「オンラインは不安…」の声を払拭!主体性の向上につながったサッポロビールのオンライン新卒研修

「学びの共有」や「係活動」というユニークな研修プログラムで、2020年度の新卒社員研修をオンラインにて実施したサッポロビール社。

オンラインという慣れない環境での研修だと、「コミュニケーション不足」や「会社への帰属意識が薄くなる」といった懸念があげられます。

しかし、同社では研修を通して、新卒社員の主体性の向上につなげることができ、新たなコミュニケーションの可能性に気づくことができたとのこと。

それでは、どのような研修プログラムを実施していたのでしょうか。

今回は、44名の新入社員オンライン研修を成功させた、サッポロビール人事部のお二方に、研修成功の秘訣をインタビューしました。

【人物紹介】 渋谷 尚史 | サッポロビール株式会社 人事部 キャリア形式支援グループリーダー

1992年入社(29年目)。主に業務用営業として、東京都、静岡県、北海道のエリアを担当後、2017年9月~人事部キャリア形成支援グループへ異動。サッポロビールの人財育成全般を主担当に、グループ各事業会社と連動している。

【人物紹介】 坪井 沙紀 | サッポロビール株式会社 人事部 キャリア形式支援グループ主任 

2015年入社。(6年目)。入社~5年目までは業務用営業として、都内ホテルや外食チェーン企業を担当。スピーディーな対応かつ心に響く提案の糸口を見つけるべくがむしゃらに営業。2020年4月~人事部キャリア形成支援グループへ異動し、若手人財育成メインに担当。サッポロビールの「人財」を更に強くするため日々試行錯誤している。

すべてを白紙に戻した状況からはじまったオンライン研修

ー今回は、「オンライン研修成功の裏側」についてお伺いできればと思います。まずは、オンライン研修を実施するに至った背景から教えてください。


坪井さん
私は3月31日に人事に着任したばかりだったのですが、今年度の新卒研修については前任者が組み立ててくれており、当初は、例年通り3週間の集合型研修を実施する予定でした。

しかし、コロナウイルスの影響により3月末の日本の状況を見たときに、44名を一同に集めて研修を進めるという決断ができませんでした。

そこで、すべてのプログラムをオンラインへ移行するという意思決定をしました。

坪井さん本来は4月にグループ全体の入社式を実施した後、サッポロビール単独の入社式をして集合研修を開始するスケジュールでしたが、それらをすべて白紙にして、4月1日だけ新卒を集合させて、短縮型の入社式を実施しました。

その後、すぐにパソコンを配布、Microsoft TeamsやOutlook、Wi-Fiなど「インフラを整えたら解散!」という感じで、そのままオンライン研修期間に突入しました。

他社様だと「4月は自宅待機をさせている」という話も聞きましたが、新入社員はかなりモチベーションが高い状態で入社してきているので、「入社していきなり1か月も自宅待機させることは厳しいだろう」と思ったことも、オンライン研修を後押しさせました。


ー在宅でのオンライン研修をおこなうにあたり、人事・新入社員の双方からどのような不安の声がありましたか。


坪井さん
人事としては、もともと準備していたプログラムがすべて白紙になってしまったことに対して不安の声がありました。

私も、営業から人事部に着任してすぐの対応が今回のイレギュラーだったので、前例のない中で「オンラインでできること・できないこと」を分けて、研修を組み立て直すことは大変でした。

新入社員から見ると、「自分たちの代だけ学ぶことが少なくなり、レベルが下がってしまうのでは?」という点に不安を感じていたようです。

特に弊社は「成長をしたい」という思いが強い方が比較的多いですし、人が好き・人とコミュニケーションをとりたいと考えている方が多い社風です。

「オンライン研修でコミュニケーションが希薄化し、帰属意識が生まれず、孤独なままメンタルが持つのだろうか?」と、漠然とした不安を抱えている方は、自分を含め多かったのではと思っています。


渋谷さん
本来であれば、卒業式をきちんと終えて、4月1日に本社で集合して、色々な先輩社員と交流することで、学生と社会人の切り替えをしていたのです。

今回はその切り替えが難しいだろうという懸念があり、人事部としても新入社員のモチベーションやメンタルを非常に気にかけていました。

研修で意識したことは、とにかくアウトプットを増やすこと

ーそのような不安の声もある中で、どのような研修プログラムにすることを意識したのでしょうか?


