ユナイテッド株式会社が2020年度のオンラインサマーインターンシップを実施。
そのインターンではなんと、昨対比200%の3,800名を超えるエントリー数を記録し、「東大京大 22卒就活人気ランキング」の順位も403位から49位に急上昇。
同社の人事部は少数精鋭の3名体制。かつオンライン開催は初めてだったにもかかわらず、インターンシップの満足度は94%。しかもインターン通過率は1%未満の超難関で大きな話題を呼びました。
目を引くような数字が並んでいますが、実際にユナイテッドではどのようなインターンを企画・実施したのでしょうか。
今回は、人材開発部マネージャーの林さんにインタビューさせていただきました。
インターンシップのプログラム内容や企画の裏側、インターン生の満足度を上げるためにこだわった点などを語っていただきました。
【人物紹介】林 由里恵|ユナイテッド株式会社 人材開発部マネージャー
2017年にユナイテッド社へ新卒入社し、アドテク領域の営業、アドテクプロダクトの立ち上げを経験し2019年に人事部へ異動。新卒採用に加えて、人事領域全般を担当し、チームのマネジメントも務める。今回のインターンシップでは司令塔として、インターンシップの企画・戦略を担当。
目次
前年度200%を達成したエントリー母集団形成
―まず、ユナイテッドさんで実施されたインターンシップの概要について教えてください。
林さん:2020年夏、22卒向けのサマーインターンシップはオンラインで開催をしました。
内容は、いわゆる新規事業立案のインターンです。時期は6月と8月の2回、それぞれ2日間の日程で、最終日にプレゼンをしていただく形式です。
参加人数は2日間で約30名に絞り込み、なるべく少ない人数で学生と濃いコミュニケーションがとれるようなプログラムにしたのが特徴です。
当日のプログラムは一般的なグループワークが中心ですが、取り扱うテーマや進め方にはとてもこだわりました。
ユナイテッドの事業と絡めたテーマにすることはもちろんのこと、可能な限り実務レベルの経営分析視点を伝えるために、弊社の役員陣総出で個別フィードバックをおこない、密にコミュニケーションを取れる体制を組みました。
―役員陣を巻き込んで実施した、今回のインターンシップでの目的を教えてください。
林さん:学生の中でも、特に当社が求めるターゲット層に対してアプローチをすることが私たちの最大の目的でした。
「ユナイテッドってサマーインターンシップが人気な会社だよね」と口コミが増えるように、求めるターゲット学生からの認知をアップさせることを意識して、今回の企画に落とし込みました。
実は、当社のサマーインターンシップの歴史はまだ浅く、今回の22卒向けの開催が2回目となります。
ちなみに21卒向けのサマーインターンシップはオフラインで実施していたので、オンラインでの開催は今回が初めてでした。
―オンラインでの開催が初めてにもかかわらず、3,800名もエントリーがあったのですね。母集団はどのように形成したのでしょうか。
林さん:母集団形成の主な方法は求人メディア掲載と口コミです。
前年度は1,600名ほどでしたが、特に前年度に参加してくださった学生の口コミの影響も大きかったと感じています。
メディア掲載や集客に関してこだわった点は次の3つです。
- 大手媒体を使わない
- 参加報酬5万円・インターンシップ当日のワークで優勝したチームには10万円を提供
- インターンシップ中は、ユナイテッド会長の早川氏をはじめ博報堂やボストンコンサルティンググループなど有名企業出身者からフィードバックをもらえる
まず1つ目に、あえて王道系メディアに掲載をせず「ワンキャリア」や「外資就活ドットコム」「Goodfind」などに絞り込みました。
私たちがお会いしたいと思っていた学生の方々は、コンサルティングファームや外資系企業を併願するケースが多かったので、ターゲットに合ったメディアに集中して掲載をしています。
次に、インターンシップの訴求内容にインパクトを持たせるために、参加報酬5万円に加え、当日のグループワークなどで優勝したチームには10万円の賞金が出るよう企画をしました。
インターンシップを無償で実施する企業様も多いと思いますが、私たちの本気度が伝わるように尖った仕掛けをしたんですね。
そして3つ目、参加者へのフィードバックをより密におこなうために、経営層を巻き込んでメンバーを手厚くそろえました。
