会社にとって従業員は大切な資源です。特に少子高齢化が進み働き手の減少が予想される今後は、従業員はより貴重な存在となります。しかし、会社の状況によって従業員が定着しない、従業員の生産性が低いといった課題が考えられます。従業員の定着率や生産性を向上させるために役立つのが、従業員サーベイです。今回は従業員サーベイについて解説します。
1. 従業員サーベイとは?
従業員サーベイは従業員が自分が勤務する会社に対して満足しているかを測る調査です。具体的には会社内の人間関係や環境などについての質問項目を用意して、従業員がどのように満足しているか、あるいは不満を抱いているかを確認します。
従業員サーベイを実施する目的は組織の改善です。それ以外にも従業員が会社に満足している点を伸ばし、不満を抱いている点を改善することで、採用活動にも活かせます。
2. サーベイの種類
従業員サーベイの「サーベイ」とは、対象となる物事の全体像を把握するための調査を意味します。従業員サーベイ以外にも、企業が取り組むサーベイはいくつもあります。
2-1. 社員の意欲の引き上げが期待できる「モラールサーベイ」
モラールサーベイは、従業員が会社や組織の目標達成のために、どれだけ意欲をもって臨んでいるかを測ります。会社や組織が目標を達成するためには、従業員の意欲や積極性は欠かせません。そのため、モラールサーベイによって従業員の意欲を測り対策を講じることで、目標達成に必要な従業員の意欲引き上げが期待できます。意欲のある従業員は生産性が高く、さらに会社に定着する可能性も高いといえます。
2-2. かんたんなチェックを短期間に繰り返す「パルスサーベイ」
パルスサーベイは5分ほどで回答できるかんたんな質問で、従業員の意識やどのような状態にあるかを把握します。パルスサーベイの特徴は実施するスパンです。従業員サーベイやモラールサーベイは年に1回もしくは数ヶ月に1回実施するのに対して、パルスサーベイは数日に1回、週に1回、月に1回といったように短いスパンで実施します。短期間でサーベイを実行することで、従業員の変化を少ないタイムラグで確認できます。
2-3. 従業員の自社への愛着を測る「エンゲージメントサーベイ」
エンゲージメントサーベイは、従業員が持つ自社への愛着や貢献する姿勢を測ります。従業員が自社に愛着や貢献しようとする姿勢を持っていれば、生産性の向上や離職率の低下につながります。
3. 従業員サーベイのメリット・デメリット
従業員サーベイは、実施することで業務効率化や定着率の向上につながります。一方で、実施コストがかかる、従業員が不信感を抱く可能性があるといったデメリットも挙げられます。
【メリット】1.会社が抱える課題を解決して業務を効率化
従業員サーベイで従業員の意見を集めることで、従業員が感じている会社の問題点や課題を解消できます。従業員が抱える問題が解消されることで、業務の効率化や生産性の向上につながります。
【メリット】2.従業員が納得して働ける環境をつくれる
従業員サーベイで得た従業員の意見を基に、会社の方針や方向性を決められます。従業員の意見を反映することで、従業員が納得して働ける環境をつくることができるでしょう。従業員が納得して働ける環境があれば、離職率低下が期待でき、優秀な人材の流出を防げます。
【デメリット】1.実施にコストがかかる
従業員サーベイを実施するためには質問の作成や集計、分析に人的コストが発生してしまいます。さらには質問を回答する側である従業員の時間も割いてしまうため、生産性の低下が危惧されます。
【デメリット】2.従業員の不信感が増大してしまう可能性がある
初めて従業員サーベイを実施するとなると、従業員は回答結果がどのように活用されるか不安になってしまうかもしれません。場合によっては自分の回答が他の従業員に伝わってしまうのではないかという不安を感じる従業員もいるでしょう。
また、せっかく回答したのにも関わらず意見が反映されなければ、従業員の不信感増大につながってしまう恐れもあります。
4. 従業員サーベイを実施するときの注意点
従業員サーベイは従業員からの回答が集まらなければ、効果が期待できません。従業員からの回答を集めるためには、従業員サーベイ実施の目的や情報の取扱について事前に伝えておきましょう。また、従業員サーベイの精度を高めるために質問内容も十分な検討が必要です。
4-1. 従業員サーベイ実施の目的を伝えておく
従業員サーベイを実施するときは「なぜ実施するか」という目的を伝えておきましょう。従業員に目的も伝えずに質問への回答を依頼してしまうと、不信感を抱かれるかもしれません。従業員の不信感を和らげるためには、知り得た情報の取扱についても伝えておくことが大切です。従業員サーベイのためにしか使用せず、閲覧者も限られていることを伝えることで、従業員の不安をさらに緩和できます。
4-2. 従業員サーベイの対象とする従業員に網羅性をもたせる
従業員サーベイは多くの従業員を対象とする必要があります。例えば正社員だけを対象とする、管理職だけを対象とするといったように、対象を限定してしまうと正確な結果が集められません。対象を限定すると、上がってくる回答も限定的になってしまうため、対象となっていない社員の課題や問題点を解決できません。
4-3. 質問は現状の課題に則した内容にする
従業員サーベイで用いる質問は、現状の課題に則した内容にします。一般的な質問だけでは、自社の問題点や課題の解消にはつながりづらいでしょう。自社の問題点や課題に則した仮説を立てて質問を用意します。
4-4. 回答結果を分析して施策を講じる
従業員サーベイは質問に回答してもらうだけではメリットにつながりません。従業員の回答を分析して、課題や問題解消のための施策を講じることで、従業員の生産性や定着率向上につながります。
施策を講じないことは、従業員の生産性や定着率が向上しないだけではありません。何も施策が講じられないと、時間を割いて回答した従業員が不信感を抱いてしまう恐れがあります。従業員が不信感を抱いてしまうと生産性や定着率の向上ではなく、低下につながりかねません。
5. 従業員サーベイを活用して生産性や定着率の向上につなげよう
従業員サーベイを実施することで、従業員の会社に対する満足度が数値化できます。この結果で明らかになった課題や問題に対する施策を講じることで、従業員が働きやすい環境が整えられます。その結果、従業員の生産性や定着率の向上につながります。
従業員サーベイを実施する際は、従業員に実施の目的や情報の管理方法を伝えるのに加えて、多くの従業員を対象としましょう。また、質問は自社の問題点や課題に則した内容にすることが大切です。
従業員サーベイ実施のポイントを押さえて、従業員の生産性、定着率向上につなげましょう。
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