管理しやすくなります。
・出退勤のタイミングを明確に定めておく
・従業員に直行直帰申請書の提出を義務付ける
・1日のスケジュールを共有する
出勤は目的地に着いたタイミング、退勤は目的地から帰るタイミングでおこなうように定めましょう。
直行直帰申請書を提出させることで、直行直帰をおこなう日の1日の流れを把握することができるため、労働時間を管理しやすくなります。
直行直帰申請書には、下記のような内容を記載できるようにしておきましょう。
・目的地への予定到着時間、予定出発時刻
・訪問をおこなう目的
・1日のスケジュール
このような内容を従業員に明記してもらうことで、企業は直行直帰をおこなう従業員の労働時間を管理しやすくなります。
また、従業員に対し、目的地に到着した時点、直帰するときには出発時などで上司に対して報告するように指示し、直行直帰の翌日には上司に業務内容および出先での業務時間の報告をすることを義務付けておくと、部下の業務状況をしっかりと把握できるでしょう。
5-2. 事業場みなし労働制の導入
2つ目は「事業場みなし労働制を導入すること」です。
事業場外みなし労働制とは、社外で働く従業員が何時間働いていたとしても、一定時間労働をおこなったとみなす制度です。
直行直帰において労働時間を管理し、給与計算を適切におこなうことは非常に難しいです。
しかし、事業場外みなし労働制を導入すれば、従業員が一定時間労働をおこなったとみなすことができるので、給与計算も効率的におこなうことができます。
5-3. 勤怠管理システムの導入
3つ目は「勤怠管理システムを導入すること」です。
直行直帰において、労働時間を正しく把握するのが難しいのは、会社に立ち寄らないためタイムカードなどに打刻することができないという点にあります。
勤怠管理システムであれば、スマートフォンやPCを用いて、どこからでも打刻することができるので、直行直帰においても労働時間を管理することができます。
また、GPS機能がついた勤怠管理システムを利用すれば、目的地に着いていないのに打刻するなどの不正打刻を防止することができるので、非常に便利です。
ここまで、直行直帰においても労働時間を正しく管理する方法について解説しました。特に、GPS機能付きの勤怠管理システムであれば、直行直帰においても不正打刻を防ぎつつ、正しい労働時間を管理できるため、非常におすすめです。
6. 直行直帰に関する「よくある疑問」
ここでは、直行直帰に関する「よくある疑問」について解説します。
6-1. 直行直帰時の交通費・通勤手当はどのように支給すべき?
直行直帰の交通費の支給方法は「直行直帰が一時的である場合」と「日常的に直行直帰をおこなう場合」で異なります。
不特定の場所に一時的に直行直帰をおこなう場合、自宅から会社までの「通勤手当」に加えて、自宅から目的地までの「交通費」を支給する必要があります。
一方、日常的に直行直帰をおこなう場合は、従業員の自宅から目的地までの間で、通勤手当を支給することが多いです。
このように、直行直帰が常態化しているかどうかで、交通費として精算するか、通勤手当として定期代を支給するかの対応が取られます。
6-2. 直行直帰時のアルコールチェックはどうする?
2022年4月から「白ナンバー(自家用自動車など)を5台以上」もしくは「定員11人以上の車を1台以上」使用する事業所に対して、アルコールチェックが義務付けられています。本来、このアルコールチェックは運転の前後の出退勤時に、それぞれ1回ずつおこなう必要があります。しかし、直行直帰をおこなう従業員は出退勤時にアルコールチェックをおこなうことができません。
そのため、従業員が直行直帰をおこなう場合は、アルコール検知器を携帯させたうえで、カメラやモニター、業務無線などを利用した環境下で検知器の測定をおこなう必要があります。
6-3.事業場外みなし労働制でも残業は発生する?
事業場外みなし労働制は、勤務時間の把握が難しい事業場外での勤務に対して、一定の時間働いたとみなして給与を支払う制度ですが、この場合でも残業代を支払う必要がある場合があります。
法定労働時間を超えるみなし労働が発生するときは、あらかじめ時間外労働の割増賃金分も固定賃金に組み込んで従業員に支払わなければいけません。
また、事業場外みなし労働制で、当初の所定労働時間では想定していなかった深夜労働や休日労働が発生した場合、時間外労働の割増賃金の支払いは義務ではありませんが、深夜労・休日労働の割増賃金は実働時間に伴い支払う必要があるため注意しましょう。
7. 直行直帰について理解を深め、適切な労働時間管理を!
本記事では、直行直帰をおこなう際の労働時間管理やメリット、デメリットについて解説しました。直行直帰は業種によっては会社に立ち寄る必要がないため、時間を有効活用することができます。しかし、労働時間や従業員の働きぶりを把握することが難しいというデメリットもあります。
そのような事態を防ぐために、直行直帰に関して明確なルールを定めることや勤怠管理システムの導入などを通して、直行直帰においても適切な労働時間管理を心掛けましょう。
労働時間でよくある質問を徹底解説