スキルマップは作成しただけでは意味がありません。目的を明確にし、効率よく運用・管理することで、スキルマップは組織の成長に役立ちます。この記事では、スキルマップが意味ないと言われる理由を説明したうえで、スキルマップのメリットや作成・運用方法を解説します。また、スキルマップを効率よく管理するコツも紹介します。
目次
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1. スキルマップは意味ない?
スキルマップは意味ないと言われることもよくあります。しかし、スキルマップにはきちんとした目的やメリットがあり、一概に意味ないとは言い切れません。ここでは、まずスキルマップとは何か、その目的を踏まえてわかりやすく解説します。
1-1. スキルマップとは?
スキルマップとは、力量表とよばれることもあり、従業員の能力やスキルを数値化して一覧にしたツールです。スキルマップを活用すれば、従業員一人ひとりがどの程度の能力・スキルを持っているのか可視化し、人材配置や人材育成などに役立てることができます。
1-2. スキルマップの目的
スキルマップの大きな目的は、従業員の持っているスキルを可視化し、人材育成や人材配置に役立て、組織の成長につなげることです。そのため、スキルマップの活用方法は、組織によって違っても何ら問題ありません。スキルマップを作成することは手段であり、目的ではありません。「他の企業が導入しているから」「スキルマップを作成することがミッションだから」という理由でスキルマップを作成していると、意味ないものとなってしまう可能性があるので気を付けましょう。
2. スキルマップが意味ないと言われる理由
スキルマップを作成することで、組織の成長につなげている企業は数多くあります。そのため、スキルマップが意味ないと言い切ることは間違っているでしょう。ここでは、なぜスキルマップが意味ないと言われるのか、その理由について詳しく紹介します。
2-1. スキルマップの作成に時間がかかる
スキルマップを作成するには、自社の業務遂行に必要となるスキルの洗い出しや、スキルマップのフォーマットの作成、従業員一人ひとりのスキルの把握など、さまざまな工程が必要になります。スキルマップを作成するまでに膨大な時間を要し、導入・運用に大きなコストがかかることから意味ないと言われることがあります。
2-2. スキルマップを作成しただけになっている
スキルマップの作成は手段であり、目的ではありません。スキルマップを作成したり、従業員のスキルを把握できたりしたことに満足してしまい、その後の施策に役立てることが疎かになり、スキルマップが意味ないものとなってしまう可能性があります。スキルマップを通して何を実現したいか明確にし、意識することが大切です。
2-3. 時代や社会のニーズにあっていない
近年ではグローバル化や少子高齢化、先端技術の進歩などの影響で、ビジネス市場は目まぐるしく変化しています。それに応じて、必要なスキルも移り変わっています。一度スキルマップを作成しても、アップデートしなければ、時代や社会のニーズにあわず、意味ないものとなってしまう可能性があります。このように、スキルマップを効果的に活用するには、定期的な見直しが必要になります。
2-4. スキルに執着してしまう
スキルマップを作成することで、スキル向上やスキル評価など、スキルに執着してしまい、本質を見失ってしまう恐れがあります。組織の成長に、従業員の能力向上は不可欠です。しかし、スキルアップにだけに固執してしまうと、協調性や責任感など、能力以外の業務遂行に必要の要素が軽視され、経営目標の達成から遠ざかってしまう可能性があります。このように、スキルマップの構築により、目に見えるスキルに依存してしまうことから意味ないと言われることもあります。
2-5. 社員の不安や不満につながっている
スキルマップにより、従業員の能力やスキルが可視化され、その情報をさまざまな人事施策に役立てることができます。しかし、自分のスキル情報が開示されることに不満を感じる人もいるかもしれません。また、自分と他者のスキルを比較し、「自分はダメな人間だ」と自己肯定感が下がってしまう恐れもあります。
このように、スキルマップの作成がかえって従業員のパフォーマンスを下げる原因になる可能性もあり、意味ないと言われることがあります。このような事態を招かないためにも、スキルマップを作成・運用する際は、従業員に目的やメリットを周知し、理解を得ることが大切です。
3. スキルマップを作成するメリット
スキルマップは意味ないと言われることがよくありますが、メリットも多くあります。ここでは、スキルマップを作成するメリットについて詳しく紹介します。
3-1. 必要な人材を明確にできる
