今回は、「1日限定の仕事」ができる1日求人アプリ『ワクラク』を提供する、Wakrak株式会社(旧Spacelook株式会社)代表の谷口さんにインタビュー。
谷口さんは高校を休学し、17歳で同社を設立。新しいマッチングの形を提供すべく、日々奮闘されております。
谷口さんから起業に至るまでの経緯をお伺いすると、想像以上の内容が飛び出し、その行動力には驚きの連続でした。
本記事では、前後編に分けて、谷口さんが起業をしようと思ったきっかけや、起業時の苦労、1日求人アプリ『ワクラク』についてご紹介していきます。
谷口 怜央 | Wakrak株式会社 創業者
目次
中学時代に腰を痛め、車椅子生活の大怪我の経験から芽生えた想い
-谷口さんがそもそも「起業しよう」と思ったキッカケは何だったのですか?
谷口氏:起業を考えるそもそものきっかけは、中学時代に腰を痛めて大怪我をして車椅子生活になったときがあって、そこからですね。
-腰を痛めたのがきっかけですか!?
谷口氏:僕は名古屋の出身なのですが、中学2年生のときに、所属していた野球部で腰を痛めて精神的な問題も重なり、下半身が動かなくなってしまったんです。そこから完治するまで車椅子生活でした。
そのときに、周りの目がすごく変わってしまっていくように感じたんです。
たとえば、車椅子で生活していると、溝に引っかかって転倒してしまうときがあるのですが、転倒した際に、道行く人は見ているのにそのまま立ち去るだけです。周囲の助けを借りることができないため、自力で起き上がらなければなりません。
そういった経験があってから、「社会の負」のようなものを意識するようになり、それと同時に「世の中にさまざまな社会問題や貧困があるのに、自分も何もしていない」と感じて、見て見ぬふりをせずに「社会の負を解決したい」と強烈に思ったんです。
高校入学。夏休みにセネガルで現地の人と一緒に生活をする
-そこから、どのような行動をしようと思ったのですか?
谷口氏:「貧困問題を変えていくための活動をしていきたい」と考えるようになり、そのためにまず、貧困を知ろうと思ったんです。
当時を振り返ると、短絡的な考えだったのですが、貧困=アフリカと勝手に思い込んでいたので、「とりあえず夏休みにアフリカに行こう」と、高校一年の夏休みに一人でセネガルに行きました。
-なぜ、セネガルだったのですか。
谷口氏:ホームステイ先を探すために、ずっとアフリカ各国の現地に直電をしていたのですが、どこの国が良いなどは何も考えていませんでした(笑)。
それで、いろいろなサイトを駆けずり回っていたら、たまたま日本人の方とつながり、その方から紹介してもらった国がセネガルだったんです。
-自分で直接探していたんですか?
谷口氏:そうです。斡旋会社などを通すと、ボランティアの要素が入ってしまうので、立場が変わってしまうと思ったんです。
そうではなくて、あくまでも、現地の人の生活を実際に一緒にしたいと思って。
-実際に現地に行ってどのようなことをされたのですか?
谷口氏:現地で1ヶ月ただただ生活をしただけです。その土地の食べ物を食べて、子供たちと普通に街で遊んで、近所の方々と触れ合って、ホームスティ先に帰って寝る。それだけの生活です。
-現地の方と同じ生活をしていたんですね。1ヶ月過ごされて何か感じたことがありましたか?
谷口氏:現地で感じたというより、日本に帰ってきてから感じたことがあります。たとえばセネガルだと、まだまだ裕福ではないので、道端に座ってみんなで食事を持ち寄って食べている光景をよく見かけました。
ただ、日本に帰って違和感だったのは、ホームレスの人たちが普通に街にいても、誰も見向きもせずに通り過ぎて行くことです。
アフリカでは貧困を見て見ぬふりをせずに、お互いが助けあっている。でも、日本に帰ってきたら、見て見ぬふりをして、全くいないものとして捉えていた。
そのときに、日本の方が物質的には豊かだけど、精神的に見ると貧しいのではないかと感じたんです。
それから、ホームレスの人たちと一緒に活動するようになったんです。
ホームレス200人と友だちになり、カフェを運営する
-ホームレスの方々と、どのような活動をされたのですか?
谷口氏:まずは彼らと友だちになりました。同じ目線でいろいろな話を聞いてみようと思ったんです。
高校の授業が終わったら、制服を着たままホームレスの人たちのところへ行って、毎日話をしていました。それを半年間ぐらいやっていたら、200人ぐらいホームレスの友だちができたんです。
-200人も!?
