ミレニアル女性向けキャリアスクール「SHElikes」を主要事業とするSHE株式会社は、2021年8月より、お金について学べる「SHEmoney」を新たにスタートさせました。体験レッスン後の顧客カウンセリングを務めるSHEmoneyプランナーや、金融教育プログラムにて専門的アドバイスをおこなうティーチングアシスタントといった職種の募集には、全国から200名を超えるエントリーが集まったそうです。
新規事業立ち上げ時にもかかわらず、募集したのは本業をもつ「副業」メンバー。事業開始後も30名超の副業メンバーが、SHEmoneyの事業運営を主導しています。
今回は、SHEmoneyブランド責任者を務める松尾真里さんに、新規事業立ち上げ時での副業人材の採用や、採用後の組織づくりについてお話を伺いました。松尾さんが考える「金銭・経験・感情」という3つの報酬の概念や、面接マッチング精度を上げるためにおこなった事前準備について詳しく教えていただきました。
- 外さない採用要件設計のための仮説検証をおこなう方法
- SNSで拡散土台をつくることで「低コスト・高スピード・大量採用」を実現する
- 面接見極めのために緻密な仮説立てと評価項目の設計をおこなうコツ
松尾 真里|SHE株式会社 SHEmoneyブランド責任者
九州大学農学部卒。リクルートホールディングス新卒入社。IT企画部門にて、webディレクション、アライアンス連携、コンテンツ企画開発などを担当した後、2019年メディア&ソリューション事業の新卒領域にて、商品企画、サービス開発を経て、事業戦略立案と事業企画推進に従事。結婚を機に資産形成を開始した際、正しいお金の知識を得ることのハードルの高さやライフイベントやキャリアイベントを踏まえた人生設計・資金設計の難しさに課題を感じ、女性のためのマネースクールを立ち上げるべく、2020年SHE株式会社へ入社し、「SHEmoney」ブランド責任者を務める。
目次
1.シリコンバレーのIT企業に憧れた学生時代からリクルートに入社するまで
ー本日はよろしくお願いします。まずは松尾さんのこれまでのご経歴をお聞かせください。
松尾さん:私は九州大学の農学部で遺伝子工学を専攻していて、稲から光合成の遺伝子を特定するという、少しマニアックな研究をしていました。研究に没頭し、日本作物学会で賞をいただいたこともあるのですが、当時は賞をもらってもどこか腑に落ちなかったんです。
「世界の食糧危機を救いたい」という大義名分を掲げていたものの、お腹を空かせた人に研究結果を見せても人々を救えるわけではありません。もう少し現実的なインパクトを持ちたいと心のどこかで感じ始め、「いつか自分の手で事業をつくりたい」という思いを抱くようになりました。
振り返ってみると、SHEで新規事業を立ち上げるきっかけとして、大学時代の留学経験や新規事業立ち上げの経験、リクルートでの就業などいくつかの原体験があったと思います。
学生時代、私はシリコンバレーの近くに留学し、毎週のようにGoogleを始めとしたスタートアップ企業を訪問していました。当時は純粋にIT技術やプロダクトづくりに対する強い憧れを抱き、その後就職活動ではIT業界を志すことになります。
また、就職活動のかたわら、某企業の新規事業立ち上げのプロジェクトに関わったのですが、このときは思うようなビジネスが作れずに終わりました。「学生の自分が満足するもの」は作れても、「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三方良しにはならなかったんですよね。
この経験があったからこそ、新卒では多くの起業家を輩出しているリクルートホールディングスのIT人材枠として入社をし、事業作りを本格的に学ぼうと思ったのです。
2.「お金の不安」が障壁になりチャンスを1度見送った経験
松尾さん:実は、過去に「お金の不安」が障壁になり、1度スタートアップへの入社を諦めたことがあります。
オファーをいただいた会社はとても魅力的で素敵な事業を展開されていたのですが、当時は、リクルートからスタートアップへ移ることで、収入が一時的に減ってしまうことに躊躇してしまったのです。