参加学生に少しでも多くの「お土産」を持って帰っていただきたいという思いで、メンターの設置やフィードバックメンバーのアサインにはとてもこだわらせていただいています。
募集時に、どのような人が当日のグループワークのフィードバックをおこなうのか名前・プロフィールを公表しています。ちなみにこちらが集客用LPです。
https://united-internship.goodfind.jp/
このページを見てエントリーしてくださった学生に魅力に感じた点を聞いてみたところ、
- インターンシップのプログラム内容にも惹かれたが、何より参加するほかの学生も優秀なのではと思った。
- 優秀な学生に出会いたいと思って参加を決めた
という感想をいただけました。
最近では、情報感度が高い学生同士でコミュニケーションをとり、情報交換をしているようです。
そんな仲間集めを目的として、当社のインターンシップにエントリーいただけたのはとても嬉しいことでした。
結果として、3,800名という人数はもちろんのこと、3,800名中63%が弊社の求めていた採用基準に合致した人材となりました。
つまり、ただ数を集めただけでなく、きちんと選考の土俵に乗っていただけそうな学生の方々にリーチができたということです。
★採用ターゲットが魅力に感じる訴求を企画し、メディアを絞り込む
★参加者の満足度を向上することに一点集中し、翌年の口コミ集客につなげる
通過率は1%未満。ユナイテッド流の候補者見極め術と、本選考へつなげるための「アナログ作戦」
―母集団形成に成功されたあと、どのように学生を見極めて絞り込んでいったのか教えてください。
林さん:インターンシップの参加者の絞り込みは、すべてオンラインで実施しました。選考の流れは以下の通りです。
林さん:インターンシップの募集開始時期が2月、選考は4月だったので、ちょうど緊急事態宣言の時期と重なってしまいました。
そのため、元々オンラインでおこなっていたエントリーシート選考とWEBテスト選考に加え、グループディスカッション・役員面接の工程もすべてオンラインで進めて、3,800名の見極めをおこなったんです。
今回は一都三県以外からエントリーいただく比率も多かったので、そういう意味ではオンラインでおこなうことで遠方在住者の移動負担なく、結果としてよかったと思っています。
―グループディスカッションをオンラインで実施する際、見極めが難しいとおっしゃる人事の方もいらっしゃいますが、実際やってみてどうでしたか?
林さん:オンラインでも見極め精度を落とすことなくグループディスカッション選考を終えることができたと実感しています。
通常、対面のグループディスカッションでは5~6名のチームで実施しますが、1人ひとりをしっかり見てあげられるようにオンライングループディスカッションでは1チーム3名にしました。
オンラインであれば面接官の移動工数も省けるので、選考回数は増えましたが採用効率がアップしたので、大きなメリットを感じました。
また、オンラインのグループディスカッションではWeb会議ツールにあるメモやチャット機能を使ってもよいと、学生には伝えておきました。
そのため、発言ができなくても、うまくメモツールを活用してくれる方もいて、参加者の発言回数もそこまで偏りがなかったと思います。
たしかにオンラインだと音声がずれて聞こえてきたり、ほかの方と同時に話してしまうと音声がうまく拾われなかったりするので、多少慣れが必要です。
そのため、各チームのディスカッション最後に質疑応答の時間を設け、必ず1人1回以上は答える機会が回ってくるよう整えました。
―グループディスカッションや3回の選考の中で、とくに見ていたポイントはなんでしょうか?
林さん:見極めの際に見ていたポイントは、論理的思考力とリーダーシップです。
リーダーシップは皆さんのディスカッション最中の発言などで判断していて、論理性に関してはディスカッション中の会話に加えて、私や面接官とのコミュニケーションの中で判断しました。
ちなみに、グループディスカッションで扱うテーマは「国内のメガネ市場は20年後どのようになるでしょうか」「3年後に〇〇県はどうなるでしょうか」などを扱いました。
テーマに対してさまざまなデータから推測をおこない、チームで結論を出して理由を添えて発表してもらうというものです。
必要な情報を集め、客観的に情報を分析し、論理的に相手に伝えるという内容です。
―そのほかに選考中でこだわった点はありますか?