谷口氏:そこから、学校の友だちで興味を持ってくれそうな人を連れて行って、一緒に話す機会をつくり、私たちとホームレスの人たちの壁をなくすことを考えました。
さらに、ホームレスの人たちが運営するカフェを一緒に立ち上げて活動していきました。ただ、路上で勝手に販売しており、無許可ということですぐにバレて、めちゃくちゃ怒られました(笑)。
-すごい行動力ですね・・・。
社会に大きな影響を与えるために、ITビジネスに興味を持ち始める
-ここまでで、ものすごく濃いお話をいただきましたが、そこから何をされたのでしょうか?
谷口氏:こういう生活をしていたので、プレゼンをする機会をもらえたんです。たとえば、『TEDxNagoyaU』というTEDの名古屋版といった感じのイベントに登壇させていただきました。
「僕の言う路上スタイルとは」というタイトルで、ホームレスの人たちの出会いをテーマに話をしました。
そんな中、講演に向けて自分の考えや実践してきたことをあらためて整理して見つめ直していたときに、あることに気づいたんです。
ホームレスの方と話をしていく中で、最初はやはり自分を隠したがるので、心を開いてくれなかったのですが、話をしていくうちに、だんだん自分のことを話してくれるようになったんです。
そこから、「話すのが好きになって、もっと話したいから仕事をはじめる」という人も出てきて。身近なところできっかけを与えて変えることができたんです。
-ホームレスの方が就業するきっかけになったわけですね。
谷口氏:ただ同時に、これは僕が動ける範囲でしか変えられないとも感じました。
どうすればいいかを考えるうちに、もっと大きな範囲で社会問題や貧困を解決するためには、「IT領域を軸にビジネスにしてはどうか?」と思うようになりました。
そうやって、ビジネス自体に興味を持ち出したのが、2016年の7月。高校2年の夏休み前でした。
まずは、ビジネスのことを考える前に、日本にどのようなテクノロジーや企業があるのか、そこで働く人は何を考えているのか、何が起こっているのかを知ろうと、ヒッチハイクで日本各地を巡ろうと決めました。
-今度はヒッチハイクですか!?
ヒッチハイクで日本を巡り、スタートアップやベンチャー企業を知る
-ヒッチハイクではどのような経験をされたのですか?
谷口氏:ヒッチハイクで各地を巡って、至るところでスタートアップ企業やベンチャー企業の話を聞く機会があり、初めてその存在を知りました。
そこから、ヒッチハイクで東京までいったときに、とあるベンチャー企業の方と話をさせてもらったんです。
そのときに「この会社でインターンしてみたいな」と思ったんです。しかし、そのまま夏休みが終わってしまい、結局インターンはできませんでした。
そのあとは学校が始まるじゃないですか。ただもう、そのときのワクワクが止められなくて、普通に学校で座って勉強しているのが、本当につまらなすぎて。
それでもうダメだと思って、親に「高校をやめて東京に行きたい」という話をしたんです。そしたら、「とりあえず休学にしなさい」と。
止めても止まらないと親はわかっていたみたいで、休学をして、起業するのを前提で、先程の会社にインターンをさせてもらったんです。
「ライフスタイルの在り方を変えたい」高校を休学しインターン。そして起業へ
-インターンから起業までの経緯を教えていただけますか。
谷口氏:インターンでは、名古屋から上京してきて住むところもなかったので、オフィスに泊まり込みで、ガムシャラに働いていました。
同時に、起業をするために、どういうビジネスモデルがいいのか、試行錯誤を繰り返していきました。
そうして設立した会社がWakrak株式会社(旧Spacelook株式会社)で、今の事業である『ワクラク』というサービスを開発しました。
「そもそもなんで起業したかったのか」とあらためて自問自答した際に、貧困などの社会問題を根底から変えたいと。そう考えたときに、「一日のライフスタイル自体を変える必要があるのではないか」という考えに行き着きました。
現在、働いている人たちは、一日の中で仕事に一番時間をかけています。その仕事に対してマイナス意識を持って取り組んでいるのは、すごくもったいないし、それがさまざまな社会問題の一因につながっているのではないかと思ったんです。
それであれば、「仕事の在り方や、生活を全部根本から変えるサービスをつくろう」と、好きなときに好きな仕事をするようなライフスタイルを提供するサービスをやろうと決め、起業に向けて動き出したんです。
▶後編に続く
メンバー平均年齢が18.9歳の会社が創る、1日求人アプリ「ワクラク」とは?