社長名で「介護と仕事の両立支援」を宣言。介護離職者ゼロに導いた白川プロの人事施策とは? |HR NOTE

社長名で「介護と仕事の両立支援」を宣言。介護離職者ゼロに導いた白川プロの人事施策とは? |HR NOTE

社長名で「介護と仕事の両立支援」を宣言。介護離職者ゼロに導いた白川プロの人事施策とは?

2025年問題が間近に迫った今、働きながら親の介護をする人は年々増加しています。それに伴い、日本全体として介護離職者も増加傾向にあり、その数は年間10万人にのぼります。

そのため、各企業において社員の介護離職に備える必要がありますが、目の前の業務に追われてしまい、離職防止のための人事施策や制度づくりまで手が回らない企業が少なくありません。

そこで、介護中の社員が安心して働き続ける環境づくりにいち早く取り組み、実績を挙げている企業を「LIFULL介護」編集長の小菅秀樹さんがインタビュー。介護離職を減らすための先進的な取り組み事例や、人事担当者の想いについて伺っていきます。

今回は、テレビのニュース番組などの映像編集や音響効果を手がける株式会社白川プロの代表取締役社長である白川亜弥さんに、介護離職者をゼロに導いた人事施策や実際の取り組み内容について伺いました。

白川 亜弥さん|株式会社白川プロ 代表取締役社長

1989年、都留文科大学文学部卒業。同年、株式会社白川プロに入社。テレビ局の現場でニュースや番組の映像編集業務を20年間務める。2005年、創業者である白川二三男と養子縁組。2014年、白川二三男逝去に伴い取締役に就任。現場経験を活かして、「中から見ても外から見ても良い会社」を目指し、当時古い業界体質が残る社内の制度改革や整備に力を注ぐ。この取り組みが評価され、2016年に東京都ライフワークバランス認定企業、2018年に家庭と仕事の両立支援推進企業、2019年に健康優良法人の認定を受ける。2020年2月より代表取締役社長に就任。

小菅 秀樹さん|株式会社LIFULL senior LIFULL介護(ライフルかいご) 編集長

横浜市生まれ。老人ホーム・介護施設紹介業で主任相談員として1500件以上の施設入居相談に対応。入居相談コンタクトセンターの立ち上げ、マネジャーを経て、現在は日本最大級の老人ホーム・介護施設検索サイト「LIFULL介護(ライフルかいご)」の編集長。「メディアの力で高齢期の常識を変える」をモットーに、介護系コンテンツの企画・制作、寄稿、セミナー登壇などを行う。趣味はバイクツーリング、筋トレ、ウィスキー。

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1. プロフェッショナル人材の介護離職は大きな損失

今年で60周年を迎え、テレビの草創期から放送界の発展を支えてきた白川プロさん。NHKのニュースやドキュメンタリー番組など、著名な番組の制作にも多数携われていらっしゃいますが、改めて御社の事業内容について教えていただけますか?

はい。弊社は1962年に創業以来、テレビのニュース番組をはじめ、ドキュメンタリー、バラエティ番組の映像編集や音響効果に関する業務を行っています。

映像編集では、カメラマンが現場で撮影してきた映像素材を放送用に編集。音響効果については、出来上がった映像を見ながらそれぞれのシーンに合った最適な音楽を選び出し、番組を仕上げていくのが主な業務になります。

いずれも社員の個々のセンスや技術力が求められる、プロフェッショナルな業務と言えますね。

現在、従業員数は309名(内、男性が約200名、女性が約100名)。平均年齢は38歳と、比較的若い世代が多く在籍しています。

若い世代の方が多く活躍されているとのことですが、介護と仕事の両立支援に取り組もうと思ったきっかけとは何でしょうか。

8年前に創業者である父が他界し、取締役に就任した際に、制作業界にありがちな長時間労働などの古い体質を変えていこうと社内改革に取り組み始めました。まずは就業規則から変えていきましたが、それが一段落ついた頃に監査役の弁護士の先生から、ある雑誌の記事を見せてもらったんです。

その記事には、「今後、介護離職者が激増する時代が来る」と書かれていまして。当時、従業員の平均年齢は34~35歳で、「介護問題はまだまだ先のことだ」と思っていましたが、記事を読んで危機感を覚えたんですね。

実際、社員の年齢を階層別に見てみると、親の介護に直面している50~60代の世代も増えてきており、「他人事ではない」と実感しました。

弊社は製造業ではないため、「人」が何よりの財産です。介護など様々な事情を理由にプロフェッショナルな人材が離職してしまうのは、会社にとって大きな損失になります。早速、役員会議に持ちかけ、「介護と仕事の両立支援」に力を入れ始めたのが最初のきっかけです。

両立支援に取り組む前は、介護離職する社員の方はあまりいらっしゃらなかったのですか? 