林さん:そうですね、残念ながら今回のサマーインターンシップに参加できなかった学生の方々に対してもしっかりとコミュニケーションをとらせていただき、「本選考には再度チャレンジしていただきたい」と伝えています。
というのも、サマーインターンシップの選考基準と、本選考の選考基準は異なります。
特に今回のサマーインターンシップはかなり絞り込んで実施していたので、通常の本選考では通過する方でもサマーインターンシップには通らないということがあります。
せっかくユナイテッドに興味を持ってくれたのに、サマーインターンシップに通過しなかったので本選考は受けない、と機会損失になることが懸念でした。
そこで今回、取り組んでみたのは「アナログ作戦」です。
サマーインターンシップに残念ながら落ちてしまった学生の方々にメールでフォローするだけではなく、「ぜひ本選考に参加いただきたい」と一言添えて、700通のハガキを送りました。
魅力的な学生ほど、日々たくさんのスカウトメールが届くので、メールのフォローだけでは不十分だと思ったのです。
紙媒体なら、逆に視覚的にインパクトがあり印象に残るのではと思い、実践してみました。
結果として約30%程度の方から再度連絡があり、改めて会社説明会などに参加いただくことができました。
今回はコロナの影響で、対面でのコミュニケーションが難しかったからこそ、「サマーインターンシップに通過しなかった方とどうやって接点を持てばいいか?」というのは、今後も向き合っていかねばならない課題だなと思っています。
学生からの満足度94%の好感触を生み出した、こだわりのフィードバック体制
―インターン参加の学生に対し、「お土産を持ち帰ってもらう」ために取り組んだことを教えてください。
林さん:「ユナイテッドのサマーインターンシップに参加して良かった」と心から思ってもらうために、主に次の2点に注力をしました。
- 参加学生のパフォーマンスをあげること
- メンターのフィードバックのクオリティを上げること
1つ目の学生のパフォーマンスをあげるために、まず全参加者にメンターをつけてインターン開催前に事前面談を実施しました。
面談の際には、「今回あなたにはこのような点に期待をしている」「事前にこういったことを準備してほしい」とメンターから明確にメッセージを伝え、当日に十分に持ち味を発揮してもらえるよう工夫しました。
サマーインターンシップは2日間の限られた時間の中でおこなうので、私たちだけでなく参加する本人にも、しっかり意識を上げて準備してもらいたいと思ったんです。
また、サマーインターンシップ当日に、学生の方々に極力無駄な時間を使わせないことも心掛けました。
たった数時間のサマーインターンシップなのに、ご飯を買いに行く時間は無駄ではないかと思ったので、出前館やUberを駆使して事前に昼食をご自宅に配送しました。
またせっかく配送するのであれば、一体感を出して盛り上げたかったので、なるべく全員同じメニューするように意識していました。
2つ目のフィードバックの質を担保する点に関しては、弊社の経営層に参加してもらうことで実現しました。
また、1日あたりの参加者を16名に絞っているので、数チームに分けてもメンターが全員を細かく見ることができた点も、フィードバックのクオリティ面に直結しています。
Zoomのブレイクアウトセッション機能を用いて、各チームを定期的にメンターが回遊し、とにかくコミュニケーション量を増やすよう注意しました。
―質の高いフィードバックとは、具体的にどのような内容を伝えたのでしょうか。
林さん:なるべく実務に近い形でフィードバックをおこなうこと、フィードバックごとにすぐに改善できるような内容を伝えることを意識していました。
先ほどお伝えしたように、学生のパフォーマンスを上げることを重要視していたので、短い時間の中でもPDCAを回して、その場で改善→行動につなげてもらえるようなフィードバックをしていきます。
また、質を高めるためには一定の量が必要になるので、メンター陣には非常に手厚く、数多くのフィードバックを実践してもらいました。
フィードバックの点で興味深かったのは、メンターからではなく学生同士のフィードバックです。
グループワーク内の中間発表や最終発表で、ほかのチームの学生の発表が終わったら、必ず質問をしてもらうよう促したのですが、学生ならではの面白い着眼点での質問が出てくるなど、私たちも大変刺激をもらえました。
―オンラインだからこそ難しかったことは何かありますか?