私自身、そこまでお金にこだわりがあるタイプではないと思っていたものの、いざ目の前に選択肢を並べられると、どうしても収入減に対するモヤモヤが払しょくしきれませんでした。収入を減らしてまでスタートアップに飛び込んでもいいのか?私にとって、お金とは何なのか。これは現在責任者を務めている「SHEmoney」の構想にもつながっていきます。
そのオファーを断った後、改めて私は出産や子育てなど含めたさまざまなパターンのキャッシュフロー表を作り、ライフプランを考えました。将来を見据えてお金と向き合った結果、日本の社会保障制度や適度な収入があれば、全然食べていけないことはないんだな、と腹落ちしたのを覚えています。
こうして、自分なりの方法でお金と向き合ったからこそ改めてSHEというスタートアップに飛び込むことができ、新規事業立ち上げにチャレンジすることになりました。
3.キャリアの次のビッグアジェンダは「マネー」領域だと確信をした
松尾さん:SHE株式会社には2020年12月1日に入社しました。私の入社した頃は、SHEが既存のキャリア支援事業の「SHElikes」から一歩進化し、「人生のあらゆる領域の伴走者になる」とステータスを掲げたタイミングでした。
この話を聞いたときに、「キャリアの次は絶対にマネー領域がビッグアジェンダになる」と確信し、SHEmoneyの立ち上げを決意しました。
SHEに入社する以前のコロナ真っただ中だった頃、世間からは「貯金が手つかずでどうしたらいいんだろう」「このまま外食やレジャーに使わず、預金口座に眠らせておいていいのかな」といった声が多くありました。
コロナは多くの人が、ご自身の「仕事」「働き方」だけでなく「お金」について見つめ直すきっかけになったはずです。この世間の動きもSHEmoneyを形作る後押しになりましたね。
4.人事初心者・たった2名でスタートした30名規模の副業人材の採用活動
ー新規事業メンバーの採用について、どのように進めたか教えてください。
松尾さん:先に結果をお伝えすると、初回のスタッフ募集ではSNSのみで200名を超える方より応募が集まり、トータルで30名強の副業メンバーの採用に成功しています。
事業立ち上げ当初は、私1名とコアスタッフ(週3日以上勤務)の2名体制でした。2人とも人事や採用の経験はなく、募集活動はまったくの初心者です。
SHEmoneyは動画で展開する教育事業のため、採用と並行して教材制作や何百枚もの資料作成、金融教材のミスがないか確認する監修の業務、プロダクト開発やLPなどのUIUX設計まで、ありとあらゆることをマルチに進めなければならず、この時期は本当に忙しすぎてあまり記憶がありません(笑)。
役割分担をする余裕もなく、とにかく二人三脚で上流から下流まで、まるでブルドーザーのような勢いで事業準備を進めながら、採用活動に短期集中で取りかかりました。
具体的に動き出したのは、2021年の4月末頃です。SHEmoneyで行う体験レッスン後の個別カウンセリングを担当するプランナー職や、入会後の勉強を後押しする専門職で30名強の人材募集が必要になりました。
1~2週間で必要なポジションの人数、人材要件や募集メッセージなどを急いで洗い出し、「SNS+Googleフォーム」の手法で採用活動を開始しました。
[当時のツイート]
働き方も生き方も、自分の意思で自由に選択できるからこそ、自助努力が求められるこの時代に、ひとりひとりにとっての「自分らしい豊かさ」の実現を目指し、真っ向からお金と向き合い、しなやかに渡っていける最高の学びの提供を、共に伴走してくれるマネープランナーを熱く、大募集します✨ pic.twitter.com/h7HxwO2hgq
— まつまり|SHEmoneyブランド責任者 (@_matsumari_) April 28, 2021
松尾さん:新規事業のため人事担当者をアサインする余裕もコストもなく、とにかく手戻りがないように募集要項や選考基準を綿密に練り、採用を進めました。なお、選考の流れは書類選考(Googleフォームの内容にて選考)、グループ選考会の実施、内定、研修実施という一般的な流れです。
ー新規事業の大量募集かつ採用実務が初めてにもかかわらず、副業人材を狙って募集したのはなぜですか?
