3年も続くコロナ禍により、社員同士のコミュニケーションの希薄化に課題を感じている企業もあると思います。
そのような中、コンピュータパッケージソフトウェアの販売・サポートをおこなう老舗のIT企業アシストでは、2022年に創業50周年を迎えました。
「超サポ愉快カンパニー」*を企業ビジョンとする同社では、社員同士のコミュニケーション活性化とコロナ禍での運動不足を解消させようと、3ヵ月(2022年9月26日~12月19日)にわたって「愉快祭」という名称で、文化祭と体育祭を2本立てで開催。
アシストは東京本社をはじめ北は北海道、南は沖縄まで全国9箇所に営業・サポート拠点がありますが、会えない社員同士、また経営層も巻き込み、1,200名超の社員がほぼ全員参加、大盛況だったということです。
それでは、3ヵ月もの間実施された「愉快祭」とはどのような内容で、どのようにコニュニケーションの活性化と健康増進を実現したのでしょうか。
今回は、50周年プロジェクトを推進している広報の仲谷さん、「愉快祭」統括リーダーの石井さん、体育祭リーダー種本さん、文化祭リーダー山下さんにお話しを伺いました。
1972年設立。アシストの使命は、IT企業の枠を超え、お客様のビジネスの課題解決のためにサポートできることを模索し続けること。社名のとおり、「アシスト」する姿勢を全社員が持つことによって、お客様と真のパートナーシップを育み、愉しく快適な未来を築いていくことを目指しています。
URL: https://www.ashistuo.co.jp/
目次
「みんなの宣言」から生まれた、愉快祭とは?
ー「愉快祭」(ゆかいまつり)というユニークな企画ですが、まずは概要からお聞かせください。
仲谷さん:私は広報という立場なので、広報活動の点からお話ししますと、お客様にアシストのファンになっていただくには、まずは社員が自社のファンであるべきという発想から、ここ2年ほどインナーコミュニケーションに力を入れ始めたんです。
仲谷 靖洋さん
広報課長で50周年記念プロジェクト全体の統括リーダー
50周年の企画を検討するにあたっても、広報メンバーだけでなく、石井さん、種本さんはじめ社員の方数名に参加してもらうプロジェクト編成にして、社員向けの企画を中心に考えました。
そして、ちょうど創立記念日にあたる今年3月に、第1弾企画として、「自分のために」「チームのために」「社会のために」社員一人ひとりが何をしていくのか宣言する「みんなの宣言」を実施したんです。
ー「みんなの宣言」という名前も、社員の方が参加している雰囲気が感じられてよさそうですね。
石井さん:「みんなの宣言」は私たちの予想を少しだけ上回り、7割の社員から宣言が寄せられました。
当初はこれでミッション完了の予定だったのですが、社員の宣言一つひとつにプロジェクトメンバー全員が突き動かされ「50周年なんだから、せっかく集まった宣言を拾って何か企画ができないか?」となったんです。
石井 雄輔さん
50周年記念プロジェクトメンバーであり、愉快祭の統括リーダー。営業、新卒採用担当を経て現在は西日本地区のマーケティングを担当。
内容を精査すると、3年も続くテレワークならではの「社員同士のコミュニケーション活性化策」や「健康増進」をテーマにしたものがたくさんありました。
私たちはここにヒントを得て、社員が楽しめ、かつ、社員同士がつながることのできるイベントの企画検討をはじめました。
予算も取っていなかったので、内容を詰めて経営陣を説得するところからのスタートでしたが、「社員一人ひとりの声を原動力にして会社が動くってすごく素敵だし、実現させたい!!」という想いを原動力に進めていきました。
種本さん:「コミュニケーション活性化と健康増進を同時に実現するためにはこれだ!」と最初に案として出てきたのが、全員集合のリアル運動会でした。
種本 美穂さん
50周年記念プロジェクトメンバーであり愉快祭では体育祭リーダー。営業から育休を経て、現在は時短勤務にて営業企画を担当。
ただ、コロナの感染状況を含めて世の中の状況も読めず、社員全体を巻き込んで無茶もできません。
そこで、一同には集まれないけれど、三密を回避しながら、いつでもどこでも自分のペースで誰もができる「歩く」ことに焦点を当てて、検討を進めていきました。
その結果、スマホやアプリで歩数を競うツールを活用することで、全員が集まれなくても一体感をもった健康増進施策ができるという着地になりました。
そして、長期間にわたってみんなが歩きたくなる仕掛けを準備して、「体育祭」として実施することを決めました。
山下さん:コミュニケーション活性化については、「感謝を伝え合う」ピアボーナスを活用しました。
普段の業務でもチームでの活動を重視しているので、社員同士、助けたり助けられたりは日常的に発生します。
山下 和敏さん
愉快祭では文化祭リーダーを担当。数多くの社内外プロジェクトのリーダー、プリセールス組織の立ち上げなどを歴任。現在は営業企画担当。
直接言うのは恥ずかしいけれど、ツールを使えば、普段言えなかった感謝の気持ちを伝えやすくなり、コミュニケーションがスムーズになると考えました。
石井さん:イベント名は「愉快祭」と銘打って、コミュニケーション活性化は文化祭、健康増進は体育祭という2本立てで年末までの3ヵ月間、実施することになりました。
1,200名超に参加してもらうための盛り上げ施策:その1
ー愉快祭の開催にあたり、どのような施策を打たれましたか?