スキルマップを作成する過程で、どのような人材が必要か明確になります。また、スキルマップを基に従業員一人ひとりのスキルを可視化した結果、どのような能力を持った人材が不足しているかも明らかになります。このように、スキルマップを導入することで、自社に必要な人材、不足している人材が明確になり、今後の採用活動や人材育成に役立てることが可能です。
3-2. 適切な評価ができる
上司や人事担当者などの主観で評価してしまうと、公平な評価ができず、従業員の不満につながり、モチベーションが低下する原因になります。スキルマップでは、社員の能力を数値で表すことで、データに基づいて評価できるため、客観的な人事評価を実現することが可能です。公平な人事評価は、従業員満足度を高め、仕事への意欲を維持・向上させることにつながります。
3-3. 適材適所の人材配置を実現できる
スキルマップを用いれば、従業員がどのようなスキルを持っているのか、組織においてどのような人材が不足しているのか客観的に把握することができます。たとえば、業務遂行のためのスキルが足りていない部署に、そのスキルを持った従業員を別の部署から配置することで、適材適所の人材配置を実現することが可能です。これにより、従業員の持つ価値を最大限に発揮し、組織の生産性を向上させることができます。
3-4. 人材育成を効率化できる
スキルマップを活用すれば、組織においてどのような人材が不足しているか数値を基に客観的に把握することができます。そのため、今後どのような施策が必要か、具体化しやすくなります。また、スキルマップを基に、従業員それぞれのスキルレベルを把握し、一人ひとりにあった研修・教育を用意できれば、効率よく人材育成をおこなうことが可能です。
3-5. 従業員エンゲージメントが向上する
スキルマップを活用することで、従業員の適性にあった人材配置が可能になります。また、スキルマップは、公平な人事評価にもつながり、従業員のモチベーションを高めます。このように、スキルマップを利用すれば、数値データを基に、従業員一人ひとりにあった適切な人事施策を実施することができるようになります。これにより、帰属意識が高まり、従業員エンゲージメントも向上します。結果として、離職率の低下や定着率の上昇につなげることが可能です。
関連記事:従業員エンゲージメントとは?向上施策や調査方法とその手順をわかりやすく解説!
4. スキルマップを作成・運用する手順
スキルマップの作成方法や運用方法を正しく理解しておくことで、無駄を減らし、効率よくスキルマップを導入・運用することができます。ここでは、スキルマップの作成から運用までの手順について詳しく紹介します。
4-1. 明確な目的を設定する
スキルマップの作成は、明確な目的を設定することから始めます。目的が曖昧なままスキルマップを作成すると、ただ作っただけになり、活用されず、意味ないものとなってしまいます。なぜスキルマップを作成しなければならないのか明確にすることで、必要なスキルマップの内容も具体化されます。
4-2. 業務ごとに必要なスキルを洗い出す
スキルマップの作成目的が明確になったら、それを達成することを念頭に置き、業務ごとに必要なスキルを洗い出しましょう。人事担当者だけで作成しようとすると、現場で求められるスキルと乖離してしまう可能性があります。そのため、現場の従業員からの意見も取り入れてスキルの洗い出しをおこないましょう。
4-3. 評価項目を定める
スキルの洗い出しが完了したら、それらを基に評価項目を決めましょう。スキル項目を分類したり、階層化したりすることで、スキルの関連性がわかりやすくなり、理解しやすいスキルマップを作成することができます。ただし、あまりに項目を多くしたり、階層を増やしたりし過ぎると、理解しづらいだけでなく、管理も煩雑になってしまいます。目的を達成するという観点から、洗い出したスキルを取捨選択し、項目を設定することが推奨されます。
4-4. 評価基準を設定する
評価項目の設定ができたら、その評価基準も定めましょう。評価基準を明確に定めることで、客観的に能力を評価できるようになり、公平な評価につなげることができます。ただし、評価基準も細かくし過ぎると運用が難しくなります。たとえば、次のように5段階で評価する仕組みを採用すると、従業員のレベルをシンプルに把握でき、運用しやすいかもしれません。
レベル |
基準 |
1 |
経験したことがない |
2 |
経験したばかり |
3 |
指導者がいれば成し遂げられる |
4 |
1人で成し遂げられる |
5 |
人に教えられる |
項目や目的により複雑な評価が必要な場合は、評価段階を一部変更したり、「〇」「△」「×」といった記号を利用した評価基準を設けたりすることも検討しましょう。また、簡単に評価できるものであれば、「できる」か「できない」の2択にしても問題ありません。
関連記事:スキルマップの5段階評価とは?導入するメリットや注意点を解説
4-5. 試験導入する
