受賞企業に聞く!社員が“成長できる”企業のあり方とは?|グッドキャリア企業アワード#2 |HR NOTE

受賞企業に聞く!社員が“成長できる”企業のあり方とは?|グッドキャリア企業アワード#2 |HR NOTE

受賞企業に聞く!社員が“成長できる”企業のあり方とは?|グッドキャリア企業アワード#2

  • 組織
  • ダイバーシティ&インクルージョン

※本記事は、主催企業や登壇者/登壇企業に内容を確認のうえ、掲載しております。

2021年3月1日、グッドキャリア企業アワード2020が開催。

前回の記事では、受賞企業の紹介とセールスフォース・ドットコムの人事本部長である鈴木さんの基調講演の内容をお届けしました。

今回は、受賞された各社の具体的な取組事例、および「社員が成長できる企業とは」をテーマに実施されたパネルディスカッションの内容についてご紹介いたします。

A. グッドキャリア企業アワード受賞企業に聞く具体的な取組事例

1. 「社員」と「会社」の成長ベクトルをすり合わせる|株式会社JTB

【パネリスト①】
高岡 裕之 | 株式会社JTB 人事部 人財開発担当部長・ダイバーシティ推進事務局長

株式会社JTBは、国内38社、海外に100社以上の企業を持つJTBグループの中核的企業です。

事業を取り巻く環境が大きく変化する中、私たちは企業の進む方向と社員自身の将来を重ねていくことが重要であると考えています。

JTBの考える「グッドキャリア」とは

キャリア開発支援のベースは「社員と会社の成長ベクトルのすり合わせ」です。

「社員が現在と将来の仕事にどう向き合い、現在の仕事で“自分らしさ”をどのように発揮できるのか」といったすり合わせをおこなうことが、社員の仕事を通じた成長を促す基盤になります。

社員が多様な挑戦機会を積み重ね、その個々の力が組織の力として発揮されることで、企業としての競争力も高まっていくのではないかと考えています。

会社全体の動きに巻き込むことで、施策全体を推進する

弊社は、2018年から抜本的なビジネスモデル変革や組織変革を進めてきましたが、この時の経営改革の3本柱の1つが「カルチャー改革」であり、その中の1つとして「キャリア改革」を掲げています。

「社員と企業の新たな関係性(カルチャー)を構築する」という会社全体の動きに「キャリア改革」を紐づけたことで、経営層の理解や社員の協力を得ることができ、推進力を持って施策を進めることができました。

具体的な取組としては、まず「キャリアの定義」から始めました。

キャリアの定義|JTB

仕事において『自分らしさを発揮』して、様々な経験や能力を得ていく『成長プロセス』、および経験してきた仕事に『自分なりの意味』を見出したものの蓄積

この定義をベースに、人事評価制度や啓蒙活動、マネジメント向けの支援、社内の育成プラットフォームである「JTBユニバーシティ」の改革などを進めています。

人事評価制度に関しては「成果プロセス評価シート」を用いています。

成果とプロセスを分けて人事評価をおこなうことで、目標達成に向けたプロセスの中に1人ひとりの強みや価値観(自分らしさ)の発揮を織り込むことを、日々の行動から意識してもらうようにしています。

同時に、上司はメンバーと関わる中で『「成功」のためのフィードバックだけでなく、「成長」のためのフィードバックをしてほしい』と伝えています。

また、この他にも、次のような取組を実施しています。

「未来への行動チェックシート」

将来のキャリアビジョンの記入だけでなく、自身の強み・弱みを把握した上で「年間を通じてどのように行動するか」「何にチャレンジするか」を具体化し、上司と共有している。

「研修アクションプランシート」

研修受講前に上司と受講目的確認をおこない、研修では研修後のアクションプランを記入。受講1カ月後と3カ月後に進捗を自己評価し、上司からフィードバックを受けることを仕組み化している(※JTBユニバーシティが提供する研修で活用)。

このように、社員が学んだことを仕事に活かす意識を持ち続けられる、および、職場の上司がそれをサポートしやすい環境を創出し、職場での能力発揮と成長実感を得ることに繋げています。

さまざまな場面で社員との「対話」を創出

最後に、キャリアに関する情報提供としては、キャリア支援に関する情報を一元的に掲載する「JTBキャリアサイト」や、人と仕事にクローズアップしたオンラインイベント「JTBキャリアデイズ」を運営しています。

