アプリのダウンロードが2,000万を超え、サービス開始からわずか3年半でダウンロード数と利用者数が国内No.1となったレシピ動画サービスの「クラシル」。
そして、月間利用者数が2,000万を超える国内No.1女性向けメディア「TRILL」。このふたつのメディアを運営するのが、dely株式会社です。
今回、急成長を続けるdely株式会社で、採用責任者を務める渡邉拓磨さんを取材しました。
渡邉さんは、dely入社前に、大手総合人材サービス企業で企業を対象にした採用コンサルティングを経験。約1,000社の採用を支援した実績を持つ方です。
そんな渡邉さんが、「採用を支援する側」から「採用する側」へと立場を一転されて感じる採用業務の難しさや新たな気づきについてお伺いしました。
目次
「想像以上に採用は大変だった」採用支援をしていた頃にはわからなかったこと
渡邉 拓磨 | dely株式会社 採用マネージャー
新卒で日立コンシューマー・マーケティング株式会社(現:日立グローバルライフソリューションズ)に入社。コンシューマー製品の営業・マーケティングに従事。2013年に株式会社マイナビへ入社。述べ1,000社以上の企業の採用コンサルティングとマネージメントに関わる。2017年に動画メディアのスタートアップ企業でソリューションセールス・アライアンス等に従事。2019年に採用のマネージャーとしてdely株式会社へジョイン。
—渡邉さんがdelyに入社された経緯を教えてください。
渡邉さん:私は求人媒体の会社で、採用コンサルとして企業の採用活動を支援してきました。
大手から中小、外資系まで幅広く1,000社ほどの企業を担当していたのですが、なかでもIT系のスタートアップ企業が想像以上に採用に苦戦していました。
お分かりになるかと思いますが、日本の新卒採用の市場においては、まだまだ日系の大手企業の人気が圧倒的に高いのです。
魅力的なスタートアップでも採用は難しい。それはもったいないことであり、自分に何かできないか? スタートアップの採用を盛り上げられないか? と考えていた時に、たまたま代表の堀江と話す機会がありました。
その時に、彼から「スタートアップが新卒からの人気がない現状を変えていきたい」と言われたんです。彼の想いが自分の考えとリンクしていると感じ、その言葉が決めてとなりdelyへの入社を決めました。
―採用支援から採用する立場へと変わって、大変だと感じたことはありますか?
渡邉さん:採用担当の諸先輩方には、何を基本的なことを……と呆れられてしまいそうですが、想像していた以上に、数多く寄せられる応募者への対応が大変だと感じましたね。
嬉しいことに、delyは毎月多くの方からの応募をいただいています。
現在、採用は実質2 名体制でおこなっているのですが、その応募ひとつひとつに対する返信や面談の案内といったオペレーション業務に、入社した直後は苦労しました。採用支援する側から採用担当になって、はじめて知った「採用する側の忙しさ」ですね。
また、採用をサポートしていた時には分からなかった「裏側の仕事」にも気が付きました。
採用支援をしていた頃は、「採用」や「研修」といったメイン業務のみに関わっていました。ですが、実際はメールひとつとっても詳細に内容を考えたり、社内の人と予定を調整したりする細かい業務が多く存在することを知りました。
「delyの採用は孤独じゃない!」全社採用のカルチャー
-業務の広範さのほかに、感じたことはありますか?
渡邉さん:前職では、「スタートアップの採用は、採用担当者も少ないし、孤独な仕事だろうな」と思っていたのですが、delyに入社してからその認識が変わりました。
実際、社員が少ないために採用担当者が一名しかいないというスタートアップも何社かありました。
しかし、delyは違いました。社員が積極的に助けてくれます。
それどころか、会社全体で採用に取り組む「全社採用」や、社員が友人や知り合いを紹介してくれる「リファラル採用」が自然とおこなわれている文化がありました。
たとえば、社員自身がSNSで「delyは良い会社だよ」と発信したり、食事会で「delyに入って欲しい」とアプローチしてくれたりするケースがよくあります。
社員一丸となって採用に取り組んでいることは、良い意味で意外でした。
―全社的に採用に取り組むことができるのはなぜでしょうか?
