ビジネスシーンにおいて、「フィードバック」はとても重要です。
しかし、その適切な方法や得られる効果については、正しく理解できていない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、フィードバックの正しい意味や種類について紹介するとともに、適切なフィードバックをおこなうことで得られる効果やフィードバックを実施する際の注意点についてわかりやすく解説します。
「部下とフィードバック面談をする」「マネジメント層向けの研修でフィードバックについて取り扱う」といった際に参考となる例文も紹介しているので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
目次
1. フィードバックとは?意味をわかりやすく解説
フィードバックとは、「目標を達成するために行動した結果やその評価について、行動した主体者に具体的な言葉で伝え、次の行動に反映させること」を言います。
上司・部下間や顧客・消費者間など、ビジネスの様々な場面で活用されており、フィードバックがあることで、行動の主体者は次の行動を調整したり改善したりすることができます。
2. フィードバックの目的・効果
適切なフィードバックをおこなうことで、円滑な業務遂行、新たな視点獲得、仕事のパフォーマンス向上などにつながり、目標達成に向けたさまざまな効果が期待されます。
ビジネスシーンにおけるフィードバックの目的・効果は以下の4点です。
- 人材育成
- 社員のモチベーション・エンゲージメントの向上
- アウトプットの最大化による業務能力向上
- 組織の目標達成
<1>人材育成
上司が部下の課題・悩みを把握し、改善に向けた取組みを促すことで、部下の育成・成長につなげていくことが可能となります。
人材育成という社員教育的な観点からの定期的なフィードバックは、ビジネスシーンにおいて一般的なフィードバックと言えるでしょう。
<2>社員のモチベーション・エンゲージメントの向上
定期的なフィードバックを実施することで、部下の行動に対して適切な評価をすることが可能となります。
上司・部下の間に信頼関係ができることで、仕事への意欲は高まることが考えられます。
また、適宜フィードフォワードを混ぜていくことで、さらに高い目標に向かうモチベーションを生み出すことができます。
<3>アウトプットの最大化による業務能力向上
定期的なフィードバックをおこなうことで、フィードバックを用いたPDCAを回すことが可能となり、常に改善に向けた取組みを実施している状態を作ることができるようになります。
結果として、フィードバックを受けた部下のアウトプットが高まり、業務能力の向上につながります。
<4>組織の目標達成
部下の業務の進捗管理に加えて、部下の行動やモチベーションをよりベストな状態へ導くことで、組織内の目標を達成する確度を高めていくことができます。
また、組織の目標を達成するためには、顧客からのフィードバックも真摯に受け止めて、次に取るべきアクションを調整・改善する必要があります。
3. フィードバックが注目される背景
フィードバックは個人の成長・育成を促進させるだけなく、組織開発に対しても効果的な手法として注目されています。
背景として挙げられるのは、次の5つです。
<1>人材の多様化
外国人労働者、非正規雇用者、女性の社会進出などの人材の多様化が進んだことで、組織の一体化の確保が難しくなった
<2>管理者層の若年化
管理者になるための十分な準備期間がなく、若くして突然管理職に昇進することで部下への指導力が低い社員が増えた
<3>多忙さによる部下育成の欠如
経営効率化のために管理者層一人ひとりの仕事範囲が広がり、部下の数も増えたことで部下への育成に手が回らなくなった
<4>プレイングマネージャーの増加
現在の管理者層はプレイングマネージャーとしての役割を担っている人が多く、部下一人ひとりときちんと向き合う時間が減った
<5>価値観の変化
若年層の組織への帰属意識の低下や各ハラスメントに対する意識が上がったことを受け、育成の難易度が上がっている
このように多くの企業では様々な要因によって「人材育成に課題」を抱えている状況に陥っています。こうした課題を解決する手段として、正しいフィードバックをおこなうことが有効とされています。
具体的には組織内で上司が部下に対して適切なフィードバックを実施することで、部下は自分自身の現状課題を認識できます。
その課題解決のために行動を起こし、その行動に対して再フィードバックを受けることで次に取るべき行動を調整でき、部下の成長が促されます。
フィードバックを出発点としたPDCAを組織内で作り出すことで、上司・部下間のコミュニケーションが活発になり、信頼関係を構築していくことが可能となるのです。
