近年、日本のビジネスにおいて(デジタルトランスフォーメーション)の需要が非常に高まっています。しかし、DXを先導し推進していく立場に当たる「DX人材」の不足が現在大きな課題となっています。
DXを推進できる人材は非常に需要が高く、採用の競争率が高いため自社の既存社員をDX人材へ育成を行うことがおすすめです。
本記事ではDX人材に求められるスキルから効果的な育成方法までご紹介します。
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目次
取り組みに向けたファーストステップを事例中心に解説!
上場企業における人的資本の情報開示が既に義務化された中、全ての企業において人的資本に関する情報開示を進めていく必要性が叫ばれ始めています。しかし、まだ具体的に何から始めたら良いかイメージできていない企業のご担当者の方も多いのではないでしょうか。本講演では、人的資本経営に関する多数の発信をおこなっているUnipos株式会社の田中氏に、「人的資本経営」に取り組むメリットや自社で実現するための方法に関してご紹介いただきます。
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1. 経済産業省の定めるDX人材の定義
DX人材という概念は、広い意味で用いられることが多く、まだ明確な定義づけはされていません。経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」のガイドラインでは、DXを以下のように定義しています。
DX人材は、これらの目標を達成するため、データとデジタルの知識・技術を持ち、事業者とも適切な連携をとることのできる人材のことを指します。
2.DX人材育成が求められている背景
日本のデジタル化は他の先進国に比べ停滞しており、現状のままでは莫大な経済的損失が生じるといわれています。業務を効率化し競争率を上げ、日本経済を回復させていくために、DX人材のニーズは非常に高まっているのです。
しかし、DX人材は需要が高く競争率が高いため、採用での獲得は非常に困難になっています。そのため、既存社員にDXスキルを身に付けさせる「DX人材育成」が注目を集めています。
3. IPAが定めるDX人材の職種
情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2021」によると、デジタル事業に対応する人材として以下の七つの職種があげられています。
3-1.プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーとは、顧客に提供する製品や自社サービスの利益の最大化を図る存在です。そのためにマネジメントや製品の管理を行ったり、顧客満足度を高めるための経営戦略を提案し自社事業を成功へ導く責任あるポジションであり、DX推進を先導するもっとも重要な立場となります。
3-2.ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーとは、プロダクトマネージャーが立案したアイデアを実現させるため、計画実現までの具体的なスケジュール・必要な要素を構築する職種です。アイデアを事業として成功させるため、提案されたアイデアを具体的なビジネスに落とし込む構築力、企画の段階で現状の問題点を発見するための課題発見力が求められるポジションです。
3-3.テックリード
テックリードとは、「デジタルビジネスに関するシステムの設計から実装ができる人材」と定義されており、DXに関するシステムの基板の設計、構築を担う存在です。エンジニアリングマネージャー、アーキテクトとも呼ばれ、ビジネスデザイナーにより設計された企画案を達成するためのシステムを設計から実装までの役割を持っています。システム開発だけでなく、経営者の視座をもって、企画実現の課題解決策を講じる必要のある重要なポジションです。
3-4.データサイエンティスト
データサイエンティストは、自社事業に必要な情報を集め、分析を行う専門家です。収集した情報をもとに、自社のビジネスをさらに発展させるために必要なデータを自社に提供するという役割を持っています。データサイエンティストには、プログラミングスキルやIT・ソフトウェアへの知識はもちろんのこと、自社の事業戦略を分析しそれをさらに高める戦略を考案するビジネススキルも求められています。
3-5.先端技術エンジニア
