「21世紀を代表するブライダル会社を創る」をビジョンに掲げる、ウエディング業界のインターネットリーディングカンパニー、ウエディングパーク。
同社では、2024年12月現在で女性の管理監督者比率が38%、また、管理監督者含むマネージャー全体の割合は56%が女性とのこと(社員の男女比率は 4:6)。
多くの企業が女性活躍推進に苦心する中、ウエディングパークはジェンダーレスで多角的なサポート施策を展開し、着実な成果を上げています。
それでは、具体的にどのような取り組みをおこなっているのでしょうか。今回の取材では、同社の女性活躍推進に向けた取り組みの本質に迫り、その成功のカギを探ります。
【人物紹介】戸田 朱美|株式会社ウエディングパーク 執行役員 コーポレートデザイン本部 本部長
2013年、株式会社ウエディングパークに新卒入社。入社以降、広告営業、Webディレクター、広告運用、人事と、様々な業務を経験。2020年より育休を取得し、復帰後の2021年には組織カルチャーの重要性が増していることを感じ「カルチャー推進室」の立ち上げを自ら提案し、室長に就任。2022年7月に経営本部 本部長、同年10月からは執行役員として、経営目線から組織カルチャーの創造と浸透に尽力している。
目次 [非表示]
女性活躍推進を支えるウエディングパークの独自施策
―本日はよろしくお願いします。そもそもの一般論として、「女性の昇進意欲が低い」という話をよく耳にしますが、御社ではいかがでしょうか?
実は、当社ではそういった傾向はあまり見られません。その理由として大きいのは、採用にこだわっていることだと考えています。
そもそもの前提として、ウエディングパークのカルチャーは、自ら手を挙げて挑戦したり、宣言し実行したりするなど、自主性やチャレンジ精神を大切にしています。
採用でもカルチャーに共感してくださるかどうかを見ており、その結果「機会があれば掴みたい、飛び込みたい」という仲間が多く集まっているので、女性のメンバーも積極的にキャリアアップに挑戦してくれるのだと思います。
―成長・挑戦意欲の高い方を採用しているという前提があるから、昇進も前向きにとらえてくれるのですね。はい。ただそうはいっても、入社後にライフスタイルが変化したり、実際に働いてみて気持ちが変わったりすることは当然あると思います。
特に20代後半から30代の社員だと、結婚・妊娠・出産を経てワークライフバランスが変化する社員も多かったため、そこでの悩みや相談は少なくありません。
そういった背景もあり、ウエディングパークでは、カルチャーの醸成や育成環境を整備することで、入社時の意欲を持続できるような取り組みに注力しています。
―ありがとうございます。ではここからは、具体的な取り組みについてお伺いしていければと思います。
気軽になんでも話せる1on1
日常的な取り組みとしては月並みかもしれませんが、メンバーとの1on1を非常に大切にしています。
これは単なる業務ミーティングではなく、アジェンダを設けずに「最近調子はどう?」といった気軽な会話から始まるものです。
特に女性の場合は、体調面の話も含めて、2人だからこそ話せることもあります。
このような機会を週1回~2週に1回といった頻度で設けることで、そもそものマネジメントの土台となる話しやすい関係性と安心感の構築を醸成していきます。
あとは、「一緒に事例をつくっていこう」というアプローチも意識しています。
例えば「出産後に復帰した社員のケース」「時短でも活躍できるケース」といった先行事例があると、「自分も子育てしながら復帰できるかもしれない」とか、「30歳を過ぎても営業のキャリアを築けるかもしれない」と、次の人の希望になっていくんです。
当社はまだまだ若い会社なので、大きな制度をつくるというよりも、そういった事例を少しずつ積み重ねていくことが大事だと考えています。
「○○さんが初めてのケースになるかもしれないけど、そういう事例を会社の中でいっぱいつくりたいと思ってるんだよね」と、マネージャーから伝えて、「一緒にやっていこう」という空気をつくることは大切にしています。
最大4人でコーヒーブレイクできる『コーシー』
また、社内で活躍している社員に話を聞きたい場合は、『コーシー』という制度の活用ができます。
これはオフィス出社時の社内コミュニケーション活性化を目的にした制度で、コーヒー代が会社から支給されます。
たまたま出社が被った社員同士はもちろん、事前にSlackなどで「コーシーいきませんか?」と誘うことで、普段一緒に仕事をしない人とも気軽にコミュニケーションが取れる機会となっています。
社員の経歴や特徴が一覧で見られる『プロフっちょ』
―一方で、「コーシーを使いたくても、誰に声をかけていいかわからない」ということもあるのではないでしょうか?
