変化の激しい昨今、商品の流行り廃りが早く、競合との差別化も難しくなってきています。その中で営業としての売り方にも変化が出てきており、「従来の売り方のままでは成果が出ない」というケースもあるのではないでしょうか。
そういった背景から、組織構造や目標設計、売り方など、営業のあり方を見直す企業も増えてきています。
しかし実際は、どのような改善が求められているか、模索されている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、数多くの営業組織の支援を実施している株式会社ブレーンバディ代表の大矢さんにインタビュー。これまでの営業として経験談や、そこから気づいた営業組織づくり、メンバーマネジメントのポイントなどをお伺いしました。
【人物紹介】大矢 剛大 | 株式会社ブレーンバディ 代表取締役社長
株式会社リクルートキャリア(現:株式会社リクルート)出身。その後、HRスタートアップに事業責任者として創業から携わり、事業立ち上げや営業組織の構築を行う。2021年4月に本格的にセールスイネーブルメント事業をおこなうべく株式会社ブレーンバディを設立。
目次
営業の非効率さを感じた拠点長時代
ーはじめに、大矢さんのご経歴について簡単にお教えください。
大矢さん:私は、前職をリクルートキャリアで過ごし、最初は中途求人メディアの部署に配属され、首都圏でのチームリーダーに従事した後、中四国全域の組織長を任せてもらうようになりました。
中四国エリアは、広島、岡山、香川、愛媛の4拠点があり、各支社を新幹線や船で移動してマネジメントしておりました。
そこでの経験がターニングポイントとなり、営業組織のあり方や仕組み化の部分での課題を強く感じ、営業領域での起業を考えるようになっていきました。
そして、東京に戻ってきてから、HRスタートアップに事業責任者として創業から携わらせてもらった後、2021年4月に株式会社ブレーンバディを設立しました。
ー中四国での経験がターニングポイントとのことですが、具体的にどのようなことを感じたのでしょうか?
大矢さん:中四国エリアの各4拠点には数名ずつ営業メンバーがいるのですが、私が配属されたタイミングで各所をまわってみたら、首都圏と比べて「営業のイロハについて知らない」という状況のメンバーがほとんどだったのです。
営業同行に行った際も、チラシ持っていきなり「安いですよ」と値引きの交渉から入ったり、「これがうちのキャンペーンです」とキャンペーン説明からはじめ、しかもその説明もわかりにくい部分があったり…。
とにかく、すごく衝撃を覚えたところからスタートしていきました。
ーいきなり値引きやキャンペーン説明をしてもお客様には響かない、ということですね。
大矢さん:「御社の経営目的は何ですか?」「今課題に感じていることはなんですか?」と、まずはヒアリングを通してお客様を理解することが当たり前だと思っていたので、すごく驚きました。
首都圏の営業組織であれば、同じオフィスに営業メンバーが多く在籍していて、縦や横の繋がりが多くあり、頻度高くナレッジ共有などがおこなわれていたので、営業のノウハウがふんだんにあります。それが、地方だと4拠点で一人の責任者ですし、横のつながりもないわけです。
その結果、当たり前のことが教えられずにメンバー個人個人が属人的に“自分なりに頑張って動いていた”という状況だったわけです。
ーそこからどのように動いていったのですか?
