夜勤とは、病院や介護施設、工場等でおこなわれる深夜勤務のことです。夜勤のうち、労働基準法で定められた22時〜翌5時までの深夜時間に労働した従業員には、深夜手当として25%の割増賃金を支払う義務があります。
夜勤の休日取得で注意すべき点は、0時〜24時の暦日を休日とすることです。いくつかの例外を除き、原則夜勤明けの休日は認められません。
今回は、夜勤の時間帯や休日の取得方法、割増賃金など、労働基準法上の定義について解説します。
目次
1. 夜勤とは

夜勤(夜間勤務)とは、24時間稼働する業種・職種において、夜間に労働することを指します。夜勤がある業種・職種としては、コンビニエンスストアや工場、運輸業、病院や介護施設、宿泊施設などが挙げられます。
夜勤をした分の労働時間には、深夜手当として割増賃金が発生します。
1-1. 年少者や妊産婦など夜勤ができない従業員もある
夜勤には労働基準法で定められた制限があります。第61条1項では、満18歳以下の年少者に対し、原則深夜労働を禁止しています。[注1]
ただし、交代制で勤務する満16歳以上の男性ほか、病院・保健衛生業といった一部の業種に限り、夜勤が認められる場合もあります。[注1]
妊産婦の夜勤については、法律上禁止していません。ただし、労働基準法第66条3項「母性保護規定」によって、妊産婦が自ら夜勤免除を請求した場合、会社側はそれを受け入れなければなりません。[注2]
2. 夜勤に該当する時間について

夜勤のうち、深夜労働に該当する労働時間帯は、22時から翌5時までです。
ここで問題なのが、夜勤によって労働時間が0時をまたいだとき、2日分の勤務と扱われるのか」という点です。
0時〜24時までを「1日」とする歴日の観点では、深夜0時をまたいだ勤務は2日に分けて考えるべきでしょう。しかし、それでは夜勤で働く従業員の休憩時間や残業手当の扱いに不利が生じ、従業員に負担をかけてしまいます。
そのため、勤務が2暦日にわたるときは、夜勤が深夜0時をまたいだ勤務も始業時刻の日とし、「一勤務」として扱います。[注3]
たとえば、5月1日の22時〜翌5時まで夜勤をした場合は、0時をまたいだ翌2日の勤務についても、5月1日の勤務になるということです。
3. 夜勤の場合の割増賃金について

夜勤の賃金計算は、日勤の従業員よりも複雑です。夜勤の割増賃金について考える際は、まずは労働基準法に定められた法定労働時間や時間外労働、割増位賃金の種類について理解する必要があります。
3-1. 22時〜5時の深夜労働には25%の割増賃金が発生する
割増賃金には、法定労働時間の上限を超えたときに支払われる「時間外手当」、法定休日に出勤した際に支払われる「休日手当」、22時〜翌5時までのあいだに労働した場合に支払われる「深夜手当」の3つがあります。
例えば20時〜翌5時まで夜勤をした場合、20時から22時までは基礎賃金のみ、22時〜翌5時までの労働時間には、休憩時間を除き深夜手当として25%の割増賃金が発生します。[注5]
月給制などの場合、割増賃金の計算は1時間あたりの基礎賃金を計算してからおこないます。単純に月給を月の営業時間で割って算出した場合、月によって営業日数が異なる場合もあり、基礎賃金が変化することになってしまいます。
そのため、月平均所定労働時間をまず計算し、その数字をもとに1時間あたりの基礎賃金を算出しましょう。詳しい計算方法は下記の記事でご紹介しています。
3-2. 夜勤で法定労働時間を超えた場合は深夜手当+時間外手当が発生する
労働基準法では、従業員の労働時間について、原則「1日8時間、1週間40時間」を上限と定めています。この法定労働時間を超えた分の労働は「時間外労働」扱いとなり、25%の割増賃金が発生します。[注5]
例えば所定労働時間が15時〜24時(休憩1時間含む)までの従業員が1時まで残業し、法定労働時間を1時間超えてしまった場合を考えてみましょう。
この場合、深夜手当として25%の割増賃金が発生するのは、休憩時間を除いた22時〜24時までの労働時間です。さらに、24時以降の法定外労働時間については、時間外手当として25%の割増賃金が発生するため、割増率は50%となります。[注5]
夜勤の時間帯・労働時間によって、手当が重複する場合もあります。
3-3. 勤務時間の一部が夜勤に該当していても割増賃金は発生する
日勤の場合でも、残業などで勤務時間の一部が22時を超えた場合、深夜手当として割増賃金が発生します。
たとえば18時〜23時勤務の従業員であれば、22〜23時の1時間に関しては、深夜労働にあたるため、25%の割増率で賃金計算しなければなりません。賃金は1分単位で計算する必要があるため、もし数分でも22時を超過した勤務をおこなわせた場合には、超過分についてはきちんと賃金を割増して支給しましょう。
4. 夜勤時の休憩時間・休日の取得方法

