成果主義は、日本企業にも徐々に広がりつつある制度です。従来の日本企業が導入していた年功序列制度とは異なる成果主義を取り入れることでさまざまなメリットが期待できる一方、導入方法を間違えるとあらゆるデメリットが発生するため注意しなければなりません。
本記事では、成果主義の特徴について解説します。能力主義との違いやメリット・デメリットを解説したうえで、成果主義を導入する際のポイントも説明するので、ぜひ参考にしてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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目次
1. 成果主義とは?
成果主義とは人事制度の一種であり、仕事の成果や成績、実力などの要素によって従業員を評価し、待遇を決定するものです。成果主義を導入している企業では、給与アップや昇格などが仕事の成果によって決まります。
もともと日本では、人事制度として年功序列が採用されてきました。勤続年数や学歴、経験などによって給与や社内の地位が決まるため、年齢を重ねていけば自動的に待遇が良くなっていったのです。しかし、日本でも徐々に成果主義を取り入れる企業が増えてきました。
1-1. 成果主義が日本企業に広がった背景
成果主義が日本企業に広がった背景として、まずバブル経済の崩壊による企業の業績悪化があります。1990年代に起きたバブル崩壊[注1]により世界中が不況に転落し、日本企業の業績も悪化したため、企業はコスト削減を強いられました。
大きなコストのひとつである人件費の削減に注目した日本企業は、年齢を重ねれば給与が高くなる年功序列制度が膨大な人件費につながっていると考えます。その結果、年齢や勤続年数ではなく、成果を評価して報酬額を決める成果主義が注目されるようになりました。
また、成果主義が広がった理由として雇用制度の多様化も挙げられます。日本では従来から終身雇用が一般的でしたが、経済状況の変化やテクノロジーの発展により、終身雇用は崩壊の兆しを見せ始めました。さらに働き方の多様化が進んだことで非正規労働者が増え、年功序列制度では従業員を適切に評価できなくなったのです。そこで成果主義を導入し、従業員を正当に評価しようという動きが活発になりました。
[注1]厚生労働省:平成23年版 労働経済の分析―世代ごとにみた働き方と雇用管理の動向―(第1節 我が国の経済社会の変化) p3〜6
1-2. 成果主義が適している従業員の特徴
成果主義は、向上心が高い人や競争が得意な人に適しているでしょう。成果主義を導入している場合、頑張って仕事に取り組んだり、能力アップに励んだりすることで、昇給や昇格を目指せます。
上昇志向の強い従業員は成果主義に順応でき、よい結果を出してくれることを期待できるでしょう。逆に、競争が苦手な人や安定志向の人は、成果主義にプレッシャーを感じてしまうかもしれません。
2.成果主義と能力主義の違い
成果主義と能力主義は混同されやすい言葉ですが、両者は大きく異なります。
能力主義は、従業員の能力を評価して給与や社内の地位を決める方法です。能力で評価するということは、成果にこだわらず、仕事に対する姿勢や持っている知識、技術などを重視するということを意味します。
出した成果に限らず個人の潜在的な能力も評価されるため、すぐに成果が出なくても評価されやすい傾向があります。その一方で、成果だけで評価されるわけではないので、早期の出世はしにくいです。
成果主義は一定期間の実績を重視する評価方法なので、勤続年数が短く経験が浅い若手社員でも成果を出せば評価されます。早期の出世につながりやすいのは、成果主義のほうだといえるでしょう。
このように、何を主軸として評価をおこなうか、人事評価制度の方針次第で組織に与える影響は異なってきます。自社の現状にとって適切な人事評価制度を構築する必要があるのです。
しかし、人事評価制度を整えると言っても何から手をつければ良いか分からずお困りのもいらっしゃるかと思います。そのような方へ向けて、本サイトでは「人事評価の手引き」を無料で配布しています。自社にとって適切な人事評価制度を検討するためにまずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
2-1. 成果主義と年功序列の違い
年功序列とは、年齢や勤続年数、経験年数などによって、給与や役職を決める仕組みのことです。仮に成果を出していなくても長く働けば上の役職に就けるなど、成果と待遇が連動していないため、成果主義とはまったく異なる仕組みといえるでしょう。
年功序列の仕組みには、能力が低くても評価されてしまうという問題があり、制度の見直しを図る企業も増えてきました。
3. 成果主義のメリットとデメリット
成果主義を導入する企業が増えてきたものの、失敗して年功序列に戻る企業も少なくありません。成果主義を導入しようと考えているなら、メリットとデメリットを把握しておきましょう。
3-1. 成果主義のメリット
成果主義のメリットは以下の通りです。
賃金を適正化できる
成果主義のメリットとして、まず賃金の適正化が挙げられます。成果主義においては、勤続年数や年齢にかかわらず成果を出した従業員に多くの給与が支払われるため、企業に貢献している従業員の待遇を改善することが可能です。その結果従業員のモチベーションが向上し、自発的な成長を促す効果も期待できます。
生産性が向上する
成果主義を導入すると従業員が効率よく成果を上げようと考えるため、生産性が高まるのもメリットです。無駄を省いて効率的に成果を出そうという気持ちで従業員が仕事に取り組むと、会社全体の生産性が向上します。その結果、会社は効率的に業績をアップできます。
優秀な人材を確保できる
成果主義を導入することで、年功序列の企業より優秀な人材を確保できるというメリットもあります。年功序列では、成果を出している若手社員の働きが正当に評価されず、不満を覚えることも珍しくありません。成果主義の導入によって優秀な若手社員が入社するようになり、従業員全体のレベルが底上げされます。