松尾さん:理由は大きく2つあります。1つは新規事業ならではのスピード感、もう1つは社会的意義があると考えたからです。
新規事業においてスピードは命です。またtoCサービスである以上、お客様と対峙するスタッフの採用は納期までにきっちり完了する必要がありました。
採用納期とスピード感を考えれば、正社員雇用より副業で人材を募るほうが適切だと考えましたね。また、今だから言えることですが、新規事業がうまくいかなかったときに大量の雇用責任を負いきれないと考えました。
2つ目は、副業人材に感情報酬や経験報酬の機会提供をするという社会的意義があると確信したからです。自論ではありますが、私は仕事では次の3つの報酬が得られると考えています。
- 金銭報酬
- 経験報酬
- 感情報酬
この3つの報酬がバランス良く整っていれば、多くの人は楽しく働けるのではないでしょうか。とはいえ、本業で3つすべてを満足に得ることは意外と難しいものです。そこで出てくるのが「副業」という選択肢です。
私はたまたまIT業界にいたため、副業をしやすい環境にいて、どれだけ本業で大変なことがあっても、まったく別のフィールドである副業で感情や経験報酬を得られることができたんです。副業で自身が認められれば、心身ともに健全に働ける実感があったんですね。
一方、金融業界の方はIT業界に比べると、副業機会がやや少ない印象があります。本業でどんなに金銭報酬は得られても、その他2つが欠けやすい環境に置かれていては、もったいないと思います。
これらのことから、金融業界で働く人々にも副業機会を提供し、SHEmoneyを通して3つの報酬提供を行うことは社会的意義につながると思ったのです。金融業界に風穴を開ける気持ちで、意思を込めて副業採用を実施したわけです。
ー金融業界で働く人に対し、具体的にどういった金銭・経験・感情報酬を提供しようと考えたのでしょうか?
松尾さん:大前提として、副業で本業を超える金銭報酬を得続けることは難しいと考えます。
そのためSHEmoneyの副業で「たくさん稼げますよ」とアピールするよりも、感情報酬や経験報酬を明確に打ち出し、還元していくことが重要と考えました。
具体的には、皆さんが持っている専門的な金融知識を、中立的な立場で社会に活かせるフィールドを提供して、感情・経験報酬を得てもらおうと考えました。
例えば金融業界で働く方は、資産を多くお持ちの高齢者相手に営業する機会が多いと聞きます。またノルマ過多になる傾向があり、本当は相手のためにならない商品(言葉選ばず言えば、企業利益につながりやすい商品)を売らなくてはならない場面に直面することもあるそうです。
この課題を解決するために「お金の正しい知識をお客様に伝え相手の人生の役に立ちたい」と真剣に考える金融業経験者にSHEmoneyのフィールドを提供すること。中立な立場で「お金のカウンセリング」を行うプランナー職を担っていただこうと考えました。
2021年12月現在、40名近い金融業経験者がSHEmoneyで活躍しています。皆さんからは「スタッフの皆さんと一緒に頑張ることができる環境が素晴らしい」や「お金に関する問題や知識は生涯ずっとついてくるので、一人で悩まずに仲間同士で鼓舞しあえるSHEmoneyは本当に素敵」や「SHEmoneyは『「お金」の知識をつけて一歩踏み出したい!』という方の背中を押すことができるサービスだと改めて実感している」といった感想をいただいています。
副業の形で、感情報酬、経験報酬を皆さんに還元できていることを実感し、とても嬉しく思っています。
5.採用成功した決め手は「モニター期間」の活用と採用基準の明確化
ー副業人材の募集にあたり打ち出した採用方針について教えてください。
松尾さん:SHEmoney事業だけでなく、SHE全体に共通するものとして「しなやかに熱狂する人」が求める人物像となります。もう少しブレイクダウンすると「強く柔らかく、周りを巻き込みながらコトに向かえる人」です。
SHEのビジョンは「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、 熱狂して生きる世の中を作る」であり、私たちはこのビジョンに対して本気でコミットしていて、そこに雇用契約形態による境目は一切ありません。そのため、SHEmoneyの副業人材にも同様に「しなやかに熱狂できる人材か」を求めました。
次に重要視していたのは「個人のwillと事業のwillに重なりがあるか」という指標でした。有難いことにSHElikesブランドに関心を寄せてくださる方は、非常にたくさんいらっしゃいます。
しかし今回は「SHEが好きな人」ではなく、「心から金融教育に興味がある人」や、「今まで自分なりにチャレンジした経験があり、その経験を伸ばしていく際にSHEmoneyの箱がたまたまフィットした」という人のほうがマッチしていると考えました。
結果的に、私たちが掲げるSHEmoneyのビジョン(will)と、副業人材のやりたいこと(will)が重なって、仲間になっていただくケースが多かったと思います。
ー副業人材のスキル面の採用基準はどのように決めましたか?