誰でも、いつでも、どこでも、キャリア支援に関する情報にアクセスでき、学びの機会を得られることが大切だと考えています。

また、上司の面談の質を向上するための「キャリア面談サポートキット」の作成、JTBキャリアデイズでは「上司の面談スキルアップセミナー」などを開催したりもしています。

これまでに、社員の意識調査や研修の受講数から、少しずつ価値観が浸透・定着しつつあるという実感を持っています。

2. 社員の成長が組織の成長に繋がる|万協製薬株式会社

【パネリスト②】
松浦 信男 | 万協製薬株式会社 代表取締役社長

弊社は、スキンケア製品の外用薬の開発・製造・販売をおこなう従業員数230人ほどの企業です。

平均年齢は32歳と若く、急激に会社が成長する中で、若手社員の教育に課題を抱えています。

万協製薬の考える「グッドキャリア」とは

弊社では「社員の成長が、組織の成長」という考えが第一であると考えています。

昨今の日本企業では、組織目標と個人成長がかけ離れ、自社組織の目標の追求に走る余り、燃え尽きてしまう社員が多いのではないでしょうか。

弊社では、「社員の成長が、組織の成長につながる」という図式が正しいと考え、社員の自立した成長を促す仕組みを作ることが万協製薬のキャリア支援だと考えています。

社員には、会社の理念や戦略を広く公開し、社員自らが個人やグループ単位で行動しやすいような環境を作るように心掛けています。

きっかけは、阪神・淡路大震災の被災だった

25年前、阪神淡路大震災により神戸にあった工場が潰れ、現在の三重県に移転することになりました。

新たな地で会社を一から作るに当たって、『どうすれば地元の人に「製薬」という非常に難しい仕事に逃げずにチャレンジしてもらえるか』を考える中で、さまざまな社員の融通が利くような仕組みを作ってきました。

特に重要視しているのは「社員エンパワーメント」の徹底で、社員に「情報公開」と「権限委譲」をおこない、社員の働く現場単位で職場改善をおこなう権限を与えています。

また、これと同時に、社員に「自分の家庭に居るようなリラックス感」を感じてもらえる職場づくりに努めています。

具体的な取り組みとしては、「業務のモジュール化」「ジョブローテーション」を実施しています。

業務のモジュール化では、各課の業務を細分化し、それぞれに詳細なマニュアルを作成、その業務を通じて教育をおこないながら、その達成状況に応じて能力を点数化・評価し、賞与や昇給に反映しています。

また、ジョブローテーションにより、できるだけ多くの職場に転籍してもらうことで、モジュールの習得をゲームのポイントのように積み上げていくことができ、社員が楽しみながらキャリアを歩める仕組みを構築しています。

能力向上を確認することが社員の意識向上に繋がる

この他にも、

  • 社員自らが年に1回キャリアアッププランを作成し、そのフォローを上司がおこなう
  • 経営幹部と年2回の面談を実施して、キャリアや自らの問題について考える

といったことや、

社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書

社員自らが業務を改善するための提案書を作成し、その提案書を経営者が直接見て、提案された内容の改善に向けて一緒に取り組んでいくことで、どの立場からでも会社を変える仕組みを作っている。

成果発表会

年に1回、町の会館を貸し切って開催される。全社員が参加し、社員が作成した短期戦略の検証や気付きの共有、さまざまな表彰などを実施している。

プチコミファミリー

入社年度と所属を超えた6名のグループを作り、会社負担で旅行や食事会、話し合いの機会を作っている。新入社員にとっては、他部署の上司の方が色々な意見を言いやすいため、新入社員の離職率の低下にも貢献している。

といった、社員モチベーションを高めるような取り組みを多くおこなっています。

これにより、個人能力と組織的能力の向上だけでなく、会社の業績向上にも繋がっています。

また、「社員想いの会社」としての認知が広がったことで、研究開発に欠かせない高度人材の採用も活発になりました。

モジュールによって習熟度が明確になることで上司のフォローもしやすくなり、ジョブローテーションは部門内外で協力し合える体制の構築にも貢献しています。

勤務時間の変更にも迅速に対応しており、有給取得率なども全国平均より高い水準で推移しているので、さまざまな事情を抱える社員にとって働きやすい環境を整備できていると考えています。

3. 複合型技術者の育成のために社内コンサルタントを活用|エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ

