フリーアドレスで失敗しないために!導入前に知っておきたい課題と運用時のポイント

近年、オフィスに固定席を設けない「フリーアドレス」を導入する企業が増加しています。

2018年に世界最大の事業用不動産サービス会社CBREが調査したレポートによると、東京23区にある企業の47%が、またIT系に業種を絞ると約70%もの企業がフリーアドレスを導入しているようです。

そこで、本記事では「そもそもフリーアドレスとは何か」「フリーアドレスが多くの企業で導入されている背景」そして「フリーアドレスのメリット・デメリット」について、詳しくまとめました。

多くの企業で導入の進むフリーアドレスですが、実際に導入や運用をおこなう場合には、失敗しないために注意しておかなければならない課題もあります。

引き起こされる課題や運用時のポイントについても解説しましたので、導入時、および運用をおこなう際の参考にしていただければ幸いです。

1. フリーアドレスとは

そもそもフリーアドレスとは、オフィス内で社員が自由に働く席を選択できるワークスタイルのことを指します。

フリーアドレスを導入すると、「現在所属しているプロジェクトのチームメンバーの近くに座る」「作業に集中するときは静かな席へ移動する」など、社員はその日の業務内容や仕事の状況に合わせて、好きな場所を選んで働くことができます。

社員の生産性や働き方に関連した目的のもと導入されることが多く、オフィスのレイアウトを変えることでフレキシブルな働き方を促進したり、新たなイノベーションや創造性の活性化を推進したりすることが期待されます。

フリーアドレス浸透の社会的背景

フリーアドレスは、1980年代後半~1990年代にかけて大企業を中心に広まりましたが、当時はIT技術が普及していなかったこともあり、そこまで定着することはありませんでした。

このフリーアドレスが大企業以外でも導入されるようになった背景には、政府が主導する「働き方改革の推進」「IT技術の進展」が大きく関係しています。

現在では、スマートフォンやPCを1人1台持つことが当たり前となり、ペーパーレス化やクラウド化も格段に進みました。

このようなリモートワーク環境の整備が進んだことでオフィスに求められる機能が変わりつつあり、オフィスに社員の固定席を設ける必要性も薄れてきました。

「どこでもできる仕事はオフィス以外でおこなう」「何かしらの理由や目的がある場合にオフィスに出社する」といった働き方になった場合、目的に応じて席を決められるフリーアドレスの方が利便性が高くなるでしょう。

フリーアドレスのメリット・デメリット

ここで、フリーアドレスを導入することで、得られるメリットと一方デメリットになってしまう点について整理していきます。

メリット デメリット
コミュニケーションの活性化 帰属意識の低下
スペースの有効活用 誰がどこにいるかわからない
イノベーションの創出 導入コスト
デスクのクリーン化 集中の妨げ

 

フリーアドレスを導入するメリットは、自然に他部署の人と交流ができ、新たなイノベーション創出の機会を産むことができる点。

全従業員の椅子やテーブルを用意する必要がなくなるため、経費削減や新たに生まれたスペースの有効活用を考えることが可能な点となります。

また、フリーアドレスの席は共有の席であるため、仕事が終わればデスクを整理して帰宅することが習慣化され、社内全体がきれいに保たれる傾向があることもメリットの1つでしょう。

反対に、フリーアドレスを導入するデメリットは、部署やチームごとに毎日顔を合わす機会が減ってしまう点が挙げられます。

従業員が組織への帰属意識や愛着心を持てなくなったり、誰がどこにいるか分からなくなり、気軽に声をかけられなくなったりする場合もあります。

また、個人用キャビネットといった設備の購入費用や、オフィスレイアウトの変更に伴う工事費用、携帯やパソコンといった電子機器の整備などの導入コストが掛かることも考えられるでしょう。