一人、二人はおりましたが、当時はまだ親の介護問題については、「個人の家庭の事情」という認識があって、会社がサポートする事案というより、「自身で解決するべき問題」だと捉えていたように思います。

社員が「親の介護があるので退職します」と言ってきても、「残念だけど、おうちの問題だから仕方ないよね」と、見送ってしまったように思います。

2.アンケート調査でわかった社員の介護に抱える不安

介護の問題を「会社全体の問題」として捉えた視点が素晴らしいなと感じましたが、具体的にどのようなことから取り組み始めましたか

まずは、社員の介護の実態やどんなニーズがあるのかを把握するために、全社員に向けてアンケート調査を実施しました。

2016年当時の結果になりますが、「介護経験がある」と答えた社員が全体の14%、「今後介護をする可能性が高い」と答えたのが56%、さらには「介護をすることに不安がある」と回答した社員が実に94%に上り、かなり差し迫った問題であることがわかりました

その結果を受け、社長名で「介護と仕事の両立支援」を宣言。会社として両立支援に本腰を入れていくことを伝えました。

社長名で発信したのは、これまで自分ひとりで抱えていた介護の問題について、「会社に相談できるんだ」と、社員に安心感を持ってもらいたかったからです。

もし、介護中であることを職場に言えず、休みがちになっていた場合、本人もますます肩身が狭くなりますし、周りからも「〇〇さん、なんだか最近よく休んでいるよね」とマイナスに受け取られかねません。

職場の上司や同僚に相談しやすい環境をつくることで、「〇〇さんは今介護中で大変だからカバーしよう」と、社内に“助け合い”の空気や“お互いさま”の意識を醸成したいと考えました。

なるほど。やはりトップの方の影響力は大きいですから、社長名で宣言することによって、社内の意識改革がグンと進みそうですね。では、実際にどのような制度をつくられましたか?

3.豊富な休暇制度や柔軟な勤務体制で両立を支援

まず介護休暇についてですが、弊社では法定で決まっている休暇日数の倍の日数を設定しました(対象家族が1人の場合、年間5日までのところ10日、2人であれば20日付与)。休暇中の給与についても、基本賃金の8割を支給しています。

また、有給休暇は通常、2年で失効してしまいますが、弊社では「積み立て休暇制度」を設け、未消化分を積み立てて利用できるようにしています(最大40日まで積み立て可能)。

有休が失効せずに繰り越せることで、介護や出産育児、治療のための通院などに充てることができます。

弊社の場合、シフト勤務が中心ですので、個々の状況に合わせて勤務時間を変えやすいことも、仕事と介護を両立する上でメリットと言えるかもしれません。

たとえば、午前中に親の通院の付き添いや施設への送り出しをしなければいけないなど、「朝だけ時間が欲しい」という人には午後から出勤する勤務形態に変えたり、それができる職場に一時的に移ったりもできます。状況が変われば、また元の職場に復帰することも可能です。

4.いざという時のために「介護相談窓口」を設置

介護中は不測の事態も起きやすいですから、休暇日数が豊富にあったり、勤務時間を柔軟に変えられたりすると社員の方も安心ですね。御社では、「介護相談窓口」も設置されているとお聞きしました。

そうなんです。社内の制度に精通している総務部(現在は人事部)の社員に、「介護相談窓口」の担当をお願いしました。たとえば、介護休業・休暇の取り方や職場の異動、シフト変更の希望など、社員からの様々な相談に対応してもらっています。

その社員はこれまで社会保険手続きの業務を行っていましたが、新たに相談員の仕事も担当してもらうにあたり、介護に関する知識を習得してもらいました

個々の状況によっては外部の相談窓口につなぐこともありますが、こうして社内に相談先があることで社員の安心感も増したようです。

他には40歳の誕生日を迎えた社員に向けて、『仕事と介護の両立 事前の心構え』という冊子を配布しています。介護休業・休暇などの制度をはじめ、実際に介護が必要になった場合の地域の相談先についても解説しました。

 

40歳になると介護保険の徴収が始まりますし、その年代になるとそろそろ親の年齢や健康が気になり出す頃なので、「転ばぬ先の杖」という意味合いで情報提供を行っています。

5.両立支援は優秀な人材の確保につながる

冊子などで事前に情報に触れておくことで、いざ介護に直面した時も慌てずに済みそうですね。これらの取り組みを実施したことによって、会社にどのような変化がありましたか。