松尾さん:副業人材のスキル面の基準は、2月末~3月におこなったモニター期間を活用して仮説検証をし決めていきました。
モニター期間では、募集職種の必要スキルやプロフェッショナル性を洗い出し、何パターンか仮説を立てて「どういったスキルセットの人材がいれば、新規事業がきちんと回っていくか」を何度も試行錯誤しています。
具体的には、「FP資格を保有している人」「FP資格の保有に加え何かしらの金融業界で就業経験がある人」「FP資格に加えさらに金融業界数十年のプロフェッショナルな人」というように、パターンを複数洗い出します。
そのうえで、モニター期間にどのタイプの人材がいれば成果が出るか検証を重ね、慎重かつスピーディーに議論をし、副業人材に求めるスキル要件が固まっていきました。
このモニター期間の仮説検証があったからこそ、求めるべく人物像が明確になり、あとは「募集を出すだけ」の状態まで自信をもって地固めすることができたと考えています。
ーモニター期間を活用して定めた採用基準を面接でどのように見極めましたか?
松尾さん:まず、マインド面を見極めるために、応募時の質問項目を慎重に練りました。ここでのマインド面とは、すなわち応募者の「will」と、私たちの「will」が重なっているか判断するということです。
新規事業立ち上げ時において、マインド面(ビジョン共感)は必要不可欠な要素です。日に日に変化が激しいスタートアップの新規事業の局面で、「変化することが楽しい」と思えるような人材でなければ、お互いに不幸せになってしまいますよね。
今回はとくに、「自分の意思で、金融知識を世の中に還元したい」と本気で思っているかどうか、といったマインド面を重要視し、質問項目に落とし込んでいきました。
スキル面の見極めとしては、選考時の評価軸を5つ設けて点数化し、客観的な判断できるよう準備したのがポイントです。職種によって評価項目は変えており、例えば以下のような指標が挙げられます。
「端的にわかりやすく説明しているかどうか」…お客様を不安にさせないために必要なスキル
「傾聴力はあるか」…カウンセリングを実施する職種などに必要なスキル
「表情が明るく会話は心地よいか」…toCのサービスにおいて必要なスキル
この他にも、カルチャーフィットをはかる質問項目とあわせて5段階の点数評価を準備しています。
事前準備をここまで固めれば後は「やるのみ」です。
その後の選考見極めがスムーズで、ミスマッチが起きなかったのは、モニター期間の検証実施や選考前の入念な人物要件の洗い出し、言語化、評価基準の準備を手抜きせずに実施した成果だと考えています。
前提
会社員でも業務委託でもお客様からしたら「SHEの人」、かつ立ち上げフェーズにおいては育成などの余裕がないため、最初から自発的にwillを持ち自走できる人材のみを採用することを決めていた
工夫①
組織立ち上げ(採用)においては
- スキル面の人材要件(書類選考で活用)
- スタンス面の人材要件(選考時に評価軸を5つ設け、点数化)
を明確に設定。
工夫②
各職種がmoneyにとっていかに重要なポジションなのかを伝えられる選考会資料を作成。
採用段階から士気を上げることにつとめていた。
▼TA選考採用資料より一部抜粋
工夫③
各ポジションごとにほしい人物像が炙り出せる質問項目を設定。
(ex)コーチの場合
抽象的な概念に対して自分なりの意見を持っているかをあぶり出すために「あなたにとってのお金・豊かさとは何ですか?」など。
6.副業メンバーで自律型組織を作るための徹底的な準備
ー30名超の副業人材へのオンボーディング(研修)はどのように実施しましたか?