大矢さん:まずは、私がこれまでに経験してきたノウハウを全て構造化しました。最初の訪問で話すこと、営業資料の出す順番、クロージングのタイミングで何を伝えるか、など。
また、「そもそも営業とは何か」みたいな研修を実施したり、同行営業を通して得た学びや気づきの共有を繰り返したり、「今回の商談ではどこまでやりとりしたか」といった商談ストーリーを、担当顧客の全社分つくって可視化し管理したり、日々、新幹線や船にのって各拠点に顔を出して、とにかく自分が培ってきたノウハウを共有していきました。
大矢さん:ただ、ここで感じたのが、「同じことを繰り返し伝えることの非効率性」です。
一つの拠点で聞かれて答えたことを、また別の拠点で同じように話す。工数がかかる割に無駄が多いですし、拠点メンバーの人数や、その時に許された時間によって伝わるクオリティに都度バラつきがあって、育成に四苦八苦していました。
一方で、私のチームで成功体験を積んでくれたメンバーが全社表彰されるなど、ある程度うまくいった部分はあるのですが、これを全員に対して均一にやりきれなかったことは課題として残り、やはり一対多で見るという構造には限界があると痛感しました。
私は、営業マネージャーとしてやるべきことは大きく3つあると思っていて、それが『メンバーの育成』と『コーチング』『マネジメント』です。
大矢さん:そして、営業マネージャーが本当に注力すべきは『コーチング』であると考えています。
メンバー一人ひとりと関係性を深めながら、人間性や特徴を理解した上で気づきを与え、個々の人生やキャリアの実現に合わせた成長を促し、モチベートしていくことが重要です。
それは、関係性を深めている直属のマネージャーしか出来ない業務だと考えています。
逆に、『メンバーの育成』は営業成果を出すために求められる「知識」「スキル」をティーチングするということですが、基本的にはここは“誰が教えるか”は大きな問題ではないと考えています。
なので、わざわざ直属のマネージャーがメンバーひとりひとりに時間をとってティーチングするのではなく、基本的な知識やスキルが学べる動画教材やマニュアル資料を設けるなど、「ある程度そこを見ればわかる」素材をつくり自学自習を促すことができれば、マネージャーが本来向き合うべきであるコーチングとマネジメントに時間を割くことができます。
しかし、中四国時代の自分はこの仕組みを作れておらず、大きな反省ポイントであると同時に、ここに日本の営業組織の大きな負があると感じました。
日本の営業組織は、まだまだ“当たり前のことですら教えられていない”営業が多く存在しています。
同じ会社で同じタイミングに入社したのにも関わらず、配属先や勤務形態によって知識やスキルを得られる機会に大きく差分が出ているのが現状です。
そうなってしまうと、せっかく才能があるのに、努力をしているのに、パフォーマンスを発揮することが出来ない。その結果、人生やキャリアの選択肢に大きく差が出てしまう。
そういった現状を変えていきたく、ブレーンバディ創業に至りました。
ーありがとうございます。それでは、ブレーンバディの事業内容についても教えてください。
大矢さん:「成果を生み続ける営業組織づくりを支援する」をテーマに、営業コンサルティングやアウトソーシングの実施、また営業スキルの可視化ができる営業育成プラットフォーム『SaleSpot』の提供をおこなっています。
特に最近で相談をいただくことが多いのは、「インサイドセールス組織」の立ち上げですね。
いわゆる「『THE MODEL』に沿った分業型の営業組織」をつくるうえで、まだまだ各社の中でナレッジが蓄積しておらず、ワークしていかない現状があるようです。
そこに対して、当社が上流からご一緒させてもらい、仕組みの構築だけでなくマンパワーの提供までおこなっています。
まだまだスタートアップの段階ではありますが、現状では大手のHR系やSaaS系の企業様を中心にお取引をさせてもらっています。
強い営業組織は、4つのフェーズに分けて考えていく
ーここからは、「強い営業組織」のつくり方をテーマに伺っていければと思います。
大矢さん:まずは大前提のところ「全員が同じものを見ているか」です。
それは、会社や組織のミッションや売上目標はもちろん、そこに付随するKPIがどのように設計されているか、正しい営業活動はどのようなものか、これらがちゃんと現場のメンバーに落ちてきていて、それを共通認識を持ち、共通言語で会話されているか。
それが前提としてあるのですが、細かい部分の話に入っていくと、一言に営業組織と言っても、組織の拡大フェーズによって取り組み内容が異なってくると私たちは考えています。
組織の成長の段階を示した『タックマンモデル』というものがあり、これは組織の成長を「形成期、混乱期、統一期、機能期、散会期」の5段階に分けて考えていくものです。
これを営業組織にも当てはめて考えていくのですが、散会期を除外して、大きく以下4つのフェーズに分け『営業組織のタックマンモデル』と呼んでいます。
ー組織のフェーズごとに注力すべき内容が変わってくるということですね。それぞれの詳細について教えてください。
形成期
大矢さん:形成期は、ゼロイチの立ち上げフェーズなので、新規事業立ち上げやスタートアップですと社長や取締役メンバー自ら営業をしている時期です。
ですので、目の前のキャッシュをどう生み出すかが重要で、「超属人的」な営業活動のフェーズになります。
混乱期
大矢さん:混乱期に関しては、プロダクトが世の中に受け入れられはじめ、「ここから人を増やしに行くぞ」となってきたフェーズです。
即戦力となる優秀なメンバーを中心に採用活動をしていくのですが、まだそこまで仕組み化はできていないので、採用されたメンバーが各々異なるノウハウで営業活動をしていきます。ただ、それでも成果が上がっているのが混乱期です。
統一期
大矢さん:混乱期からさらにスケールさせにいくフェーズが統一期になります。
ここでは、もっと多くの人材を採用していく必要があるのですが、即戦力だけの厳選採用というわけにはいきません。