また、これに加えて、自由闊達な組織風土が形成され、一人ひとりが働きやすい組織を作ることにもつながります。
4. フィードバックの種類
ビジネスシーンにおけるフィードバックの種類は大きく分けて2つに分類されます。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックとは部下の行動や言動に対して、前向きな表現を使ってフィードバックを返し、部下の成長を促す手法です。
否定的な表現を控えることで、部下自身の自己肯定感・意欲・自発性を高めて、迅速な成長を狙うことが期待できます。
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックとは部下の行動や言動に対して、あえて否定的な表現を使ってフィードバックを返す手法です。
ポジティブフィードバックとは対極にあり、相応しくないと勘違いされますが、あえてネガティブな表現で返すことにより、何が問題なのかを部下自身が自分の頭で考える力および状況打破する力を身につけさせることが可能です。
5. 【例文付き】面談で効果的なフィードバックの方法
フィードバックには、主に以下の3つの種類があります。
- SBI型
- ペンドルトン型
- サンドイッチ型
の3つの基本の型があります。これらの型に当てはめてフィードバックを実践すれば効果を高めやすなります。
それぞれの手法の具体的な内容や気をつけたいポイント、面談などで使える例文を紹介するのでチェックしてみましょう。
<1> SBI型
SBI型とは、状況を意味するSituation、行動を意味するBehavior、そして影響を意味するImpactの頭文字を取ったものです。
SBI型はその名の通り、状況から行動へ、さらに影響へという順番でフィードバックを行います。フィードバックを実践するときには、どのような状況のとき、評価される人のどのような言動が、どのように結果として現れたのかを順を追って考えていきます。
SBIのそれぞれの項目を具体的に共有しましょう。状況の項目では日時や場所を特定できるようにします。また、行動の項目では事実にフォーカスして具体的な内容を伝えます。プラスの影響があったときには相手の行動の良かった点を強調しましょう。一方、マイナスの影響があったときには強い言い方にならないよう配慮が必要となります。
状況と行動、影響を整理できるSBI型には、評価される側にとってわかりやすいというメリットがあります。自身の行動がどんな結果をもたらしたのかを具体的に把握できるため、内省につながりやすくなるといえるでしょう。
【SBI型の例文】 「ミーティングで論点がずれそうになったとき、「今回のミーティングのテーマは○○だよね」と、本質的な課題を提示してくれましたね。そのお陰で、メンバーは論点に即した意見を出し、活発なミーティングになりました。ミーティングの生産性が向上し、課題解決につながる意見も出たのでとても助かりました。」 |
<2> ペンドルトン型
ペンドルトン型は心理学者ペンドルトンが開発したフィードバックの形式です。ペンドルトン型の大きな特徴は、1対1の対話の中で起承転結を意識したフィードバックを行うという点にあります。
まずは起承転結の起の要素として、これから話す内容を共有します。続いて承の要素として良かった点を評価しましょう。転の要素として改善点を伝えたあと、結の要素として今後のフィードバックをおこない、内容をまとめます。
一方通行のフィードバックを行うのは避け、対話形式でフィードバックを進めるのがペンドルトン型のポイントです。対象者が問題点を考え、自身の言葉で表現する機会を設けることで、より深い内省ができます。フィードバックの内容を互いに認識し、次の方針を建設的に検討できるのも、ペンドルトン型を取り入れる大きなメリットです。
【ペンドルトン型の例文】 「昨日の打ち合わせ資料について話をしましょう。情報収集が丁寧で、根拠もあってわかりやすく仕上がっていましたね。ただ、資料作成の生産性をもう少し上げられるかもしれませんね。今後も同じような内容の資料を作成することもあるので、フォーマットを作成してみるのはどうでしょうか?どのような項目を含んだフォーマットにするとよさそうか、何かアイデアはありますか?」 |
<3>サンドイッチ型
サンドイッチ型とは、ポジティブな内容にネガティブな内容を挟んでフィードバックする方法です。
最初によい評価を伝えた上で課題を指摘し、最後にもう一度ポジティブなフィードバックをおこないます。この手法の場合、最初と最後によい評価を得られるので社員のモチベーションを維持しやすく、ネガティブな評価も受け入れやすくなります。