坪井さん
コミュニケーションの中で、とにかくアウトプットが多くできるようなプログラムを設計しました。

外部の研修会社さんにも協力いただきながら実施していたのですが、「なるべくグループワークを中心にしてください」とオーダーをしまして、新入社員のアウトプットの機会を作るように気をつけていました。


ーグループワークはどのようなことをされたのでしょうか?


坪井さん
学びの共有」というグループワークを全3回、実施しました。

5名ほどのチームに分けて、1週間で学んだことや分からなかったことをチーム内で聞き合いコミュニケーションをとってもらう内容です。

オンラインですと、どうしても「話すのが1人でその他全員が聞き役」という形になってしまいがちです。

そこで、誰かが発言したら必ず全員がリアクションをすること、フィードバックを多めにするようルールを設けて、双方でコミュニケーションがとれるように指導しました。

坪井さんその他にも、「おはようございます!お疲れ様です!といった挨拶は全員で言おう」と決めてみたり、話を聞いているときのうなずく動作も大きめにやるようにしたり、進めながらコミュニケーションが円滑になるように、いくつかルールを作っていきました。


ーオンラインだと長時間の研修をおこなうのが難しいと思うのですが、研修期間や研修時間はどのようなスケジュールだったのでしょうか?


坪井さん
最初は、9時から17時半まで、かなり長い時間で社外講義を実施していました。

ですが、おっしゃるとおりオンラインだとどうしても集中力が切れやすいので、チームでの学びの共有の時間は少し短めに設定し、その後の時間は個人の振り返りタイムとして活用してもらいました。


渋谷さん
実は、途中でだらけてしまった時期がありました。オンライン研修だと集中力が保ちにくいですからね。

そこで、研修会社の方々に協力していただいて、少し厳しめに「みんなだらけているよ、もっと頑張ろうよ!」と喝を入れてもらいました。

そこから、新入社員の目が変わったので、締めるところでしっかりと締めることができたのは良かったと思っています。


坪井さん
結果として、オンライン研修は約2か月間、5月末まで実施していました。

緊急事態宣言が出てから「GWまでは何とか乗り切ろう」と思い、その後また自粛が延長してしまったため、その都度「次はどうしよう?」と、研修を進めながら対策を練っていきました。

いつまでに終わるのか、先が見えなかった点は、心労が絶えませんでしたね。

4月21日までは社内講義を中心に進めました。会社の概要や部署の紹介や、ビジネスマナー研修といった座学です。

22日からゴールデンウィーク前までは、外部研修会社さんに再度講義を依頼したり、課題図書を与えたり、人事部で用意したテーマに沿ってディスカッションをしたりして進めました。

ここで自粛期間が終われば良かったのですが、緊急事態宣言がゴールデンウィーク後も延長という知らせを受け、ゴールデンウィーク後のプログラムも計画をしていきました。

5月最終週に入ってからは、配属先ごとに研修を実施して、グループ会社と合同研修、そして社長との座談会を企画しました。

この社長との座談会は、今年度初めて取り入れたものでして、社長に新入社員からの質問を答えてもらうというものです。

世間の動きを見ながら急いで研修プログラムを作って実施して、慌ただしく2か月が過ぎていきましたね。

主体性の発揮につながったプログラム「学びの共有」と「係活動」

ー研修の中で、特徴的なプログラムはありますか?