ですので、このタイミングで営業ノウハウやモニタリングの仕組みを設けて、営業組織を統一していくフェーズに入ります。ここが一番“仕組み化”に向けて労力をかける部分です。
機能期
大矢さん:機能期は、統一された組織をさらに効率的に運営すべく、営業活動で得たデータをもとに組織を動かしていくフェーズです。
「このマーケットには、このくらいの人員リソースを割り当てて、KPIをここまで積み上げれば、これぐらいの売上になるだろう」という、数式みたいなものができあがってくるフェーズですね。
4つのフェーズで押さえておきたい具体的な施策
ーありがとうございます。次に、各フェーズで具体的に何をしていくべきか、教えてください。
大矢さん:ではこちらも、形成期から機能期それぞれに分けてご説明していきます。
形成期
大矢さん:形成期に関しては、そもそも「営業組織」ではなく「個人プレーヤー」の集まりです。そして、大事なのは「とにかく売ること」です。
スタートアップ的な言葉でいうとPMFを目指すことですね。売りながら商品開発の組織と連携しながら商品をアップデートしていきます。
そのプロセスで、「ターゲットは果たして正しいのか?この課題にお金を払うほど痛みはあるのか?」と検証していくのですが、管理としては、売上管理や案件管理といった、最低限の部分が整っていれば問題ないと思います。
混乱期
大矢さん:混乱期になってくると、オペレーション部分では、営業資料の統一化、導入事例の収集など、売るための武器を整えていきます。
管理のところでいくとKPI管理や、受注確度のヨミ管理がはじまります。また、それに付随するSFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)の導入もここからスタートしていく形ですね。
売るための武器は整えにいくのですが、まだまだ個人の力に依存した売り方なのが、混乱期です。
売れている人が“なぜ売れているのか”を言語化しにいくことが重要です。
統一期
大矢さん:統一期では、事例の充実・整理、顧客セグメントの設計、商談プロセスの型化、提案パターンの言語化、競合情報の蓄積などなど、一気に整えにいくフェーズです。
そのためにSFA、CRMを活用して、商談プロセス管理の仕組み化をつくり、情報入力を徹底させていきます。
育成の観点でいくとオンボーディングの仕組み化が入ってきて、誰がやってもある程度は売れる仕組みができてきます。
ーSFAへの情報入力の徹底は、各社苦戦している印象があります。
大矢さん:これは営業あるあるですよね。
これは、そもそもなぜ入力が徹底されないかというと、「営業から見ると意味がない項目」が設けられている可能性があります。
営業は日々忙しいので「無駄じゃん」と思った仕事は絶対にしてくれないと思ってください(笑)。
なので、営業メンバーが「入力すれば成果が上がる項目」を設計できるかがポイントです。
お客様の名前やメールアドレス、電話番号は絶対に忘れてはいけない情報じゃないですか。なのでこれは入力してくれます。
一方で極論になりますが、「担当者の好きな食べ物」みたいな項目があったら、多分入力しません。案件を前に進めるために必要な情報に絞って設計できれば、入力率の改善につながっていくと思います。
機能期
大矢さん:SaaS企業様の事例になりますが、経営や事業責任者が見ている観点として、CAC(顧客獲得単価)やLTV(顧客生涯価値)、ユニットエコノミクス(1顧客当たりの収益性)などがあり、それらの数字を達成させられる営業組織を構築していくフェーズが機能期になります。
事業計画に対して、どのタイミングで何人ぐらいのリソースを投入すれば、どのトラクションに、どのように跳ね返ってくるか。を根拠をもとに設計できることを目指します。
そして、ここでのポイントは、営業メンバーのレベルを計算に入れているかどうかです。
「営業の人材をこのタイミングで◯◯人くらい拡充すれば、数ヶ月後にこのくらい売上につながるだろう」という設計をよくやってしまうのですが、これだけではまだ不十分です。なぜなら、営業レベルにおいて、いきなり全員を1人前として計算できないからです。
そこをしっかりとレベル分けして、「業界未経験者の方が入社して最初の2ヶ月は0.5人月で計算して、オンボーディングが終わって0.7人月になる。半年経ってようやく1人月としてカウントする」といった計算を考慮できているか。
そこがわかってくると、「このタイミングでこのマーケットにこれぐらい投資したら、これぐらいの売上の跳ね返りが来るだろう」という設計がより精緻になり、PDCAもうまくまわるようになります。
計画がうまくいかなかったときに、原因を因数分解するじゃないですか。マーケットに要因があったのか、売り方がダメだったのか、営業のレベルが足りなかったのか…。どの変数をテコ入れすればよいのか、その後の改善がしやすくなります。
外部環境の変化に応じて、組織のあり方、目標設定、売り方を適応できているか
大矢さん:また営業計画の設計において、商談フェーズの管理も重要なポイントとなります。
各商談フェーズで取得しておくべき顧客情報を設定されると思いますが、次のフェーズに進めるために何をしないといけないのか、商談フェーズごとの手順書を用意しておく必要があります。これを弊社では『Sales How Book』と呼んでいます。
例えば、セールスステージ01のフェーズから02に進めるために、どういうアクションをすべきか。こちらから何を伝えて、お客様からどのようなアクションがあるとセールスステージ02に昇格するのか。細かい粒度で商談フェーズごとのアクション設計していきます。
これが精緻になってくると、受注確度のヨミ確認のときに、「今セールスステージ03の会社が◯社あって、03からの受注率が50%だから、この時期までに▢社を03へ昇格できれば目標達成するな」というマネジメントができます。
ただ、口でいうのは簡単なのですが、ここまでお話したことをやりきれてない企業様は多くいらっしゃるのが現状です。
ー各社がやれていないのは、どういった背景があるのでしょうか?