仲谷さん:時系列でいうと、プロモーション動画の作成など、社員の方の参加を促す社内告知をどうするか、アプリの検証、社員の皆さんに楽しんで参加してもらうための仕掛け作りなどですね。
かなりのパワーが必要だと思ったので、50周年記念プロジェクトメンバーに加え、山下さんたちのようなツールを一緒に検討・検証してくれるメンバーにも参加してもらって、総勢12名が8月から業務と並行でフル稼働してましたね(笑)。
山下さん:プロモーション動画の制作は特に凄かったですね。プロジェクトメンバーの強みや特技を活かし、恐ろしいスピードでアシストらしい動画が2週間ほどで完成しました。
ビルさん(会長:ビル・トッテン)、森沢さん(副会長:森沢久美子)、大塚さん(社長:大塚辰男)に出演してもらって、アプリを使って早速歩いたり感謝し合ったりしている様子をおさめましたね。(アシストでは役職で呼ばず「さん」付け)
石井さん:全社員の皆さんに参加してもらうためには、我々愉快祭のプロジェクトメンバーだけでは足りないと思い、各部門・営業所からベテラン・若手社員2名ずつ「盛り上げ隊」として参加してもらったことも大きかったです。
総勢26名の「盛り上げ隊」の皆さんは、各部門の推進役として最終日まで活躍してくれました。
種本さん:3ヵ月間楽しんでもらうために、
- ステップ1:「知ってもらう・参加してもらう」
- ステップ2:「飽きさせない・参加したいと思ってもらう」
- ステップ3:「参加してよかった・もう少しやりたい」
を目指した仕掛け作りにしました。
盛り上げ施策その2:執行役員合宿をジャック!「開祭式」は執行役員が選手宣誓
石井さん:ちょうどスタート時となる9月に、執行役員が集合し来年度の経営計画について検討する合宿があったんです。
そこで、執行役員合宿をジャックし、その場で「開祭式」をおこないました。
オンラインで全社員が参加できるようにし、参加できなかった人のために動画も撮り、早速社内に公開しました。
種本さん:選手宣誓は執行役員2名が、また、俳優を副業とするベテラン社員が代表で国歌斉唱をおこない、執行役員一人ひとりがワールドカップでのサッカー選手のように左胸にこぶしをあてて一緒に歌っていて、とっても楽しそうでした(笑)。
ー経営層の方々が自ら楽しんで参加されている雰囲気がよくわかりますね。
山下さん:そうですね。最後に大塚さん(社長)に挨拶をお願いし、
と締めていただきました。
盛り上げ施策その3:感謝の輪が広がる
ー文化祭は感謝を伝え合う「ピアボーナス」ということですが、具体的にはどんなことをやったのですか?
山下さん:誰かに感謝や称賛を伝える際に、その相手にメッセージとハッシュタグ(例:#感謝#今だから伝えたいなどなど)、そしてポイント(ピアボーナス)を送ります。
受け取った人は「嬉しい」や「にっこり」を絵文字でリアクションできる非常にシンプルなツールです。
自分と相手だけでなく全社員がそのやりとりを一部始終参照できるので、関係者がメッセージに拍手を送ったりもでき、見ているだけでほっこりした気持ちになりました。
山下さん:社員同士の個人的なやりとりだけでなく、「#50周年だから伝えたい」、「#今年お世話になりました」といったハッシュタグを毎月のテーマとして加え、テーマの中から秀逸なメッセージをピックアップして紹介しました。
「#50周年だから伝えたい」では、ある社員から会長ビルさんへ送ったメッセージ「アシストを創立してくださってありがとうございます」が大多数から拍手を獲得していました。
また、現在の担当業務で付き合う人だけでなく、昔お世話になった上司や先輩へ「今だから伝えたい」メッセージを送っていた人も多かったですね。
「命の恩人だった」「現象のわからないトラブルを一緒に解決してくれた」や、「あの時機会をもらったので今の自分がある」という感動エピソードが多数飛び交っていました。
盛り上げ施策その4:体育祭は体力ではなく歩数勝負!社長と社員の対戦結果はいかに
ー体育祭はスマホアプリを使って「歩数」を競うのですよね。どうやって盛り上げていったのですか?