松尾さん:私たちがオンボーディング(研修)として実施したのは以下の内容です。
職種ごとにオンボーディング方法は若干異なるのですが、だいたい動画インプット+集合研修数回+サービス理解チェックテスト+1人あたりロープレ数回です。
(ex)コーチの場合
- 研修会の参加(1回目:3時間 2回目2時間 3回目1時間 合計6時間)
- コーチング動画視聴
- SHEmoney理解度テスト受講
- ロープレ合格後、本デビュー
松尾さん:トータルでいくと、デビューまでに一人あたり5-6時間程度研修(オンボーディング)に時間を使っています。
研修会で使用する資料(スライド数十ページ分)、研修用動画の撮影、サービス理解テストの作成、30名強のメンバー1人ひとりとのロープレ実施とフィードバック、請求フローやカウンセリング中のQ&Aの作成など、大量の研修資料を数名のコアメンバーですべて作成しました。募集後のエントリー対応やサービスリリースまでの準備に追われながらも、ひたすら納期を切って研修資料を作成していましたね。
ドキュメントづくりは大変でしたが、受け入れたメンバーの皆さんから、
「これってどういう意味ですか」
「シフトはどうすればいいですか」
「請求はどうやりますか」
といった質問を何度もいただき何度も同じ回答をするよりは、あらかじめ頻出しそうな質問回答をすべてドキュメント化し一元管理したほうが、トータルでの工数は圧倒的に良いと考えました。
結果、参加いただいた副業メンバーの混乱も起きず、スムーズに組織づくりが進んでいったと感じています。
ー業務開始をデビューと位置付けたことに、どういった意図があるのでしょうか?
松尾さん:SHEでは契約形態に関係なく、「SHEにいるときはSHEの代表」であってほしいと考えています。「現場入り=デビュー」と位置づけることで、副業・本業かかわらず、SHEの一員で代表であると意識作りをすることが狙いです。
また先ほどお伝えしたとおり、副業は金銭報酬はさることながら、感情報酬と経験報酬があってこそ成り立つものだと考えています。そのため、いわゆるスキルの切り売りを期待するというより、SHEの一員として皆さんがプロダクトの代表者と感じていただくことに、意味があると考えました。
その代表者となるまでに必要な研修は、もちろん惜しみなくやるというスタンスです。特にSHEは対面での印象が事業全体のブランドに直結することもあり、きちんとインプット研修とアウトプット研修、そして各種チェックテストをクリアした方だけをデビューとさせていただいています。
ー副業メンバーによる組織立ち上げを振り返っていかがでしたか。
松尾さん:新規事業の立ち上げ時に潤沢なリソースがないからこそ、事前にリスクを洗い出し準備をしたため、大きなトラブルなく運営できている印象です。
正直、組織マネジメントのために手をかけなくても、副業のメンバー1人ひとりの自律・自走のおかげで、非常にスムーズな組織立ち上げが実現できています。
業務開始後、離脱者はほぼいませんし、SHEmoneyのスタッフの皆さんは、誰かに言われたからやるという方は1人もいません。自分の心の内側からやりたい、と思っている方だけを面接のときにちゃんと見極められていたのが成功要因だと考えます。
自律・自走の例としては、以下の通りです。
- 自分たちで自発的に声掛けをしあい、ロープレや勉強会の実施
- サービスの質を上げるべく、ナレッジシェアのスレッドが立ち上がりメンバー自ら資料作成や共有をおこなう
- 日報には、その日できたこと・できなかったことを記載し、解決できなければ自発的に質問し合う、アドバイスをし合う文化
- SHEmoneyのハッシュタグにて、積極的なSNS投稿 など
ロープレやナレシェアなど、私たちから強制したものは1つもありません。また、SNSの投稿もとくに指示を出していないにもかかわらず、本当に皆さん自らの意思で発信をしています。強いて言えば、受講生の皆さんにはSNSのハッシュタグを用意して「よかったら投稿してくださいね」と促している程度です。
1人ひとりが「副業のスポット業務だし、手伝っているだけだから」という感覚ではなく、まさに「自分の人生の手綱は自分で握れ」のビジョン共感をしている証拠だと思います。
言葉選ばずすれば「手のかからない」「マネジメント不要」の組織。これが実現したのは、やはりモニター期間の仮説検証にて人物要件を正確に洗い出しした成果ですし、評価項目・基準を定めてぶれなく見極め、ミスマッチなく「will」をもった人材を採用できたからだと考えています。
7.金融業界で働くロールモデルであってほしい。副業人材にこれから期待すること
ー改めて採用活動を振り返ったとき、成功要因は何でしたか?