大矢さん:一度つくるのが大変な上、変化し続けないといけないからですね。
そもそも、構築するのに専門性が必要で労力がかかるので着手出来なかったり、外部環境の変化や自社の組織の変化があるにも関わらず、いつまでも同じ型のやり方を当てはめようとしていることが大きいと思います。
そもそも、変わり続けることが正しいんですよ。昨今では外部環境の変化が激しくなり、テクノロジーも進んでいる中で、競合の動き方も変わってきますし、お客様の対応も昔とは違ってきています。
それなのに、いつまでも同じ売り方をしていたり、商品を変えずに提供し続けたりしているケースが散見されます。
また、「今のトレンドを意識していない目標設定」をされているケースもあります。極論ですが「コロナ禍のタイミングなのに飛び込み営業の件数をKPIで追い続ける」とかですね。
過去うまくいっていたやり方に固執するのではなく、外部・内部環境の変化に合わせて、目標や売り方のプロセスを変えにいく必要があります。
セールスイネーブルメントの仕組みが、営業組織を強くする
ー続いて、営業組織における「メンバーマネジメント」のポイントについて伺っていければと思います。
大矢さん:冒頭でもお話しましたが、営業マネージャーの役割として『メンバー育成』と『コーチング』『マネジメント』があり、注力すべきは『コーチング』です。
なぜなら、営業においてはモチベーション管理が非常に大事な部分だと考えているからです。
成果を出すためには、営業の実力も必要ですし、マーケット環境も大事ですが、最終的には売る人間のモチベーションが高いかどうかで成果が変わってきます。
この部分は『コーチング』の領域になり、マネージャーは数字管理も見る必要はありますが、できるだけ『コーチング』に注力できる体制をつくることが大事です。
一方で、『ティーチング』については、効率化ができる領域だと思っていて、いかにここを仕組み化できるかがポイントです。
Aさんに教えた内容をBさんにも教えて、それをまたCさんDさんにも教えていくといった「過去誰かに教えたことを、別の誰かに教え続ける」ことは非効率だと思います。
そうではなく、Aさんのキャリアや人生をどうしていきたいのか、一人ひとりとの関係性をしっかり築いて、同じ目標に向かって、心から一緒に頑張っていきたいと思ってもらえるように、メンバーと向き合う時間を使っていくべきです。
そのために重要となるのが、『セールスイネーブルメント』の考えです。
ー「セールスイネーブルメント」とは、どのようなものでしょうか?
大矢さん:我々は、セールスイメーブルメントを「営業組織やメンバーが持続的に成果を上げ続ける育成の仕組みづくり」と定義しています。
アメリカでは、ナスダック上場の企業の6割以上がセールスイネーブルメント専任の部署があるぐらい、浸透している領域です。
また、ガートナーという調査会社が出しているデータを見ると、セールスイネーブルメントが機能していると、予算達成率が他の企業に比べて10%高かったり、受注率が6%以上高かったりというデータが出ていて、ここ数年で注目されている考え方です。
ーセールスイネーブルメントの仕組みを取り入れるために、具体的には何をしていくのでしょうか?