種本さん:社員にやってもらうことは、スマホやアプリと連動させたスマートウォッチを携帯して歩いてもらうだけです。
歩数を稼ぎたい人もゆっくりマイペースの人もいますが、チームでも楽しめるようにしました。
例えば1週目は、広島〜愛媛間の島々をつなぐ「瀬戸内しまなみ海道を歩こう」というテーマを掲げ、「あなたはいま、今治市まできました。ゴールまであとxkm」といったように、歩数によって個人の達成度がわかるようにして、参加イメージを掴んでもらいました。
また、プロジェクトメンバー肝入りのオリジナルコース「全国のアシストを巡ろう」もあって、これは「部門―勤務地」単位の全22チームがチームメンバーの日々の平均歩数の合計で競う企画です。
全国各都道府県に加え、旧本社や会長の自宅などアシストに縁のある場所50ヵ所を約50日間で巡るんですが、ポイント地に到着すると写真が開く仕組みで、写真右下に書かれた文字を集めて浮かびあがった質問に答えると景品がもらえるような仕掛けにしました。種本さん:達成度だけでなく、自分を含め社員のランキングも随時把握できるようになっています。
終業後、夜遅くに、マラソンの練習を日課とするツワモノ社員も数多くいるので、上位陣の顔ぶれはわりと固定化し「レジェンド」と評されていました。
しかし、ある日の夜10時頃、なんと社長が1位にランクインしてまして・・(笑)。
何かの間違いかと思いつつも、じわじわ追い上げる社員2名とのデッドヒートをスマホ上でずっと観戦することになりました。
「抜いちゃだめだ。社長を1位に・・」との願いもむなしく、彼らは社長に忖度することなくあっさり抜いていきましたね。
後で聞いたところ、社長は歩数稼ぎのために夜歩いていたとか。こういった同じ時間に複数の社員が「見て楽しむ」こともできました。
イベントの効果:続けてほしいという社員からの声続出で嬉しい悲鳴
ーどちらも期間限定のイベントでしたが、効果としてどのようなことがありましたか?
山下さん:12月16日が最終日でしたが、ピアボーナス上では、チームメンバー全員への感謝を伝える人が多かったですね。
タイムラインに流れるメッセージにほっこりしたり、勇気づけられたり、感動したり、とにかくチェックするのが日課になっていましたし、自分自身も使えなくなると思うと喪失感というか、寂しい気持ちになりました。
他にも「まだまだ感謝を伝えたい相手がたくさんいるのに終わっちゃうの?」といった声が寄せられたりで、「ロスが止まらない」状況に陥っている社員の方が多いようです(笑)。
種本さん:体育祭でも「歩くことが毎日の楽しみになった」「終わったら何を生きがいにすればいいのか」といった声が続出でした(笑)。
自分自身、スマホをみれば、誰か知っている人が歩いているという一体感があったり、誰かと競っていると「もう少し頑張ろう」という気持ちが湧いたり、とにかく会社のみんなといつもつながっている感じがしましたね。
終了後に社員全員の総歩数を計算してみたら、なんと3.1億。これは人が一生歩く歩数にあたり、総距離数は19.2万kmと、地球一周分をみんなで歩いたことになります。
石井さん:アンケート結果を見ると、文化祭がきっかけで「久しぶり」「いつものメンバーとさらに」というコミュニケーションが生まれたという回答が圧倒的に多かったです。
また、エレベーターや廊下ですれ違った時にこれまでとは違う関係性に発展してることを実感できた社員の方は大勢いると聞いています。
体育祭では所属部門や地区をまたいだチーム編成で歩数を競う企画の成果なのか、「初めまして」というコミュニケーションが生まれたり、「社外の友人や家族と話題になった」という回答が多かったですね。
文化祭・体育祭ともに、それぞれの社員の方に、様々な出会いがあったんではないでしょうか。
僕らプロジェクトメンバーも「コミュニケーション」や「健康増進」につながっているのを実感し、「愉快祭やってよかった!」と思いました。「愉快祭を通じて感動の輪が広がった」と上層部からもコメントいただけました。
最終日の閉祭式では愉快祭で使った法被や50周年記念グッズをこれまたプロジェクトメンバーお手製の宝箱におさめました。あっという間の3ヵ月でしたが、終わって本当に寂しいですね。
仲谷さん:今回50周年の締めくくりで、バーチャルでしかも長期で社内イベントを開催しましたが、社員の皆さんの楽しいに役立てたのではないかという実感がものすごくあります。
是非体育祭は秋の恒例行事にしたいですし、アシストの企業風土的に、ツールを使わなくても「ありがとうの輪」は広がったまま継続していくのではないかと感じました。
ー1,200名の社員が3ヵ月もの時間を愉しんで共有できるってすごいことですね。上層部の方のエピソードなどを含め、アシストさんの社風には風通しのよさを感じました。本日は楽しいお話をありがとうございました。