【サンドイッチ型の例文】 「プレゼンの内容がとてもよく、先方も弊社に対してよい印象を持ってくれたようです。ただ、プレゼンではやや声が小さく、先方の様子をあまり確認せずに進めてしまっていたのが気になりました。プレゼンの内容は精度が高く、後輩社員にも刺激となりました。次回移行は、先方の立場に立ったプレゼンの仕方を考えて取り組みましょう。」 |
6. 正しいフィードバックをおこなうためのポイント
ここまでで、具体的なフィードバックの方法について説明しましたが、さらに正しいフィードバックをおこなうためのポイントについてご紹介します。
<1> 「ティーチング」「コーチング」を区別する
組織内でのフィードバックを行う際に気をつけておきたいことは、「ティーチング」と「コーチング」の違いを理解してきちんと区別して活用することです。
「コーチング」の方法やメリット・注意点を解説|おさえるべき4つのポイントとは
これら2つを対比させながらまとめると以下の通りです。
ティーチング |
コーチング |
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目的 |
業務遂行に必要な知識やスキルを直接指導し、部下の知識やスキル向上に繋げる |
部下自らが答えを導き、結果として自身の成長やモチベーションUPに繋げる |
手法 |
伝える,教える,手本を見せる |
質問,傾聴,引き出す |
対象者 |
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メリット |
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デメリット |
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適した内容 |
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適したフィードバックを実施するためには部下の特徴によってティーチングとコーチング、それぞれのスキルを使い分けることが重要になります。
そのため、正しく違いを理解するようにしましょう。
<2> フィードバックで注意すべき4つのポイントを意識する
フィードバックは、むやみやたらに実施すれば良いというわけではありません。
効果的なフィードバックを実施するためには注意しなければならないポイントがあります。
①タイムリーに伝える
フィードバックは部下が行動した後、できる限り早いタイミングで実施するようにしましょう。
時間が空いてしまうと状況が変わったり、部下の記憶も曖昧になったりするので、タイムリーに伝えることがベストです。
②部下の能力を加味する
適切なフィードバックを実施したとしても、受け手側の部下に能力が無く理解が乏しい場合は効果を発揮しづらくなります。
部下の能力に合わせて達成可能な範囲のフィードバックを実施することが重要です。
③適切な表現で伝える
部下のモチベーションを上げて行動させるためには、適切な表現で伝えることが必要になります。
不適切な表現でや一方的なフィードバックをすることで、反対に部下のやる気を低下させてしまう可能性もあります。
④信頼関係を構築できているか
フィードバックでは改善点を指摘することになるため、信頼関係がなければ相手側は素直に受け取ってくれません。
フィードバックを実施する上でベースとなるのは、上司・部下間の信頼関係の構築であることを念頭に入れておきましょう。
<3> フィードバックを利用した、人事施策の事例をチェックする
最後に、企業の人事施策としてフィードバックを活用している事例をご紹介します。
もっとも代表的な事例は、Yahooが導入して注目が集まった「1on1ミーティング」です。
これは上司・部下間で定期的なミーティングをおこない、業務の目標管理や進捗管理のみならず、業務の課題や抱えている悩みを共有することで、部下の成長を促進させる人事育成手法です。
1on1ミーティングでは、先ほど紹介したティーチング・コーチングを部下によって使い分け、フィードバックのPDCAを回すことで部下の育成・成長に繋げていくことが可能となります。
7. 適切なフィードバックを実施して社内の活性化に役立てよう!
ビジネスシーンにおけるフィードバックの概要から適切な方法、その効果、実施時の注意点に至るまで詳細に解説してきました。
組織の活性化や人材育成の観点からもフィードバックの有用性は高まっており、人事施策にフィードバックの考え方を導入する企業も増えています。
ぜひ適切なフィードバックの方法について知り、今後の社内活性化に役立てていきましょう。