労働人口の減少が続く中で「採用にお金を使ってもなかなか採用できない」という企業が多くなっていることから、最近は人材育成に注目が集まるようになりました。
社員に研修をおこなうことで、従業員エンゲージメントの向上や早期戦力化、早期離職の防止、および企業の生産性向上が期待できます。
この社員研修は外部に委託する企業も多いですが、費用が掛かってしまうことが負担になっている企業も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では、社員研修を実施する際に活用できる助成金制度についてご紹介します。
また、助成金導入までのフローや、助成金の活用ができる研修会社もまとめていますので、検討の際の参考にしてください。
1. 社員の教育・育成に使える助成金制度
日本にはさまざまな助成金制度が設定・運営されていますが、その中で社員のキャリア開発やスキルアップを図るための助成金が存在しています。
本記事では、これら社員の教育や育成に活用できる助成金制度として、「人材開発支援助成金」と「キャリアアップ助成金」をご紹介します。
1-1. 人材開発支援助成金
労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を促進するため、雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合や神座開発制度を導入し、労働者に対して適用した際に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度。
人材開発支援助成金は、正社員に対する職業能力開発支援の実施が助成金の対象となり、新入社員研修で助成金を活用したい場合に、最適な助成金制度です。
人材開発支援助成金には、4つのコースが用意されています。
- 特定訓練コース:生産性向上の効果が高い10時間以上の訓練を実施する場合
- 一般訓練コース:特定以外の20時間以上の訓練を実施する場合
- キャリア形成支援制度導入コース:セルフ・キャリアドック制度、教育訓練休暇制度などを導入するする場合
- 職業能力検定制度導入コース:技能検定合格報奨金制度、社内検定制度を導入するする場合
正社員に対して実際の業務に関連した教育・研修を受けさせることで、その費用の一部が助成されるということになります。
基本は座学での研修になりますが、一部はOJTも認められています。
研修をすべて自社でおこなうことは理論上可能ですが、助成金の対象になる教育訓練として認められるためには、研修の計画について厚生労働大臣認定を受ける必要があります。
研修を外部の研修会社に委託すれば、これらのサポートを受けることができます。
1-2. キャリアアップ助成金
「キャリアアップ助成金」は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度。
キャリアアップ助成金は、職場の非正規雇用者(契約社員、パート、アルバイト、派遣社員、など)の処遇改善によって受給することができます。
キャリアアップ助成金には、7つのコースが用意されています。
- 正社員化コース:派遣を含む非正規従業員を正社員に転換する
- 賃金規定等改定コース:非正規従業員の賃金増額改定(2%以上)による
- 健康診断制度コース:非正規従業員に健康診断を受けさせる
- 賃金規定等共通化コース:非正規従業員と正社員の賃金規程を共通化する
- 諸手当制度共通化コース:非正規従業員と正社員の手当を共通化する
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース:非正規従業員を新たに社会保険に加入させ、基本額をアップする
- 短時間労働者労働時間延長コース:非正規従業員の週所定労働時間を増やし、新たに社会保険に加入させる
同一労働同一賃金に代表されるように、年々非正規雇用者の待遇改善が検討されるようになっています。
キャリアアップ助成金を活用することで、待遇改善における費用面の負担を軽減することができるでしょう。
2.研修で助成金を活用する場合の確認事項
どのような仕事でも研修は必要不可欠ですので、技術系の現場職でも、事務職でも、専門的知識や技術習得の一環として研修を実施すれば助成金の申請をすることは可能です。
例外として、ビジネスマナー研修は専門的な内容ではないため、助成金の支給対象から外れることだけ注意しておきましょう。
2-1. 助成金活用のメリット・デメリット
助成金は種類が多く返金も必要ないといわれ、使い道も自由です。
最近では、人材不足を深刻な課題として挙げる企業も多く、その課題を解消するために社員の教育や研修に注目が集まっています。
助成金制度を活かしてコストを抑えることができれば、企業も研修に力を入れることができ、それによって社員のレベルアップやモチベーションアップにもつながる可能性が高いです。
このような費用面でのメリットを感じる企業が多くなっています。
ただし、助成金を受給するためには、新たな雇用や人事制度や就業規則、労働時間の削減、賃金アップなどが必要になります。
このような新たな制度を導入した場合、簡単に廃止することはできないことがデメリットとなります。
制度を廃止すれば助成金不支給の要件に該当することになり、受給した助成金が返還の対象になることもあります。
助成金を受給するために雇用を増やしたり、必要のない人事制度や就業規則を導入してしまうと、思わぬ形で負担になることもあります。
助成金申請においては、信頼のできる社労士や研修会社に一度相談し、きちんと理解した上で導入することが大事になります。
2-2. 研修会社に委託した場合の料金相場
助成金があるとはいえ、研修費用がどのくらいかかるのかは気になる点です。
研修費用は内容や期間、人数によっても異なりますが、各社の料金相場は次のようになっています。
【タイプ別】研修費用の相場
※期間は、2~3日の研修を想定しています。
種類 | 一般価格帯 |
管理職向けの研修(参加人数5~10名) | 40万円~60万円 |
新卒者向けの研修(参加人数20名~30名) | 150万円~250万円 |
OJTやロープレなどの実践研修(参加人数10名~15名) |
80万円~120万円 |
引用: 【2019保存版】社員研修の平均費用と料金相場|早見表つき
【IT系】研修費用の相場
※期間は、各コースにより異なります。
種類 | 一般価格帯 |