坪井さん
他者の意見を聞いた上で、自分も考えて、さらに発信をする姿勢を身につけてほしいと考えて、先ほど申し上げた「学びの共有」と「係活動」というプログラムを取り入れました。

入社直後に実施していた社内講義の研修は、朝から晩までインプット中心になります。

新入社員が1日のうちに「おはようございます!」と「お疲れ様でした」しか話す機会がなかったので、意図的にアウトプットを増やさないといけないと考え、取り入れたものになります。

多くの新入社員が積極的な姿を見せた「学びの共有」

渋谷さん「学びの共有」のグループワークを進めるとき、新入社員自ら「ファシリテーターをやってみたい」と申し出てくれました。

一方的に話を聞くだけのコミュニケーションではなく、自発的に意見を言う姿勢、アウトプットの力を養う目的で取り入れたプログラムだったので、結果的に実りのあるものになったと感じています。

最初は新卒だけで回せるか心配だったのですが、あとでアンケートをとってみたところ「もっとファシリテーターをやりたかった!もっと学びの共有をやりたかった」という前向きな感想がありました。

どうやら、この「学びの共有」が社内会議を回す練習に繋がりました。

言われてみれば、いきなり先輩社員の前でファシリテーターをするよりも、新卒同士の場で練習をできる方がいいですよね。

自発的に動く力を磨く「係活動」

坪井さん新入社員を5つのチームに分けてさまざまなタスクを持たせる「係活動」を実施しました。

内定式のときに、広報係・学習係・風紀係・採用係・企画係とチーム分けをして、そこから配属まで、「各チームのテーマ・目標・何に取り組むか・施策の実施と効果検証」まで、すべてを任せる取り組みです。

この「係活動」からは、自分たちで考えて、チームを巻き込み、仕事を自分たちで作っていくことを体感してもらうことを目的としていました。

たとえば、広報係は新入社員の自己紹介ページを作っていたのですが、自分たちで考えてこだわった質問項目で新入社員インタビューを実施し、記事をつくります。

学習係は、新入社員から質問事項を集めて、まとめてから人事部に投げて回答をもらうというサイクルを

企画係は、オンライン飲み会のような交流の場を企画してくれたり、みんなのモチベーション上げるためのオリジナル動画を制作したり、各係のカラーを出して活動をしてもらいました。

中でも風紀係はユニークでしたね。オンライン研修が始まる5分前に集まって、新入社員向けにその日の研修トピックスなどを説明してくれたり、通信環境が切れていて研修参加が遅れているメンバーがいれば「〇〇さんが今、通信つながっていないようです!」と人事部に連絡をしてくれたり、「みんなに前向きになってほしい」という想いの元、様々な思考を巡らし活動を実施してくれました。

係の目的・ゴールを自分たちで決めて、同期と一緒に何かをつくりあげることと、とにかく“やりきること”を大切にしてもらっていました。

通常の研修では、一方的に“やらされている感”が強いと思いますが、この研修では“主体性”がキーワードだったと思っています。

オンラインという慣れない状況もあり、係ごとに自分たちでも何ができるのかを考え、能動的に動いてくれ、一緒に研修をつくりあげていく感覚がありました。

見守っている私たちも、とてもわくわくして、非常に楽しませていただきましたね。


ー自分たちの手で研修を盛り上げていく動きにつながって良いですね!それ以外にオンライン研修を通して良かったことはありましたか?


坪井さん
本来は営業系の職種しか受けない研修を、別の職種の新入社員も一緒に受けられたことは良かったと思います。

いつもは配属先ごとに研修も分かれて実施しますが、オンライン研修だったからこそ、部署の垣根を超えて全員で研修を受けられたおかげで「あの子の配属先ではこんな仕事をするんだ」と、相互理解の一助になったと思います。

どの部署にいても、、サッポロビールを通して社会に提供する価値は同じですから、それぞれの立場を理解することで自分の役目を見つめられる点は良かったのではないでしょうか。


渋谷さん
その他にも、先輩社員が在宅でオンライン研修を頑張っている新卒のために、積極的にサポートしてくれたこと、普段なかなか会えない地方部署の先輩社員と新入社員が交流をできたことも良かったと思います。

