デザイン思考とは?デザイン思考のプロセスやワークショップ事例をご紹介 |HR NOTE

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デザイン思考とは?デザイン思考のプロセスやワークショップ事例をご紹介

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近年、技術の進化により様々なテクノロジーやプロダクトが生まれています。ユーザー側が商品を選択できる幅が広がりつつある中で、消費者から選ばれるサービスを創出するためには「ユーザー視点」を持ってプロダクトを企画したり、プロジェクトを推進したりすることが求められていることでしょう。

しかし、このようなスキルは一朝一夕で身に付けられるものではありません。特に、入社したばかりの新卒社員や若手社員などは、経験も乏しくなりがちです。

そこで本記事では、ユーザー視点を持ってアイデアを創出するために必要な「デザイン思考」について、どのように身に付けることができるのか、そのプロセスや実際に身に付けるためにおこなったワークショップ事例についてご紹介します。

そもそもデザイン思考とは何か、養うメリットとは何か、という部分からご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。

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1. デザイン思考とは

デザイン思考とは、デザインを考案する際に用いる思考プロセスを、ビジネス上の課題解決のために活用する考え方のことです。

デザイナーはデザインを作成する際、ただ見た目を整えるのではなく、「誰に、何を、なぜ、いつ、どこで」伝えるものなのか、というような意図をもって制作しています。

そのようにユーザーの状況を具体的に定義して制作するプロセスを、ビジネスの課題解決に応用することでユーザーのニーズに合ったアイデアやプロダクトを創出することが可能になります。

2. デザイン思考を導入したプロダクト事例

では、まず初めに、実際にデザイン思考についての理解を深めるために、デザイン思考を導入して成功した企業の事例を3つご紹介します。

2-1. Appleの「iPhone」

iPhoneが登場するまでの国内メーカーの開発は、市場調査によりニーズを調べ、インパクトを与えられるような商品の開発に専念していました。

しかし、iPhoneはユーザーの潜在的欲求を追求して制作されたものであり、結果国内メーカーの携帯事業撤退に追い込まれるほど爆発的なヒットを遂げました。

2-2. ダイソンの「コードレスクリーナー」

かつて、容器のキャップのネジに歯磨き粉がついて乾き、キャップが閉まらなくなるのがユーザーにとっての悩みでした。

そこでワンタッチ開閉式で解決を図りましたが、使い方が分からないユーザーが多く解決には向かいませんでした。

しかし、徹底的に現場で顧客の観察をし、打ち出した改善案が大好評でヒット商品になりました。

2-3. P&Gの練り歯磨き粉「クレスト」

キャップのネジに歯磨きがついて乾き、キャップが閉まらなくなるのがユーザーにとっての悩みでした。そこでワンタッチ開閉式で解決を図りましたが、使い方が分からないユーザーが多く解決には向かいませんでした。

しかし、徹底的に現場で顧客の観察をし、打ち出した改善案が大好評でヒット商品になりました。

3. デザイン思考のプロセス

いかがでしたでしょうか。デザイン思考が、いかにユーザーに寄り添ったものなのか分かったかと思います。

それでは、次に、デザイン思考をするために必要な5つのステップを紹介します。

3-1. 観察・共感(Empathize)

まずは、ユーザーインタビューやユーザーテストでの観察を通して、調査したいプロダクトに対してユーザーが何を思っているのか情報収集を行います。

主観ではなく、あくまでユーザーの視点に立ち、収集した情報からユーザーが何に不満に感じ、何を必要としているのかなど、発言の背景を想像しながら深堀りしましょう。

ユーザーインタビューのコツ

インタビューしたユーザーがターゲットと異なっていたり、インタビューの事前準備が整っていないことが要因で集めた情報が参考にならない場合もあります。事前に準備すべき内容を一部まとめましたので、参考にしてください

  • 検証したい内容の整理
    • 検証したいプロダクト
    • 調査目的
    • 何を明らかにしたいのか
  • インタビューするユーザーの条件の設定
  • インタビュー人数の設定
    • 一般的に、5~6人にインタビューするとある程度傾向が分かるといわれている

    3-2. 定義(Define)

    次に、集めた情報をもとにユーザーが抱えている潜在的なニーズが何かを深堀り、誰のどんな課題を解決すべきか定義します。

    そして、今後の方向性の認識がぶれないように、最終的に成し遂げたいプロダクトの状態を言語化しておきましょう。

    3-3. 概念化(Ideate)

    ゴールと問題定義が出来たところで、ブレインストーミングやKJ法、オズボーンのチェックリストなどのフレームワークを利用し、解決策のアイデアをできる限り多く出していきます。

    その際、ゴールと課題をより具体的に定義しておくことでアイデアを生み出しやすくなります。

    3-4. 試作(Prototype)