渡邉さん:社員ひとりひとりが、非常に当事者意識を強く持っているためだと思います。
大きな会社だと、社内政治や派閥などがどうしても生じてしまいがちですが、delyにはそういった組織の歪みがありません。
とにかく、「delyを成長させる」「サービスを大きくする」ために日々メンバー同士でディスカッションがおこなわれています。採用に関しても、開発やマーケティング、営業といったさまざまな職種や部署から、欲しい人材についての意見が寄せられます。
現場の社員から直々に意見をもらうことができるのは、非常にありがたいと感じています。
「全社採用」や「リファラル採用」は、最近になって採用市場に浸透しつつありますが、delyは早くから、自然と実施していたわけです。
delyがインターンに力を入れる理由とは?学生起業した社長が持つ熱い想い
―「全社採用」「リファラル採用」の取り組みによるメリットはありますか?
渡邉さん:一番はミスマッチが少ないことだと思います。
リファラル採用がベストだとは思いませんが、通常の採用手法と比べると、求職者との価値観のズレを減少させることができるのではないでしょうか。
やはり仕事は、自分が活躍できないと楽しくないでしょうし、期待されている以上の成果を出せて初めて、やりがいを感じることができると思います。
そのためには、働く人が大切にしている価値観と、会社のミッションやビジョンが一致している必要があります。
リファラル採用は、実際に働いている社員が「この人はうちの会社に合っているだろう」と感じて入社を勧める採用手法ですから、会社が求める人材と応募者のキャリア観との不一致を最小限に抑えることができるのではないでしょうか。
また、最近では長期インターンシップにも力を入れています。
―長期インターンシップはどういった内容となっているのでしょうか。
渡邉さん:今は、2020年卒〜2021年卒の学生がインターン生としてさまざまな部署で働いています。
インターン生にはかなり実務に近い仕事を任せており、3ヶ月の期間中、正社員と同じレベルの裁量を与えて頑張ってもらっています。
たとえば、昨年のクリスマスの時期にクラシルのアイコンのデザインがクリスマスカラーに変わったのですが、実はあのデザインはインターンシップ生が作ったものなんです。
―インターンにそこまで裁量を持たせるのはなぜでしょうか。
渡邉さん:そもそもdelyは個人が大きな裁量を持って働く組織ですが、学生であるインターン生にもそれを適用するのは、代表の堀江が持つ「若いからこそ挑戦し続けるべきだ」という考えが大きいからですね。
堀江や他の役員達も、学生時代に起業を経験しています。新卒採用に力を入れることが決まった際に、一番に重要視したいと感じたのが「若さに関係なく、挑戦できるかどうか」だったのだと思います。
ですので、あえて学生に責任の大きな仕事を任せて、挑戦し続けてもらう環境を与えているんです。
インターン生がどんどん機会を手に入れている様子は、社員にもいい影響を与えていて、堀江はそういった影響があることも踏まえてインターンに裁量を持たせているのだと思います。
―インターン生の働きはどういった点を見ているのでしょうか。
渡邉さん:インターン生自身にどのくらい成長意欲があるのか、実際にどこまで成果を上げることができるかを見ています。
ポジションに関係なく、熱量や行動力といったポテンシャルを重視し、delyにフィットしてくれる学生かどうかを判断しています。
「やりたいことは山程ある」渡邉さんが考える、成長する組織における採用担当者の役割と今後の展望
―全社採用やリファラル採用、インターンシップとさまざまな採用活動に取り組む中で、困難なことや、課題に思うことはありますか?
渡邉さん:やりたいことは多くあるのですが、どうしてもリソースが足りません。
力を入れている新卒採用も、イベントに参加したり、地方の学生に会いに行ったりとdelyの魅力や事業を伝える方法はたくさんあります。
ただ、色々な採用手法を同時に取り組むことは、本当に難しい。
採用支援をしていた時にも、現場の採用担当者の方々からそういった声は聞いていましたが、自分が採用する立場に変わって改めて感じました。
とはいえ、採用担当者が少ないからという理由で可能性を狭めたくありません。
delyでは、困難があっても「やり切る」ことを大切にしているため、リソースが少ないことを理由に採用目標の達成を諦めたくないんです。
もっと現場の社員を巻き込んで、全社採用を盛り上げていきたいと考えています。
―全社採用の活性化の他に、今後やりたいことや取り組みたいことはありますか?