目に見えてガラッと変わったわけではありませんが、この6、7年間取り組み続けていく中で、職場に介護のことを相談しやすい空気が生まれ、少しずつ介護休暇や短時間勤務制度などを利用する人が増えました。そして、両立支援に取り組み始めてからは、介護を理由に離職する社員はゼロになりました。

また、介護のみならず、子育て関連の制度も充実させて、若い世代が安心して働き続けられる仕組みづくりにも注力しています。

映像業界というと、ハードワークな印象がありますが、御社のように福利厚生や社内制度が整っている会社は、あまり無いと思いました。

そうですね。「映像業界でここまで両立支援に力を入れている会社は珍しいです」と、いろんな方から言われるようになりました。

面接時に応募者から「映像制作の仕事をしたいけれど、ハードなイメージがあるのであきらめかけていた。でも、白川プロさんのワークライフバランスへの取り組みを知って、自分にもできるかもしれないと勇気が湧いた」と伝えてくれた方もいるなど、採用にも良い影響が出始めています。

「人が財産」の弊社にとって重要なのは、採用の段階で優秀な人材を獲得することと、育てたプロフェッショナル人材に長く働いてもらうことです。ワークライフバランスへの取り組みは、「選ばれる企業」になるために欠かせない経営戦略の一つだと捉えています。

6.何をするかより、「実行する!」という覚悟が大事

介護離職防止に向けて、会社の総務人事が最初にすべきことは何でしょうか

まず、アンケートなどで現場の声や要望を拾うことかなと思います。人それぞれ状況も必要な支援も異なりますから、社員が既存の制度についてどう思っているのか、実際にどんなことが求められているのか、アンケート調査で“見える化”させることが重要です。その上で必要な制度や支援を整えていくといいのではないかと思います。

ただ、いくら制度を整えても、会社として「この課題に真剣に取り組む」という姿勢を見せていかないと、なかなか浸透していきません

何をするかよりも、会社として「これを実行する!」という覚悟を見せることが、何より大事だと感じますね。

介護や出産育児の制度を充実させていくと、その対象とならない独身の若手社員から、「自分に業務のしわ寄せが来るのでは」と不満が出てくる恐れもあります。

でも、将来的に自分も制度を利用する立場になる可能性もありますし、やはり「お互いさま」の意識を持ってもらうことが大切かなと。一方で、不公平感が生まれないよう、一人ひとりの社員に支援が行き届く制度づくりも必要だと考えています。

最後に、今後の展望やこれから御社が取り組みたい人事施策についてお聞かせください。

 

今、まさに取り組んでいることなのですが、「治療と仕事の両立支援制度」を近々確立させたいと考えています。

社員の中には病気を抱え、継続的な治療が必要な人もいます。通院の際に有休だけでは対応しきれない場合がありますので、短時間勤務制度や短時間の正社員契約など柔軟な働き方ができるよう、制度を整えているところです。

「自分はどういう働き方をしたいか?」「どういう人生を送りたいのか?」などといった「仕事や人生に望むこと」は社員1人ひとりで異なります。仕事で自己実現したい人には羽ばたける舞台を用意し、安定的に働きながらプライベートを充実させたい人にはそれが叶えられる環境をつくっていきたいですね。

いずれにしても、様々なライフイベントが足枷となって、離職せざるを得ない状況に陥ることは避けなくてはなりません。社員が安心して働き続けるためにも、会社としてより一層バックアップ体制を整え、個々が抱える“不安の芽”を摘んでいきたいと思っています。

ありがとうございました。前回に引き続き、介護離職の防止に取り組む企業を取材させていただきました。

2000年に誕生した介護保険制度。その目的の一つには「社会全体で高齢者介護を支える」というものがあります。「介護をプライベートな問題にさせない」という白川社長の強い想いによって、介護と仕事の両立支援の実現に至りました。

介護離職を防ぐうえで、社内に気軽に相談できる窓口があることは理想的。公的機関は平日の夕方で閉まる所が多く、相談さえもハードルになるからです。

介護離職防止にまず必要なのは、介護について正しい知識をもつこと。窓口では介護保険制度やサービスについて、介護休業の効果的な取得方法などもアドバイスもしているようなので、頼れる身近な存在といえますね。

映像制作の現場はハードワーク。それゆえ福利厚生の充実やワークライフバランスの取り組みが進みにくいイメージがありました。しかし、経営トップの覚悟と工夫次第で実現できるという好事例でしたね。まずは社員の介護状況の調査から始め、ニーズに基づいた制度設計を進めていただきたいと思います。次回もお楽しみに。

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