先端技術エンジニアとは、AIやブロックチェーンといったハイテクノロジーの開発、データ解析を扱う人材です。あらゆる業界でIT技術の需要が高まっており、ITに関する専門性の高い技術、知識を持った先端技術エンジニアは、今後さらに注目を集めていくことが予想されています。
3-6.UI/UXデザイナー
UI/UXデザイナーは、ユーザーの目線に立ってシステムをデザインするエンジニアです。よく混同されがちですが、UIとUXは異なった概念とされています。UIデザイナーはユーザーが閲覧するwebページの構成をデザインし、より見やすく使いやすいwebサイトを作成する仕事です。一方UXデザイナーは、ユーザーが楽しんで使用することのできるwebサイトを運営する仕事です。UXデザイナーはwebサイトの作成やデザインだけでなく、製品サービス提供など、ユーザーがサービスを心地よく利用するためより広い範囲でユーザーをサポートする仕事です。
3-7.エンジニア(プログラマ)
エンジニアは、クライアントやユーザーのニーズに答えるための設計書の作成、そしてそれに基づいたプログラミングを実行し、システム開発を担う人材です。プログラミングへの知識と技術だけでなく、潜在的な顧客ニーズを正確に理解し設計書に落とし込む理解力、思考力が求められます。
4.IPAが定めるDX人材のスキル
IPAは、DXに対応する人材に求められるスキルとして、以下の6つを設定しています。
・不確実な未来への創造力
・臨機応変/柔軟な対応力
・社外や異種の巻き込み力
・失敗した時の姿勢/思考
・モチベーション/意味づけする力
・いざというときの自身の突破力
・不確実な未来への創造力
最先端の技術の習得のため、今までにない分野の学習や取り組みに対し高い好奇心と明確な意思をもって目の前のタスクに挑戦する姿勢が求められます。
・臨機応変/柔軟な対応力
極めて流動的なIT市場においては、マニュアル通りのマネジメントだけでなく、その場の状況に応じた適切なマネジメントが求められます。計画の進捗状況や状況の変化に柔軟に対応し、適宜計画に必要な要素を取捨選択していくことが重要とされています。
・社外や異種の巻き込み力
DXの推進において、他者との関わり方は非常に重要です。対立するメンバーをプロジェクトに巻き込み、他者との交わりを自らの成長や変化の要素として昇華する力が必要です。
・失敗した時の姿勢/思考
計画実行の過程で行き詰まりや失敗に直面した際、停滞することなく前に進む姿勢を持つことが非常に重要です。自らの失敗を糧とし、より良い成果を上げるため高い行動力をもって計画を推進していくことが大切です。
・モチベーション/意味付けする力
最新技術の習得には、学びに対する好奇心や主体性といった前向きな姿勢を持つこと、そして自主的な課題設定が不可欠です。現状の自身の課題を明確化し、どのように課題を解決していくか正確に認識している必要があります。
・いざという時の自身の突破力
計画の実行の際、予想外の出来事や困難な状況に陥ってしまうことがあります。そんな時、あきらめず突破口を見つけ出しメンバーを導くリーダーシップ、責任感を持つ人材は非常に重要です。
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5.DX人材育成を成功させる手順
前項ではDX人材が求められる背景について解説してきましたが、実際にDX人材を育成するためにはどのような手順を踏めばいいのでしょうか?本項ではDX人材の育成を成功させるための4ステップを紹介していきます。
5-1.DXに向いている人材を選出する
DX人材の育成を行うためには、本記事の3項で解説した「IPAの定めるDX人材のスキル」を持った人材を選出する必要があります。DXに対応する人材には、特に主体性や好奇心、課題設定力が重要です。これらのスキルを持ち、自社のDXの課題に対応することのできる人材の選出を行いましょう。
5-2.座学研修で知識とマインドセットを身に付ける
人材の選出を行ったら、DX推進に必要な知識や心構えを身に着ける必要があります。DXに関する専門的な知識を習得するだけでなく、チーム全体で計画を実行していくためのチームマネジメントスキル、リーダーシップの育成も非常に重要です。座学での研修や講義を行い、デジタルスキルの学習、DX推進に携わるマインドセットを行います。
5-3.OJT研修で実行に移す
座学にてインプットした知識やマインドセットをOJT研修によりアウトプットを行います。座学で得た知識を実際の業務で活用していくのか考え、自身の課題を発見し解決方法を模索する訓練を行います。OJTを通じて選出者それぞれがどのようなスキルを持っているのか見極め、適材適所の人員配置を行うことも非常に重要です。