松尾さん:私たちが行きたい未来を、明確に提示したのが成功要因だと思っています。
正直、モニター期間のときは私自身が、ブランド責任者にもかかわらず、「この事業の行き先」を具体的に明示できていませんでした。
そのため、いくら人材を口説きにいってもなかなか響きませんでしたし「金融領域は甘くないよ」と指摘を受けることも多々ありました。
ブランド責任者が何をやりたいかわかっていないのに、人が集まるわけがないと反省をしました。
ー紆余曲折を経て打ち出した、SHEmoneyのビジョンを教えてください。
松尾さん:自分たちが、自分らしく生きるための金融教育をすること、これがSHEmoneyのビジョンです。
マネースクールは、どうしても怪しいと思われがちです。ですが、私たちは不労所得を得たいわけでも、一獲千金を狙いたいわけでもありません。
「お金を稼ぐ」ことが正解ではなく、1人ひとりにあった価値観を引き出し、自分が生きたい方向にしなやかに向かっていけるよう、手段としてのマネーリテラシーを身に付けること。これが、SHEmoneyで打ち出した事業の方向性です。
もう1点、成功要因としては「SHE全体でSNSの積み上げた資産があったこと」「SNSでモニター生を集めた成功体験があったこと」も大きいと考えています。
SHEの特徴はなんと言っても、「コミュニティの熱狂」です。Twitterでは月間で7,000件以上の口コミが投稿されていたり、Instagramのフォロワーは13.7万人以上と、SNSを中心に盛り上がる設計ができていたことも、たった数週間で200人ものエントリーをいただけたのだと思います。
2月に実施したモニター期間のモニター募集も、実はSNSだけで300名を超えるエントリーが入っています。この成功体験があったからこそ「SNSでエントリーは集まる」と確信があり、母集団形成よりも見極めのための評価項目・基準設定や人物要件の洗い出しに時間を費やせたのだと思います。
ー今後、副業メンバーに期待していることを教えてください。
松尾さん:金融業界でも新しい働き方が実現できている、ロールモデルとして存在してほしいと願います。
SHEmoneyのメンバーには、ロールモデルとして「金融業界でも新しい働き方が実現できるんだよ」と胸を張って歩んでいってほしいです。
レガシーな固定概念をポップに、かろやかに拭い去り、金融領域に風穴をあけていきたいです。そして、皆さんが持っている専門知識を思う存分世の中に還元していってほしい、どんどん人を巻き込んで、可能性を膨らませていってほしいと願っています。
ー今後はどういった人材を採用して、どんな組織作りをしていきたいですか?
松尾さん:今までとスタンスは大きく変わりません。心から金融教育に携わりたい人や、自分の専門知識をセールスではなく、世のため人のために提供したいと思っている人と組織を作っていきたいですね、その人達が濃密度で存在している限り、SHEmoneyは最強だと思います。
また、まだ先の話にはなりますが、いつか中高生(ジュニア層)向けの出張授業といった取り組みにもチャレンジしたいと考えています。
副業でかかわるメンバーからも、いつかは子ども向けの金融領域に携わりたいという声を聞いています。私自身は、事業責任者として年内はPMFに注力しつつ、最適なマーケットで事業を続けていくために、高速でPDCAを回して走り続けたいと思います。