【パネリスト③】
芳賀 恒之 | エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 人事部 取締役 人事部長

弊社は、NTTグループの企業の1つとして、NTTの研究所で研究開発した先進技術を世の中に使える形に実用化していくことをミッションに掲げています。

具体的には、①Value Co-creation②セキュリティ③クラウド・IoT④AI・ロボティクス⑤グローバル⑥IOWN、の6つを重点事業領域分野として定めています。

また、これらの交わる領域において新しい価値あるビジネスを生みだすため、複数の分野にわたって知見を持つ人材を育成することに注力しています。

エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジの考える「グッドキャリア」とは

これまで、社内の技術者育成は、1つの所属分野において専門性を極めていく「T型の人材」を育成するものでした。

このような育成方法は深い専門性が得られる反面、自組織の分野に集中し過ぎてしまい、専門の細分化や人材の流動性低下に繋がってしまっていました。

そこで、社員の技術的な興味を伸ばしていくことで、新たな分野の技術獲得を奨励し、いわゆる「Π型の人材(複合型人材)」を生み出すような仕組み作りに人材育成の方針をシフトすることにしました。

社内でキャリアコンサルタントを育成

このような流れの中で、社員の「成長したい」という想いに寄り添うことのできるキャリアコンサルタントを社内で育成しています。

キャリア開発のサポートを上司のみで実施すると、旧来の考え方である自組織の専門や技術分野を深めていく方向に引っ張られてしまう傾向があったためです。

キャリアコンサルタントの育成は、時間が掛かるだけでなく、本業との両立や社内の事情を知り過ぎてしまっているが故の難しさもあります。

しかし、

  • 社員の自己理解が進み、納得感が得られ、積極的な行動変容に繋がりやすい点
  • および人事に携わるメンバーが社員へのコンサルティングを通して鑑みる社内の状況に施策を打ちやすい点

を考慮した結果、社外の専門家に任せるという選択はしませんでした。

また、定期的におこなうコンサルティングに加えて、社員の悩みに寄り添うオープンカウンセリングも実施しています。

コンサルティングを受けた社員のアンケートの結果は概ね肯定的な意見が多く、コンサルティングをきっかけに自己理解が進み、キャリアの転換を図る社員も現れています。

同時期に「ジョブチャレンジ」と呼ばれる社内公募も始めていますが、「新しいスキルを身に付けよう」「身に付けた新しい知識を実際に活かしていこう」とチャレンジする社員の背中を後押しすることに繋がっています。

資格保有者が大幅に増加。複合型技術者は316名に。

新たな技術分野に社員が主体性を持って積極的に挑戦していることを示す例をいくつかご紹介します。

日本国内でも3,000名弱しか保有者のいないセキュリティの超難関資格であるCISSPという資格に関して、100名の資格保有を目標に掲げて取り組みをはじめたところ、昨年度で目標を達成することができました。

また、実際に資格を保有した65%の社員は、もともとセキュリティの専門家ではなく、社員のマインドが「複数分野にまたがった専門家を目指す」という方向に変わっている証だと考えています。

そして、社内で育成目標とした複合型技術者の数も順調に増えてきており、中には、6つの分野でシニアレベルの高度資格を取得するような猛者も現れています。

このように、社員が主体的に自らのエンプロイアビリティを向上させるようにキャリア開発に取り組むことを、会社が全面的かつ多面的に支援することで、社員それぞれの人材力が強化されていると考えています。

私たちは、このような人材育成の結果として、変化の激しいIT業界の中でお客様と共に進化し続けるバリューパートナーであり続けたいと思っています。

B. パネルディスカッション|社員が成長できる企業とは

【コーディネーター】
坂爪 洋美 | 法政大学 キャリアデザイン学部教授

さて、ここからは、各企業の皆様に、参加者から事前にいただいた質問にお答えいただく形で、社員が成長できる「グットキャリア企業」について探っていければと思います。

Q1. 社員の自律的なキャリア形成支援は、何から始めたら良いか?どのようなことが肝になるか?