そこに関しては、社内に『プロフっちょ』という社員プロフィールシステムがあり、誰がどんな経験・スキルがあるのか一覧で見られるようになっています。
例えば「子育て」というキーワードで検索すると、子育て経験のある社員を見つけることができます。
「部門長クラスで子育てと仕事を両立している方に、どうやって両立しているのか話を聞いてみたい」といった時に、プロフっちょで検索してから、コーシーを使って話を聞きに行けるんです。
人事への相談窓口『なんでもボックス』
また、『WP PORTAL』という社内ポータルサイトがあるのですが、そこに『なんでもボックス』という相談窓口を設けています。
これは、私(人事)しか見られない情報になっているので、誰に相談したらいいかわからないことも安心して相談できる仕組みを設けています。
大事なことは、悩みを一人で抱え込ませないこと
―「困ったら、誰かに相談できる」をあらゆる場所に設けているのは、すごく良い仕組みですね。
やはり悩みがあると、一人で抱え込んでしまうケースが多いと思うんです。
さらに、「このまま続けるか、やめるか」という極端な0−100の考えに陥りやすい傾向があるなと感じています。
そこを「会社にはこういうニーズがあり、あなたにはこういうニーズがある。だからここなら着地点として双方がハッピーになれるよね」というように、一緒に模索しながら決めていけるといいのではないかなと考えています。
当社では「四方良し」という考え方を大事にしており、これは、業界、ユーザー、働く社員、そしてそれらを取り巻く社会の全てが幸せになることを目指していこうという考え方です。
働く自分たちも幸せであるために、仲間にも目を向けて、互いを思い合えるチームでありたいですね。
ただ、そもそも相談すること自体に躊躇してしまい、タイミングが遅れてしまうこともあるので、そこは課題に感じています。
そのため、社員の皆さんには「とにかく一度相談してほしい」「キャッチボールを大切にしてほしい」と伝えています。
真面目な社員が多いので「こんなこと相談して迷惑かも」「自分だけがこう感じるのは良くないのでは」と思いがちですが、一緒に解決策を探っていこうという姿勢を大切にしています。
管理職になることの不安を取り除くための仕掛け
―女性管理職ならではの悩みについては、どのようなものがありますか?
私自身も経験していることですが、マネージャーや管理職になると責任も大きくなります。
これは女性に限った話ではありませんが、例えばメンバーが体調不良で休んだ際のカバーなど、立場上求められる役割はたしかに増えていきます。
一方で、自分自身にも子供がいたり体調を崩したりする可能性も大いにあるわけです。
そんな時に「本当にチームを守りきれるのだろうか」という漠然とした不安は、管理職ならではの悩みとしてよく聞きます。
また最近、20代~40代の女性マネージャー数名にお話を伺ったのですが、「自分に管理職ができるのか」という不安は共通して持っていましたね。
ただ、当社では女性マネージャーが増えてきているので、ロールモデルが多数あって、一緒に頑張れる女性管理職がいることが背中を押してくれる要因になっているようです。
また、当社には「挑戦と安心」というカルチャーがあります。失敗を恐れず、むしろ失敗からも学びを得ようとする気持ち、そしてそれを後押しする安心できる環境をセットにするようにしています。そのおかげで、思い切ってチャレンジできたという声も多く聞かれます。
―管理職になる不安について相談を受けることも多いのでしょうか?
はい、私にも相談がありますし、おそらく直属の上司にはもっと多くの相談があるのではないかと思います。
―そういった方々については、どのようなサポートをされているのでしょうか?