3-2. 成果主義のデメリット
さまざまなメリットがある一方、以下のようなデメリットもあるため注意しましょう。
評価基準の設定が難しい
成果主義のデメリットとして考えられるのは、評価基準の設定が難しいことです。成果主義は成果を出した従業員を高く評価する手法ですが、すべての仕事の成果が定量的に測れるわけではありません。
営業など成果がわかりやすい職種もあれば、事務や管理など成果が数値として表れにくい職種もあります。どのような視点でなぜその評価に至ったかが明確にわからなければ、従業員は不公平だと感じモチベーションを低下させてしまうでしょう。
チームワークが悪くなる可能性もある
成果主義では待遇を決めるために個人の成果を評価するので、一人ひとりが成果を出すために個人プレーに走るようになり、チームワークの低下を招くこともあります。個人で成果を出すために若手の指導や育成をしなくなる、残業時間が増えて生産性が下がるなどのデメリットが発生した結果、離職率が上がることもあるでしょう。
4. 成果主義を導入するときの注意点
前述の通り、成果主義にはメリットだけでなくデメリットもあるため、導入する際はいくつかのポイントに注目する必要があります。成果主義で失敗すると、従業員のモチベーション低下や離職率の上昇といった問題につながる可能性があるので、以下の注意点を理解して慎重に導入しましょう。
4-1. 導入の目的を明確にして周知する
成果主義を導入するのであれば、まず導入の目的を明確にして従業員に周知しましょう。導入の目的が明らかでなければ、評価基準を適切に定めることができず、成果主義が失敗する可能性が高まります。
社員のモチベーションや生産性の向上、優秀な人材の確保、人件費の削減といった導入目的を明確にしたうえで、従業員にきちんと説明しましょう。
4-2. 評価基準を明確にする
成果主義を成功させるためには、評価基準を明確にする必要があります。部署によっては、成果が目に見えないこともあるでしょう。そのような場合でも正当な評価ができるよう、何を成果としてどのように評価するかはあらかじめ決めておくことが大切です。
モチベーションの低下やチームワーク不足といった問題に発展しないよう、後輩や部下の育成、ノウハウの可視化や共有といった組織にとって重要なタスクやプロセスも評価の対象にしましょう。多面的な評価をおこなうようにすれば、幅広い職種で成果主義の導入効果を実感できます。
4-3. 評価者のトレーニングをおこなう
成果主義で適切な評価をおこなうためには、評価者のトレーニングも必要です。評価内容によっては、客観的な評価をしようと努めても多少の主観が入ってしまいます。それでもできるだけ評価がぶれないよう、細かい評価基準を設定し共有しておきましょう。
関連記事:人事評価の基準は?作り方・項目一覧をわかりやすく徹底解説!
4-4. マネジメントを徹底する
成果主義を導入して効果を出すために、マネジメントを徹底しましょう。成果主義を取り入れることで、なかなか成果を出せない従業員が待遇を改善できずモチベーションが低下する事態が発生しやすくなります。その結果、離職につながらないよう、適切にマネジメントすることが大切です。
評価者が従業員をきちんと見るようにして、目標管理や達成のサポートをしましょう。現状のままでは従業員の潜在能力が発揮できないと判断した場合は、異動を勧めるのも大切なマネジメントです。
関連記事:コーチングとは?必要な5つのスキルやメリットを徹底解説
5. 成果主義の導入に失敗する原因
成果主義の導入に失敗する原因としては、自分の成果ばかりを考えてしまうことや、無難な目標ばかりを立ててしまうことが挙げられます。ここでは、失敗の原因について確認しておきましょう。
5-1. 自分の成果ばかりを考えてしまう
成果主義の導入に失敗すると、従業員が自分の成果ばかりを考えるようになってしまいます。成果を出さなければ評価されないという不安から、部下の育成が疎かになったり、協力体制が崩れたりするケースもあるでしょう。
個人の成果ばかりを追い求めた結果、組織としての成長が止まってしまう可能性もあるため注意しなければなりません。成果以外の評価基準を組み合わせるなど、従業員のモチベーションや協力意識をうまく維持することが大切です。
5-2. 無難な目標ばかりを立ててしまう
成果主義を導入した結果、従業員が無難な目標ばかりを立ててしまうケースもあります。成果によって評価されるため、どうしても達成しやすい簡単な目標が増えてしまうのです。その結果、新しいチャレンジやアイデアが生まれにくくなったり、従業員がスキルアップできなくなったりすることもあります。
5-3. 評価者のトレーニングが不足している
評価者のトレーニングが不足していると、成果主義を導入してもうまく運用できません。従業員の成果を客観的に評価できなければ、評価に対する不満が生まれ、モチベーションが低下してしまうでしょう。
できる限り主観的な評価は避け、客観的な事実やデータをもとに評価できるよう、評価者を育成することが重要です。
6. 成果主義はメリット・デメリットに注意しながら適切に取り入れよう
今回は、成果主義の特徴や導入時の注意点について解説しました。成果主義は従業員のモチベーションを高めて会社の生産性を高めるのに有効な手法ですが、適切に導入しなければ逆効果となる場合があります。成果主義を導入する場合は、幅広い職種の従業員が正当に評価されるよう、評価基準を明確にしたうえで評価者を育成することが大切です。
メリットとデメリットを理解し注意点を把握したうえで、正しく成果主義を取り入れましょう。適切に取り入れることができれば、企業の持続的な成長に役立ちます。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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