「キャリア形成支援の体系化」が最も大切だと考えています。

弊社では、これまでもキャリア形成に関してさまざまな施策を実施していましたが、体系化したことにより「企業としてキャリア形成支援をしていること」が社員に見える化されていきました。

また、「キャリアの定義」をしっかりとおこない、社内で共通言語を作ることで、各個人のキャリアに対する価値観を揃えることも大事だと思います。

弊社は、まず技術面の能力を仕組み化するために、業務のモジュール化(細分化)から始めました。

2003年に始めた際は数十項目しかありませんでしたが、現在は13のジャンルに6,110項目、全てのモジュールを取得すると合計で25,938点にもなります。

モジュールは、各課・各社員が必要に応じて自由に改廃して良い仕組みになっており、社員自身が「仕事の重要な点が何か」について考え発見するためのきっかけとなっています。

モジュールの導入を検討の方は、自社の業務を仕組み化・文章化した上で、少ない項目から少しずつ始めていくのが良いのではないかと考えています。

人材育成の取り組みは、経営側の要請から始まることも多いと思います。

社員自身が「どちらに向かっていくのか」ということを理解できるようにした上で、「新しい分野にチャレンジしようとする社員をどのように後押しするか」という点がポイントになるでしょう。

社内でわかりやすい共通言語を作り、社員自身が目指していく方向性や目標を見つけ、次に歩き出せるような仕組みをつくることが非常に大事だと思います。

Q2. キャリア形成支援を進めていく上で大変なことは何か?

弊社では、管理職がメンバーとの会話に積極的になってもらうことが難しいと感じています。

そこで、「あなたの部下が将来のキャリアについてどのように考えているか知っていますか」といった投げかけをおこない、上司自身に意識を向けてあげることを心掛けています。

マネジメント向けの研修やセミナー、定期的なメルマガ配信などを活用し、「部下や周囲のことを知らないのではないか」という問題提起をすることから始めています。

「一生懸命に技術を習得する社員」と「一生懸命にならない社員」が出てきてしまう点に苦労しています。

人間的な心の成長や目標を持つ力(ヒューマニティ)が無ければ、技術だけ持っていても仕方がありません。

現在のモジュールシステムだけでなく、リーダーを目指す人はもちろん、そうでない人も、選択的にヒューマニティに関する部分を補完できるような、2枚重ねの教育システムを構築したいと考えています。

上司のマネジメントの在り方に変化が起こっている中、いきなり新しいマネジメント手法に腹落ちできない方もいる点に苦労しています。

社内コンサルタントが入ることで穴を埋める動きも取っていますが、やはり上司が入らなければならない部分も多くあります。

指導者側がキャリアに対する考え方や部下の想いに寄り添う方法について学び、「新しい技術の獲得や新たな興味の発見は良いことだ」と会社側が発信し続けていくことが大事だと考えてます。

Q3. 「若手」「ミドル層」「シニア層」など、個別にアプローチしていることはあるか?

弊社では、節目研修を28・36・46・56歳に必修でおこなってますが、今年度は研修と連動する形で29歳と56歳の方にキャリアデザイン面談を実施しました。

この面談を通して、社員と会社の成長ベクトルのすり合わせをおこなうことで、社員のキャリア形成にとって非常に良いきっかけを作ることができました。

また、若手社員(入社3~5.6年目)にはメンター社員や指導社員になってもらい、新卒研修とは別に後輩の指導に当たってもらうことで、組織として良い育成循環を生むこともできていると考えています。

弊社では、若手の成長と定着を目的に、1人の新人に対して1人の教育担当者をマンツーマンで付けるようにしています。

また、教育プログラムの設計もメンター3名を2カ月ごとにローテーションさせて付けることで、社員側から広く相談できるような体制を整備しています。

若者の仕事に対する意識が変わりつつある中、育成の仕方も大きく変わってきているので、若手同士で相談しやすい環境作りもおこなうよう工夫しています。

自分のキャリアに対する考え方や設計方法に関する研修を、人事評価がおこなわれる10月・4月に、全社員向けにeラーニングで実施しています。

中長期の自分の育成計画シートを上司との面談を通して作成した後すぐに、受講してもらうことで、キャリアに対する意識が高まったタイミングで自然に研修を受けることができるような形で設計しています。

その後、その計画に対しての動き方や目標設定をする流れも作ることで、忙しいほど研修から遠のいてしまう社員でも進められるようにしています。

Q4. 外部のキャリアコンサルタントの活用についてどう思うか?