2. フリーアドレスが抱える3つの課題

フリーアドレスを導入・運用する場合は、先述のようなフリーアドレスのメリット・デメリットをあらかじめ考慮しておくことが大事になります。

その際に、特にフリーアドレスを導入することで引き起こされる課題について押さえておきましょう。

<1>セキュリティ管理に関するリスク

フリーアドレスでは、作業しているデスクに収納スペースがありません。

一時的に離席する際に、鍵がついている個人用のデスクに資料を収納することができないため、盗難や紛失のリスクに遭ってしまうことが考えられます。

重要な書類の管理には、十分気を付けるようにしましょう。

<2>マネジメントの難易度が高い

フリーアドレスになると、お互いにどこにいるのか把握することが難しくなり、密なコミュニケーションを取ることがなかなかできなくなってしまいます。

この時に発生するのが、マネジメントに関する課題です。

マネージャーが部下の管理をできず生産性が落ちてしまったり、1人ひとりのメンバーとしても直属の上司に相談する機会が減ってしまう可能性が高くなります。

それぞれが近くで働いている姿を見ることができないため、マネジメントの難易度は格段に高くなるでしょう。

<3>メンバーのモチベーションが低下する恐れ

フリーアドレスになると、社員の組織への帰属意識が低下し、モチベーションを下げてしまう可能性があります。

組織への帰属意識は、毎日同じ部署や同じチームのメンバーと同じデスクを共有し、顔を合わせることで、育まれるものです。

こういった一体感が失われてしまうと、メンバーによっては業務に身が入らなくなったり、離職してしまう危険性もあります。

3. フリーアドレスを導入している企業の成功事例・失敗事例

ここで、実際にフリーアドレスを導入している企業の事例をご紹介いたします。

フリーアドレスの導入に成功している企業もあれば、何らかの課題があり、失敗してしまう企業もあります。

自社で導入・運用する際の参考にしてください。

成功事例①「ヤフージャパン株式会社」

ヤフージャパン株式会社では、社員同士のコミュニケーションを活性化させるために、デスクをあえてジグザクに設置しています。当然、移動の際には歩きにくくなってしまいますが、社員同士のコミュニケーションが生まれる機会を創出することに成功しています。また、壁にホワイトボードを設置するなど、どこでもすぐにMTGをおこなうことができる環境を整備したり、「集中スペース」を作ることで、作業に集中したい人のニーズも汲み取っています。

成功事例②「カルビー株式会社」

カルビー株式会社では、当初フリーアドレスを導入したにもかかわらず席の固定化が生まれ、導入の目的にはそぐわない状況となっていました。そこで、社員の当日の働き方に合わせて、最適な席を自動で案内するカルビー独自の仕組みを採用しました。この取り組みにより、社員の座席の固定化を改善しています。

失敗事例「某人材コンサル会社」

ある人材系の企業では、社員が60人いる部署でフリーアドレスを試験的に実施した所、組織が大混乱して10日間で中止になったと言われています。必要な場面で上司と部下のコミュニケーションを取ることができなかったり、お互いを探す手間が掛かり時間を無駄にするケースが発生してしまいました。

4.フリーアドレスを導入する際のポイント

それでは最後に、フリーアドレスの導入や運用をしていく場合に、どのような手順を踏むべきかポイントを整理していきましょう。

ステップ1:導入可否の判断

まず、フリーアドレスは企業によって向き・不向きが分かれるため、自社に適しているかどうかを判断する必要があります。

具体的には「フリーアドレスの導入に適した業種、また企業文化であるかどうか」「働き方改革推進にあたり、自社が抱える課題は何か」といった観点から、自社で導入できるか考えるようにしてください。

ステップ2:「ゴール」や「KPI」を設定する

フリーアドレスの導入を実施する上でのゴールや目標となるKPIを決めましょう。

具体的には、「なぜフリーアドレスを導入するのか」「フリーアドレスを導入して、何を達成したいのか」「フリーアドレスの導入効果は、具体的にどんな数字で評価するのか」といったことを社内全体で共有することで、フリーアドレス導入時の混乱を防ぐことができます。

また、具体的な数字目標を立てることで実際の効果を測定し、改善に向けたPDCAを回すことが大事になります。

ステップ3:トライアルで運用してみる

試験的に導入する部署を決め、トライアルで運用してみることが大切です。

チームアドレス、グループアドレスと順々に範囲を広げていくなかで、明らかになった問題箇所があれば、その都度対応していきます。

この過程で、不安や不満を抱える社員が出てくることが想定されるため、個別でしっかりと対応することが必要になります。

「社員にどのようなストレスが生まれるのか」「どのようなフォローがあれば問題は解決できるのか」を日々検討し、具体的な実行に移していきましょう。

この際には、フリーアドレス導入に向けたセミナーやワークショップを開催することで、社内全体の理解を得るような活動をすることも有効です。

ステップ4:運用ルールの決定

トライアルの結果をもとに、対応策を盛り込んだ最終的なルールづくりをおこないます。

明確なルールがないままにフリーアドレスを全社で導入しても、上手く機能することはありません。

「退勤時はデスクの荷物を全て無くして、濡れティッシュでふく」「前日と同じ席には座らない」といった細かいルールを決めていくことも大事になります。

ステップ5:必要な設備や環境を整備する

運用ルールを決定した後、全社導入に向けて、設備や環境を整えることも必要となります。

たとえば、作業に欠かせない無線LANの完備や、持ち運びやすいノートパソコンやタブレット端末の導入などが挙げられるでしょう。

また、共有の作業スペースだけでなく、個別デスクを用意した集中用のスペースを設計したり、ざっくばらんに交流ができるコミュニケーション用のスペースを作ったりと、トライアルでニーズがあると判明したエリアも必要に応じて設置をしていきます。

ステップ6:全社で導入する

フリーアドレスを実際に全社に導入します。

運用していく中では、さらに「こうしてほしい」という要望や新たな課題が発生していくことが考えられるため、担当者はこのような声を拾いながら、日々改善のPDCAサイクルを回していく必要があります。

5.まとめ

フリーアドレスはIT系企業を中心に導入が進んでいますが、今後はリモートワークの推進や、IT設備の発展により、ますます多くの業種で導入が進んでいくことが考えられます。

また、働く価値観の多様化が進む中で、求職者にとってワークスタイルが企業選択の大きなウェイト占めることが考えられます。

もちろん、デメリットも存在するフリーアドレスですが、新たな発見や予期せぬメリットを享受できる可能性もあります。

フリーアドレスが自社に適したワークスタイルなのかどうか、一度検討してみても良いかもしれません。

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