意図的に「管理職の仕事をオープンにする」という取り組みをしています。これは『オープン会議』という仕組みになります。
通常、マネージャー、部門長、役員がどんな会話をしているのか、どんな業務をしているのかが見えにくく、それ故に「自分にはできない」と思いがちです。
でも実際になってみると「大変だけど、なんとかなる。」とポジティブに思えることが多く、知らないだけでマイナスな感情が生まれ、機会損失になっているなと感じました。
そこで、月に1回部門長会議を『オープン会議』として、取扱情報は限定的にしながら、マネージャーであれば希望者は誰でも参加できるようにしています。
部門長がどんな視点で話をしているのかを知ることで、「自分も一つ上の挑戦としてできるかも」「やってみたい」という気持ちの変化が生まれてくると考えています。
また、参加したマネージャーに意図的に「〇〇さんはどう思う?」と発言を促すこともしていて、実際に参加している感覚を持ってもらうことも意識しています。
また、昨年から始めたのですが、BTO(Beyo-nd Technical Officer)とBDO(Beyo-nd Design Officer)という制度もあります。
ウエディングパークに任期1年で経営チームにブレーンとして参画し、議論と意思決定をおこなっていく役職。想いを行動に移せるメンバーであれば、年次問わず抜擢される。
参考:https://note.com/weddingpark_note/n/n9c84277597bf
当社の役員チームにはエンジニアやデザイナーがいないのですが、経営チームにクリエイターも参画させたいという思いがありました。
そこで、任期制で若手の社員を抜擢し、正式な役員ではありませんが、ここでも取扱情報は気を付けながら経営チームの会議に参加してもらっています。
2023年10月に任命した初代のBTO・BDOは29歳と26歳の女性社員で、技術とデザインの観点から参加してもらい、2名とも参加時は一般メンバーでした。
―オープン会議やBTO・BDOのような取り組みを通して、次のキャリアステップへのイメージをつけることができる仕組みがあるとすごくいいですね。
産休・育休中でも会社とのつながりを保つための取り組み
―女性社員の産休・育休期間については、何かしらのフォローをされているのでしょうか?
例えば、これまで活躍していた方でも、産休・育休で仕事から離れることで、復帰に対して漠然とした不安を抱かれてしまうケースが多々あります。
「育児との両立はできるだろうか」「産休前と同じように会社に貢献できるだろうか」といった不安を抱える方が多いですね。
私自身も「自分が戻る必要があるのだろうか」「自分がいなくても会社は十分に回っているのではないか」といった不安を抱えていました。
ただ、そういった不安を軽減するための仕組みとして『コーヒーブレイク面談』という制度を設けています。
―コーヒーブレイク面談とはどのような制度なのでしょうか?
産休・育休中のメンバーと3ヶ月に1回、私が直接話をする機会を設けています。休業期間中も3回程度は接点を持つようにしているんです。
その中で「実はこんな変化がある」とか「戻りたいと思っているけれど、営業は難しいかもしれない」といった率直な気持ちを聞かせてもらいます。
そこから、どのような復帰の仕方が可能かを前向きに話し合い、最終的には経営層とも相談しながら復帰後のポジションを決定します。
また同時に、会社の現状や変化があったことなども伝えて、戻ってきたときの情報のギャップがないようにすることも意識しています。
このように、一緒に復帰しやすい環境をつくっていくことを心がけています。
―産休・育休中でも、定期的に会社の情報を得られるのはありがたいですね。
はい。私自身もこの制度を利用する側だったので、とても復帰しやすかったです。
会社とのつながりを保ち、近況を共有できる機会があることは、非常に重要だと感じています。
社員の挑戦を促すために、「安心感」をつくるバランスを忘れてはいけない
−女性管理職が増えることで、会社や組織にどのようなメリットがあるとお考えですか?
私自身、役員になって強く感じるのは、多様な人材がいることの重要性です。
例えば30代後半のマネージャーと20代のマネージャーでは、感じることや考え方が異なります。そういった様々な仲間の意見を会社づくりに反映させていくことが、結果としてサービスや採用にも良い影響を与えていくと考えています。
実際に採用の場面では、「女性で長く活躍している社員と話したい」という声も多くいただきます。
漠然とした不安を抱える学生の方々に対して、実際に活躍している社員の存在や、そういった人材を受け入れる会社のカルチャーを示せることは大きな強みになっています。
私たちが目指しているのは、社員一人ひとりが自ら考え、動き、実行していけるような能動的な組織です。
この会社で働くことで自分も幸せになれて、他の人も幸せにできる。そういった誇りを持てる会社であってほしい。社員の士気が高まれば、結果として会社も成長していくと考えています。
―ありがとうございます。最後に読者の方々へのメッセージをお願いします。
ウエディングパークのカルチャーの基盤には「挑戦」と「安心」という言葉が根付いています。
人は安心感がなければ挑戦に前向きになれません。会社の成長には社員の挑戦が不可欠ですが、その前提として社員の安心をつくることが重要だと考えています。
安心の量が適切かどうかは、特に経営層が定期的に確認する必要があります。社員は皆頑張ってくれるからこそ、安心が足りないと感じたら意図的にそういった機会をつくっていく。
この「挑戦と安心のバランス」を保ち続けることが社員が幸せであり、会社が成長しつづけるために大切だと考えています。