大矢さん:まず、専任を置くか、兼任でやるかは先ほど触れた営業組織のフェーズに合わせればいいのですが、セールスイネーブルメントのミッションを設定することです。
例えば、「◯ヶ月で一人前に育成する」「受注率を上げる」といったイメージです。もちろん外的要因など変数は多く存在しますが、全社の共通認識下の目標を持つことが大事です。
また、オンボーディングだけじゃなく、一人前に育った後も生産性をどう上げていくのか、その仕組み化まで関わっていきます。
営業の現場と育成が分断されている企業様は多くて、人事部が育成のミッションを持っていて、営業の組織ではOJTで属人的に育成していくといった、ここの分断がうまくいかない要因だったりします。
さらに、営業成績などの活動データの収集・管理ができる体制を構築し、メンバー個々のスキルの可視化ができるとより良いですね。
営業成績といった最終的な行動の結果を生むのは、その人間のスキルに紐づいています。そのスキルが可視化される状態をつくっていき、それをもとに一人前の定義やハイパフォーマーや定義を設けたり、その人たちが実践しているナレッジを言語化してSales How Bookを構築していきます。
それ以降に関しても、定期的なアセスメント設計、フィードバックを設けるなど、個人でなく組織で営業が勝てる仕組みを構築していくことがゴールです。
営業スキルの可視化、ハイパフォーマー分析に役立つ『SaleSpot』
ー営業スキルの可視化やハイパフォーマー分析の重要性は理解しつつも、取り組みに難しそうなイメージがあり、どのように実施していけばよいのでしょうか?
大矢さん:ここは難しい部分ではあるのですが、やろうと思えばできるものです。ただ、専任でやれる人がいないのが要因です。
例えば、営業部長は「やらないといけない」と感じているものの、ここにかけた労力がすぐに売上に跳ね返ってくるわけではないので、どうしても優先順位が下がってしまいます。
営業部長は、当月の売上も目標として追いかけているので、優先されるのは目の前の案件をどう受注していくのかという各論の話になりがちです。
そういう背景があるので、取り組みに腰が重かったり、一度取り組んだとしても継続的に運用されない、という課題が散見されています。
そこを解消するために、当社ではコンサルティングと一緒に提供する『SaleSpot(セールスポット)』を開発するに至りました。
大矢さん:たとえば、SaleSpotのメインの機能に「スキルマップ」というものがあるのですが、各社独自のスキルマップを簡単に作成でき、ハイパフォーマーの基準や、一人前の基準などを、自由につくることができます。
これをつくることで、営業担当が共通認識を持つことができ、「ここまで成長できたら売れるようになるんだ」と、努力すべき方向が明確になります。
大矢さん:また、メンバー個々のスキル可視化やアセスメント機能もあるので、上司と部下が同じ指標で見て、「売上目標に達していないのは、このスキルレベルが足りてないからだね。ここを学んでいこう」という話ができます。
よくあるのは、自分の成功体験を押し付けてしまうことです。当然メンバーによって特性が異なるので、それだけでは成長につながらないこともあります。
さらに、スキルアップ機能もあるので、学習コンテンツも蓄積していけます。これがあると、同じことを何回も伝えていく必要がなくなります。
「この商談だと、この部分のトークが参考になるから見てみて」と、URLを共有するだけで完結します。
このように、さまざまな機能があるのがSaleSpotです。
ースキルの見える化によって、成長実感が湧きやすかったり、基準をそろえることができたり、イメージを持って成長できそうですね。
大矢さん:そうですね。営業職は離職率がそこそこ高い職種だと思っていて、大半の離職理由は「売れてないことできついから」だと感じています。
「売れてない時期」は誰もが経験したことがあると思いますが、そこで辞めてしまうのは、「自分が何をすれば売れるようになるかわからない」という成長実感がないことが大きいと思います。
それを解消するために、最終的な営業成績に反映されていなくても、「これができるようになった」という成功体験のスモールステップを積み重ねていけると、エンゲージメント向上にもつながり、強い組織ができると考えています。
営業の努力が成果に結びつく世界をつくっていくために
大矢さん:セールスイネーブルメントの考え方は、日本においてまだそこまで浸透されていません。今後は、セールスイネーブルメントの取り組みを広め、営業組織の可能性を広げていきたいですね。
当社のミッションが「一人でも多く、パフォーマンスを発揮できる機会を提供する。」でして、頑張れば誰しも成果が上げられるような世界をつくっていきたいんです。
頑張る機会がない、頑張りたいけどやり方がわからない、頑張っているけど成果が出ないといった方々に対して、「頑張ったらしっかり成果が出る」というシンプルな構造をつくっていきたいですね。
そのためにも、まずは自分のこれまでの知見を還元しやすい営業の領域で「才能と努力が報われる仕組み」をつくって広げていければと思います。