在宅勤務中の従業員の監視は、どこまで必要なのでしょうか。在宅勤務中の勤務状況などの監視をおこなう場合、注意すべきことがいくつかあります。監視をする際には、時間やコストがかかるため、一定のラインを設けておこないましょう。本記事では、在宅勤務中に監視をする目的やメリットや、状況把握ができるツールを紹介します。
目次
1. 在宅勤務中にどこまで監視をするべき?監視の目的について
「監視」という言葉自体がする側としてもされる側としてもあまりいい印象を与えないかもしれませんが、在宅勤務中の監視をおこなっている企業は少なくありません。在宅勤務中に監視をする必要性を、監視をする目的やメリットの観点から考えてみましょう。
1-1. 進捗の把握・共有のため
在宅勤務において問題点となっていることに、個々の業務の進捗状況の把握の難しさがあります。監視をおこなう際に、業務の進捗を報告することを義務付けておけば、同じオフィスにいなくても、それぞれの進捗状況の把握が可能です。
従業員の監視を効率的におこなう監視ツールのなかには、現在の業務状況が一目で確認できるものもあります。管理する側としては本人に直接聞かなくても現状が把握できますし、一緒に働いているチームのメンバー同士で進捗状況が共有できるので、社内にいる時と同じようにスムーズな作業ができるでしょう。
進捗を把握・共有していれば、業務でのミスにも早く気付けますから、大きなミスが起こる前に対処できます。
1-2. 長時間労働の抑制のため
自宅で仕事をする在宅勤務は、どうしてもオンオフの切り替えが難しく、「気づいたら長時間仕事をしてしまっていた」ということも珍しくありません。また在宅勤務で働くことに慣れておらず、業務効率が下がった分を取り戻すために、長時間働いて遅れを取り戻そうとする従業員もいるはずです。
従業員の監視をおこなっておけば、長時間労働をしている社員に気付くことができ、業務時間が長い社員がいれば業務量の見直しをおこなうなどの対処ができます。
1-3. 生産性の向上のため
在宅勤務は、オフィスと違って上司や同僚の目がないため、どうしても集中力が切れやすく、生産性が下がってしまうこともあります。さぼっているつもりはなくても、自宅にいる以上オフィスと同じような緊張感を保つことは難しいでしょう。
監視がおこなわれると、オフィスで働くのと同じとはいえないものの、「見られている」という緊張感が生まれます。集中力も変わってくる可能性があるため、結果的に生産性の向上につながるでしょう。
2. 在宅勤務中に監視をする際に気をつけたい5つのポイント
上手く取り入れることができれば、在宅勤務中の監視は企業側にとっても社員にとってもメリットがあります。しかし、監視をするのであれば、いくつか気をつけておきたいこともありますので、把握しておきましょう。
2-1. 在宅勤務の過度な監視はエンゲージメント低下につながる恐れがある
在宅勤務中の従業員を監視する方法はいくつかありますが、一分一秒従業員の行動を監視したり、リモート用のカメラを使用したりして、従業員を監視するのは行き過ぎです。サボっている従業員がいないかチェックしたいという方もいるかもしれませんが、行き過ぎた監視は社員のストレスとなって生産性やエンゲージメントが下がってしまうこともありますし、パワハラになってしまうこともあります。
在宅勤務である以上、常に従業員の状況を把握することはできないと考えておかないと、監視が大きなトラブルを引き起こしてしまうこともあると理解しておきましょう。
2-2. 監視の目的と内容を明示する
監視される側の従業員のなかには、監視されているということ自体がストレスになる人も少なくないはずです。なんの目的で監視をするのかをはっきりさせておかないと、「常に見張られているようで気分が良くない」と感じてしまう人は多いでしょう。
評価のため、長時間労働抑制のため、生産性向上のためなど、さまざまな理由があるはずですから、どうして監視をおこなうのかを明確にして従業員に周知しましょう。また、どのようなことを監視しているかをはっきりさせておくと、「もしかしてこれも監視されている?」という不信感を取り除くことができます。
2-3. 監視で把握できないこともあると理解する
監視の方法はさまざまな方法がありますが、監視ツールを導入している企業も多いです。どのような方法をとったとしても、在宅勤務である以上、オフィスと同じようには把握しきれないこともあります。
監視ツールは画面上で社員のログやデータが確認できますが、ログやデータがきちんとしているからといってサボっていないとは限りません。また逆にログやデータ上ではサボっているように見えても、きちんと仕事をしている可能性もあります。監視で全てのことは把握できません。監視のデータだけで従業員を評価しないようにしましょう。
2-4. 監視のために時間とコストをかけ過ぎない
在宅勤務で従業員が仕事をサボり、会社としての生産性が落ちてしまっては困るという気持ちは十分理解できます。しかし監視を徹底するために、時間とコストをかけ過ぎてしまって、本来の業務に支障が出てしまったら意味がありません。
また時間とコストをかけ過ぎているということは、それだけ監視を徹底しているということですから、従業員がストレスに感じてモチベーションが下がる可能性もあります。
2-5. 従業員へのプライバシー保護の配慮も必要
在宅勤務中に勤務実態など何らかの監視をする場合、従業員のプライバシー保護も考慮しましょう。
監視をする際は従業員にも理解してもらったうえで、おこないましょう。
過度な監視はプライバシーの侵害につながる可能性もあります。
勤務実態の監視をしたからといってただちに違法になるわけではありませんが、監視をする場合は従業員のプライバシーにも配慮しましょう。
3. 在宅勤務中の監視をする方法や活用できるツールを紹介
在宅勤務中の監視をおこなう方法や活用したいツールを紹介します。監視をおこなう場合は目的にあった方法を選びましょう。
3-1. 勤怠管理システム
長時間労働の抑制として効果的なのが勤怠管理システムです。在宅勤務ではオフィスのようにタイムカードは使えませんが、勤怠管理システムを利用すれば、勤務開始時間と終業時間がわかります。誰が今稼働しているかも一目でわかるシステムです。
3-2. アクセス監視システム
業務に関係のないウェブサイトへのアクセスを監視できるシステムです。サボりを抑制できるだけでなく、セキュリティの弱いサイトにアクセスしていないかも監視できます。ログを残すことも、制限をかけることもできるツールです。
3-3. ソフトウェアの起動・稼働状況確認ツール
業務に使用するオフィスソフトや、メールソフト、チャットツールなどを起動させているか確認できるツールです。ただ全てのツールが管理対象ではないので、このツールだけで作業中かどうか判断するのは難しいでしょう。
3-4. 画面キャプチャログ
従業員のパソコン画面をランダムでキャプチャして、ログに残すツールです。実際に業務をしているかがキャプチャで確認できます。ただ、過度に使いすぎると従業員のストレスになるので注意して導入しましょう。
3-5. メールやチャットでの在席確認
監視のためのツールは導入せず、現在利用しているチャットツールや、メールを利用して在籍確認する方法です。チャットツールのなかには、在籍しているかどうかを示せるものもあります。
ただ、これらの方法はあくまで在籍していることをチャットの状態やメールの返信で示すだけなので、コストはかからないものの監視の目的は果たせないこともあります。
4. 在宅勤務中の監視は目的を明確にしておこなおう
誰でも「監視されている」といわれると、あまり良い気はしないのではないでしょうか。しかし在宅勤務中の監視をすることは、長時間労働の抑制や生産性向上など、メリットも十分あります。
監視をおこなう際は、目的と監視の内容をはっきりと従業員に伝え、お互いにとってメリットがあることをきちんと伝えるようにしましょう。
【監修者】涌井好文(社会保険労務士)
涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。