実際にスキルマップを運用する前に、きちんと機能するかチェックするため、一部の部署や社員に対して運用するなど、試験導入をしましょう。試験導入したら、「不足しているスキル項目はあるか」「評価基準は十分か」などを、対象者にヒアリングし、改善しましょう。試験導入したうえで、実際に運用を開始することで、従業員の混乱を防ぎ、スムーズに導入することができます。
4-6. 運用しつつ定期的に見直す
スキルマップは、運用してからも定期的に見直す必要があります。業務内容や社会情勢などの変化により、求められる能力が変化していくためです。ただし、頻繁に見直しをして、スキルマップを何度も改善すると、従業員はどのようなスキルが求められているのか理解できない可能性があります。スキルマップの見直し時期もあらかじめ定めておき、適切なタイミングでスキルマップをアップデートするようにしましょう。
5. スキルマップを効率よく管理・運用する方法
スキルマップを意味ないものとしないためにも、効果的に使用する方法を理解しておくことが大切です。ここでは、スキルマップを効率よく管理・運用する方法について詳しく紹介します。
5-1. テンプレートを活用する
スキルマップをゼロから作成しようとすると、時間や手間がかかります。そのため、テンプレートを活用しましょう。テンプレートを利用して、自社のニーズに応じてカスタマイズすれば、効率よくスキルマップを作成することができます。厚生労働省サイトでは、スキルマップのテンプレートが多数用意されているので、ぜひこの機会にチェックしてみてください。
5-2. 社員にスキルマップを意識させる
スキルマップは、ただ作成しただけでは意味がありません。また、会社側がいくら人材育成や人材配置に取り組んでも、従業員に意欲がなければ能力は向上せず、組織の成長につながりません。そのため、スキルマップの目的やメリットを従業員にきちんと周知し、意識してもらうことが大切です。また、スキルマップで能力が可視化された後、主体的にスキルアップできるよう、研修・教育制度を充実させておくことも重要です。
5-3. スキル管理システムを導入する
スキル管理システムとは、従業員の技術や資格などのスキル情報を効率よく管理するためのシステムを指します。スキル管理システムには「スキルマップ(力量管理表)」の機能も搭載されています。また、情報をリアルタイムで一元管理し、効率よく情報共有することが可能です。ExcelやGoogleスプレッドシートでのスキル管理に課題を感じているのであれば、スキル管理システムの導入も検討してみましょう。
関連記事:スキル管理とは?導入するメリットや管理方法を詳しく解説
6. スキルマップの作成が効果的な業界
スキルマップには向き・不向きがあります。たとえば、定量的に評価するのが難しい職種の場合、スキルマップが上手く運用できない可能性があります。ここでは、スキルマップの作成が効果的な業界について紹介します。
6-1. 建設業
建設業は、スペシャリストが求められることや、従業員によって身に付けているスキルが大きく異なることから、スキルマップの作成が効果的と考えられます。スキルマップを利用して、自社の従業員がどのようなスキルを習得しているのか、今後の事業戦略の観点からどのようなスキルが足りていないのかを把握することで、効率よく人材育成を実施し、組織を成長させることができます。
6-2. 製造業
製造業は、エンジニアのように専門性の要求される仕事や、生産管理や設備保全など属人化しやすい仕事が多いことから、スキルマップの採用が効果的な業界の一つです。スキルマップを通して業務遂行にどのようなスキルが必要になるか明確にすることで、人の入れ替わりがあっても、柔軟に対応することができるようになります。
6-3. IT業
IT業界も、職種・業務の専門性が求められることから、スキルマップの作成が効果的です。スキルマップにより、どのように専門性を磨いてキャリアを描いていくか目指すべき方向性を示すことで、従業員はスキルアップに取り組みやすくなります。ただし、IT業界は変化が激しいため、スキルマップの見直しをきちんと実施し、時代や社会の変化に応じてアップデートさせましょう。
7. スキルマップの目的を明確にして上手に活用しよう!
スキルマップは意味ないと言われることもよくあります。その原因の一つとして、スキルマップを作成する目的が明確化されておらず、ただ作成しただけになっていることが挙げられます。スキルマップを作成する目的を明確にし、それを達成できるよう運用することが大切です。また、時代や社会の変化に応じて、スキルマップのアップデートをおこなうことも重要です。
企業として人事データを適切に管理することはとても重要ですが、
そもそもなぜ人事情報の管理が必要であり、その先に大きな活用価値があることについても、正しく理解できていますか?人事情報は、適切な人材配置、従業員のモチベーションの管理、公平な評価制度など、企業として健全な経営をおこなう上で欠かせない情報です。
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