    いくつか解決策のアイデアが決まったら、検証に向けて試作します。

    その際重要なのは、時間やコストをかけて完璧にアイデアを再現するのではなく、低コストでスピード感もって簡易的な試作品を作っていくことになります。

    また、実際に試作することで、アイデアが可視化され、開発メンバーが技術的な実現可能性を図ることができたり、概念化の段階では気付かなかった点が判明し、さらに新しいアイデアがみつかったりすることにも繋がります。

    3-5. 検証(Test)

    試作段階で得た改善点や感想などをもとにまずは社内で検証し、その後、作成した試作品をユーザーに使用してもらいます。その際、使用方法を説明せずに、試作品をユーザーがどう使用するのかを観察していきます。

    そして、ユーザーが使用したときの反応や感想、質問などを観察し、試作品のブラッシュアップを図っていきましょう。また、検証項目が多い場合は、優先順位をつけ、検証と改善のサイクルを小さく回せるとプロダクトの精度が高まります。

    以上5つのプロセスは必ずしも順番通りではなく、場合によっては同時並行や行ったり来たりしても構いません。

    検証段階で課題がないということは基本的にあり得ないため、素早く課題設定と検討のサイクルを回すことが、留意すべきポイントであり、最善策を見つけるために必要なことです。

    4. デザイン思考を身につけるメリット

    ここで、デザイン思考を身に着けることのメリットについて、3つご紹介します。

    4-1. 質問力や思考力が上がる

    デザイン思考の過程の中では、ユーザーへのインタビューやユーザーテストの実施を通してユーザーのニーズを定義し、課題解決の手法を考えます。そのため、制作側だけの思い込みのみで制作することはありません。

    これらの工程の中でユーザーのニーズ理解に向けて質問の聞き方等を工夫することになるので、ユーザーの気持ちを理解するための質問力が強化されます。

    また、情報収集してから「何がユーザーの潜在的なニーズなのか」をあらゆる角度から考え、自問自答し続けることで思考力が上がります。これらをチーム内でも追及し続けることで自他ともに成長できるメリットがあります。

    4-2. アイデアの提案が習慣化される

    概念化の段階では、現実的か否かに関わらずできる限り多くのアイデアの創出に努めることが促進されています。

    このように、デザイン思考においては「とりあえずやってみる」という行動が奨励されており、思考が定着すればアイデアを出すことが習慣になります。

    また、デザイン思考において「失敗」はプロダクトを改善するために必要なことです。失敗を恐れて自分のアイデアを出すことが難しく感じている方もいると思いますが、デザイン思考を習慣化することで、アイデアを出すことに対する恐怖心が払拭され、ビジネスマンとしての成長に繋がります。

    4-3. 多様な意見を吸収する習慣がつく

    デザイン思考では、失敗や異なる意見が新たなアイデアが生まれるきっかけになります。そのため、それらを柔軟に聞き入れることが良質なプロダクトを制作する上での鍵となります。

    多様な意見を柔軟に取り入れる姿勢はビジネスマンとしての仕事の向き合い方にも活かすことができます。例えば、プロダクトのブラッシュアップだけでなく、周りからの助言を聞き入れることが習慣になれば、メンバーの自己成長にも繋がります。

    5. デザイン思考のデメリットとは?

    デメリット

    デザイン思考には、ユーザーのニーズを深掘りし、より良いものを作り上げられるという大きなメリットがあります。また、枠にとらわれない発想が生まれやすいのもデザイン思考ならではの魅力です。
    一方で、デザイン思考には新たなアイディア創出がしにくいという問題点があります。それだけでなく、チーム結成がしにくいのもデザイン思考のデメリットです。
    デザイン思考の具体的なデメリットとして考えられる2つの要因をチェックしていきましょう。

    5-1. ゼロベースのアイディア創出には不向き

    デザイン思考は、既存の製品やサービスをブラッシュアップさせたいときに大きな効果を発揮する手法です。そのため、新規プロダクトを創出するようなゼロベースのアイディアを生み出す場合にはあまり向いていません。
    デザイン思考では、既存のユーザーが抱えている問題やニーズを探る必要性が生じます。新規プロダクトの創出はユーザーがまだ知らないものを生み出すフェーズなので、問題やニーズを探ることはそもそも不可能です。
    また、明確な方向性が決まっているケースや、幅広いアイディアを集める必要がないケースでも、デザイン思考を活用するメリットはそれほど大きくありません。こういった場合には、ほかの思考法を採用するなど柔軟な対処を行いましょう。