オンラインでの座談会を実施しようと先輩社員に声をかけたところ、全員が協力してくれました。協力的に即答してくれました。

新入社員からも、年齢の近い先輩と話ができたことは仕事面や生活面の不安も解消となり、先輩社員との座談会は非常に人気でした。


ー逆にオンライン研修における改善点はありますか。


坪井さん
会社の雰囲気、社風が伝わらないことですね。

サッポロビールの“人の熱さ・あたたかさ”を魅力に感じて入社してきたにもかかわらず、その熱さに直接触れることができなかった点は、オンライン研修で感じた難しさです。

同期と同じ空間でコミュニケーションを取れずに、そのまま配属先に行くのは不安だったと思います。

オンラインでやれる限りのことは実施しましたが、やはり対面で実施する意味を大きく感じる部分もあったなと感じております。

遠隔地の先輩とも気軽に話せる!サッポロビールならではのオンライン飲み会

ーオンライン飲み会も実施され、非常に盛り上がったとのことですが、その詳細について教えてください。


坪井さん
グループ会社との合同飲み会、職種ごと、係ごとに分けながら、全4回オンライン飲み会を実施しました。

当社はビール会社なので、新入社員のみなさんには「サッポロ生ビール黒ラベル」を1ケースずつプレゼントをしました!

大人数だと会話しづらいので、少人数チームに分けておこないました。そのなかでも、2年目の先輩社員との飲み会が一番人気で盛り上がっていましたね。

坪井さんはじめは人事部主導で企画して、「1時間も場が持つのかな…?」と心配もしていましたが、アイスブレイクをする間もなく勝手に盛り上がって楽しんでくれていました。

弊社は話をするのが好きな人が比較的多いんですよね(笑)。

お互いに自慢のおつまみやペットを紹介し合ったり、祖父母の方や小さいお子さんなど家族が登場したりと本当にリラックスした状態で和気あいあいとやっていました。


渋谷さん
とくに、オンライン飲み会で遠隔地の先輩と話せたことは良かったようです。

サッポロビールでは全国配属があるので、配属先に行く前に「こっちはこんな雰囲気だよ!」と教えてもらえて安心したのだと思います。

あとは私たちはビール会社ですから、皆さん単純に飲んでコミュニケーションを取りたかったようです(笑)。楽しみながら、良い交流の場になって良かったと思います。

「マイナスイメージを払拭できた」オンラインだからこそできる研修もある

ー今回のオンライン研修を通じての感想や、今後に活かしたいことはありますか。


渋谷さん
まずは、この研修期間、頑張ってくれた新入社員の皆さんに感謝を伝えたいです。約2か月間、本当によく元気で頑張ってくれました。

最初、「研修はすべてオンラインで」と決定した時は、不安しかありませんでした。

しかし、いざやってみたら、当初予定していた3週間の研修では気づけなかったであろう新入社員の変化を感じることができました。

坪井さんオンライン研修は、決してネガティブなことばかりではなかったので、今後はオンラインとオフラインをミックスさせていきたいと思っています。

イレギュラーな研修期間の中で、今までにない新たな研修コンテンツが生まれたことを前向きに受け止め、次年度に活かしていきたいと思います。

オンラインだからこそ出来ることがたくさんあったので、この気付きを新入社員以外の研修や育成につなげていきたいです。

あと今回は、すべてをオンラインで進めたため、新入社員のPCスキルが例年よりもアップしたと感じています。研修の後半では、さまざまなツールを使いこなしていて、大きな成長を感じました。

また、在宅ワーク全般を通して家族と過ごす時間が増えたことから、家族や仕事のことを見つめ直す機会にもなったようです。

親もとを早く離れて、「自分で早く自立したい!」という責任感が芽生えた社員もいたのが印象的でした。


ーありがとうございます。最後に、他社の人事担当者の方向けにメッセージをいただけますか。


渋谷さん
はい、いちばん伝えたいことは「乾杯はサッポロビールでお願いします!」ということです(笑)。


坪井さん
そうですね(笑)。ぜひサッポロビールでオンライン飲み会を楽しんでもらいたいですね。

弊社は44名だったので、今回このプログラムでうまく行きましたが、これが数百名規模になるともっと別の工夫が必要になると思います。

オンライン研修にまだ正解はないと思いますので、今後もっとオンラインとオフラインのメリット・デメリットをみなさんで研究して磨き上げていきたいですね。

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