5-4.ネットワークを構築する
最後に、ネットワークの構築を行います。非常に流動的なIT業界では、常に最先端の情報を手に入れる環境を設定する必要があります。社内のみならず社外の情報にも精通したネットワークを構築しましょう。
6.DX人材育成の「よくある課題」
DX人材育成の手順についてご理解いただけたでしょうか。しかし、前項の通り手順を踏んでいても、予想外の課題に直面することはよくあります。本項ではDX人材の育成を行う上で生じる「よくある課題」について紹介しつつ、解決方法を解説していきます。
6-1.到達目標が定義されていない
企業がDXの推進の目的や、その先にある自社の目指す将来像を設定せず研修を実施してしまうことがよくあります。DX推進の到達目標が明示されていないと、受講者の会社への所属意識やモチベーションを低下させたり、自身の将来のキャリアに不安を感じてしまう恐れがあります。自社のさらなる成長のため、DX推進による自社の到達目標を示し、従業員に高いモチベーションを持って研修に参加してもらうことが非常に重要です。
6-2.受講者のフォローアップ不足
研修での学習効果を高めるためには、研修受講後のフィードバックやアウトプットが必要不可欠となります。最先端のデジタル技術を扱う研修を実施しても、その後受講者がその技術を実践していくまでのフォローアップが充足していないと、学びが定着せず業務に生かすことができなくなってしまいます。受講者が技術を習得し業務に適応できるようになるまで目を配ることが大切です。
6-3.経営層と現場層の意思疎通
研修制度の充実、受講者のフォローアップなどDX推進に向けた取り組みをしていく中で、計画を立案し実行する現場層とそれらに対して意思決定を下す経営層との連携が取れていることが非常に重要です。新たな技術を導入していくためには、既存のルールを見直し、必要に応じて変革が求められることがあります。経営層が現場の意見を取り入れ、状況に応じた柔軟な対応をとる必要があります。
7.DX人材育成を成功させた企業事例
最後に、実際にDX人材の育成に成功した企業の事例をいくつかご紹介します。
7-1.ダイキン工業
1社目は、ダイキン工業株式会社です。ダイキン工業株式会社では、自社のAI技術の活用することのできる人材を育成するため、2017年12月に「ダイキン情報技術大学」を設立しました。ダイキン情報技術大学では、情報系大卒新入社員約300名の中から、希望者100名を選抜し、事業ビジョンの共有やコンピュータシステムの基礎教育から、実際の業務の現場に参加し技術協力を行う応用教育まで、約二年間の長期的な研修を実施しています。
7-2.関西電力
2社目は、関西電力株式会社です。関西電力株式会社は、2018年6月に現社長をトップとしたDX戦略委員会を立ち上げ、その戦略のもとアクセンチュア株式会社と共同でK4 Digital株式会社を設立し、自社部門と連携しDX人材の育成を行っています。可視化ツール研修、データ分析基礎研修などを通じたデジタルへの理解を深める研修から、実際にK4Dへ出向し実務経験を積む機会を提供することで高度なデジタル人材の育成を進めており、2025年度までにDX人材を現在の2.4倍である1000人以上に増やすことを明らかにしました。
7-3.SOMPOホールディングス
3社目は、SOMPOホールディングスです。SOMPOホールディングスは、社内外の問題を発見する力やデジタルを活用して解決する力を備えた「DX企画人材」の育成に注力しており、自社の全社員に対しDX基礎研修、デジタルに関する技術研修を実施し人材の育成に力を入れています。
7-4.日清ホールディングス
最後は、日清ホールディングスです。日清ホールディングスは「デジタルを武装せよ」というスローガンを掲げており、業務改善システムの内製化を目指し、従業員のデジタルスキル向上に取り組んでいます。
8.まとめ
あらゆる業界においてデジタル化が進行する昨今では、DX人材の育成は非常に重要です。デジタル化が他国に比べ遅れている日本では、どのようにして最新技術を活用できる人材を獲得するかが大きな課題となっています。自社でDX人材を育成することで、自社のビジネススタイルに合ったIT技術の流入が可能になります。DX人材に必要なスキルや適性を深く理解し、適切な教育を施すことで既存社員のポテンシャルを最大限に活用し自社のさらなる躍進につなげていきましょう。
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