社員は具体的なアドバイスを求めたがる傾向があるため、自社の仕事や組織のことを知っている人の方が相談しやすく、外部のキャリアコンサルタントは現状導入していません。

ただ、一方で、上司がキャリアコンサルタントに部下との関わり方を相談する機会を設けたところ、こちらは非常に効果がありました。

コスト的な面は考慮しなければなりませんが、上司がキャリアコンサルタントのスキルやマインドに触れる機会を作る、という意味では有効な活用方法かと思います。

弊社では、年に1回、キャリアコンサルタントの方と話す機会を設けるようにしていますが、3年・5年・10年先を見据えたような長期的なキャリアの歩み方について話してもらうようにしています。

キャリアコンサルタントの方には、仕事に関する技術的な部分のアドバイスと被らない形で、部外者として、あえてリラックスして相談に乗ってあげて欲しいと考えています。

また、キャリアコンサルタントの相性やキャラクターも大事になると考えているので、どのような人を選び、どのようなことを話すか、といったことまで、事前にキャリアコンサルタントの方と話すようにしています。

弊社では、社内のキャリアコンサルタントの育成に力を入れていますが、プロのキャリアコンサルタントの方も様々なシーンで活用しています。

1つは、指導者向けに傾聴方法に関するロールプレイ研修をおこなうこと、もう1つは、社内のキャリアコンサルタントにマンツーマンで付いてもらい、模擬面談を何度もやってもらうことです。

社内のコンサルタントは、職場の近しい相手との距離感の保ち方が難しい場合もあるので、こういった機会を通して成長してもらえるようにしています。

Q5. コロナ禍で、職場のあり方やキャリア形成に関する変化はあったか?

これまでのようなコミュニケーションを継続することは難しいため、職場での対話や研修での気付き合いのやり方も変えていく必要があると感じています。

「社員が仕事にどのように取り組んでいるのか」というプロセスを把握するだけでなく、短時間の朝礼やランチ会などコミュニケーションの場作りを進め、対話を通して社員のコンディションを知ることができればと考えています。

弊社の場合は事業環境が大きく影響を受けていることもあるので、事業の将来と個人のキャリアをどのように重ねていくのかに向き合っている状況です。

弊社も、研修は全てビデオ研修に変更し、そのビデオをいつでもどこでも見られるようにしました。

この中で、管理者向けのコンテンツを新入社員が見に来てくれるなど、新たな気付きも多くありました。

また、コロナ禍で社員のモチベーションが下がってしまうことも懸念していましたが、自社の商品が患者を守っていることに働きがいを感じた社員も多く、やはり人の役に立っている実感がモチベーション維持に繋がることもわかりました。

弊社は、現在は40%以上の社員が自宅を勤務地としており、キャリアコンサルティングも全てオンラインに切り替えました。

オンライン上だと間合いの取り方や目線の合わせ方などが難しいため、社内のコンサルタントの方には、実際にプロのコンサルティングを受けて経験値を積んでもらっています。

また、コンサルティングを自分の慣れた部屋で受けることができるので、社員の心理的安全性が保たれた状態で面談できるといったメリットもあるようです。

新入社員に対しては対面でのフォローも実施しており、これからは企業や社員にあわせてオンラインかオフラインかを使い分けていくことが大事だと考えています。

Q6. 各社が考える今後の取り組みのポイントは?

今後の取り組みのポイントとしては、引き続き「働き方」「学び方」の2点の変革を推進していきたいと考えています。

ワークスタイルが変化する中で、「ふるさとワーク」「ワーケーション」「副業」といったように、一人一人に合った働き方を選択できるような職場にしていきたいと考えています。

また、研修制度は、カタログのように全員に同じように研修を並べていたラインナップ主義から、研修を一人ひとりに届けるデリバリー主義に変えていきたいと考えております。

弊社は中小企業ですので、社員1人ひとりのキャリアに深く寄り添うことのできる良さを最大限生かしていきたいと考えています。

会社としては、リーダーシップを取ってチームを率いてくれるような人材を創りたいと考えていますが、そういった人だけが生き残る会社にはしたくありません。

どのような人でも、その人が納得できるような生き方を仕事から学ぶことができるように、技術にヒューマニティを乗せて、人に寄り添った教育を続けていきたいと思います。

現在の取り組みを続けながら、次のチャレンジとして「70歳まで働くような時代になった際のシニアに対してのキャリア支援」「グローバルな社員の採用」に取り組んでいきたいと考えています。