夜勤の休憩時間は、日勤と同様の規定で付与します。6時間以内の場合はは休憩を付与しなくとも問題なく、6時間を超えて8時間以内の勤務の場合は45分以上、8時間を超える勤務の場合には60分以上必要です。[注4]
会社がこの規定を破ると、労働基準法違反として罰則に科せられる可能性があります。
夜勤の従業員に、労働基準法の規定を満たす休日を取得させるためには、原則として「0時〜24時の休み」を週1回、もしくは4週間に4日付与しなければなりません。休日は暦日(0時~24時の継続した24時間)で付与するという規定にあてはまらないことから、夜勤明けの休みは「法定休日」として認められないため、注意が必要です。
ただし、会社が三交代勤務を採用している場合、いくつかの要件を満たすことで夜勤明けを休日扱いにできるケースもあります。
夜勤の休日取得については、業種や勤務体系によって上記のような例外が設けられている場合もあるため、就業規則等を改めて確認する必要があります。
4-1. 夜勤の連続勤務は違法ではない
夜勤を終え休憩を挟んで日勤をおこなわせたり、日勤を終えて、数時間後に夜勤をおこなわせることは労働基準法においては違法にはなりません。
ただし、企業に対しては、労働契約法によって従業員への安全配慮義務が定められているため、従業員の健康を著しく害する勤務予定を組まないよう配慮する必要があります。
また、状況に応じて適切な割増賃金を支払いましょう。夜勤は勤務を開始した時刻の日付の労働とみなされます。
例えば、月曜日の22時から翌火曜日の6時で夜勤を、火曜日の10時から18時で日勤をさせた場合、火曜日の6時までの業務については月曜日分の勤務とみなされます。
日付で換算すると火曜日に8時間以上勤務させていることになりますが、この場合、火曜日の日勤に対して割増賃金が発生することはありません。
逆に、月曜日の10時から18時で日勤をさせた従業員に対し、22時から翌火曜日の6時まで夜勤をさせた場合については、夜勤が月曜日の勤務としてみなされるため、8時間を超えた労働時間に対しては、深夜労働の割増賃金だけでなく、間外労働の割増賃金も支払う必要があります。
5. 夜勤の多い従業員には追加の健康診断が必要

夜勤の多い従業員には年に2回の健康診断を受けさせなければなりません。
これは、深夜労働が、健康被害が出やすい特定業務にしていされているためです。
年に2回の健康診断の対象となるのは、週に1回又は月に4回以上夜勤をおこなう従業員です。深夜労働に該当する時間の勤務がたとえ30分であっても週に1回又は月4回以上22時以降の勤務が発生すれば対象に含まれるため注意しましょう。
受診のタイミングは配置替えの際と6ヵ月以内ごとに1回です。健康診断の結果が出た後は、受診した従業員の健康状況により、必要に応じて業務環境や内容の改善をおこないましょう。
6. 夜勤の定義や法律上の義務を理解しミスのない勤怠管理や賃金計算を

夜勤のうち法律上の深夜労働である、22時〜翌5時の時間帯を含んだ勤務には、深夜手当として25%の割増賃金が発生します。
また、残業によって時間外労働が発生すれば、深夜手当とともに時間外手当を支払わなければなりません。
夜勤の賃金計算や休日管理は、日勤よりも複雑になりがちです。会社側は、法律上のルールを十分理解することが求められます。
夜勤の従業員に関する各種規定を確認し、従業員に無理のない労働をおこなわせるようにしましょう。
[注1]労働基準法第6条「深夜業」|e-Gov法令検索
[注2]労働基準法第66条「産前産後」|e-Gov法令検索
[注3]改正労働基準法の施行について|厚生労働省
[注4]労働時間・休日「労働時間・休日に関する主な制度」|厚生労働省
[注5]しっかりマスター労働基準法 割増賃金編|厚生労働省
【監修者】涌井好文(社会保険労務士)