林さん:やはり対面での実施と比べて、学生同士の仲があまり深まらなかったのが残念だったと言われました。
もちろん、まったく交流が無かったわけではありませんし、サマーインターンシップ後に懇親会も実施しています。
ですが、皆さん同士で仲良くなって、サマーインターンシップ後にランチに行ったりお話する機会は少なくなってしまったのは事実です。
今後は、懇親会だけでなく、もっとお互いが親密になれるような企画を設計していきたいと思いました。
―そのほかに参加した学生さんからどのような感想がありましたか?
林さん:私たちの狙い通り、フィードバックの質と量が高評価となりました。これは嬉しかったですね。
繰り返しになりますが、学生さんが何か1つでもお土産を持ち帰ってもらうこと、参加当日はパフォーマンスを出しきれることを終始意識していました。
そのため、ただテーマを投げて考えさせるだけでなく、事前にビジネス戦略の立て方についてメンターによる講義をおこない、インプットの時間も設けています。
ほかにもインプットの時間では、前年度のインターン参加者で見事チームを優勝に導いた優秀な学生にも登壇してもらい「僕たちは去年、このようなテーマに対して〇〇に気を付けて取り組み、このようなプロセスで結論に導きました」と実際の事例を発表してもらうなども工夫したポイントです。
前年度インターンに参加した学生から直接アドバイスをもらうことで、2日間という限られた時間でもポイントを押えて有意義に時間を使うことができるのでは、と仮説を立てて実行しました。
参加してくれた学生さんたちは、ユナイテッドでなく他社に入社を決めた方もいるのですが、新卒時に当社を選ばなかったとしても先々の転職でユナイテッドを選んでくれる可能性もあると思うんです。
内定者ではなくても、優秀な学生はどんどん巻き込んでいくというのも、ユナイテッドならではだと思います。
また、インターンシップ中にフィードバックをこちらから与えるだけだと受け身になってしまうので、定期的にアンケートを取り、振り返りの時間を設けました。
「このインターンシップで何をつかみたいのか」「今日のインターンシップを終えて何ができたのか・できなかったのか」「インターンシップを最後まで終えて、何を達成したのか」など、本人自身の言葉で、考えてアウトプットできるような工夫もしました。
また、アンケート結果を本人にも送付することで、こちらもお土産として持ち帰っていただきました。
オンラインインターンを振り返り、今後の採用向けて思うこと
―サマーインターンシップを終えて、本選考に何か変化はありましたか?
林さん:まず、本選考への応募者が圧倒的に増加したのが最大の変化です。
ちなみに、使用する採用メディアは20卒のときからほぼ同じです。スポット利用として追加掲載することもありましたが、メディアよりもサマーインターンシップの口コミが後押しし、自然応募が増えたと分析しています。
―今後のサマーインターンシップに向けてブラッシュアップしていきたい点はありますか?
林さん:今回までは各採用メディアの力をお借りして母集団形成をしてきましたが、今後は直接応募の流入をもっと増やしていきたいです。
継続的に自社発信を増やし、採用広報を強化することで多くの学生と接触を持っていきたいと考えています。
―今回の経験を踏まえて他社の採用担当に方々にオンラインインターンシップのアドバイスなど一言お願いします。
林さん:オンラインでもオフラインでも、結局1番大切なのはユーザー体験だと思います。
当社のインターンシップに応募してくれた学生に、どのような体験をしてもらえるのか、何を得てもらえるのかという視点で戦略を練っていただくと効果が出ると考えています。
実は、弊社の人事チームは3名という少数で実務を回しています。
無駄な工数を極力省くため、「どういった学生に集まってほしいか」「集まった学生にどういった価値を提供するのか」を明確にしたうえで、課題を1つずつ確実に解決していくよう心掛けています。
他社の人事の皆さんにお伝えしたいのは、人事の人数が少なくても1人ひとりに明確な役割を決めて運営すれば、3,000名以上の応募学生を選考することも可能だということです。
ちなみに当社では、私が採用の企画設計、もう1名が学生の前に立って話す役割、そしてもう1名はPCにベタ付きでひたすらオペレーションを回す担当としています。
そのほかにも、最近RPAへの取り組みや、人事ツールの内製化などもこだわっているので、インターンシップ以外の部分も強化し、効率化していきたいと思っています。