これからは、20代で身に付けたスキルだけで60代まで働くことは非常に難しく、リカレントで新しい技術を習得しながら働くことが普通になるでしょう。

主人公が「人」であるとすれば「会社」が1つである必要は全くありません。

各個人がキャリアオーナーシップを持って、どのようなキャリアを歩みたいのか考える中で、会社は個々人のキャリアの通過点としてどのような支援をしていくのか、という考え方を大事にしていきたいと考えています。

 総括

今回、3社のお話を聞く中で、多くのアイデアや気付きを得ることができたと思います。

私個人としては、以下の4点について気付くことができました。

  1. 個人の自律的なキャリア形成支援だけを主眼にするのではなく、これからの会社のあり方とリンクさせることが大事!
  2. 自律的なキャリア形成には誰かとの対話が不可欠であるため、場面に応じた対話相手(上司・経営者・キャリアコンサルタントなど)を準備しておくことが必要。また、対話から得た情報を、その後の組織運営や制度設計にどのように使うことができるのかは検討の余地がある。
  3. そもそもの仕事のさせ方や組織風土も非常に重要であり、日々の仕事の中で、主体性や自律性を培っていくようなアプローチをすると良い。
  4. 会社側から社員にキャリアに対するメッセージを発信することで、ニーズのすり合わせをおこなうことがポイント!

ぜひ、今後の取り組みの参考として持ち帰っていただければと思います。

[Sponsored|グッドキャリア企業アワード事務局]

グットキャリア企業アワード2020|開催概要

開催日時:2021年3月1日(月)14:00~17:30
U
RL:https://career-award.mhlw.go.jp/award_ceremony.html

人事業務に役立つ最新情報をお届け!メールマガジン登録(無料)

HR NOTEメールマガジンでは、人事/HRの担当者として知っておきたい各社の取組事例やリリース情報、最新Newsから今すぐ使える実践ノウハウまで毎日配信しています。

メルマガのイメージ

関連記事

ホーソン実験とは?内容・結果・企業での活用例を簡単に解説

ホーソン実験とは?内容・結果・企業での活用例を簡単に解説

「ホーソン実験とは何に関係する実験か知りたい」 「ホーソン実験でわかったことを知りたい」 上記のような疑問をもつ方も多いでしょう。 ホーソン実験とは、労働者の生産性に影響を与える要因について調べるために実施された複数の実 […]

  • 組織
  • タレントマネジメント
2024.12.02
HR NOTE 編集部
仕事と介護の両立と人的資本経営①|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント♯14

仕事と介護の両立と人的資本経営①|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント♯14

ここまで経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」に基づき、各社の事例の紹介やその解説を行ってきました。 本項では、仕事と介護の両立支援が、企業における人的資本経営や健康経営、DEIの視点にどのよう […]

  • 組織
  • ダイバーシティ&インクルージョン
2024.12.02
金井一真
カタルシス効果とは?ビジネスで活用する具体例をわかりやすく解説

カタルシス効果とは?ビジネスで活用する具体例をわかりやすく解説

「カタルシス効果とは?」 「カタルシス効果のメリットは?」 「カタルシス効果をビジネス面で活用するための具体例を知りたい」 上記のような疑問や悩みをお持ちの方も多いでしょう。 カタルシス効果は、心に抱えている不安や悲しみ […]

  • 組織
  • タレントマネジメント
2024.12.01
HR NOTE 編集部
バーンアウトとは?なりやすい職場や予防方法を解説

バーンアウトとは?なりやすい職場や予防方法を解説

「従業員がバーンアウトかもしれない」 「バーンアウトを防ぎたいが方法がわからない」 上記のお悩みをお持ちではないでしょうか。バーンアウトは熱心に働いていた人が突然熱意を失う症状で、経験不足や職場環境などが原因です。 本記 […]

  • 組織
  • タレントマネジメント
2024.11.30
HR NOTE 編集部
チームビルディングとは?基本概念・やり方・具体例を簡単に解説

チームビルディングとは?基本概念・やり方・具体例を簡単に解説

「低コストで実施できる効果的なチームビルディングの方法を知りたい」 「チームビルディングの具体的な進め方を知りたい」 人事労務担当の中には、上記のようにお悩みのケースもあるのではないでしょうか。 チームビルディングは、チ […]

  • 組織
  • タレントマネジメント
2024.11.29
HR NOTE 編集部

人事注目のタグ