Pythonプログラミング基礎研修サブ講師
|
35,000円~/1日 |
Javaプログラミング研修サブ講師
|
35,000円~/1日 |
Jave言語研修メイン講師 | 1,000,000円~/2・3ヶ月 |
2-3. 助成金受給の事例(人材開発支援助成金の場合)
助成金の受給までの流れを把握するために、人材開発支援助成金の一般訓練コース、および特定訓練コースにおける助成金支給例を見ていきます。
まず、助成金支給額は、次のようになっています。
訓練コース | 中小企業 | 大企業 | ||
経費助成 | 賃金助成 | 経費助成 | 賃金助成 | |
一般型訓練コース ※下段は生産性要件を満たす場合 |
受講料総額の30% | 1時間当たり380円 | ― | ― |
受講料総額の45% | 1時間当たり480円 | ― | ― | |
特定訓練コース ※下段は生産性要件を満たす場合 |
受講料総額の45% | 1時間当たり760円 | 受講料総額の30% | 1時間当たり380円 |
受講料総額の60% | 1時間当たり960円 | 受講料総額の45% | 1時間当たり480円 |
※助成金を申請する際「生産性要件」を満たしている場合に、助成の割増をおこなう場合があります。
※1事業所当たりの支給額の上限は、年間1,000万円までです。
それでは、一般訓練コース・特定訓練コースそれぞれの場合における若年労働者への研修事例をご紹介します。
一般訓練コース
カテゴリー | 中小企業(福祉業) |
従業員数 | 130名 |
事業内容 | 福祉用具の販売/介護施設の運営 |
【活用背景】
- 介護業界は離職が多く、離職防止をするため、段階ごとのスキルアップのための教育訓練をおこなう必要があった。
- 人材不足や早期離職を防止するため人材育成を図り、人材確保につなげていく必要があった。
【訓練内容】
- 受講コース:介護福祉士実務者研修
- 訓練目標:介護福祉士国家資格を受験するため
- 訓練時間:一人あたり45.5時間
- 受講料等:一人あたり97,200円
- 経費助成:43,700円(受講料×45%)
- 賃金助成:21,800円(45.5h×480円)
特定訓練コース
カテゴリー | 中小企業(サービス業) |
従業員数 | 20名 |
事業内容 | 企業向けシステム開発サポート |
【活用背景】
- 今まではスキルの習得はそれぞれが自己学習が基本であったが、組織力強化のためにマネジメントスキルの習得を目指すようになった。
【訓練内容】
- 受講コース:ITプロジェクトリーダー研修
- 訓練目標:プロジェクトチームのリーダーとして、チームビルディングをおこない、マネジメントをしていく上で、必要な知識と技術を学ぶことを目的とする。
- 訓練時間:一人あたり28時間
- 受講料等:一人あたり50,000円
- 教科書代:一人あたり3,000円
- 経費助成:31,800円(謝金等×60%)
- 賃金助成:26,800円(28h×960円)
2-4. 助成金申請の手続きと期間(導入フロー)
助成金を受給するためには厚生労働省への申請が必要になるため、申請にあたってどのようなフローが必要なのか、流れについて説明します。
01|書類作成 | 2週間~4週間 |
02|計画申請 | 2週間 |
03|研修受講 | 5ヶ月~6ヶ月 |
04|書類作成 | 1週間~2週間 |
05|受給申請 | 3ヶ月 |
06|受給 | ー |
助成金・補助金の種類は3,000件以上あります。
その種類によって内容がすべて異なり、それを理解するためには大量のリーフレット、パンフレットを読み込み、就業規則を確認・修正し、計画書を作成する必要があります。
また計画書に基づき施策を実行したあと、受給申請を作成し提出する必要があります。
3. 【6社比較】助成金を活用できるおすすめ研修会社
助成金を活用した研修をおこなっている会社をご紹介します。
それぞれの会社によって特徴や強みがあるため、できる限り自社の課題解決に直結するような研修会社を選ぶことをおすすめします。
3-1. ネオキャリア
運営会社 | 株式会社ネオキャリア |
特徴・強み | カリキュラムをフルカスタマイズ/採用から研修まで一貫したサービス |
申請手続き | 研修から助成金の申請までをサポート |
サービスページ | https://www.neo-career.co.jp/humanresource/newgradservice/training/education/ |
3-2. schoo
運営会社 | 株式会社スクー |
特徴・強み | 国内最大級のオンライン研修サービス/新入社員研修・階層別研修・職種別研修、ビジネススキルからITスキルまで、多様な研修に対応可能 |
申請手続き | 詳細はお問い合わせください |
サービスページ | https://schoo.jp/biz/ |
3-3. 東京ITスクール
運営会社 | 株式会社システムシェアードリア |
特徴・強み | IT業界の最新の研修内容/充実したフォロー内容 |
申請手続き | 研修から申請までをサポート |
サービスページ | https://www.3sss.co.jp/tis/ |
3-4. insource
運営会社 | 株式会社インソース |
特徴・強み | 25,000社以上の実績/さまざまな課題に合わせて2,000種類以上のカリキュラム |
申請手続き | 研修から申請までをサポート |
サービスページ | https://www.insource.co.jp/index.html |
3-5. 株式会社ポジカル
運営会社 | 株式会社ポジカル |
特徴・強み | 営業に特化型した研修サービス/フルカスタマイズ対応も可能 |
申請手続き | 研修から申請までをサポート |
サービスページ | http://www.posical.com/ |
3-6. 株式会社ワークアカデミー
運営会社 | 株式会社ワークアカデミー |
特徴・強み | 人材教育における30年の実績/全国対応可能 |
申請手続き | 研修から申請までをサポート |
サービスページ | http://workacademy.jp/ |
4.まとめ
助成金を活用することで人材育成にかかる負担をおさえることが可能になります。
人材不足の社会において、新人社員への教育は企業にとって今後さらに必要になると思います。
まずは制度を理解し、自社に合った研修会社を見つけてみてはいかがでしょうか。