    5-2. 様々な思考を持った人材が必要になる

    デザイン思考を実践する際には、数名のチームを編成するのが一般的です。
    チームにはさまざまな思考やスキルを持った人材を6~8名程度採用するのが効果的とされています。専門領域が似通っているメンバーを集めるとデザインのアイディアに偏りが生じやすくなります。結果として、斬新なブラッシュアップができないまま終わってしまうこともあるかもしれません。
    専門領域が異なるメンバーを選出すれば、多角的な視点でプロジェクトを進行できます。一方で、意見が出すぎてまとまらず、プロジェクトが長期化するおそれもあります。

    また、多くのメンバーを集めた長期的なプロジェクトには多くのコストが必要です。コストや期間がネックとなり、デザイン思考を活用するプロジェクトを立ち上げられないケースもあります。

    6. デザイン思考の定着を図ったワークショップ事例

    それだは、これらを踏まえた上で、最後にデザイン思考の定着を図ったワークショップ事例を紹介します。

    自社でデザイン思考に関する研修などを行う際の参考にしてください。

    ワークショップの流れは下記になります。

    6-1. 問題提起

    ①テーマを設定する

    最初に、参加者に2種類のテーマを提示します。本事例で提示されたテーマは「社会とのつながり」か「未来の交通機関」でした。

    その中からテーマを選択してもらい、選択したテーマにおけるターゲットユーザーを設定してもらいます。

    ②ターゲットと関連するユーザーを記した「アクターズマップ」を紙に書き出していく(15分)

    例えば、テーマとして「社会とのつながり」を選び、ターゲットユーザーを「新卒の社会人」とした場合、関連するユーザーは「同僚」や「家族」、「上司」となります。

    そのように、関連ユーザーをできるだけブレストしてもらいます。

    ③「共感マップ」をつくる(15分)

    アクターズマップから特に注目したい関係性を取り出し、その関係性において、ターゲットユーザーはテーマに対し「何を考え、何を話し、何をして、何を感じるのか」の4つの項目を付箋に書き出してもらいます。

    ④仮説を立てる

    共感マップの中の「考える」「感じる」項目で出たアイデアを深堀りし、本質的な課題が何か仮説を立ててもらいます。

    ⑤「どうすれば可能になるのか」を3つつくる

    ここでのポイントは、「問題に対する解決策を出す必要はない」ということです。

    そのような前提を意識した上で、どんな状態になれば、課題は生まれなくなるのかといった切り口で考えてもらいます。

    ⑥アイデアを選定する

    ⑤で考えた課題解決方法の中から、1つのアイデアをピックアップしてもらいます。

      6-2. 解決策設定

      課題が設定出来たら、ブレインストーミングに移ります。ここでのワークショップは下記7つのルールに従って進めていきました。

      (1)一度に発言するのは一人だけ
      (2)質より量
      (3)アイデアを広げよう
      (4)大胆なアイデアを歓迎しよう
      (5)可視化する
      (6)トピックに集中する
      (7)ジャッジしない

      アイデアが出た後、投票制で各チーム1つのアイデアを決めてもらいます。

      6-3. 試作

      色画用紙、はさみ、のりなどを使って、選んだアイデアを2Dや3Dで可視化してもらいます。

      本事例では、10分間で試作するよう指示されており、主催側からして短いと感じる時間設定になっています。

      6-4. プレゼンテーション

      1チーム2分30秒の中で、グループごとにアイデアを発表してもらいます。発表者たちは、色画用紙を使いながら自分たちのアイデアを分かりやすく伝えるための工夫をしていました。

      また本事例では、発表前参加者に向かって時間内で成果物を出せたことに対して、称賛する発言がありました。

      6-5. 振り返り

      お互いにフィードバックを得ることを目的として、「何を学んだのか」を共有し合ってもらいます。

      これは、本事例のワークショップ参加者からの感想になります。

      「今日体験して興味深かったこと」について参加者からは「プロトタイプをつくるのが楽しかった」「仕事ではターゲットと解決策ばかり考えてしまうが、その間の共感や、どうすればできるのか、を考えることができてよかった」「100分でこれだけのアイデアが出てくるデザイン思考はやはりパワフルだと感じた」などの声が挙がった。

      「明日の仕事からやってみたいこと」では、「教える立場なので、身近なテーマで共感するワークをやってみたい」「仕事ではないが、共働きなので家事の分担についてどうやったら妻と共感できるのか試したい」といった意見も出た。

      参照:「デザイン思考」を“体験”する。問題理解のためのワークショップ

      7. まとめ

      いかがでしたか?

      改めて、本日ご紹介したデザイン思考とは、デザイナーのデザイン作成フローをビジネスに応用した考え方のことで、特定のユーザーに刺さるプロダクトを生み出すうえで有力な思考法になります。

      また、デザイン思考のプロセスを繰り返すことは、良質なプロダクトを生み出すだけではなく、質問力や思考力が上がるといったメリットも存在します。

      社員が意識的にデザイン思考をおこなうことができるように、これを機にまずは自ら実践してみても良いかもしれません。

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