渡邉さん:やりたいことは二つあります。
一つ目は、採用の判断軸の「仕組み化」「見える化」です。
リファラル採用は、どうしても社員自身の「この人がいい」とか「この人を採用したい」といった感覚的な判断に委ねられてしまいます。こういった属人的になりやすい判断軸を可視化する必要があると感じています。
というのも、今のdelyの規模であれば「どういった軸を持って採用したいと考えたのか」を社員に直接聞くことができるため、彼らの判断の根拠を理解できます。
しかし、今後組織が成長し拡大していくと、社員の動きや考えを把握することは難しくなっていくでしょう。
採用理由が不明確になることで、採用側と入社された方の双方で「思っていたこと違った」といったミスマッチが生まれてしまう可能性があります。
ですので、一つの判断軸を設けて「採用するべきか否かを迷うことなく判断できる体制」を整えたいと考えています。
二つ目は、中途入社された方へのオンボーディングや、現社員の育成といった組織開発の強化です。こちらも「社員とのミスマッチ」を防ぎたいという理由があります。
delyは学生が起こした会社で、若い組織こその強みを持っています。ただ、中途入社の方の育成や制度の設計に関しては、まだまだ改善していけるのかなと思います。
今後、会社の規模が大きくなるにつれて社員のライフスタイルや価値観も多様化してくでしょう。その変化に合わせて、全ての社員が活躍できる環境づくりは必須になると考えています。
―渡邉さんは、採用担当者としてどういった役割を担っていきたいと考えているのですか?
渡邉さん:中長期的な視点で考えると、採用担当者として今のdelyが持つ「良いところ」を維持させながら、組織を大きくする役割を担っていきたいです。
delyの「良いところ」は、挑戦し続ける文化とスピード感。この2つがあってこそ、クラシルやTRLLといった事業を成長させることができました。
ですので、挑戦し続ける文化とスピード感は今後事業を拡大させるためにも必要で、どれだけ組織が大きくなっても失ってはいけないと考えています。
そのために、ただ人を増やすために採用するのではなく、「delyの文化にマッチしているか」「delyのスピード感についてこれそうか」といった軸を持って、採用活動に取り組んでいきます。
また、社ひとりひとりが自分の夢を実現できるよう応援する役割も担いたいですね。
私は、「社員はずっと同じ会社や部署で働かなくていい」と考えています。新たな夢を見つけたら、その夢を実現するための一番の近道となるようなキャリアを歩むべきだと思うんです。
delyは今後、クラシルやTRILLに加えてどんどん新しい事業が増え、仕事の幅も広がっていきます。その過程で、社員のやりたいことが変わったら、別の事業で新しいことにチャレンジできる環境を整えたいです。
やはり一番重要なのは「社員自身の成長」です。社員が自分の夢を実現できるよう応援することが、私たちの役割なのではないでしょうか。
-最後に、長期的な展望をお聞かせください。
渡邉さん:私がITベンチャーで採用をやりたいと思ったのは、根底に「日本のITベンチャーを採用で盛り上げたい」という想いがあったためです。
世界では次々にIT企業が生まれ、GoogleやAmazon、Facebook、Appleに追いつけ追い越せと言わんばかりの成長と拡大を続けている一方で、日本のIT業界は遅れを取っています。
ITベンチャーを志望する優秀な学生や、経験者がまだまだ少ないというのも、その要因でしょう。
大きなことを言っているようにも思われるでしょうが、delyはいずれ世界でも闘える企業になります。「クラシル」のサービスミッションは「80億人に1日3回の幸せを届ける」ことですし、それに向けてまずは国内市場を着々とおさえています。
delyという組織を採用の力で後押しして、日本がITで世界と戦うために先陣を切って走っていきたいですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「採用を支援する側」から「採用する側」と、逆転といっていいほど立場を変えて新たな挑戦に踏み切った渡邉さん。
その背景には「日本のIT企業を世界で通用できるまで成長させたい」という想いがあることが伝わりました。
また、delyという組織は社員各々が当事者意識を持ち、自社の成長のために全社採用に取り組んでいる点に魅力を感じました。
delyは今後、「採用が成功しているITスタートアップ」として市場の最先端を走っていくのではないでしょうか。